引越しで仏壇を新居へ移動させても問題ありません。ただし宗派や寺院の考えによっては、引っ越し日の1か月前から「魂抜き(閉眼供養)」を行った後、新居で魂入れ(開眼供養)と呼ばれる儀式を行う人もいます。
引越しに伴って仏壇を新居に移動させる手順について、魂抜きや魂入れといった供養の流れや、業者に依頼したときの費用相場を含めて解説します。
仏壇の引越し前に必要な4つの準備
新居の引越しで仏壇を移動させる前に下記の準備を行いましょう。
1.新居の配置場所を決めておく
仏壇は大きな家具のひとつです。引越しが決まったら新居に仏壇が設置できるかどうか確認しましょう。
仏壇のサイズを測ったうえで設置する場所やエレベーター、階段、ドアの幅など、新居へ搬入するルートもあわせて確認することも大切です。
2.菩提寺に魂抜き・魂入れを依頼する
浄土宗や真言宗、曹洞宗といった宗派によっては仏壇を移動させる前に旧居で「魂抜き」の儀式を行い、引越し後新居で「魂入れ」の供養を行う場合があります。
魂抜きと魂入れの供養を行いたい人は、引越し日の1か月前までに日程を決めて菩提寺に依頼しましょう。
なお、浄土真宗では「人がなくなると、すぐに天国へ旅立つ」という考えのもと「魂抜き」と「魂入れ」は行いません。その代わりに「遷座法要(せんざほうよう)」と「遷仏法要(せんぶつほうよう)」と呼ばれる儀式を行います。
3.業者に仏壇の移動を依頼する
魂抜きの日程が決まったら、仏具店や引越し業者に仏壇の移動を依頼しましょう。
実際に仏壇を引越し先へ移動できるのは「魂抜き」が終わった後になるため、引越し日は「魂抜き」よりも後になるように日程を調整することが大切です。
ただし仏壇を「美術品」として取り扱うことから、快く引き受けが難しい業者もあるため、依頼する際は問題なく運んでもらえるか確認しましょう。
4.仏具を外す前に仏壇全体の写真を撮っておく
旧居で魂抜き供養を行った後、中に入っている仏具や棚などを取り外しますが、その前に本尊や仏具が飾っている状態の写真を撮っておきましょう。
宗派や寺院、地域によって飾り方が異なり、移動させた後に飾っている場所を忘れないようにするのが目的です。
仏壇の引越し前に行う「魂抜き」とは?
僧侶に読経してもらうことで故人の魂が宿ったものから魂を抜く儀式です。仏壇をはじめ、位牌や本尊などに対して行うもので、「閉眼供養(へいげんくよう)」や「お性根抜き」ともいいます。
魂抜きを行う時期は、引越し日の1週間前から前日までの日程で執り行いましょう。引越し日当日に儀式を行うのは現実的ではありません。
魂抜き当日に必要なもの
魂抜きを執り行う際に必要なものは、以下のとおりです。
- 仏具(おりんや木魚、香炉立てなど)
- 線香
- ロウソク
- 供花
- お供え物
- 座布団
- 白封筒(不祝儀袋)
- 切手盆または袱紗
- お布施
- お車代 など
「お布施」は読経が終わった後、僧侶に渡すお礼のことをいい、費用相場は1〜3万円です。お布施を直接僧侶に手渡しするのは失礼にあたるため注意しましょう。白封筒または専用の不祝儀袋に入れ、切手盆と呼ばれる小さなお盆か、袱紗の上に載せてから渡します。
加えて、約5,000円のお車代を納める場合もあります。あらかじめ何を用意する必要があるのか、魂抜きを行う前に菩提寺に確認しておきましょう。
引越しで仏具を梱包する方法
魂抜きの儀式を行った後、引越し日の前日までに仏壇に飾ってある仏具や棚などのパーツを取り外して梱包しましょう。その際、下記の仏具については取り扱いに注意が必要です。
遺影・ご本尊・位牌
故人の遺影やご本尊、位牌といった仏具は白い布などに包んだ後、自分たちで新居まで移動させましょう。ダンボールに入れて運んでしまうと、運搬中の振動などで破損してしまう可能性があるからです。
香炉・火立て・花立て
仏教で故人を供養するために必要なアイテムで「三具足」ともいいます。
香炉は灰や燃え残りの線香を可燃ゴミとして処分した後、新聞紙や緩衝材などで梱包してからダンボールに詰めます。新居へ引越した後、仏具店で購入した新しい灰を入れ替えれば問題はありません。
火立てや水立ては中に入っている水を流した後、乾いたぞうきんやタオルでふき取ってから新聞紙や緩衝材などで包んでダンボールに梱包しましょう。
木魚・仏飯杯・仏壇照明
木魚や仏飯杯、仏壇照明は運搬中に落下したり、振動を与えたりすると破損してしまう可能性があります。エアーキャップやミラーマットといった緩衝材を包んでセロハンテープで固定した後、ダンボールに梱包しましょう。
ダンボールに封をした後、忘れずに割れ物シールを貼ったり、油性ペンで「割れ物注意」と書いておけば、作業スタッフは取り扱いに注意しながら運んでもらえます。
引越し先へ仏壇を運ぶ4つの方法と費用相場
仏壇を引越し先へ移動させる方法は4つあります。業者に依頼するとき、あらかじめ見積もりを取って料金を確認してから業者を決めましょう。
費用相場を含め運搬方法をまとめた表は、下記のとおりです。
仏壇の運搬方法 | 費用相場 |
仏壇・仏具店 | 要見積もり(10,000~100,000円) |
仏壇専門の配送業者 | 要見積もり(35,000~100,000円) |
一般の引越し業者 | 要見積もり(10,000~30,000円) |
自分たちで移動させる | 数百円~数千円(梱包資材、ガソリン代など) |
1.仏壇・仏具店
仏壇の移動サービスを提供する仏壇や仏具専門店に依頼する方法です。店舗によっては仏壇の梱包や引越し先で設置作業を行ってもらえるところもあります。
ただし引越し業者とは別に依頼する必要があり、タイミングによっては引越し当日に運んでもらえない可能性があるため、引越し日が決まった段階で依頼するようにしましょう。
費用相場は10,000〜100,000円で、仏壇の大きさや移動距離によって変わります。
2.仏壇専門の配送業者
地域によっては、仏壇を専門に取り扱う配送業者があります。引越し時に仏壇を搬出入や設置作業を行うほか、魂抜きや魂入れ、仏具の飾りつけなどの作業も行ってもらえます。
費用相場は35,000〜100,000円ですが、供養を含め安全に仏壇の引越し作業を依頼したい人におすすめです。
3.一般の引越し業者
仏壇とあわせて、ほかの家具や家電、家財を運んでもらえるため、コストや手間がかからないのが特徴です。
費用相場は10,000〜30,000円ですが、オプションとして別途料金を請求するところもあるため、複数の業者から見積もりを取って比較したうえで決めましょう。
4.自分たちで移動させる
仏壇・仏具店や引越し業者に依頼せず、自分の車で仏壇や仏具を新居へ運ぶことも可能です。
仏壇を横にしたり、うつ伏せの状態で運んだりすると破損するので避けましょう。費用は仏具の梱包代やガソリン代で、数百円から数千円かかりますが、移動距離によっては数万円かかる場合があります。
ただし仏壇は重量があり、取り扱いを間違えると破損してしまいます。難しい場合は無理をせず、仏壇・仏具店や専門の配送業者、引越し業者に依頼しましょう。
引越し後に行う仏壇の「魂入れ」とは?
「魂入れ」は引越し先に仏壇を運んだ後、仏壇や位牌に故人の魂を込める儀式です。「開眼供養(かいげんくよう)」や「お性根入れ」ともいい、「魂抜き」のときと同様、浄土真宗以外の宗派で執り行います。
新居に到着して仏壇を設置した後、引越し日の翌日から数日中をめどに魂抜きをした菩提寺の僧侶に読経を依頼しましょう。なお遠方の場合、引越す前に新居がある地域の寺院に依頼できるかどうか確認することをおすすめします。
魂入れ当日までの手順は、下記のとおりです。
1.仏壇に仏具を飾り直す
新居に仏壇が到着したら、魂入れの前日までに仏具を飾り直しましょう。旧居で事前に撮影した写真を参考に位牌や火立て、照明などを飾り付けます。
2.僧侶に渡すお布施とお車代を準備する
魂入れ前日までに僧侶に渡すお布施やお車代を用意しましょう。費用相場は魂抜きと同様です。あわせて供花やお供え物も準備しておきましょう。
3.新居で魂入れを行う
仏壇に供花やご飯などの供え物を飾った後、菩提寺の僧侶を招いて儀式を行います。仏壇の前で僧侶が読経した後、参列者が焼香する流れです。
魂入れの儀式が終わった後、魂抜きと同様に袱紗を包んだ状態で僧侶にお布施やお車代を渡します。
仏壇の引越しで知っておくべき3つのポイント
仏壇を引越し先へ移動する際、知っておくべきポイントは下記3つです。
1.仏壇の引越し日に六曜を気にする必要はない
「大安」や「仏滅」、「赤口」といった六曜と呼ばれる日柄は仏教の教えと関係がないため、気にする必要はありません。
どうしても気になる人や習わしを重視する人は、大安の日に仏壇の引越しを行いましょう。
2.仏壇は最後に家から出し最初に新居に入れる
地域や宗派の考えによっては、仏壇は旧居から最後に運び出し、新居には最初に運び込むという作法があります。
引越し先の地域でどのようにしているか気になる人は、新居へ引越す前に同宗派の寺院や近所の人に確認しておきましょう。
3.建て替えなどで置けないときは一時的に預かってもらう
引越しのスケジュールが合わず、新居に仏壇を設置できないとき、魂抜きを行った後に仏壇を一時的に預かってもらえる業者があります。
一時的な預かりサービスを提供しているのは、仏壇専門の引越し業者ですが、ひと月あたりの費用相場は2,000〜5,000円なので利用してみましょう。
仏壇を引越し先に持っていけないときの対処法
新居の環境や仏壇の状態によっては、引越し先に持っていけないケースが発生します。その際は魂抜きの儀式を行った後、下記の対処法を行いましょう。
1.菩提寺に「お焚き上げ」を依頼する
菩提寺に「お焚き上げ」という読経で神仏にかかわるものを供養し、火で焚き上げる儀式を依頼しましょう。寺院によって金額は変わりますが、仏壇を供養する際に納めるお布施の額は3〜5万円です。
2.仏壇・仏具専門店に引き取りを依頼する
仏壇や仏具専門店によっては、不要になった仏壇を引き取ってもらえる業者があります。仏壇の大きさによって変わりますが、引き取り費用の目安は1万〜8万円です。
新しい仏壇を買い替えるとき、お店で不要な仏壇の引き取りを依頼すれば、引き取り料金をサービスしてもらえるケースもあるので相談しましょう。
3.自治体に相談する
自治体によっては仏壇を粗大ごみとして収集してもらえるところがあります。サイズによって金額は変わりますが、処分にかかる費用は数千円です。
ただし回収サービスを行っていない場合、自分で自治体のクリーンセンターまで運ぶ必要があるため注意しましょう。
なお、自治体が定めるルール内に仏壇を解体できれば、可燃ごみとして出せます。
仏壇が運べる引越し業者を探そう
仏壇を新居へ移動させるとき、宗派によっては魂抜きや魂入れの儀式を執り行う人もいます。引越しが決まったら、1か月前までを目途に菩提寺に供養を依頼したり、引越し業者を決めないと期日まで移動できません。
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