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通勤災害の認定基準とは? 請求書の記入方法もわかりやすく解説!

最終更新日: 2024年02月09日

通勤災害は、主に自宅と会社との間で発生するものであるため、社内や現場などで発生する業務災害と違って独特な認定基準があります。

また、実際に通勤災害が発生したことにより、該当従業員が労災保険から給付を受けるためには、業務災害と同様に複雑な請求書を提出する必要があります。

この記事では、担当者としても知っておくべき通勤災害の認定基準から請求書の記入方法まで詳しく解説しています。

通勤災害の定義

通勤災害の定義

通勤災害とは、労働者災害補償保険法(いわゆる「労災保険法」)において、業務災害とともに定義されているもので、これに該当すると、労働者本人や遺族に対して保険給付が行われることになっています。

まずは、何が通勤災害にあたるのか、また、通勤災害にかかわる各定義について解説していきます。

「通勤災害」とは

「通勤災害」とは、労災保険法第7条第1項では、「労働者の通勤による負傷、疾病、障害又は死亡」と定義されています。

なお、「業務災害」についても定められていますが、こちらは「負傷、疾病、障害又は死亡」の原因となったのが「通勤」ではなく「業務」であるだけの違いで、保険給付の内容もほぼ同様になっています。

また、何が「通勤」であるのかについても定義されており、具体的には次のような整理になっています。

「通勤」の法律による定義

労災保険法第7条第2項では、通勤災害のおける「通勤」とは、「労働者が就業に関し、次に掲げる移動を、合理的な経路及び方法により行うことをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」とされています。

(1)住居と就業の場所との間の往復

(2)就業の場所から他の就業の場所への移動

(3)住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動

それぞれについて具体的に確認していきます。

「就業に関し」とは

「通勤」という移動行為が会社に出社するため、あるいは、会社から帰宅するためのものである必要があるということです。

電車の遅延に対応するためなどいつもよりも早めに出社した時に事故に遭ったとしても就業に関する通勤とは認められますが、そもそもその日が出社予定であったこと、また、会社で仕事をしていたという事実も必要です。

「住居」とは

労働者が日常的に生活するための場所であり、就業のための拠点のことを言います。

このため、就業場所が遠いなどの理由から、家族と住む自宅とは別にアパートを借り、そこから通勤している場合にはそのアパートが「住居」になりますし、早出日や長時間残業になった翌日のみアパートから通勤している場合には、家族と住む自宅とアパートの両方が「住居」と認められる可能性があります。

「就業の場所」とは

業務を開始、または、終了する場所のことを言います。

一般的には、会社や支店、営業所、工場などがこの「就業の場所」にあたりますが、外回り専門の労働者で、直行直帰という就業形態をとっている場合には、自宅を出てから最初の用務先が業務開始の場所になり、最後の用務先が業務終了の場所になります。

そのほか、会社の命令によって業務を行った場所も「就業の場所」として認められます。

「就業の場所から他の就業の場所への移動」とは

複数の事業場で働く労働者などが、ある就業の場所での勤務を終えたあと、別の就業の場所へ移動することを言います。

「住居と就業の場所との間の往復に先行し、又は後続する住居間の移動」とは

労働者が転任に伴って、その往復距離(厚生労働省の通達では片道60キロメートル以上などとされています。)および一定のやむを得ない事情により、配偶者を住居に残して就業場所近くの住居に単身で移転した場合の、配偶者のいる住居と移転後の住居との間の移動のことを言います。

また、配偶者がない場合の子との別居、ならびに、配偶者および子がない場合の父母または親族(要介護状態にあり、かつ、当該労働者が介護していた父母又は親族に限る)との別居についても同様に取り扱うことになっています。

「合理的な経路及び方法」とは

就業に関する移動として一般的な経路および方法のことを言います。

「合理的な経路」については、通勤のために通常、利用すると考えられる経路であれば、複数あったとしてもそれらはいずれも「合理的な経路」になります。(必ずしも通勤手当の支給を受けるために申告している経路のみが該当するわけではないということです。)

このため、交通事情により迂回した経路、マイカー通勤者が車庫を経由する経路なども「合理的な経路」になりますが、特段の理由もなく、著しく遠回りになる経路をとる場合などは「合理的な経路」とは認められません。

「合理的な方法」については、電車、バスなどの公共交通機関や自動車、自転車による通勤である場合、また、徒歩による通勤である場合など、通常、用いられる方法であれば、それらを普段、労働者が利用しているかどうかにかかわらず、一般的に「合理的な方法」になります。

「業務の性質を有するもの」とは

上記で説明した要件をみたす、住居と就業の場所との間の往復などであっても、その行為が「業務の性質を有するもの」である場合には「通勤」にはなりません。

「業務の性質を有する」ということは、その往復の行為は事業主の支配下におかれているということであり、その場合の災害については、「業務災害」という整理になるからです。

具体的には、出張先に向かう途中や、緊急用務のために休日に呼び出しを受けて出社するような場合には、「通勤」にはあたらず、「業務災害」になります。

通勤経路の中断・逸脱について

中断・逸脱について

この「逸脱・中断」の考え方は、通勤災害として認定されるかどうかに大きくかかわっています。

これまでの説明のとおり、通勤災害とは、通勤時の事故のことですが、退社してから自宅に着くまでにはどこかに寄るケースも多く、そのあとで事故に遭った場合にはどうなるのかという問題があります。

これが、「逸脱・中断」の考え方であり、具体的には次のように整理されています。

「逸脱」・「中断」とは

通勤経路を「逸脱」し、または、移動を「中断」した場合には、原則として、その「逸脱」または「中断」の間およびその後の移動については、「通勤」とは認められないことになっています。

「逸脱」と「中断」を区別することにあまり意味はありませんが、「逸脱」とは、通勤の途中で、就業や通勤と関係ない目的で合理的な経路をそれることを言い、「中断」とは、通勤の経路上で通勤と関係ない行為を行うことを言います。

「逸脱」と「中断」の具体例としては、会社帰りに映画館に行ったり、飲食店で食事しながらお酒を飲んだりする場合などですが、もはやその時点で「通勤」ではなくなるということです。

「日常生活上必要な行為」とは

通勤経路を「逸脱」し、または、移動を「中断」した場合には、原則としては、「通勤」とは認められませんが、日常生活上必要な行為であって、次の事項をやむを得ない事由によって最小限度の範囲で行う場合には、「逸脱」または「中断」の間を除いて、合理的な経路に戻ったあとは再び「通勤」と認められます。

①日用品の購入その他これに準ずる行為
②職業訓練、学校教育法第1条に規定する学校において行われる教育その他これらに準ずる教育訓練であって職業能力の開発向上に資するものを受ける行為
③選挙権の行使その他これに準ずる行為
④病院または診療所において、診察または治療を受けることその他これに準ずる行為
⑤要介護状態にある配偶者、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹ならびに配偶者の父母の介護(継続的に、または、反復して行われるものに限る。)

一般的なケースしては、①として、通勤経路にあるスーパーマーケットで買い物をしてから帰る場合など、④として、病院で治療を受けてから帰る場合などが挙げられますが、これらの場合には、用事が終わって通勤経路に戻れば、「通勤」と認められます。

通勤災害として認められる例/認められない例

通勤災害として認められる/認められない例

ここでは、これまでに説明した労災保険法におけ通勤災害の考え方(「就業との関連性」など)別に、実際にどのような場合に通勤災害として認められているのか、あるいは、認められていないのかについてまとめています。

一見、複雑な整理になっているように思われるかもしれませんが、先に説明したとおり、帰宅中に映画館に寄りそのあと事故にあった場合は通勤災害としては認められないなど、一般原則で考えても理解できる部分はあります。

通勤災害として認められる例

通勤災害として認められる例としては次のようなものがあります。

➀「就業との関連性」が認められた事例

「昼休み中に昼食のために自宅に戻り、昼食を終えて会社に戻る途中での災害」

通勤は1日について1回しか認められないものではなく、午前中の業務を終えていったん自宅に戻り、その後、午後の業務に就くために再び自宅から会社に向かった場合についても、「就業との関連性」が認められて、通勤災害となる。

②「住居」に該当するとされた事例

「単身赴任者が週末に家族が住む自宅に帰り、月曜日の朝に自宅からマイカ-で出勤する途中での災害」

家族が住む自宅に、毎月一定の割合で週末に帰宅しているのであれば、家族が住む自宅も日常生活の用に供している就業のための拠点として「住居」に該当することになり、通勤災害となる。

③「就業の場所」に該当するとされた事例

「営業社員が1日の最後に訪問した得意先から直接、帰宅する途中での災害」

営業社員として直行直帰という就業形態をとる場合には、1日の最初に訪問した得意先が業務開始の場所となり、最後に訪問した得意先が業務終了の場所となる。よって、1日の最後に訪問した得意先は「就業の場所」に該当することになるため、通勤災害となる。

④「合理的な経路」と認められた事例

「マイカー通勤者が同一方向にある妻の勤務先を経由して、自らの勤務先へ向かう途中での災害」

妻の勤務先が同一方向で距離的にもあまり離れていないことから、通勤途上で妻を送っていくことは一般的に行われるものと考えられる。このため、自宅から妻の勤務先を経由して自らの勤務先へ向かう経路も「合理的な経路」として認められ、通勤災害となる。

⑤「逸脱」および「中断」に該当しないとされた事例

「退勤の途中に理髪店に立ち寄った後の災害」

労働者が定期的に理髪をすることは、一般的に日常の家庭生活に必要な行為と考えられるため、「逸脱」および「中断」の例外となる「日用品の購入その他これに準ずる行為」にあたり、通勤災害となる。

通勤災害として認められない例

通勤災害として認められない例としては次のようなものがあります。

①「就業との関連性」が認められなかった事例

「就業途中で子どもを幼稚園まで迎えに行き、歯科医院で治療を受けさせたあと、幼稚園に預け、再び会社に向かう途中での災害」

就業時間中に業務を一時中断して子供を歯科医院につれていく行為は、私的な理由によるものであり、「就業との関連性」が認められないため、通勤災害には該当しない。

②「住居」には該当しないとされた事例

「マイカー通勤者が婚約者(同僚)宅から出勤する途中での災害」

婚約者宅は、被災労働者の就業の拠点たる「住居」とは認められないので、通勤災害には該当しない。

③「就業の場所」に該当しないとされた事例

「会社の会議室で実施された研修会に出席したあと、会社付近の飲食店で行われた懇親会に出席して帰宅する途中での災害」

懇親会への出席は業務上、義務付けられているものではないため、「業務」には該当しない。このため、懇親会が開催された飲食店は、「就業の場所」には該当しない。

④「中断」および「逸脱」に該当するとされた事例

「退勤の途中に映画館に立ち寄った後の災害」

退勤の途中に就業または通勤とは関係のない目的で「合理的な経路」をそれ、通勤の経路上において通勤とは関係のない行為を行っているため、「中断・逸脱」に該当し、通勤災害には該当しない。

通勤災害に関する保険給付の種類と請求方法

通勤災害に関する保険給付の種類と請求方法

通勤災害に関する保険給付にはどのようなものがあるのか、また、対応する請求書の様式やその提出先について説明します。

あわせて、基本的には最初に請求することになる療養給付の請求書の記入方法についてもご紹介します。

保険給付の種類と請求書の様式・提出先

通勤災害に関する保険給付には、労災指定病院に行けば無料で治療を受けられるものから、被災労働者が死亡した場合には遺族に対して年金が支給されるようなものまであります。

これらの保険給付の請求は、被災労働者またはその遺族が該当する保険給付の請求書に必要事項を記載し、被災労働者の会社の所在地を管轄する労働基準監督署へ提出することで行います。労災指定病院等で療養や薬剤の支給を受けたときの「療養給付」を請求するときは、労災指定病院等を経由して労働基準監督署へ提出します。

ただし、各請求書には基本的に会社の証明が必要になり、また、保険給付の請求にあたっては法律においても会社の助力が求められていますので、会社が提出していることも多いと言えます。

保険給付の種類やそれぞれに該当する請求書の様式、提出先は、次の表のとおりです。(2019年4月1日現在)

保険給付の種類保険給付の内容請求書の様式提出先
療養給付
※労災病院や指定医療機関・薬局等で、治療や薬剤の支給を受けたとき
必要な療養の給付(治療や薬剤の支給)療養給付たる療養の給付請求書(様式第16号の3)労災病院や指定医療機関・薬局等
※上記を経由して、所轄労働基準監督署へ提出されます。
療養給付
※指定医療機関以外の医療機関や薬局等で、治療や薬剤の支給を受けたとき
必要な療養の費用の支給療養給付たる療養の費用請求書(様式第16号の5)所轄の労働基準監督署
休業給付休業により賃金を受け取れないときに賃金の一定割合を支給休業給付支給請求書(様式第16号の6)所轄の労働基準監督署
障害給付(年金または一時金)障害の程度に応じた額の年金または一時金を支給障害給付支給請求書(様式第16号の7)所轄の労働基準監督署
遺族給付(年金)遺族の数などに応じた額の年金を支給遺族年金支給請求書(様式第16号の8)所轄の労働基準監督署
遺族給付(一時金)遺族年金を受け取る者がいない時などに一時金を支給遺族一時金支給請求書(様式第16号の9)所轄の労働基準監督署
葬祭給付遺族などが葬祭を行うときに一定額を支給葬祭給付請求書(様式第16号の10)所轄の労働基準監督署
傷病年金
請求手続きは不要ですが、右の届・報告書などの提出が必要になります。
傷病の程度に応じた額の年金を支給傷病の状態等に関する届(様式第16号の2)
傷病の状態等に関する報告書(様式第16号の11)
所轄の労働基準監督署
介護給付介護の状況により一定額を支給介護補償給付・介護給付支給請求書(様式第16号の2の2)所轄の労働基準監督署

なお、各請求書の様式は、労働基準監督署や都道府県労働局で入手することもできますし、厚生労働省のホームページからダウンロードすることもできます。

様式第16号の3の記入方法

上記のように通勤災害に関する保険給付には様々なものがありますが、最も一般的とも言える、労災病院や指定医療機関・薬局などで治療や薬剤の支給を受けたときに申請する「療養給付たる療養の給付請求書」(様式第16号の3)の記載方法について説明します。

様式第16号の3(表面)

様式第16号の3は両面ですが、表面は以下のようになっています。赤枠部分が記入欄です。

各項目については次のように記入します。

⑤労働保険番号労働基準監督署から事業所(会社)ごとに割り振られた番号(14桁)ですので、会社で記入するか、けがをした本人が会社に確認して記入します。
⑧労働者の性別けがをした本人の性別を、男性は「1」、女性は「3」と番号で記入します。
⑨労働者の生年月日けがをした本人の生年月日を7桁で記入します。
元号については、例示のある番号で記入します。平成元年1月1日生まれであれば、「7010101」と記入します。
⑩負傷又は発病年月日けがをした年月日を生年月日と同様に7桁で記入します。
⑫労働者の氏名・年齢・住所・職種けがをした本人の氏名・年齢・住所・職種を記入します。
シメイ(カタカナ)欄については、姓と名の間は1文字あけ、濁点・半濁点は1文字として記入します。
⑰第三者行為災害このあと説明する、マイカー通勤時の事故のように第三者による災害である場合には、「該当する」に〇、自らの不注意による災害である場合には、「該当しない」に〇をします。
⑱健康保険日雇特例被保険者手帳の記号及び番号けがをした本人が、健康保険の日雇特例被保険者(主に土木・建設業などで、日々雇い入れられるような労働者のことを言います。)である場合に記入します。
⑳指定病院等の名称・所在地等療養を受けた指定病院等の名称・電話番号・所在地を記入します。
㉑傷病の部位及び状態傷病の部位及び状態を具体的に記入します。
(例えば、「右足関節骨折」など)
事業の名称、事業場の所在地、事業主の氏名等事業主の証明欄です。
事業主は「⑩負傷又は発病年月日」や従業員が裏面に記入した内容について事実と相違がないことを証明することになっています。
相違がなければ、会社の名称や所在地などを記入し(ゴム印でも可)、代表社印を押印します。
なお、下の方に、「労働者の所属事業場の名称・所在地」という欄がありますが、これは、災害にあった従業員が支店や工場などに所属していて、その支店や工場などの労働保険・社会保険関係の手続きをまとめて本社で行っている場合に、さらに支店名や工場名、所在地を記入するための欄です。該当しなければ、記入する必要はありません。
また、従業員が記入した裏面の(ロ)、(ハ)、(リ)について証明できない場合には、この欄の上部に記載のある「⑫の者については、⑩及び裏面の(ロ)、(ハ)、(ニ)、(ホ)、(ト)、(チ)、(リ)(通常の通勤の経路及び方法に限る。)及び(ヲ) に記載したとおりであることを証明します。」の(ロ)、(ハ)、(リ)のいずれかまたはすべて二重線などで消すこともできます。
請求人の住所・氏名等けがをした本人の住所・氏名など記入し、押印します。けがをした本人が自筆で名前を記入した場合は、押印は省略できます。
左端の事業場を管轄している労働基準監督署名の記入も必要です。

様式第16号の3(裏面)

裏面は以下のようになっています。赤枠部分が記入欄です。

各項目については次のように記入します。

イ 災害時の通勤の種別例示のある「イ」~「ホ」のうち、該当する災害時の通勤種別を記入します。
自宅からの出勤時であれば、「イ」、会社からの帰宅時であれば、「ロ」になります。
ロ 負傷又は発病の年月日及び時刻年月日については、表面にも記入しますが、ここでは時刻まで記入します。
ハ 災害発生の場所けがをした場所の住所などを記入します。
二 就業の場所勤務先の住所を記入します。
上記「イ」で、「ハ」(就業の場所から他の就業の場所への移動)に該当している場合には、終点となる就業の場所を記入します。
ホ 就業開始の予定年月日及び時刻就業の場所における就業開始の予定年月日及び時刻を記入します。
タイトル的に勘違いしやすいですが、けがが回復して職場に復帰する予定年月日及び時刻を記入するのではなく、災害にあった日に何もなければ仕事をしていた年月日及び時刻を記入します。
上記「イ」で、「イ」、「ハ」、「ニ」に該当している場合に記入します。
ヘ 住居を離れた年月日及び時刻通勤(出勤)のために住居を出発した年月日及び時刻を記入します。
上記「イ」で、「イ」、「ニ」、「ホ」に該当している場合に記入します。
ト 就業終了の年月日及び時刻仕事を終えた年月日及び時刻を記入します。
上記「イ」で、「ロ」、「ハ」、「ホ」に該当している場合に記入します。
チ 就業の場所を離れた年月日及び時刻仕事を終えて、実際に就業の場所を離れた年月日及び時刻を記入します。
上記「イ」で、「ロ」、「ハ」に該当している場合に記入します。
リ 災害時の通勤の種別に関する移動の通常の経路、方法及び所要時間等上記「イ」の災害時の通勤の種別について、その移動の経路、方法及び所要時間、また、災害発生の日に住居または就業の場所から災害発生場所に至った経路、方法、所要時間などを記入します。
通常の通勤経路や所要時間、住居または就業の場所から災害発生場所までの経路や所要時間などを地図で表すことが一般的です。(下記参照)
画像出典:厚生労働省
ヌ 災害の原因及び発生状況災害の原因及び発生状況について、様式に指示のあるとおり、できるだけ詳細に記入します。
ル 現認者の住所・氏名災害発生の事実を確認した者の住所・氏名・電話番号を記入します。
そのような者がいない場合には、災害発生の報告を受けた上司などの住所・氏名・電話番号を記入します。
ヲ 転任の事実の有無上記「イ」で、「ニ」、「ホ」(通勤に伴って、転任直前の自宅と現在の自宅との間に移動がある場合)に該当している場合に、転任の事実があれば、「有」に〇、なければ、「無」に〇をします。
ワ 転任直前の住居に係る住所上記「ヲ」で、「有」に〇をしている場合に、転任直前の住所を記入します。
派遣先事業主証明欄けがをしたのが派遣労働者であれば、この様式を提出するのは、派遣元事業主になります。
派遣先事業主は、記載内容について事実と相違がなければ、事業の名称、事業場の所在地、事業主の氏名などを記入して、代表社印を押印します。
なお、証明できない記載内容がある場合には、表面の事業主証明欄と同じように整理します。
表面の記入枠を訂正したときの訂正印欄表面の記載内容を訂正した場合には、ここに押印します。特に指示はありませんが、けがをした本人の印と代表者印を押しておくことが一般的です。

なお、「表面の記入枠を訂正したときの訂正印欄」の右に「社会保険労務士記載欄」がありますが、この欄は、様式第16号の3の提出を社会保険労務士に依頼した場合にその社会保険労務士が記入する欄ですので、けがをした本人や会社で記入する欄ではありません。

マイカー通勤時に事故があった場合の保険給付

マイカー通勤時に事故があった場合の保険給付

マイカー通勤時にほかの車に追突されてけがをしたような場合には、通勤災害として認められることもありますが、この場合、相手方がいるので保険給付の請求については少し複雑になります。

具体的には、けがなどをした従業員は、通勤災害としての労災保険だけでなく、相手方が加入している自賠責保険や任意保険も利用できることになります。

第三者がいる場合の保険給付の考え方

マイカー通勤時の事故が通勤災害と認められれば、けがなどをした従業員は、労災保険の給付を受けることができますが、相手方に損害賠償を請求できることもあり、相手方が加入している自賠責保険や任意保険も利用できることになります。

ただし、治療費や休業している間の補償など、労災保険と自賠責保険とで重複する部分については、どちらか一方からしか受け取ることはできません。同じ補償内容でも、どちらかの補償額の方が高い場合にはその差額を受け取ることはできます。

このように、労災保険の給付と自賠責保険の保険金については調整が入ることになるため、どちらかを先に受け取ることになります。

厚生労働省は過去に、給付事務の円滑化をはかるため、原則として自賠責保険の支払いを労災保険の給付に先行させるようにとの通達(昭41年12月16日付け基発1305号)を発出していたため、労働基準監督署でもそのように指導されることがありますが、どちらから先に支払いを受けるかは、あくまで被災した者自身が自由に選択することができます。

なお、自賠責保険に引き続き、任意保険からの保険金の支払いを受けるか、または、労災保険の給付を受けるかについても被災した者自身が自由に選択することができます。

自賠責保険からの保険金を先に受けた方がよい場合

次のような事情がある場合には、自賠責保険からの保険金を先に受けた方がよいと考えられます。

すぐにお金を受け取りたい場合自賠責保険には「仮渡金」という、治療費などの保険金が支払われる前に一定額を受け取ることができる制度があります。 支払い額は、被害者が死亡した場合には290万円、けがの場合は程度に応じて、5万円~40万円と定められています。
より多くのお金を受け取りたい場合(1)自賠責保険には労災保険にない「慰謝料」(4,200円×対象日数)というものを受け取ることができます。
より多くのお金を受け取りたい場合(2)休業期間中の補償については、自賠責保険では「休業損害」として、1日あたりほぼ100%(原則5,700円として上限1万9,000円)の支払いを受けることができますが、労災保険では、「休業給付」として、1日あたり、給付基礎日額(支払い基準となる1日あたりの額)の60%に加え、「休業特別支給金」として、給付基礎日額の20%の計80%の支払いとなります。
なお、労災保険と自賠責保険の両方から支払いを受けることはできないと説明しましたが、労災保険における給付基礎日額20%分の「休業特別支給金」については、自賠責保険から「休業損害」の支払いを受けていても例外的に受け取ることができます。

労災保険からの給付を先に受けた方がよい場合

次のような事情がある場合には、労災保険からの給付を先に受けた方がよいと考えられます。

労働者本人にも過失がある場合自賠責保険の場合は、被害者の過失が7割以上である場合、任意保険の場合は少しでも過失があれば、それを勘案されて支払い額が減ってしまいますが、労災保険では、被害者の過失割合はほぼ考慮されません。労働者本人にも過失がある場合には、状況にもよりますが、労災保険の方から先に給付を受けて、不足分を自賠責保険や任意保険で補うことが一般的です。
治療費の自己負担を抑えたい場合労災保険では労災指定病院に行けば、診療費を立て替えることなく受診することができます。
治療に専念したい場合任意保険を先に使うと、回復の状況(これ以上回復の見込みがないなど)によって、治療費が打ち切られる可能性がありますが、労災保険に治療費の打ち切りはありません。任意保険で打ち切り後に労災保険に切り替えることもできなくはありませんが、治療継続の必要性についての調査もあり、手続きが複雑です。

第三者行為災害届の提出

マイカー通勤時における災害として労災保険の給付を受けようとする場合には、「第三者行為災害届」というものを所轄労働基準監督署に提出しなければなりません。

これは、上記で説明した労災保険の給付と民事損害賠償との支給調整を国が適正に行うためのもので、提出しない場合には、労災保険の給付が一時差し止められることもありますので注意が必要です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。通勤災害や業務災害は頻繁に発生するものではありませんので、突然発生すると、災害に遭った従業員も会社の担当者もパニックになったりするものです。

労災保険に関する給付の請求は、本来、従業員自身が行うべきものではありますが、会社としては災害の事実を証明しなければいけませんし、従業員が手続きを理解していなければ会社としてはサポートすべきものです。

労災関係に詳しい担当者がいればいいですが、そうでなければ、社会保険労務士などの専門家に依頼した方が確実で効率的です。

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