「親から家を相続することになったけれども、名義は変更しないといけないのだろうか」
「家を買うときの名義はどのように変更すればいいの?」
家を取得することになったとき、名義の変更はどのように行うのか、費用はかかるのか、自分で手続きができるのかなどと疑問を抱くと思います。
家の名義変更は「所有権移転登記」といい、次の4つのケースの際に必要となります。
- 遺産を相続する
- 生前贈与を行う
- 不動産を売買する
- 財産分与を行う
名義変更を行わないと、家の権利を第三者に主張できなくなるリスクがあります。また、相続の場合は名義変更が義務付けられており、期限内に行わなければ10万円以下の過料が科される可能性もあります。
この記事では家の名義変更の手続きの流れ、かかる費用と税金、必要な書類について、4つのケースごとに解説します。
ご自身でも手続きができるように詳しく説明しますが、スムーズかつ確実に進めたい方はプロに相談することもおすすめです。「ミツモア」であれば税理士から見積もりをもらうことができるので、専門家に任せたい方はぜひ利用してみてください。
家の名義変更とは
家の名義変更は、正式には「所有権移転登記」といいます。所有権移転登記は、不動産の所有権が変わったときに、その変更を公的な手続きによって記録する手続きです。
所有権移転登記を行うことで、不動産の所有者や権利関係が明確化され、法的保護が受けられます。また、不動産の取引においては、所有権移転登記が行われなければ取引が成立しない場合もあります。
つまり、家の名義変更をすることで、「この家は自分のものだ」と第三者に主張することができるのです。
家の名義変更が必要な場合
家の名義変更、すなわち所有権移転登記が必要となるのは、以下の4つのケースです。
それぞれどのような場合なのか、詳細をご説明します。
遺産を相続する
家の名義変更が必要なのは、まず遺産を相続するケースです。親や配偶者が亡くなり、被相続人が所有していた家を相続する場合を指します。
相続にあたっての名義変更を「相続登記」と呼びます。相続登記は、令和6年4月1日に義務化されました。家の所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しなければなりません。正当な理由なく期限内に登記しなかった場合、10万円以下の過料が科せられる対象となるので注意してください。
生前贈与を行う
次のケースは、「生前贈与」です。生前贈与とは、所有者が生きているうちに家などの財産を無償で譲ることを指します。
生前贈与における登記は「贈与登記」といいます。贈与登記は相続登記と違い、義務ではありません。
しかしながら、登記を行わないと、万が一第三者に二重で譲渡された場合に自分の所有権を
対抗できなかったり、後々相続が発生したときに「この家は贈与されたものだ」と認められなかったりするリスクがあります。
不動産を売買する
家やマンションなど、不動産を売ったり買ったりする際にも家の名義変更が必要です。
名義を変更することで新しい所有者が法的に認められ、買主は第三者に家の所有権を主張することができます。
名義変更を行わない場合、旧所有者である売主が依然として法的な所有者とみなされ、税金や義務が旧所有者にかかる可能性があります。
買主と売主の双方が安心して取り引きできるように、不動産を売買するときには名義変更を行いましょう。
財産分与を行う
財産分与とは、夫婦が協力して築いた財産を、離婚の際にそれぞれの貢献度に応じて分配することを指します。
婚姻中に購入した家は、共同名義、単独名義のいずれであっても、夫婦の共有財産として財産分与の対象となります。
ただし住宅ローンが残っており、住宅ローンの残りが家の評価額より大きい場合は、基本的に財産分与の対象となりません。この場合、ローンの名義人が返済を続けます。
遺産相続による名義変更の方法
家の名義変更が必要なケースを4つ挙げましたが、ここからはそれぞれの場合の名義変更の方法をご説明します。まずは家を相続して相続登記を行う方法を、以下の3つの項目にわけて解説します。
手続きの流れ
手続きの流れは、主に次のとおりです。
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 登録免許税を納付する
- 登記申請書を法務局に提出する
- 登記完了証などを受領する
まず、戸籍謄本や住民票など手続きに必要な書類を集めましょう。必要な書類の詳細は後ほど詳しく記載します。
次に、登記の目的や原因、相続人を記した「登記申請書」を作成します。そして登録免許税を納付し、登記申請書を法務局へ提出します。法務局から「登記完了証」が交付されたら相続登記は完了です。
かかる費用と税金:書類の費用・登録免許税・相続税
相続登記には、以下の費用や税金が発生します。
- 必要書類にかかわる費用
- 登録免許税
- 司法書士への報酬
- (相続税)
必要書類にかかわる費用とは、戸籍謄本や住民票の取得費用や、登記申請書の郵送送費用などです。例えば、戸籍謄本(除籍抄本)は1通あたり750円、住民票(除票)は300円かかる自治体がほとんどです。
登録免許税とは、不動産を登記するときに課される国税です。登録免許税の金額は、固定資産税評価額に税率をかけて決まります。相続の場合は「固定資産税評価額×0.4%」です。
相続登記を司法書士に依頼した場合も、報酬が別途かかります。相場は5万円〜15万円で、相続の金額や手続きを代行してもらう範囲によって変動します。
相続登記に要する税金ではありませんが、相続には相続税もかかります。相続税は、家などを相続で取得したときに課される国税です。家を含む全ての財産の金額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えると課税されます。
相続税の計算は非常に複雑です。スムーズに、かつ確実に算出できるように税理士に任せることを検討しましょう。相続税に詳しい税理士を探したい方は、「ミツモア」を利用してみてください。
必要な書類
相続登記に必要な書類は、相続が遺言による場合か、法定相続の場合か、遺産分割協議の場合かによって異なりますが、3つのケースで共通して必要なのは以下の4つです。
- 戸籍謄本(除籍抄本):本籍地の市町村役場で取得する
- 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
- 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
- 登記申請書:法務局のホームページからダウンロードする
これに加え、遺言の場合は遺言書、法定相続のときは相続関係説明図、遺産分割協議なら相続関係説明図のほかに遺産分割協議書・印鑑証明書も必要となります。
生前贈与による名義変更の方法
生前贈与、すなわち所有者が生きているうちに家などの財産を無償で譲り受けたときの名義変更である「贈与登記」について、以下3点をご説明します。
手続きの流れ
手続きの流れは、主に次のとおりです。
- 贈与契約を締結する
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 登録免許税を納付する
- 登記申請書を法務局に提出する
- 登記完了証などを受領する
始めに贈与契約書を作成します。贈与契約は口頭でも成立しますが、登記を申請する際に贈与契約書が必要となるので書面で作成しましょう。
その後の必要書類の収集から登記完了証などの受領までの流れは相続登記と同様で、登記の目的や原因、相続人を記した「登記申請書」を作成する、登録免許税を納付し、登記申請書を法務局へ提出する、法務局から「登記完了証」が交付されるの順です。
かかる費用と税金:書類の費用・登録免許税・贈与税・不動産取得税
贈与登記には、以下の費用や税金が発生します。
- 必要書類にかかわる費用
- 登録免許税
- (贈与税)
- (不動産取得税)
必要書類にかかわる費用とは、相続登記と同様に書類の取り寄せ費用や郵送費用を指します。
登録免許税は相続よりも税率が高く、贈与の際は「固定資産税評価額×2%」です。
贈与登記にかかる税金と別に、贈与のときは贈与税も発生します。贈与税は、基礎控除額110万円を超える額に課税されます。税率は基礎控除後の課税価格に応じて、10%〜55%の間で変動します。併せて、不動産取得税も課されます。
贈与税の算出も手間がかかるので、不安な方は「ミツモア」を利用して生前贈与に詳しい税理士に相談してみてください。
必要な書類
生前贈与では、贈与する人、贈与される人、対象となる家に関する次の書類が必要となります。
まず、贈与する人にかかわる書類はこちらです。
- 印鑑証明書:発行から3ヶ月以内のもの
贈与される人が準備する書類も1点です。
- 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
家に関する書類は3点です。
- 贈与契約書:原本が必要
- 登記済または登記識別情報:贈与者が家を取得したときに交付された原本
- 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
不動産売買による名義変更の方法
家を売買して名義を変更するケースに関して、以下の3点をご説明します。
手続きの流れ
手続きは以下の順番で行います。
- 売買契約を締結する
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 登録免許税を納付する
- 登記申請書を法務局に提出する
売買契約を締結し、売買契約書を作成します。一般的に仲介や代理で入る不動産会社が作成してくれます。
その後の流れは相続登記や贈与登記と同じく、登記の目的や原因を記した「登記申請書」を作成する、登録免許税を納付し、登記申請書を法務局へ提出する、法務局から「登記完了証」が交付されるの順番となります。
かかる費用と税金:書類の費用・登録免許税・所得税・不動産取得税
不動産売買の場合には、次の費用や税金を払わなければなりません。
- 必要書類にかかわる費用
- 登録免許税
- (所得税)
- (不動産取得税)
必要書類にかかわる費用は、書類の取り寄せ費用や郵送費用です。
登録免許税は贈与と同じで「固定資産税評価額×2%」です。ただし家の売買に限り、「床面積が50㎡以上である」、「新耐震基準適合住宅である」などのいくつかの条件を満たすと、「固定資産税評価額×0.3%」に軽減されます。
そして家を売って所得を得た人に対しては、所得税が課されます。家の所得税は所有期間で税率が異なり、家の取得日の翌日から譲渡した年の1月1日までの所有期間が5年以下であれば30%、5年超であれば15%です。さまざまな控除や軽減税率の制度もあるので、詳しく知りたい方は税理士に相談してみてください。
また、不動産売買のときも不動産取得税が課されます。
必要な書類
家の売買で必要な書類を、売主、買主、対象の家の3つに分類して記載します。
売主に関する書類は次のとおりです。
- 印鑑証明書:発行から3ヶ月以内のもの
買主の関係書類はこちらです。
- 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
家にかかわる書類は3点用意しましょう。
- 売買契約書
- 登記済または登記識別情報:原本が必要
- 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
財産分与による名義変更の方法
財産分与、つまり離婚して家を取得することになり名義を変える場合の以下3点を解説します。
- 手続きの流れ
- かかる費用と税金:書類の費用・登録免許税・所得税・不動産取得税
- 必要な書類
手続きの流れ
主な手続きは以下のとおりです。
- 離婚届を提出する
- 必要書類を集める
- 登記申請書を作成する
- 登録免許税を納付する
- 登記申請書を法務局に提出する
始めに離婚届を提出します。その後は他のケースと同様で、登記の目的や原因、相続人を記した「登記申請書」を作成する、登録免許税を納付し、登記申請書を法務局へ提出する、法務局から「登記完了証」が交付されるという流れで進みます。
かかる費用と税金:書類の費用・登録免許税・所得税・不動産取得税
財産分与の場合には、次の費用や税金がかかります。
- 必要書類にかかわる費用
- 登録免許税
- (所得税)
- (不動産取得税)
必要書類にかかわる費用は、書類の取り寄せ費用や郵送費用です。
登録免許税は「固定資産税評価額×2%」です。
そして、財産分与は不動産売買と同じようにみなされるため、所得税と不動産取得税も課されます。財産分与においては、譲渡益が課税対象となります。譲渡益は、財産分与した家の時価と家の購入時の費用の差額です。
財産分与による家の譲渡のときも、不動産売買と同じく控除や軽減税率の制度があるので、詳しく知りたい方は税理士に相談してみましょう。
必要な書類
財産分与での家の名義変更に必要な書類を、財産分与する人、財産分与を受ける人、対象の家、その他に分けて記載します。
財産分与する人の書類はこちらが必要です。
- 印鑑証明書:発行から3ヶ月以内のもの
財産分与を受ける人は次の書類を用意してください。
- 住民票(除票):居住地の市町村役場で取得する
対象の家にかかわる書類は以下のとおりです。
- 登記済または登記識別情報:原本が必要
- 固定資産評価証明書:不動産所在地の市(都)税事務所か市町村役場で取得する
その他、財産分与のときはこちらの書類も準備しましょう。
- 財産分与協議書
- 離婚の記載のある戸籍謄本
家の名義変更でよくある質問
家の名義変更が必要になる場合と、それぞれのケースの手続きの流れ、かかる費用と税金、必要書類を解説しましたが、次のような疑問が浮かぶ方もいらっしゃるのではないでしょうか。
疑問を解消したうえで名義変更を進められるように、この2つの質問について回答します。
家の名義変更は自分でできる?
家の名義変更、すなわち所有権移転登記は自分で行うことも可能です。自分で行えば、専門家への報酬を払う費用を浮かせることができます。
しかしながら、ここまでご説明したとおり、家の名義変更には必要書類の収集から法務局への申請まで手間と時間がかかります。そのため、司法書士に依頼することが一般的です。
また、相続税、贈与税などの計算も非常に複雑なため、税金に関しては税理士に相談することをおすすめします。家の名義変更は重要な手続きなので、専門家を頼ってスムーズ、かつ確実に進める方が安心です。
家の名義変更を行わないリスクは?
現状、相続登記以外は義務化されていません。そのため、贈与や売買の際は家の名義変更は必須ではありません。
ただし家の名義を変更しないと、家の権利を第三者に主張できなくなるリスクがあります。家を売却できなかったり、万が一、二重で他の人に売られたときに「自分の家だ」と対抗できないのです。
また、相続の場合は名義変更が義務化されたので、期限内に行わなければ10万円以下の過料が科される可能性もあります。名義変更の期限は、「所有権の取得を知った日から3年以内」です。
以上を踏まえて、相続や贈与、売買、財産分与で家を取得する際は、名義変更を行う方が良いです。
家の名義変更に関する税金は税理士に相談しよう
家の名義変更は「所有権移転登記」といい、遺産を相続する、生前贈与を行う、不動産を売買する、財産分与を行うの4つのケースで家を取得する際に必要となります。
相続のとき以外は必須ではありませんが、家の名義変更をしない=自分の家だと証明できないということになりリスクが生じるので、きちんと手続きを行うことをおすすめします。
また、相続や贈与の際にはそれぞれ相続税や贈与税の支払い手続きも行わなければなりません。税金に関することは、プロに任せる方が安心です。相続税や贈与税に詳しい税理士を見つけたい方は、「ミツモア」で調べてみてください。