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遺産相続手続きのスケジュール!スムーズな進め方と相談先も紹介

最終更新日: 2024年06月28日

ご家族が亡くなったら、遺された財産の相続手続きを行なわなければなりません。

手続きの中には期限が決まっているものも多くあります。不備なく遺産相続を完了させるには、いつまでにどんな手続きが必要なのかを最初に把握しておくことが大切です。

遺産相続手続き全体のスケジュール感や、スムーズに進めるためのポイント、相続について相談できる専門家について解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

遺産相続手続きの大まかなスケジュール

被相続人が亡くなった後の遺産相続手続きは、大まかに以下のような流れで進行します。

期日 手続き内容
死後7日以内
  • 死亡届・火葬許可申請の提出
死後14日以内
  • 世帯主の変更届の提出
  • 年金の受給停止手続き
  • 保険の資格喪失届の提出
なるべく早め
  • 公共料金等の名義変更・解約
  • 遺言書の有無の確認・検認手続き
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割協議書の作成
死後3カ月以内
  • 相続放棄・限定承認の検討
死後4カ月以内
  • 所得税の準確定申告
死後10カ月以内
  • 相続財産の名義変更
  • 相続税申告
死後1年以内
  • 遺留分侵害額請求

相続に関する手続きは、遺言状の有無・他の相続人との関係・相続する遺産の内容・遺産額によって異なります。

上記の流れはあくまでも一般的なものであり、全ての人に当てはまるものではありません。

手続きの要・不要については、ご自身の状況に合わせて判断する必要があります。

【7~14日以内】遺産相続に必要な手続き

遺産相続手続きそのものではありませんが、被相続人が亡くなった直後に行なう手続きを紹介します。

  • 死亡届・火葬許可申請書の提出
  • 世帯主の変更届の提出
  • 年金の受給停止手続き
  • 国民健康保険の資格喪失届の提出
  • 公共料金等の名義変更・解約

死亡届・火葬許可申請の提出(7日以内)

被相続人が亡くなったら、死亡診断書を受け取って、死亡届・火葬許可申請書とともに市区町村の役所へ提出します。

死亡診断書は、死亡の事実を医学的・法律的に証明する書類です。

治療中の病気で亡くなった場合、主治医が作成します。死因が突然死や事故等の場合は、警察による検死を経て死体検案書が交付されます。

死亡診断書はその後の手続きでも必要になることがあるので、提出前にコピーを取っておきましょう。

なお、死亡届・火葬許可申請書の提出は葬儀会社が代行してくれることが多いです。

世帯主の変更届の提出(14日以内)

世帯主が亡くなり、残った世帯員が2人以上いるときは、「世帯主変更届」を役所に提出します。

残された世帯員が1人のみ、または親権者1人と子どもなど、次の世帯主になり得る人が1人しかいない場合、この手続きは必要ありません。

年金の受給停止手続き(10~14日以内)

年金を受給していた被相続人が亡くなった場合は、年金相談センターあるいは年金事務所に「年金受給権者死亡届」を提出し、受給停止の手続きをする必要があります。

国民年金は「14日以内」、厚生年金は「10日以内」です。

保険の資格喪失届の提出(14日以内)

国民健康保険や後期高齢者医療保険については、亡くなった日から「14日以内」に資格喪失手続きを行います。

このほか被相続人が介護保険被保険者となっていた場合は、資格喪失の届出と、介護保険証をはじめとする各種証書の返却も必要です。

介護保険料の精算を依頼する「介護保険料・介護給付費等精算連絡票及び請求書」も用意して、市区町村役場で手続きしましょう。

公共料金の手続き

明確な期限はありませんが、公共料金の名義変更・解約も早いうちに行っておくのがおすすめです。

水道・電気・ガス・電話などを契約している場合は、各会社に連絡して解約します。

料金の支払いが必要なものについては、精算方法や振込先の確認も必須です。

【なるべく早め】遺産相続に必要な手続き

法的な期限はないものの、早めに着手しておいたほうが良い手続きを紹介します。

相続財産の名義変更や相続税申告を行なうには、まず以下の手続きを済ませなければなりません。

  • 遺言書の有無の確認・検認手続き
  • 相続人の調査
  • 相続財産の調査
  • 遺産分割協議
  • 遺産分割協議書の作成

なお、相続人・相続財産の調査、遺産分割協議書の作成は専門家に依頼することもできます。

手続きの時間がとれない場合や、不備がないか不安な場合は検討すると良いでしょう。

遺言書の有無の確認・検認手続き

まずは故人が遺言書を残していないかを確認しましょう。有効な遺言書がある場合、相続財産の処理は原則として遺言書の内容に従って進める必要があります

金庫やタンスの引き出しなど、大切なものを保管していそうな場所を探してみましょう。公正証書遺言を作成していた場合は、最寄りの公証役場で遺言書の有無が検索できます。

遺言書はに以下の3種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 秘密証書遺言
  • 公正証書遺言

手書きの「自筆証書遺言」や、内容を秘密にしたまま存在だけを証明した「秘密証書遺言」の場合は、開封する前にまず家庭裁判所で検認手続きをする必要があります。

「公正証書遺言」の場合、公証人・証人の立会いのもとで遺言書が作成されているので、検認は不要です。

相続人の調査

民法において、被相続人の財産相続の権利がある人を法定相続人といいます。

遺言書がない場合や、遺言書の内容だけでは分割方法が決められない相続財産がある場合は、法定相続人全員で遺産分割協議をしなければなりません。

誰が法定相続人になるのかを確定するには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本が必要です

子供、両親、兄弟姉妹というように被相続人との関係を調べて相続人の範囲を確定していき、相続人の戸籍謄本も取得します。

相続人がすでに亡くなっている場合は、その人の相続人についても調べる必要があります。

相続財産の調査

相続人の調査と同時に、相続の対象となる財産の全容も明らかにする必要があります。

相続財産にはプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も含まれることに注意しましょう。

主な相続財産の例は以下の通りです。財産の存在を証明できる手がかりを探して、どの程度の財産があるのかを確認しましょう。

【プラスの財産の例】

財産 手がかりとなる書類等
現預金 預金通帳、キャッシュカード
株式・国債などの有価証券 金融機関からの郵便物
土地・建物などの不動産 権利証、登記事項証明書、名寄帳、固定資産税の課税明細書
自動車・貴金属などの動産 車検証、現物

【マイナスの財産の例】

財産 手がかりとなる書類等
各種ローン、借入金 借用書、請求書
保証債務 契約書

遺産分割協議・遺産分割協議書の作成

遺言書がない場合、また遺言書の内容で分割方法が決められない財産がある場合は、遺産分割協議を行なう必要があります。

遺産分割協議とは相続人全員が集まって、遺産の取り分を決める協議です。

各種遺産相続手続きは協議後に作成される「遺産分割協議書」に基づいて行なわれます。

遺産分割協議そのものには、法律で決められた期限がありません。

ただし遺産総額・遺産の取り分が不明なままでは相続手続きが進まない上、「準確定申告」「相続税の申告・納付」に間に合わない恐れがあります。

スムーズな相続手続きを行なうには早めに遺産分割協議を行って、「誰が」「何を」「どのくらい」相続するのかを明確にしなければなりません。

【3~4カ月以内】遺産相続に必要な手続き

被相続人が亡くなってから3~4カ月以内には、以下の手続きを行なう必要があります。

  • 相続放棄や限定承認の手続き
  • 準確定申告

相続放棄や限定承認の手続き(3カ月以内)

相続の方法には以下の3種類があります。

  • 単純承認:すべての財産を相続する
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内で負債を相続する
  • 相続放棄:すべての相続財産を放棄する

相続放棄や限定承認の手続きができるのは、「相続の開始があったことを知った日から3カ月以内と定められています。相続放棄または限定承認を希望する場合、家庭裁判所に対して申立てをしなければなりません。

被相続人が多額の借金を抱えていた場合や、相続のやり取りに関わりたくない場合は、相続放棄を選択しましょう。

他の相続人の動向に関わらず、1人だけ相続放棄をすることも可能です。

放棄したくない財産がある場合や、全容がわからないがプラスの財産が上回る可能性がある場合は、限定承認を選択すると良いでしょう。

ただし相続人全員が限定承認をする必要があるので、意見が一致しない場合は難しいかもしれません。

何もせずに3カ月が過ぎた場合や、この期間中に相続財産を処分した場合は、相続の意志の有無を問わず単純承認が適用されます。

準確定申告(4カ月以内)

準確定申告とは、被相続人が亡くなった年の1月1日から死亡日までの所得にかかる税金を納付する手続きです。

申告期限は相続の開始があったことを知った日の翌日から4カ月以内と定められています。

準確定申告が必要となるのは、被相続人に申告すべき所得があった場合です。まずは被相続人の収入調査を行って、準確定申告の要否を判断しましょう。

相続人が代理で申告・納税を行なう場合は、準確定申告書・準確定申告書の付表が必要です。

また還付金の受領を相続人の代表者に一任するのであれば、委任状も用意しなければなりません。申告手続きは被相続人の居住地を管轄する税務署で行います。

参考:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁

【10カ月~1年以内】遺産相続に必要な手続き

被相続人が亡くなってから10カ月~1年以内にすべきなのは、相続財産の名義変更や相続税の申告、遺留分侵害額請求の手続きです。

  • 相続財産の名義変更
  • 相続税申告
  • 遺留分侵害額請求

相続財産の名義変更

遺産分割協議が終了し相続人の相続財産が明確になったら、早めに名義変更手続きを行いましょう。

名義変更の必要があるのは、自動車・預貯金・有価証券・会員権などです。

名義変更に必要な手続きや書類は、財産の種類によって異なります。

いずれの場合も相続人全員の印鑑証明書や、遺産分割協議書、被相続人の除籍謄本などを求められるのが一般的です。

また不動産を相続する場合は、法務局で相続登記を行なわなければなりません。

ただし所有権の移転登記については、不動産を取得した相続人が単独で手続きすることが可能です。

相続税申告(10カ月以内)

相続財産の総額が基礎控除を超える場合は、相続税の申告が必要です。申告期限は「相続の開始があったことを知った日から10カ月以内と定められています。

相続税の基礎控除は、「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」です。例えば法定相続人が4人いる場合は、「3,000万円+(600万円×4)=5,400万円」となります。相続財産が5,400万円以内なら、申告の必要はありません。

相続税の申告は被相続人の居住地を管轄する税務署にて申告・納税を行います。申告期限を過ぎると加算税・延滞税が課されるため、早めに手続きを行いましょう。

遺留分侵害額請求(1年以内)

被相続人の配偶者や子供には、遺留分と呼ばれる最低限の財産を相続できる権利があり、遺言書や遺産分割協議書の内容よりも優先されます。遺留分を侵害した生前贈与や相続があった場合、遺産を多く受け取った人に対して遺留分侵害額請求ができるのです。

遺留分侵害額請求権を行使する場合は、相続の開始を知ったときから1年以内に家庭裁判所に申立を行なう必要があります。

ただし申立を行なう相手に対し「遺留分の権利を行使する」という意思表示をしないと、申立の有効性を確保できません。家庭裁判所への申立と併せて、相手には内容証明郵便などを送付しましょう。

遺産相続の主な相談先

遺産相続は法律に基づいて煩雑な手続きを行なわなくてはなりません。すべてを自力で行なうにはかなりの労力がかかります。

不備なくスムーズに手続きを進めるには、専門家の力を借りるのがおすすめです。

とは言っても何から手を付けたら良いのか分からないという方は、まず自治体の無料相談を利用して、相続手続きの全体像を把握することをおすすめします。

ただし無料相談では個別の事情に踏み込んだ助言をもらうのは難しく、その場で専門家に依頼することもできません。

どんな手続きが必要なのか把握したら、あらためて各専門家に相談しましょう。

相談先 専門分野
弁護士
  • 他の相続人との交渉
  • 裁判所手続きの代理
税理士
  • 準確定申告
  • 相続税申告
司法書士
  • 不動産の相続手続き
行政書士
  • 必要書類の収集・作成
  • 相続財産の調査
銀行(信託銀行)
  • 各専門家の窓口
  • 相続財産の運用

特定の専門家しかできない業務も多いので、状況によっては複数の専門家に依頼しなければならないこともあります。

信託銀行に相談すれば窓口を一本化できますが、自分で各専門家に依頼するよりも費用が割高です。

遺産相続の相談先を選ぶポイント

遺産相続の相談先を選ぶときは、何を確認すべきなのでしょうか?チェックしておきたいポイントを紹介します。

相続業務の実績をチェックする

専門家を見るときは、「相続業務の経験・実績が豊富か」を確認します。専門家はその道のプロではありますが、得意分野は人それぞれです。

相談前に経験・実績を確認することをおすすめします。

専門家の実績を調べるなら、ホームページをチェックしてみましょう。ポイントは案件の内容までチェックすることです。

相続業務は幅広く、相談内容は多岐にわたります。自分の悩み・課題に近い案件を受け持ったことのある専門家の方が、安心です。

ネットワークの広い専門家なら安心

相続問題では税金系の手続きは税理士のみ、不動産登記は司法書士のみ、官公庁への書類提出は行政書士のみ、法廷トラブルは弁護士のみしか対応できません。

相続の悩みが多岐にわたる場合は、広いネットワークを持つ専門家に依頼した方が安心です。

ネットワークの広い専門家なら、対応できない分野について他の専門家を紹介してくれます。

複数人の専門家をわたり歩かずに済むのは、大きなメリットです。

監修税理士のコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

相続が発生した場合、必要な手続きはかなり多いと言えます。葬儀等もある中で大変ではありますが、手続きに漏れが無いようにリスト化して、一つ一つ期限内に確実にこなしていきましょう。

遺産相続は状況に合わせて専門家に相談を

遺産相続は何回も経験する出来事ではないので、いざというときにどこに相談したら良いのか迷ってしまうかもしれません。

相続税申告や不動産の相続登記など、まずどんな手続きが必要なのかを整理して、適切な専門家を探しましょう。

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この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。