障害者雇用に関する助成金には、障害者を雇い入れた場合のほか、障害者のために雇用環境を改善した場合などさまざまな場面で支給されるものがあります。
一定規模以上の企業が障害者を雇用することは義務であり、障害者との共存社会を実現するためにも積極的に助成金を活用していきたいところです。
この記事では、障害者雇用に関する助成金にはどのようなものがあるのか、また、それらの受給要件や受給額などついて解説しています。
障害者雇用に関する助成金とは
国は一定規模の企業(従業数45.5人以上)における障害者の雇用率(2.2%)を定めて障害者の雇用を義務付ける一方、障害者を雇い入れた場合や障害者ために雇用環境を改善した場合に助成金を支給することで、障害者の雇用促進を図っています。
まずは障害者雇用に関する助成金の概要について説明します。
障害者雇用に関する助成金とは
障害者雇用に関する助成金には、障害者の雇用にかかわる様々な場面で支給されるものがありますが、大きく分けると、次の4つの場面で支給されるものです。
①雇い入れた場合
②職場定着のための措置を実施した場合
③職業能力開発をした場合
④施設等の整備や適切な雇用管理の措置を行った場合
これらは主に厚生労働省管轄の助成金になりますが、④については、厚生労働省所管の独立行政法人である「高齢・障害・求職者雇用支援機構」が支給手続きを行っています。また、各都道府県など地方自治体にも活用できる助成金があります。
障害者雇用に関する助成金の対象者
障害者雇用に関する助成金において、どのような障害者についての雇い入れや雇用環境の改善が対象になるのかについては、助成金ごとに違いがありますが、基本的には次のいずれかに該当する方になります。
なお、各助成金に申請する際には、原則としてそれぞれの障害状態を確認する書類(写)の提出が必要になります。
対象障害者 | 確認書類の例 |
---|---|
身体障害者 | 身体障害者手帳、または、医師の診断書・意見書 |
知的障害者 | 児童相談所などの判定書、または、療育手帳 |
精神障害者 | 精神障害者保健福祉手帳、または、医師の診断書・意見書 |
発達障害者 | 医師の診断書 |
厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病※)にかかっている者 | 医療受給者証、医師の診断書、または、公的機関が発行する書類 |
高次脳機能障害であると診断された者 | 医師の診断書 |
※対象となる疾病については、厚生労働省のホームページでご確認ください。
障害者雇用に関するものを含む「雇用関係助成金」に共通する要件
厚生労働省の雇用に関する助成金を「雇用関係助成金」と言いますが、障害者雇用に関する助成金についても厚生労働省が管轄するものである限り、この雇用関係助成金に含まれます。
雇用関係助成金は事業主が納めた雇用保険料で運用していることもあり、雇用関係助成金に申請するためには次の要件を満たしている事業主である必要があります。
- 雇用保険適用事業の事業主であること
- 支給のための審査に協力すること
- 申請期間内に申請を行うこと
都道府県など地方自治体の雇用に関する助成金についても基本的には同じ整理です。
「中小企業」とは
上記で説明した雇用関係助成金の中には、中小企業と大企業とで助成金の額が異なるものがあります。
「中小企業(事業主)」に該当するかどうかは、原則として次の基準で業種ごとに判断されます。
都道府県など地方自治体の雇用に関する助成金についても基本的には同じ整理です。
障害者の雇い入れ・その他で活用できる助成金一覧
ここからは、障害者の雇い入れや雇い入れ以降に活用できる助成金として、実際にどのようなものがあるのかについて説明します。
まずは、先に説明した障害者雇用に関する助成金の4つの類系ごとの具体的な助成金名とそれらの支給対象となる措置についてご紹介します。
雇い入れた場合
活用できる助成金としては、次のようなものがあります。
特定求職者雇用開発助成金(厚生労働省)
コースの名称 | 支給対象となる措置 |
---|---|
特定就職困難者コース | ハローワーク等の紹介による障害者の雇い入れ |
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース | ハローワーク等の紹介による発達障害者または難治性疾患患者の雇い入れ |
障害者初回雇用コース(ファースト・ステップ) | 中小企業におけるはじめての障害者の雇い入れ |
トライアル雇用助成金(厚生労働省)
コースの名称 | 支給対象となる措置 |
---|---|
障害者トライアルコース | ハローワーク等の紹介による障害者の試用雇用 |
障害者短時間トライアルコース | ハローワーク等の紹介による障害者の試用雇用(雇い入れ時の週の所定労働時間:10時間以上20時間未満) |
東京都障害者安定雇用奨励金(東京都)
※都道府県の障害者雇用支援の例として挙げています。
区分 | 支給対象となる措置 |
---|---|
雇入奨励金 | 障害者の雇い入れ(正規雇用・無期雇用) |
職場定着のための措置を実施した場合
活用できる助成金としては、次のようなものがあります。
障害者雇用安定助成金(厚生労働省)
コースの名称 | 支給対象となる措置 |
---|---|
障害者職場定着支援コース | 障害の特性に応じた雇用管理、雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫等の措置の実施 |
障害者職場適応援助コース | 職場への適応や定着に課題を抱える障害者に対する、職場適応援助者による支援の実施 |
東京都障害者安定雇用奨励金(東京都)
※都道府県の障害者雇用支援の例として挙げています。
区分 | 支給対象となる措置 |
---|---|
転換奨励金 | 雇用している障害者の有期雇用から無期雇用への転換 |
職業能力開発をした場合
活用できる助成金としては、次のようなものがあります。
人材開発支援助成金(厚生労働省)
コースの名称 | 支給対象となる措置 |
---|---|
障害者職業能力開発コース | 障害者に一定の教育訓練を実施する施設の設置または運営 |
施設等の整備や適切な雇用管理の措置を行った場合
活用できる助成金としては、次のようなものがあります。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金(高齢・障害・求職者雇用支援機構)
助成金の名称 | 支給対象となる措置 |
---|---|
障害者介助等助成金 | 障害者に必要な介助等の措置の実施 |
重度障害者等通勤対策助成金 | 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者等の通勤を容易にするための措置の実施 |
障害者作業施設設置等助成金 | 障害者が作業しやすい施設の設置または整備 |
障害者福祉施設設置等助成金 | 障害者の福祉の増進を図るための福利厚生施設の設置または整備 |
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 | 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者等のための事業施設の設置または整備 |
特定求職者雇用開発助成金
「特定求職者雇用開発助成金」とは、雇い入れにかかわる厚生労働省の助成金で、障害者や高齢者など就職が困難な者の雇い入れを対象にしています。
令和2年度の現在、この助成金には7コースありますが、そのうち障害者の雇い入れにかかわる「特定就職困難者コース」と「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」、「障害者初回雇用コース(ファースト・ステップ)」の3コースについて、主な受給要件や受給額、申請方法を説明します。
特定就職困難者コース
「特定就職困難者コース」とは、高年齢者(60歳以上65歳未満)や障害者などの就職が特に困難な者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合に助成金を支給するものです。
障害者についての主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 対象労働者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者のいずれかであって、雇い入れ日現在において満65歳未満であること
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業所等の紹介によって雇い入れること
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが雇い入れ時点で確実であると認められること
受給額
このコースでは、対象労働者の雇用形態や障害の程度、企業規模(中小企業であるのかどうか)に応じて「助成対象期間」(雇い入れ日から1年~3年)が設定され、その期間を6か月単位で区分した「支給対象期」(第1期~第6期)ごとにそれぞれ定められた額の助成金が支給されます。
受給できる額は、対象労働者1人あたりで下記の表の額になります。
- ( )内は大企業の支給額および助成対象期間です
- 「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者を指します
- 「重度障害者等」とは、重度身体障害者や身体障害者のうち45歳以上の者、または重度知的障害者や知的障害者のうち45歳以上の者、または精神障害者のいずれかに該当する者を指します
申請方法
支給対象期ごとにそれぞれの支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に支給の申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)をします。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の支給要領でご確認ください。
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」とは、発達障害者または難治性疾患患者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により、継続して雇用する労働者として雇い入れた場合に助成金を支給するものです。
主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 対象労働者は、「発達障害者支援法」第2条に規定する発達障害者または「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」第1条に基づき、厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病)にかかっている者であり、雇い入れ日現在において満65歳未満であること
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業所等の紹介によって雇い入れること
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが雇い入れ時点で確実であると認められること
受給額
このコースでは、対象労働者の雇用形態や企業規模(中小企業であるのかどうか)に応じて「助成対象期間」(雇い入れ日から1年~2年)が設定され、その期間を6か月単位で区分した「支給対象期」(第1期~第4期)ごとにそれぞれ定められた額の助成金が支給されます。
受給できる額は、対象労働者1人あたりで下記の表の額になります。
- 「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満である者を指します。
申請方法
支給対象期ごとに、それぞれの支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に支給の申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)をします。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の支給要領でご確認ください。
障害者初回雇用コース(ファースト・ステップ)
「障害者初回雇用コース(ファースト・ステップ)」とは、障害者雇用の経験のない中小企業が雇用率制度の対象となるような障害者を初めて雇用し、その雇い入れによって法定雇用率を達成する場合に助成金を支給するものです。
主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 支給申請時点で常時雇用する労働者数が45.5人~300人の事業主であること。
- 対象労働者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者いずれかであり、雇い入れ日現在において満65歳未満であること。
- ハローワークまたは民間の職業紹介事業所等の紹介によって雇い入れること。
- 雇用保険の一般被保険者として雇い入れ、継続して雇用することが雇い入れ時点で確実であると認められること。
- 1人目の対象労働者を雇い入れた日の翌日から起算して3か月後の日までの間に、雇い入れた対象労働者の数が法定雇用障害者数以上となり、法定雇用率(※)を達成すること。
※障害者の法定雇用率については、厚生労働省のホームページでご確認ください。
受給額
受給できる額は、1企業あたり120万円です。
申請方法
法定雇用率を達成した日の直後の「賃金締切日の翌日から12か月後の翌日」から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に支給の申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)をします。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、特定求職者雇用開発助成金(障害者初回雇用コース)の支給要領でご確認ください。
トライアル雇用助成金
「トライアル雇用助成金」とは、雇い入れにかかわる厚生労働省の助成金で、障害者やフリータ、ニートなど安定的な就職が困難な者の試行雇用(トライアル雇用)を対象にしています。
令和2年度現在、この助成金には4コースありますが、そのうち障害者の試行雇用にかかわる「障害者トライアルコース」と「障害者短時間トライアルコース」の2コースについて、主な受給要件や受給額、申請方法を説明します。
障害者トライアルコース
「障害者トライアルコース」とは、就職が困難な障害者を一定期間、試用雇用(トライアル雇用)する場合に助成金を支給するものです。
主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 対象労働者は継続雇用する労働者としての雇入れを希望し、障害者トライアル雇用制度を理解した上で障害者トライアル雇用による雇入れについても希望している者であること
- 対象労働者は上記に加えて、「障害者雇用促進法」に規定する障害者(身体障害者、知的障害者など)のうち、「紹介日において就労の経験のない職業に就くことを希望する者」、「紹介日前2年以内に、離職が2回以上または転職が2回以上ある者」、「紹介日前において離職している期間が6か月を超えている者」、「重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者」のいずれかに該当する者であること
- 対象労働者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
- 障害者トライアル雇用等の期間について、雇用保険被保険者資格取得の届出を行うこと
受給額
このコースでは、障害者トライアル雇用を開始した日から1か月単位で最長3か月間(精神障害者の場合は最長6か月間)を「支給対象期間」として助成金が支給されます。ただし、障害者トライアル雇用期間中に対象労働者が離職した場合や継続雇用する労働者として雇用される場合、または週の所定労働時間を20時間未満に変更した場合にはそこで支給は終了します。
受給できる額は、対象労働者1人につき月額4万円(精神障害者を雇用する場合は雇入れから3か月間は月額8万円)です。上記の理由により月の途中で支給が終了した場合、その月の額は実際に就労した日数で計算されます。
申請方法
このコースの申請方法は次のとおりです。
①「障害者トライアル雇用等実施計画書」の提出
障害者トライアル雇用としての雇入れ日から2週間以内に「障害者トライアル雇用等実施計画書」を以下の機関に提出する。
- ハローワークから職業紹介を受け、障害者トライアル雇用を開始する場合:当該障害者トライアル雇用の紹介を行ったハローワーク
- 地方運輸局から職業紹介を受け、障害者トライアル雇用を開始する場合:当該障害者トライアル雇用の紹介を行った地方運輸局
- 職業紹介事業者から職業紹介を受け、障害者トライアル雇用を開始する場合:当該障害者トライアル雇用を実施する雇用保険適用事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワーク
②支給申請
障害者トライアル雇用を終了した日の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄のハローワークを経由して都道府県労働局に提出します。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)の支給要領でご確認ください。
障害者短時間トライアルコース
「障害者短時間トライアルコース」とは、就職が困難な障害者について、週の所定労働時間を10時間以上20時間未満として、一定期間、試用雇用(トライアル雇用)する場合に助成金を支給するものです。
主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 対象労働者は、継続雇用する労働者としての雇入れを希望し、障害者短時間トライアル雇用制度を理解した上で、障害者短時間トライアル雇用による雇入れについても希望している者であり、かつ、精神障害者または発達障害者であること
- 対象労働者をハローワークまたは民間の職業紹介事業者等の紹介により雇い入れること
受給額
このコースでは、障害者短時間トライアル雇用を開始した日から1か月単位で最長12か月間を「支給対象期間」として助成金が支給されます。ただし、障害者短時間トライアル雇用期間中に対象労働者が離職した場合や継続雇用する労働者として雇用された場合、または週の所定労働時間を10時間未満に変更した場合にはそこで支給は終了します。
受給できる額は、対象労働者1人につき月額4万円です。上記の理由により月の途中で支給が終了した場合、その月の額は実際に就労した日数で計算されます。
申請方法
このコースの申請方法は次のとおりです。
①「障害者トライアル雇用等実施計画書」の提出
障害者短時間トライアル雇用としての雇入れ日から2週間以内に「障害者トライアル雇用等実施計画書」を以下の機関に提出する。
- ハローワークから職業紹介を受け、障害者短時間トライアル雇用を開始する場合:当該障害者短時間トライアル雇用の紹介を行ったハローワーク
- 地方運輸局から職業紹介を受け、障害者短時間トライアル雇用を開始する場合:当該障害者短時間トライアル雇用の紹介を行った地方運輸局
- 職業紹介事業者から職業紹介を受け、障害者短時間トライアル雇用を開始する場合:当該障害者短時間トライアル雇用を実施する雇用保険適用事業所の所在地を管轄する労働局またはハローワーク
②支給申請
1回目の支給申請については、障害者短時間トライアル雇用を開始した日から6か月経過後の翌日から起算して2か月以内、2回目の支給申請については、障害者短時間トライアル雇用が終了した日の翌日から起算して2か月以内に、それぞれ「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄のハローワークを経由して都道府県労働局に提出します。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局またはハローワークに問い合わせるか、トライアル雇用助成金(障害者短時間トライアルコース)の支給要領でご確認ください。
障害者雇用安定助成金
「障害者雇用安定助成金」とは、雇用環境の整備などにかかわる厚生労働省の助成金で、障害者のための雇用管理や雇用形態の見直しなどを対象にしています。
この助成金には、「障害者職場定着支援コース」と「障害者職場適応援助コース」の2コースがありますが、この2コースの主な受給要件や受給額、申請方法について説明します。
障害者職場定着支援コース
「障害者職場定着支援コース」とは、障害者の障害特性に応じた雇用管理・雇用形態の見直しや柔軟な働き方の工夫などの措置を講じた場合に助成金を支給するものです。
主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 「職場定着支援計画」を作成して管轄の都道府県労働局の認定を受けたうえ、対象労働者に対して、①「柔軟な時間管理・休暇取得」、②「短時間労働者の勤務時間延長」、③「正規・無期転換」、④「職場支援員の配置」、⑤「職場復帰支援」、⑥「中高年障害者の雇用継続支援」、⑦「社内理解の促進」のいずれかの措置を実施すること
- 上記①~④の措置は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」第1条に基づき、厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病)にかかっている者、高次脳機能障害のある者のいずれかであり、「障害者総合支援法」に基づく就労継続支援A型事業所における利用者として雇用される者でない者に実施すること
- 上記⑤の措置は、身体障害者、精神障害者、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」第1条に基づき、厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病※)にかかっている者、高次脳機能障害のある者のいずれかであり、所定の医師の意見書において、障害に関連して1か月以上の療養のための休職が必要とされた者、かつ、障害者総合支援法に基づく就労継続支援A型事業所における利用者として雇用される者でない者に実施すること
- 上記⑥の措置は、①~④の対象労働者に該当する者であり、満45歳以上、かつ、申請事業主において雇用保険被保険者としての期間が10年以上である者に実施すること
- 上記⑦の措置は、申請事業主が雇用する雇用保険被保険者に実施すること
受給額
このコースでは、職場定着支援計画に基づいて実施した措置が継続している期間を「支給対象期間」(措置に応じて1年または2年を設定)とし、この支給対象期間を6か月単位で区分した期間を「支給対象期」として最大2回(「職場支援員の配置」は最大4回~6回)にわたって助成金が支給されます。
受給できる額は、実施した上記①から⑦の措置ごとに次のようになります。
①柔軟な時間管理・休暇取得
対象労働者1人あたり下記の表の額を受給できます。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
②短時間労働者の勤務時間延長
各区分に応じて、対象労働者1人あたり下記の表の額を受給できます。なお、各支給対象期に受給できる額は、その期間中に対象労働者に支払った賃金額が上限です。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
③正規・無期転換
各区分に応じて、対象労働者1人あたり下記の表の額を受給できます。なお、各支給対象期に受給できる額は、その期間中に対象労働者に支払った賃金額が上限です。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
④職場支援員の配置
職場支援員を雇用契約または業務委託契約により配置した場合
以下のいずれか低い額を受給できます。
- 対象労働者1人あたり、各区分に応じて下記の表に示す「支給月額」に、対象労働者が支給対象期中に実際に就労した月数(支給対象者の出勤割合が6割に満たない月を除く)を乗じた額
- 当該職場支援員に対して支給した賃金額(業務委託契約の場合は当該業務委託契約に要した費用)
ただし、対象労働者が長期休業した場合には受給できません。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
- 「短時間労働者」とは、週の所定労働時間が通常の労働者と比べて短く、かつ、20 時間以上30 時間未満である者を指します。
職場支援員を委嘱契約により配置した場合
次のいずれか低い額を受給できます。
- 委嘱による支援1回あたり1万円
- 当該委嘱契約に要した費用
ただし、上記の表に示す対象労働者1人あたりの月額に支給対象期間の月数を乗じた額が上限です。
⑤職場復帰支援
時間的配慮または職務開発等に関する措置を行った場合、対象労働者1人あたり、下記の表に示す月額に、対象労働者が支給対象期中に実際に就労した月数(対象労働者の出勤割合が6割に満たない月を除く)を乗じた額を受給できます。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
また、職務開発等に関する措置に伴って支給対象期において講習を行った場合、上記の額に加えて、当該講習に要した対象経費(詳細は支給要領などでご確認ください)に応じて下記の表の額を受給できます。なお、第1期中に要した対象経費を第2期に繰り越すことはできません。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
⑥中高年障害者の雇用継続支援
職務開発を行うこと、異なる職務につかせること、支援機器の導入等のいずれかを行った場合、対象労働者1人当たり下記の表の額を受給できます。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
また、上記のいずれかの措置に伴い、支給対象期において講習を行った場合、上記の額に加えて、当該講習に要した対象経費(詳細は支給要領などでご確認ください)に応じて下記の表の額を受給できます。なお、第1期中に要した対象経費を第2期に繰り越すことはできません。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
⑦社内理解の促進
支給対象期における講習に要した経費に応じて、下記の表の額を受給できます。なお、第1期中に要した対象経費を第2期に繰り越すことはできません。
- ( )内は中小企業に対する支給額および支給対象期間です。
申請方法
このコースの申請方法は次のとおりです。
①受給資格認定申請
措置を開始する日の前日から起算して1か月前までに、「職場定着支援計画書」を管轄の都道府県労働局に提出(ハローワークを経由して提出できる場合あり)し、受給資格の認定を受けます。
②支給申請
上記の認定を受けた後、各措置に定められた要件を満たした日の翌日以降に到来する支給申請期間中に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、受給資格の認定申請を行った都道府県労働局に支給の申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)をします。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、障害者雇用安定助成金(障害者職場定着支援コース)の支給要領でご確認ください。
障害者職場適応援助コース
「障害者職場定着支援コース」とは、職場適応に特に課題を抱える障害者に対して、職場適応援助者による支援を実施する場合に助成金を支給するものです。
主な受給要件や受給額、申請方法は次のとおりです。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構地域障害者職業センター(以下「地域センター」)が作成または承認する「支援計画」において必要と認められた「訪問型職場適応援助者による支援」または「企業在籍型職場適応援助者による支援」について、管轄の都道府県労働局の認定を受けたうえ、一定の「訪問型職場適応援助者」または「企業在籍型職場適応援助者」に行わせること
- 「訪問型職場適応援助者による支援」および「企業在籍型職場適応援助者による支援」の対象労働者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」第1条に基づき、厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病)にかかっている者、高次脳機能障害のある者、地域センターが作成する職業リハビリテーション計画において職場適応援助者による支援が必要であると認められる者のいずれかであり、かつ、当該対象労働者のための支援計画がある者であること
※対象労働者については、「訪問型職場適応援助者による支援」と「企業在籍型職場適応援助者による支援」とでさらに個別の要件があります。
受給額
受給できる額は、「訪問型職場適応援助者による支援」であるか「企業在籍型職場適応援助者による支援」であるのかによって次のように異なります。
「訪問型職場適応援助者による支援」の受給額
「訪問型職場適応援助者による支援」の場合は、受給資格認定を受けたあと、支援計画に基づいて支援を行った期間を対象として助成が行われ、申請事業所ごとに初めて実施する訪問型職場適応援助者による支援計画の開始日から3か月ごとに支給対象期を定められることになります。
受給できる額は、次の①と②の合計額になります。
① 支援計画に基づいて支援を行った日数に、次の日額単価を乗じて算出された額
- 1日の支援時間(移動時間を含む)の合計が4時間以上の日:16,000円(ただし、精神障害者の支援を行った場合は3時間以上の日:16,000円)
- 1日の支援時間(移動時間を含む)の合計が4時間未満の日:8,000円(ただし、精神障害者の支援を行った場合は3時間未満の日:8,000円)
② 訪問型職場適応援助者養成研修に関する受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の修了後6か月以内に、訪問型職場適応援助者が初めての支援を実施した場合に、その受講料の1/2の額
「企業在籍型職場適応援助者による支援」の受給額
「企業在籍型職場適応援助者による支援」の場合は、支援計画に基づいて支援が行われた期間を「支給対象期間」として助成が行われます。
受給できる額は、次の①と②の合計額になります。
① 対象労働者の類型と企業規模に応じた、下記の表の「支給額」に示す1人あたりの月額に支援計画に基づく支援が実施された月数を乗じた額
- 「短時間労働者」とは、週の所定労働時間が通常の労働者と比べて短く、かつ、20 時間以上30 時間未満である者を指します。
② 企業在籍型職場適応援助者養成研修に関する受講料を事業主がすべて負担し、かつ、養成研修の修了後6か月以内に初めての支援を実施した場合にその受講料の1/2の額
申請方法
申請方法は、「訪問型職場適応援助者による支援」の申請であるのか、「企業在籍型職場適応援助者による支援」の申請であるのかによって次のように異なります。
「訪問型職場適応援助者による支援」の申請
①受給資格認定申請
各年度において、初めて訪問型職場適応援助者による支援の対象となる支援を実施する予定がある場合は、支援計画書の策定を行う日の2週間前までに、「受給資格認定申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に受給資格の認定申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)を行い、当該支援計画書の策定を行う日までに認定を受けます。
②支給申請
上記の受給資格の認定を受けた後、支給対象期ごとにそれぞれの支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、受給資格認定申請を行った都道府県労働局に支給の申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)をします。
「企業在籍型職場適応援助者による支援」の申請
①受給資格認定申請
支援計画の開始日から3か月以内に、「受給資格認定申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県局へ受給資格の認定申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)を行って認定を受けます。
②支給申請
上記の受給資格の認定を受けた後、支給対象期間の末日の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、受給資格認定申請を行った都道府県労働局に支給の申請(ハローワークを経由して申請できる場合あり)をします。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、障害者雇用安定助成金(障害者職場適応援助コース)の支給要領でご確認ください。
人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)
「人材開発支援助成金」とは、職業訓練などにかかわる厚生労働省の助成金で、障害者を含めた雇用する労働者に対する職業訓練などの実施を対象にしています。
令和2年度現在、この助成金には7コースありますが、障害者に対する職業能力開発訓練事業の実施を対象とする「障害者職業能力開発コース」の主な受給要件や受給額、申請方法について説明します。
主な受給要件
主な受給要件は次のとおりです。
- 雇用保険適用事業所の事業主または事業主団体、専修学校や各種学校を設置する学校法人またはその他の法人、社会福祉法人、その他障害者の雇用の促進に係る事業を行う法人のいずれかであり、能力開発訓練施設等の設置・整備または更新を行ったあと、障害者職業能力開発訓練を5年以上継続して行う事業主等であること。
- あらかじめ、管轄の都道府県労働局の認定を受けたうえ、訓練対象障害者に対し、厚生労働大臣が定める基準に適合し、支給要領の要件(運営管理者を置き、訓練期間は6か月以上2年以内とするなど)を満たす「障害者職業能力開発訓練事業」を行うか、同「障害者職業能力開発訓練事業」を行うために「訓練の施設または設備の設置・整備または更新」を行うこと。
- 訓練対象障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害のある者、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行令」第1条に基づき、厚生労働大臣が定める特殊の疾病(難病)にかかっている者のいずれかであること。
受給額
このコースで受給できる額は「施設または設備の設置・整備または更新」に要した費用、および、「運営費」の一定割合です。
「施設または設備の設置・整備または更新」に要した費用についての受給額
障害者職業能力開発訓練事業を行う訓練科目ごとの施設または設備の設置・整備または更新に要した費用に3/4を乗じた額を受給できます。
ただし、初めて、施設または設備の設置・整備について受給する場合は5,000万円が上限、また、施設または設備の更新については1,000万円が上限(複数回支給を受ける場合も累積額はこの上限額まで)です。
「運営費」についての受給額
次の(1)または(2)および(3)により算出した額を受給できます。
(1)重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者および就職が特に困難であるとハローワーク所長が認める障害者(以下「重度障害者等」)を対象とする障害者職業能力開発訓練
- 1人あたりの運営費に4/5を乗じた額(上限額:月額17万円)に重度障害者等である訓練対象障害者のうち、支給対象期における訓練時間の8割以上を受講した者の人数を乗じた額
- 支給対象期における訓練時間の8割以上を受講しなかった者については、1人当たりの運営費に4/5を乗じた額(上限額:月額17万円)に、支給対象期における訓練時間数を分母に、当該者の訓練受講時間数を分子にして得た率を乗じた額
(2)(1)以外の障害者を対象とする障害者職業能力開発訓練
- 1人あたりの運営費に3/4を乗じた額(上限額:月額16万円)に重度障害者等以外の訓練対象障害者のうち、支給対象期における訓練時間の8割以上を受講した者の人数を乗じた額
- 支給対象期における訓練時間の8割以上を受講しなかった者については、1人当たりの運営費に3/4を乗じた額(上限額 月額16万円)に、支給対象期における訓練時間数を分母に、当該者の訓練受講時間数を分子にして得た率を乗じた額
(3)次のいずれにも該当する重度障害者等が就職した場合には、就職者1人当たり10万円を加算
- 訓練修了日または就職のための中退の日の翌日から起算して90日以内(以下「対象期間内」という)に雇用保険の被保険者(日雇労働被保険者は除く)として内定を受けた者もしくは雇用された者または雇用保険適用事業主となった者であること。ただし、労働者派遣事業(有期雇用派遣)により派遣される場合は、対象期間内に派遣先で就業(就業予定は除く)した者であること
- 障害者の日常生活および社会生活を総合的に支援するための法律における障害福祉サービス(就労継続支援事業A型等)の利用者として雇用される者でないこと
申請方法
申請方法は、「施設または設備の設置・整備または更新」の申請であるのか、「運営費」の申請であるのかによって次のように異なります。
「施設または設備の設置・整備または更新」に要した費用についての申請
①受給資格認定申請
訓練の施設または設備の設置・整備または更新に着手する前に、「受給資格認定申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に受給資格の認定申請(※)を行って認定を受けます。
認定申請期間(令和2年度)は、7月16日から9月15日まで、または、1月16日から3月15日までの間です。
②支給申請
訓練の施設または設備の設置・整備または更新を完了した日の翌日から2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に支給の申請をする。
「運営費」についての申請
①受給資格認定申請
職業訓練を開始する3か月前までに、「受給資格認定申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に受給資格の認定申請を行って認定を受ける。
②支給申請
四半期ごとの支給となるため、各支給対象期が経過するごとに、当該支給対象期の末日の翌日から起算して2か月以内に、「支給申請書」に必要な書類を添えて、管轄の都道府県労働局に支給の申請をする。
なお、重度障害者等の就職加算について支給を受ける場合の申請期限は、訓練終了日から起算して4か月以内です。
必要な書類については、管轄の都道府県労働局に問い合わせるか、人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)の支給要領でご確認ください。
障害者雇用納付金制度に基づく助成金
「障害者雇用納付金制度」とは、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づいて設けられた制度で、障害者の法定雇用率未達成企業から給付金を徴収し、これを主な財源として、法定雇用率達成企業への調整金や報奨金の支給、また、各種助成金の支給を行う仕組みのことを言います。
この業務は厚生労働省ではなく、厚生労働省所管の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が主体となって行っています。ここではこの「障害者雇用納付金制度」に基づく助成金の概要について説明します。
障害者介助等助成金
この助成金は、障害者を労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を行う場合にその費用の一部を助成するものです。
この助成金は、障害の種類または程度に応じて実施する措置により、さらに次の4種類の助成金に分かれます。それぞれの対象となる措置および障害者、また、主な受給要件や受給額について説明します。
障害者介助等助成金の種類および対象措置・対象障害者
助成金の名称 | 対象措置 | 対象障害者 |
---|---|---|
①職場介助者の配置または委嘱助成金 | ・事務的業務に従事する重度視覚障害者または重度四肢機能障害者の業務遂行のために必要な職場介助者の配置または委嘱 ・事務的業務以外の業務に従事する重度視覚障害者の業務遂行のために必要な職場介助者の委嘱 | ・2級以上の視覚障害者 ・2級以上の両上肢機能障害及び2級以上の両下肢機能障害を重複する者 ・3級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による上肢機能障害及び3 級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害を重複する者 |
②職場介助者の配置または委嘱の継続措置に係る助成金 | 上記①の継続措置 | |
③手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金 | 聴覚障害者の雇用管理に必要な手話通訳・ 要約筆記等担当者の委嘱 | ・6級以上の聴覚障害者 |
④障害者相談窓口担当者の配置助成金 | ・新たな障害者相談窓口担当者の増配置 ・障害者相談窓口担当者の研修受講 ・相談窓口業務等の専門機関への委託 | ・身体障害者 ・知的障害者 ・精神障害者 |
主な受給要件
- 対象障害者を労働者として継続して雇用している事業所の事業主であること
- 対象障害者の障害の種類または程度に応じて、上記①~④の措置を行うこと
- 上記①~④の措置を行わなければ、対象障害者の雇用の継続を図ることが困難であること
※助成金ごとに対象事業主の要件などさらに細かな要件があります。
受給額
この助成金で受給できる額は、①と③については、対象となる措置の実施に要した費用の3/4、②については2/3です。
④については、相談窓口業務等を外部の専門機関に委託したのであれば、その費用の2/3ですが、自社で相談窓口担当者を配置したのであれば、一定額が月ごとに支給されます。なお、助成金ごとに限度額があります。
重度障害者等通勤対策助成金
この助成金は、重度身体障害者、知的障害者、精神障害者、通勤が特に困難と認められる身体障害者(重度障害者等)を労働者として雇い入れるか継続して雇用する事業主、または、これらの重度障害者等を雇用している事業主を構成する事業主の団体が、これらの障害者の通勤を容易にするための措置を行う場合にその費用の一部を助成するものです。
この助成金は、重度障害者等の通勤を容易にするために実施する措置により、さらに次の8種類の助成金に分かれます。それぞれの対象となる措置および障害者、また、主な受給要件や受給額について説明します。
重度障害者等通勤対策助成金の種類および対象措置・対象障害者
助成金の名称 | 対象措置 | 対象障害者 |
---|---|---|
①重度障害者等用住宅の賃借助成金 | 重度障害者等を入居させるための特別な構造または設備を備えた住宅の賃借 | ・重度身体障害者 ・3級の体幹機能障害者 ・3級の視覚障害者 ・3級または4級の下肢障害者 ・3級または4級の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害者 ・5級の下肢障害、体幹機能障害、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害のいずれか2つ以上重複する者 ・知的障害者 ・精神障害者 |
②指導員の配置助成金 | 重度障害者等が5人以上入居する住宅に指導員を配置 | |
③住宅手当の支払助成金 | 重度障害者等自らが住宅を借り受け、賃料を支払っている場合に、その者に対して、重度障害者等以外の労働者が住宅を借り受けた場合に通常支払われる住居手当の限度額を超えて住宅手当を支給 | |
④通勤用バスの購入助成金 | 通勤する5人以上の重度障害者等のために通勤バスを購入 | |
⑤通勤用バス運転従事者の委嘱助成金 | 通勤する5人以上の重度障害者等のために通勤用バスの運転に従事する者を委嘱 | |
⑥通勤援助者の委嘱助成金 | 重度障害者等の通勤(公共交通機関を利用する通勤に限る。)を容易にするための指導、援助などを行う通勤援助者を委嘱 | |
⑦駐車場の賃借助成金 | 自ら運転する自動車により通勤することが必要な重度障害者等に使用させるための駐車場を賃借 | |
⑧通勤用自転車の購入助成金 | 自ら運転する自転車により通勤することが必要な重度障害者等のために通勤用自転車を購入 | ・2級以上の上肢障害者 ・2級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による上肢機能障害者 ・3級以上の体幹機能障害者 ・3級以上の心臓、じん臓もしくは呼吸器またはぼうこうもしくは直腸、小腸、ヒト免疫不全ウィルスによる免疫もしくは肝臓の機能の障害のある者 ・4級以上の下肢障害者 ・4級以上の乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害者 ・5級の下肢障害、体幹機能障害、乳幼児期以前の非進行性の脳病変による移動機能障害のいずれか2つ以上重複する者 |
主な受給要件
- 対象障害者を労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主、または、対象障害者を雇用している事業主が加入する事業主団体であること
- 対象障害者の障害の種類または程度に応じて、通勤を容易にするために上記①~⑧の措置を行うこと
- 上記①~⑧の措置を行わなければ、対象障害者の雇用の継続を図ることが困難であること
※助成金ごとに対象事業主の要件などさらに細かな要件があります。
受給額
この助成金で受給できる額は、対象となる措置の実施に要した費用の3/4です。なお、助成金ごとに限度額があります。
その他の助成金
高齢・障害・求職者雇用支援機構には上記のほかに次のような助成金もあります。
障害者作業施設設置等助成金
この助成金は、障害者を労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害者が作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設や、就労を容易にするために配慮されたトイレ、スロープ等の附帯施設、作業を容易にするために配慮された作業設備の設置または整備を行う場合に、その費用の一部を受給できるものです。
対象となる障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者で、助成率は2/3です。
障害者福祉施設設置等助成金
この助成金は、障害者を労働者として継続して雇用している事業主、または、その事業主が加入している事業主の団体が、障害者が利用できるよう配慮された保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置または整備を行う場合に、その費用の一部を受給できるものです。
対象となる障害者は、身体障害者、知的障害者、精神障害者で、助成率は1/3です。
重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
この助成金は、障害者を労働者として多数継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主が、障害者のために事業施設等の整備を行い、モデル性が認められる場合に、その費用の一部を受給できるものです。
対象となる障害者は、重度身体障害者、知的障害者、精神障害者で、助成率は2/3です。
申請方法
上記の助成金への申請は、事前に対象費用の支払い予定などについて認定を受けたあと、支給請求を行う流れになります。認定申請および支給請求ともに対応窓口は事業所の所在地を管轄する高齢・障害・求職者雇用支援機構の都道府県支部です。
都道府県支部の所在地や、各助成金の申請に必要な書類などについては下記のリンクからご確認ください。
東京都障害者安定雇用奨励金
都道府県などの地方自治体でも障害者雇用に関する助成金を支給しているところがありますが、例えば、東京都では2016年(平成28)度から「東京都障害者安定雇用奨励金」というものを創設しています。
最後に都道府県の障害者雇用支援の例としてこの奨励金について説明します。
雇入奨励金・転換奨励金の2種類
この奨励金は、次のとおり、「雇入奨励金」と「転換奨励金」に分けられ、対象とする新規の雇い入れや無期転換を実施した場合に支給されます。
区分 | 支給対象 | 対象労働者 |
---|---|---|
雇入奨励金 | 新たに障害者を正規雇用や無期雇用で、かつ、賃金その他一定の処遇で採用した場合 | 身体障害者、知的障害者、精神障害者、発達障害者または難治性疾患を有する者であって、厚生労働省の特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コースまたは発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)の対象になる者 |
転換奨励金 | 雇用している障害者を有期雇用から無期雇用に転換し、かつ、賃金その他一定の処遇改善を行った場合 |
主な受給要件
受給要件は雇入奨励金と転換奨励金とで共通しているものと個別のものがあります。それぞれの主な受給要件は次のとおりです。
雇入奨励金・転換奨励金に共通する受給要件
- 雇い入れた、あるいは、転換した労働者に適用される制度として、「昇給制度」、「賞与制度」、「通院有給休暇または病気有給休暇制度」、「テレワーク制度」、「フレックスタイム制度」、「通勤緩和制度」、「時間単位での年次有給休暇制度」、「永年勤続表彰制度」のうち、いずれか2つ以上の制度を設けていること
- 雇入れ後、あるいは、転換後6か月間の評価を行い、今後の育成方針を策定すること
- 国(厚生労働省)の「特定求職者雇用開発助成金」(「特定就職困難者コース」または「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」)について東京労働局長の支給決定通知を受けていること
雇入奨励金の受給要件
- 1週間の所定労働時間が20時間以上の無期雇用労働者として雇い入れていること
- 雇い入れた労働者に支払われる賃金が、雇い入れ後も継続して常に最低賃金を5%以上上回る額であること
転換奨励金の受給要件
- 有期雇用労働者を1週間の所定労働時間が20時間以上の無期雇用に転換していること
- 転換後の賃金が、転換前の賃金より5%以上昇給していること、または、最低賃金を10%以上上回っていること、および、転換後も継続して常に最低賃金を5%以上上回る額であること
- 転換の日の前日から、支給対象企業に雇用される期間が過去3年以内の有期契約労働者であって、転換日から6か月以上の期間継続して雇用されている労働者であること
受給額
雇入奨励金・転換奨励金の受給額は、企業規模や対象労働者が精神障害者であるのかどうかで異なりますが、対象労働者1人当たり下記の表の額になります。
申請方法
雇入奨励金、転換奨励金のいずれの奨励金に申請する場合にも、前半で説明した特定求職者雇用開発助成金(「特定就職困難者コース」・「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」)に申請していなければなりません。
このことを前提に、雇い入れ日または転換日から6か月が経過し、かつ、雇い入れまたは転換後6か月分の賃金を支給した日の翌日から起算して2か月以内に「支給申請書」に特定求職者雇用開発助成金の「支給申請書」の写しなど必要な書類を添えて、東京都(産業労働局雇用就業部就業推進課障害者雇用促進担当)に支給の申請をします。
申請に必要な書類などについては下記のリンクからご確認ください。
まとめ
従業員が45.5人以上の企業は法定雇用率に基づいた数の障害者を雇用する義務があります。また障害者との共存社会を実現するためにも、積極的に助成金を活用していきたいところです。
もし、障害者の採用を考えているけれど、助成金の申請書類を作成する時間がないということであれば、専門家である社労士に相談してみてはいかがでしょうか。ミツモアを使えば、すぐに助成金の申請代行を依頼できる社労士を見つけられます。この機会にぜひ使ってみませんか。
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