普段あまり意識することのない「本籍地」。何に使われるもので、いつ変更するのかよくわかっていないという方もいるかもしれません。
例えば引っ越しをしたら住民票は異動しなくてはいけませんが、本籍地の変更は必須ではありません。むしろ、変更したことで後々手間が増えることもあるのです。
この記事では、本籍地を変更することのメリット・デメリットや、変更する場合に必要なものや手順を解説します。
本籍地を変更するタイミングとは?
本籍地とは戸籍が置かれた住所のことで、現在の居住地を示す住民票の住所とは別です。
基本的に本籍地は頻繁に変更するものではありませんが、以下のタイミングでは必ず本籍地が変わります。
- 結婚したとき
- 離婚したとき(筆頭者でない配偶者のみ)
ほかに、本籍地の変更を検討する人が多いタイミングもあります。
- 家を購入するとき
結婚したとき
結婚歴がない人は、分籍の手続きをしていない限り親の戸籍に入っている状態です。
結婚すると、親の戸籍から出て新たに自分たちの戸籍がつくられ、本籍地も新たに指定することになります。
離婚したとき(筆頭者でない配偶者のみ)
離婚をすると、戸籍の筆頭者ではない配偶者は原則としてもとの戸籍(=本籍地)に戻ることになります。ただし、離婚届の提出時に新しい戸籍の編製を申し出ることも可能です。
ちなみに筆頭者は、結婚時に夫の氏を選択した場合は夫、妻の氏を選択した場合は妻になっているはずです。
子どもがいる場合、親権をどちらが持つかにかかわらず、子どもは元の戸籍に残った状態になります。子どもの戸籍を移したい場合は、家庭裁判所の許可を得て転籍の手続きをしなくてはいけません。
家を購入するとき
必須ではないものの、本籍地の変更を検討するタイミングとして「家を購入するとき」があります。
特に今まで賃貸物件に本籍地を置いていた場合は、終の棲家として購入した家に本籍地を移すという人も一定数いるようです。
本籍地を変更するメリット・デメリット
本籍地を変更することのメリット・デメリットを整理してみました。
メリット |
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デメリット |
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ただし現在ではどこにいても戸籍謄本が取れる環境も整ってきており、本籍地変更のメリットは薄れてきています。
これから生涯住む場所に本籍地を移したい、何らかの理由で親の戸籍から抜けたいという事情がない限り、デメリットのほうが多いといえるでしょう。
【メリット】現住所に変更すれば戸籍謄本の取得が楽になる
現在住んでいる場所に本籍地を変更した場合、役所の窓口にすぐに行けるので戸籍謄本の取得が楽になります。
遠方に本籍地を置いている場合は基本的に郵送で申請することになりますが、郵送費用と時間がかかってしまいます。約7~10日は見ておかなければなりません。
ただし現在は「戸籍謄本・抄本のコンビニ交付システム」も普及が進んでいます。マイナンバーカードを持っていて、本籍地のある自治体がコンビニ交付に対応しているなら、本籍地が遠方でも余計な時間や費用はかかりません。
【デメリット】同時に免許証とパスポートの変更手続きも必要
本籍地を変更すると、本籍地が登録されている公的書類である「免許証」と「パスポート」の変更手続きをしなくてはいけません。
特にパスポートは住所が変わっただけなら手続きしなくても良い書類なので、もし引っ越しを機に本籍地を変えようとしている場合、手続きの手間が増えてしまうことになります。
【デメリット】自身の遺産相続時の遺族の手間が増える
本籍地を変更した回数が多いと、自分が亡くなった後、遺産相続をおこなう遺族の手間が増えてしまいます。
遺産相続のときには、生まれてから死ぬまでのすべての戸籍謄本(除籍謄本 ※)が必要です。亡くなった人が転籍を繰り返していた場合、故人の戸籍があったすべての市区町村から戸籍謄本(除籍謄本)を取り寄せる作業が発生します。
自分が直接かかわることではありませんが、亡くなった後に身内に苦労をかけるのは望ましくないでしょう。
(※)死亡や転籍などにより戸籍から全員が抜けてしまった場合、戸籍謄本は除籍謄本に謄写されます。 |
本籍地を変更する方法
本籍を変更するためには役所での手続きが必要です。基本的に開庁時間に実施しなければなりませんが、代理人が利用できるなどいくつか柔軟な方法もあります。本籍地の変更方法を紹介します。
転籍する場合(戸籍の全員で本籍を変更する)
戸籍に登録されている人全員で別の場所に本籍を移す場合は、「転籍」をおこなうことになります。
届出をする人 |
戸籍の筆頭者及びその配偶者(窓口に届け出るのは代理人でも可) |
届出をする場所 |
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用意するもの |
※法改正により、令和3年9月1日から戸籍届出の押印は任意となった |
手数料 |
無料 |
転籍届は新旧どちらの本籍地でも入手できますし、自治体によっては公式Webサイトからダウンロードすることも可能です。
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)は、現在の本籍地で取り寄せます。遠方で直接窓口に行けない場合は、郵送申請またはコンビニ交付で取得することになります。
時間がない場合は、代理人による書類の提出も可能です。ただし書類への署名と押印は、戸籍の筆頭者および配偶者のものでなければなりません。
分籍をする場合(筆頭者・配偶者以外の人の戸籍を分ける)
戸籍に登録されている人のうち、筆頭者と配偶者以外で20歳以上の成年に達した人が単独で新しい戸籍をつくるときは「分籍」の届出をします。
ちなみに筆頭者と配偶者の本籍地を分けることはできません。
届出をする人 |
分籍をする本人(窓口に届け出るのは代理人でも可) |
届出をする場所 |
|
用意するもの |
※法改正により、令和3年9月1日から戸籍届出の押印は任意となった |
手数料 |
無料 |
分籍をすると戸籍は別々になりますが、親子関係や兄弟姉妹関係は変わりません。
分籍後に再びもとの戸籍に戻ることはできないので注意しましょう。
結婚に伴う本籍地の変更
結婚によって本籍地が変わるときは、婚姻届の「新しい本籍」の欄に新しく本籍を置きたい場所を記入します。
あとは婚姻届が受理されれば、指定した場所に新しく戸籍がつくられます。
婚姻にあたって本籍を置く場所はどこでも構いません。よくあるパターンは「どちらかの実家」や「2人の新居」ですが、皇居や東京タワーなどの名所にする人もいるそうです。
離婚に伴う本籍地の変更
離婚するとき、筆頭者でない配偶者(結婚時に氏を変更した人)は、結婚前の戸籍に戻るか、新しい戸籍を作るか選ぶことができます。
離婚届のチェック欄にチェックを入れ、新しく戸籍を作る場合は新しい本籍地も記入します。このときの本籍地はどこに置いても構いません。
離婚後の子どもの戸籍について
親権者がどちらであっても、子どもは元の戸籍に残ります。
例えば父親の戸籍に残っている子どもを母親と同じ戸籍に入れたい場合は、以下の通り手続きをしなければなりません。
- 母親が新しい戸籍を作る
- 家庭裁判所に「子の氏の変更許可の申立て」をする
- 母親の本籍地または住所地で「入籍届」を提出する
戸籍謄本が必要な場面と確認・取得の方法
戸籍謄本が必要になるタイミングとは?
戸籍謄本が必要になる場面は人生の中でそこまで多くありません。
ただし、自分自身の身元や家族関係の証明が必要な場面や、戸籍上の変更が生じるときには戸籍謄本を求められます。
以下は戸籍謄本が必要な場面の一例です。
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現在の本籍地の確認方法
自分の現在の本籍地をいまいち把握していない、覚えていないという方もいるのではないでしょうか。
本籍地を確認する方法はおもに以下の2つです。
- 本籍地記載の住民票の写しを取得する
- 運転免許証のICチップのデータを読み取る
住民票は役所窓口やコンビニの証明書交付サービスで取得できます。
運転免許証そのものには本籍地は記載されていませんが、内蔵のICチップには情報が記録されています。警察署、運転免許試験場、運転免許センターに出向けばチップの情報の読み取りが可能です。
NFC搭載のスマートフォンがあれば、読み取りアプリを使って本籍地を知ることもできます。
戸籍謄本の取り寄せ方法
戸籍謄本を取得するときは本籍地の役所に申請します。
本人が窓口に出向けない場合は、郵送による申請や、代理人による申請も可能です。
申請場所 |
本籍地のある自治体の役所 |
用意するもの |
郵送申請の場合
代理人申請の場合
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コンビニ交付の場合
本籍地が戸籍謄本のコンビニ交付に対応している自治体であれば、コンビニに置いてある複合機端末から、証明書等交付サービスを使って戸籍謄本を取得できます。
申請場所 |
証明書交付サービスに対応しているコンビニ(本籍地がコンビニ交付を行っている場合) |
取得できる時間帯 |
6:30~23:00 |
用意するもの |
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戸籍と住民票の違いとは?
冒頭でもふれたように、「戸籍」と「住民票の住所」はそれぞれ別のものです。
戸籍の届出 | 転籍届、婚姻届、離婚届、出生届、死亡届など |
住民票の届出 | 転入届、転出届、転居届など |
本籍地は戸籍上の住所
転籍届は戸籍を変更する際に行う手続きであり、転居届・転入届は住民票を移動するために実施する手続きです。
戸籍とは本人の出生や死亡、婚姻・離婚・縁組などの大切な身分関係を公証するものになります。一方住民票は、本人の住居関係を公証するものです。氏名や年齢などの住民情報が記載されます。
戸籍は夫婦や親子などの家族関係を証明し、住民票はどこで誰と暮らす住民なのかといった情報を記録するものです。
住民票は赤の他人でも一緒に記載できますが、戸籍は家族しか記載できません。
引っ越し時は転居・転入の手続きのみでOK
引っ越しで住所が変わったとしても、本籍地まで毎回変更する必要はありません。
役所は「管轄の地域に現在誰が住んでいるのか」を把握したいだけなので、住民票の変更届け出(転居届、転入・転出届)のみで大丈夫です。
ただし同じ市町村内で引っ越しをする際は、転居届のみが必要であり転入届は不要です。役所から見れば市町民が管轄内で転居するだけなので、転居先の住所等を把握すればこれまで通り住民税を徴収したり住まいをサポートしたりできます。
引っ越しするたびに本籍を移しては、転籍することによるデメリットを強く受けてしまうでしょう。
本籍地の変更に伴い発生する2つの手続き
転籍すると運転免許証やパスポートの手続きにも影響を与えます。それぞれどのような影響があるかを解説します。
免許証があるなら記載事項変更届が必要
転籍すると、運転免許証に記載されている戸籍を変更しなければなりません。手続きする場所は、管轄の警察署か運転免許センターです。
警察署は平日しか受け付けていない場合が多く、免許センターは土日でも開いています。ただし土曜日は、記載事項の変更を受け付けていない場合が多いので、事前に確認しましょう。
一般的に必要なものは運転免許証と、戸籍が分かる住民票などです。費用はかかりませんが、都道府県によって必要なものが異なります。あらかじめ調べておいた方がよいでしょう。
パスポートの手続きは本籍地の県が変わると必要
パスポートを発行している人が戸籍を変更した場合、一度手元にあるパスポートは返納しなければなりません。
継続してパスポートを使うためには、返納後に新しくパスポートを発行するか、残存有効期間と同じパスポート「記載事項変更旅券」を発行する必要があります。
ただし変更前の戸籍と同じ県内で移籍した場合は、パスポートの記載に変更が発生しないため手続きは不要です。よく渡航するのであれば、戸籍を変更する際は注意しましょう。
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