ミツモアメディア

代表相続人からの遺産分配に贈与税はかかる?|代表相続人の選出と手続き

最終更新日: 2024年10月09日

遺産の相続について考えるにあたり、「代表相続人が遺産を分配する場合、贈与税はかかるの?」と疑問に思われる方もいらっしゃると思います。

まず被相続人が亡くなり相続人が財産を受け継ぐときは、「遺産分割」を行って財産を分けます。遺産分割によって各相続人が受け継ぐ財産は相続税の対象であり、贈与税はかかりません。

これは代表相続人が財産を分配するときも同様です。つまり代表相続人が被相続人の預貯金などの財産を一時的に預かり、それを他の相続人に分配するときは、基本的に贈与税は課されません。

ただし、法定相続分を超える遺産分割が行われた場合や遺産分割後に相続人の間で贈与が行われた場合は、贈与税が課される可能性があります。

この記事では、遺産分割において課される税金や代表相続人の選出ポイント、代表相続人が行う手続きについて詳しくご説明します。

「代表相続人」とは、相続人を代表して遺産の分配手続きを行う人

書類を書く

代表相続人とは、相続人が複数いる場合に、相続人全員を代表して遺産の分配やその他の必要な手続きを進める人を指します。

遺産分割に関する話し合いや相続税の申告などは相続人全員で行う手続きですが、円滑に進めるために、代表相続人を選出することが推奨されます。代表相続人は相続に関する重要な手続きを行うことになるので、責任感があり信頼できる人物を選ぶと良いでしょう。

ただし法律上、代表相続人を必ず選ばなければならないという決まりはありません。また例えば、金融資産に関する手続きはAさん、不動産に関する手続きはBさんなど、手続きごとに代表相続人を立てることも可能です。

遺産の分配方法を決める手続きを、「遺産分割」という

遺産分割とは、相続人全員が参加し、法律に基づいて相続財産の分け方を決定する重要な手続きです。遺産分割協議を経て、それぞれの相続人がどの財産を取得するのかが決められます。決定した内容は、遺産分割協議書に明記します。

遺産分割の結果に基づいて、被相続人の預貯金を代表相続人が一旦受け取り、各相続人に分配することもあります。また、不動産を売却して得られた現金を相続人同士で分配する「換価分割」という方法をとることも可能です。

遺産分割は相続人全員の合意が必要なため、相続財産の内容や相続人の意向によって複雑になることも珍しくありません。なるべくスムーズに進めるために、代表相続人を選出することがおすすめです。

遺産分割によって相続人が受け取る財産は「相続税」の対象

相続人が遺産分割協議によって受け取る財産は「相続税」の課税対象になると相続税法で定められています。

つまり通常、相続人が受け取る財産に対しては相続税がかかり、贈与税は課されません。

各相続人が支払う相続税の金額は、遺産分割において決定した各相続人の相続財産の取り分に基づいて算出されます。なお相続税は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額を超えた分に課税されます。

相続税の算出方法は非常に複雑なので、税理士に相談することがおすすめです。

代表相続人が遺産を分配しても基本的に贈与税はかからない

TAX

贈与税とは、財産を無償で受け取った際にかかる税金です。贈与税は、財産を受け取った人が支払う義務があります。

しかし、代表相続人が被相続人の預貯金を解約し、払い戻しを受けて他の相続人に分配する場合、基本的に贈与税はかかりません。遺産分割協議に従って代表相続人が分配を行うのであれば、贈与ではなく、あくまで相続手続きの一環とみなされるからです。

被相続人の不動産を売却して現金化し、その現金を各相続人に分配する不動産の換価分割の場合も同様です。

ただし預貯金の払い戻しや不動産の換価分割による代表相続人からの分配が、遺産分割であると立証されなければ、贈与とみなされ贈与税が課されるリスクもあります。

そのため代表相続人からの分配が遺産分割であると認められるように、遺産分割協議書を作成して代表相続人の立場を明記しておくことが重要です。

遺産分割で贈与税がかかるケース

ビルの積み木

前述のとおり、遺産分割によって各相続人が得た財産には原則として相続税が適用されます。しかし場合によっては、贈与税が課されることもあります。

以下のようなケースでは、贈与とみなされる可能性があるため注意が必要です。

  • 法定相続分を超える遺産分割が行われた場合
  • 遺産分割後に相続人の間で贈与が行われた場合

それぞれどのようなケースなのか詳しくご説明します。想定外に贈与税を課されることがないように、ぜひチェックしてください。

法定相続分を超える遺産分割が行われた

財産を相続する際は、法律で各相続人の取り分の割合が定められています。この割合が「法定相続分」です

配偶者と子供がいる場合は、財産の2分の1が配偶者、残りの2分の1を子供で均等に分割するなどと決められています。

遺産分割協議の結果、特定の相続人が法定相続分を超えて財産を受け取ったとします。この場合でも通常は相続税が課されますが、意図的に法定相続分以上の財産を他の相続人に譲渡した場合、贈与とみなされることがあります。

例えば、相続人の一人が自身の相続分を大幅に超える財産を他の相続人に渡す場合、この譲渡が贈与とされ、贈与税の対象となる可能性があります。

このようなケースでは税務上のトラブルを避けるために、専門家の助言を得る方が良いでしょう。

遺産分割後に相続人の間で贈与が行われた

遺産分割が有効に成立した後、一人の相続人が自分の取得した財産を他の相続人に渡す場合、贈与税が課されることがあります

たとえ相続税の申告期限前であっても、遺産分割後の財産の譲渡は贈与とみなされ、贈与税が発生する可能性があります。

ただし贈与税の対象となるか否かの判断は難しいため、専門家に相談することがおすすめです。

ミツモア」であれば、相続に詳しい税理士を見つけることができます。いくつかの簡単な質問に答えるだけであなたにあった税理士がピックアップされるので、ぜひ利用してみてください。

相続税申告の税理士費用を無料で見積もる

代表相続人を選ぶポイント

ポイント

代表相続人とは、相続人を代表して遺産の分配手続きを行う人であるとご説明しました。では、代表相続人はどのように選出するのがベストなのでしょうか。

遺産分割の手続きを円滑に進めるためには、下記のポイントに基づいて選ぶと良いでしょう。

  • 責任感があり信頼できること
  • 手続きを行う時間があること
  • 相続放棄をしていないこと

相続の複雑な手続きをトラブルなく進められるように、適切な人物を選出することが重要です。

責任感があり信頼できる

代表相続人には、まず責任感と信頼が求められます。

代表相続人が行う手続きには時間と労力を要するため、最後まで遂行する責任感が必要です。

また、代表相続人は他の相続人に分配する財産を一時的に預かることもあるため、信頼できる人物であることも重要です。

トラブルを未然に防ぎ、相続手続きをスムーズに完結できるように、責任感があり信頼できる人物が代表相続人に適しています。

手続きを行う時間がある

各手続きを行う時間があるか否かも代表相続人の選出にあたり考慮したいポイントです。

代表相続人は預貯金の払い戻しを行うために、金融機関へ出向かなければなりません。金融機関は基本的に平日の日中しか営業していないため、平日の日中に時間を確保できる人が望ましいです。

また税理士への相談にも時間を要するため、時間の融通が利き、余裕がある人が適しているでしょう。

一人で担うのが難しい場合は、手続きごとに代表相続人を定めることも可能です。

相続放棄をしていない

特定の相続人が、財産の相続を放棄することを「相続放棄」といいます。相続放棄をした人はそもそも相続人としての権利がないため、代表相続人にはなれません

相続放棄をした人は、相続人としての手続きに一切関与しないことが法律で定められています。そのため他の相続人を代表して手続きを行うことは不可能です。

代表相続人は、相続放棄をしていない相続人の中から選ぶ必要があります。

代表相続人が行う手続きの流れ

リスト

代表相続人が行う遺産分割や相続税申告の手続きの具体的な流れは、以下のとおりです。

慣れない手続きが多いと思いますが、なるべくスムーズに進められるように、事前に流れを理解しておくと良いでしょう。

  • 預貯金を払い戻す
  • 固定資産税納税通知書を受け取る
  • 相続税を申告する
  • 不動産の相続登記を行う

各手続きの詳しい流れを解説します。

預貯金を払い戻す

代表相続人が行う手続きの一つは、被相続人の預貯金の払い戻しです。

被相続人の預貯金の払い戻しは、原則として相続人全員で行う必要があります。しかし相続人全員が金融機関の窓口に出向くのは大変です。

そのため代表相続人が必要書類を集めて金融機関に提出し、払い戻し手続きを行うことが一般的です。代表相続人が受け取った預貯金は一旦代表相続人の口座に入金され、その後各相続人へ分配します。

預貯金の払い戻しや分配が円滑に進むように、遺産分割協議書や必要書類を事前に準備しておくことが大切です。

固定資産税納税通知書を受け取る

固定資産税は毎年1月1日時点に不動産を所有している人が納税しなければならず、納税義務のある被相続人が亡くなると、その義務は相続人に受け継がれます

被相続人が不動産を所有していた場合、固定資産税の納税通知書を代表相続人が受け取れるように手続きを行いましょう。

市区町村役場で代表者指定届を提出して代表相続人を定めると、代表相続人に固定資産税の納税通知書が届きます。

ただし、代表相続人のみが固定資産税を負担するわけではありません。不動産の所有者や固定資産税の負担分は、遺産分割協議で決定します。

相続税を申告する

相続税は、原則として相続人全員の連名で申告する必要があります。しかし手続きが複雑なので、税理士のサポートのもと代表相続人が手続きを進めた方がスムーズです。

相続税申告は、必要書類を取りまとめ、税務署へ相続税申告書などの書類を提出し、納税するという流れで行います。

相続税の申告と納付の期限は、原則として相続人が相続開始を知った日の翌日から10か月以内です。期限内に申告と納付を行わなければ、無申告加算税や延滞税がかかる、相続税に関する特例が適用できないなどのリスクがあるので注意してください。

税理士のサポートを受ければ申告漏れやミスを防ぐことができ、適切に相続税を納めることができます。

不動産の相続登記を行う

被相続人が所有していた不動産の相続登記も行わなければなりません

相続登記とは不動産の名義を変更する手続きのことです。相続登記をすることで、不動産の名義を被相続人から相続人へ変更することができます。

相続登記は、令和6年4月1日から義務化されました。不動産を相続した場合、所有権の取得を知った日から3年以内、遺産分割が成立した場合は遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記を行わなければなりません。

正当な理由なく上記に違反した場合は、10万円以下の過料の適用対象となります。

また登記を行わないまま放置すると、将来の売却や相続の際にトラブルになる可能性があるため、早めに手続きを進めることが推奨されます。

なお、不動産を売却し、現金化して相続人同士で分配する「換価分割」を行う際にも、一度相続登記が必要です。

遺産の分配は相続税に強い税理士に相談しよう

被相続人が亡くなり相続人が遺産を受け継ぐときは、「遺産分割」を行います。遺産分割によって各相続人が受け継ぐ遺産には相続税が課されます。

代表相続人が被相続人の預貯金などの遺産を一時的に預かり、それを他の相続人に分配することは相続手続きの一部です。そのため、遺産の分配において贈与税はかかりません。

ただし遺産分割において贈与とみなされるケースもあり、その判断や税金額の算出は複雑です。

遺産分割をスムーズに進めるためには、責任感があり信頼できる人を代表相続人に選出することがポイントです。さらに代表相続人が税理士に相談することで、税金額の算出や納付を間違いなく行うことができます。

「税理士に相談したいけれどもどのように見つけたら良いかわからない…」「税理士に相談すると費用が高そう…」とお悩みのときは、「ミツモア」のご利用がおすすめです。簡単な質問に答えるだけで、あなたに合う税理士から無料で見積もりを取得できるので、ぜひ利用してみてください。

相続税申告の税理士費用を無料で見積もる