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生前贈与はいくらから税金がかかる?相続との違いや税金を抑える方法を解説

最終更新日: 2022年12月17日

「生前贈与したいけど、いくらから税金がかかるんだろう」「生前贈与と相続ってどっちがお得なの」とお悩みではありませんか。

生前贈与には「贈与税」がかかります。しかし、年間の贈与額によっては税金がかかりません。

また基本的に相続よりも生前贈与を行う方が、金銭的に得をしやすいです。

この記事では生前贈与に税金がかかる基準や計算方法、さらに贈与税を減額できる制度について解説します。

この記事を監修した税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

 

生前贈与は年間110万円までなら税金がかからない

生前贈与は年間110万円までなら税金がかからない
画像提供:KPG-Payless/Shutterstock.com

生前贈与は年間110万円までなら贈与税がかかりません。

この110万円という数字は贈与税の「基礎控除額」にあたります。基礎控除とは「贈与された資産の総額から、110万円を差し引いて税額を計算する制度」です。つまり年間の贈与額が110万円以下であれば、課税される資産の額が0円となり税金は発生しません。

なおこの制度を利用した生前贈与を「暦年贈与」と言います。暦年贈与では「1月から12月までの暦年における贈与額の合計金額」が課税の対象です。

基礎控除は贈与を受ける人に適用される

贈与税の基礎控除を受けられるのは「贈与を受ける人(受贈者)」です。そのため「1人の贈与者からもらう金額が110万円以下なら、いくらもらっても一切税金が発生しない」は間違いです。

例えば、祖母と祖父から80万円ずつの生前贈与を受けたとします。この場合一人から受け取った資産が110万円以下であるから、贈与税が発生しないと考える方が多いです。しかし基礎控除は受贈者に適用される制度のため、受贈した合計額の160万円から110万円が差し引かれます。

そのため基礎控除を差し引いた後でも50万円が残り、この分について贈与税の課税対象となるのです。このことを知らずに税金の申告手続きを怠ると、税務署からの指摘が入る原因になります。

こういった場合はいずれかの贈与を翌年に先延ばすようにしましょう。そうすれば暦年の贈与額が110万円を下回り、基礎控除額以下の贈与額となるため、税金は発生しません。

税金をかけられたくないなら、贈与を受ける人が110万円を超えないように注意しましょう。

基礎控除の金額は「110万円×贈与を受ける人数」

贈与する資産全体で考えた時に、基礎控除の額は「110万円×贈与を受ける人数」となります。

例えば、両親が4人の子供に対して100万円ずつを生前贈与したとします。このケースだと合計で400万円の贈与を行っているので、贈与税が発生すると考える方も多いです。

しかし、実際は税金の納税義務が発生しません。なぜなら基礎控除は受贈者に適用される制度であり、4人の子供がそれぞれ基礎控除を用いることができるためです。

つまり贈与する側は「同一の人物に110万円以上を贈与しない」といった意識が大切となります。

生前贈与にかかる贈与税の計算方法

生前贈与にかかる贈与税の計算方法

生前贈与で生じる贈与税は「贈与額から基礎控除額を引いた値に税率を乗じ、控除額を差し引くこと」で算出します。

①贈与税の課税対象となる金額を求める

暦年の贈与額-110万円(基礎控除額)=贈与税の課税対象となる金額

支払うべき税金の額を求める

贈与税の課税対象となる金額×金額に応じた税率-控除額=支払うべき贈与税額

なお税率と控除額は、課税対象となる金額や血縁によって変動する点に留意しましょう。

贈与税の税率と控除額

18歳以上の方が直系尊属から受けた生前贈与の場合、他の贈与よりも発生する税金が少なくなります。これを「特例贈与財産」と言います。なお「直系尊属」とは父母や祖父母など、自分より前の世代で血縁上直通する親族です。

【特例贈与財産の贈与税の税率】

課税される金額 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超~400万円以下 15% 10万円
400万円超~600万円以下 20% 30万円
600万円超~1,000万円以下 30% 90万円
1,000万円超~1,500万円以下 40% 190万円
1,500万円超~3,000万円以下 45% 265万円
3,000万円超~4,500万円以下 50% 415万円
4,500万円超 55% 640万円

なお令和4年3月31日以前の贈与については、受贈者が20歳以上であれば特例贈与財産となります。

また特例贈与財産に該当しない贈与を「一般贈与財産」と言いますが、特例贈与財産よりも税金の額が高くなりやすいです。

【一般贈与財産の贈与税の税率】

課税される金額 税率 控除額
200万円以下 10% 0円
200万円超~300万円以下 15% 10万円
300万円超~400万円以下 20% 25万円
400万円超~600万円以下 30% 65万円
600万円超~1,000万円以下 40% 125万円
1,000万円超~1,500万円以下 45% 175万円
1,500万円超~3,000万円以下 50% 250万円
3,000万円超 55% 400万円

贈与税の計算例

贈与税の計算例として、父から子(20歳)に「1,000万円」の生前贈与があったとします。この場合の生前贈与は特例贈与財産に該当するので、贈与税の額は「177万円」となります。

①贈与税の課税対象となる金額を求める

1,000万円-110万円(基礎控除額)=890万円

②贈与税の税金の額

890万円×30%(税率)-90万円(控除額)=177万円

次に伯父から甥に対して「1,000万円」の生前贈与があった例を考えます。伯父と甥の関係は直系尊属・直系卑属ではないので、税率や控除額は一般贈与財産の方です。この際の贈与税の税額は「231万円」となります。

①贈与税の課税対象となる金額を求める

1,000万円-110万円(基礎控除額)=890万円

②贈与税の税金の額

890万円×40%(税率)-125万円(控除額)=231万円

このように贈与した額が同一でも、贈与者と受贈者の年齢・関係性によって税額が大きく異なるので注意しましょう。

相続より生前贈与の方が基本的に得しやすい

相続より生前贈与の方が基本的に得しやすい
画像提供:PIXTA

相続よりも生前贈与の方が累進課税の影響から、基本的に負担する税金が少なくなります。特に相続が発生する何年も前から贈与を活用できれば、より税負担が軽くなるのです。

一方で贈与よりも相続が得をするケースも存在するため、自身の状況に合わせた選択を行いましょう。

複数回に分けられる生前贈与の方が累進課税の関係で有利

贈与税と相続税は「累進課税制度」を採用しています。累進課税とは「課税される金額が多くなるほど税率が高くなる仕組み」です。つまり課税される金額が少ないほど税率も低くなり、税金の負担が軽くなります。

税率自体は相続税よりも贈与税の方が高いですが、相続とは異なって生前贈与は複数回行えます。そのため同じ金額を渡すなら、複数回に分けられる贈与の方が一回当たりに課税される金額を少なくすることが可能です。つまり生前贈与の方が低い税率で財産を渡せるので、税負担を軽くすることができます。

また毎年110万円以下の暦年贈与を繰り返せば、税負担なしで財産の受け渡しが可能です。そのため、なるべく長い間110万円以下の生前贈与を繰り返すことで、相続よりもお得に資産を渡せます。

生前贈与の方が有利な例

多くの場合生前贈与を行うことで、相続よりもお得に資産を渡すことができます。

【状況】

財産の総額:1億4,000万円(現金)

被相続人(贈与者)への配偶者:なし

法定相続人:子(1人)

この際に贈与を一切せず全額を相続した際の相続税額は「2,460万円」です。

【生前贈与をしなかった場合】

①相続税の課税対象となる金額

1億4,000万円-3,600万円(基礎控除)=1億400万円

②税金の額

1億400万円×40%(税率)-1,700万円(控除額)=2,460万円

一方で年間110万円の財産を10年に渡って生前贈与した場合の相続税額は「2,090万円」です。

【生前贈与を行った場合】

①暦年贈与を10年行った結果

贈与した資産:1,100万円

負担した贈与税額:0円

②相続時の財産の合計

1億4,000万円-1,100万円=1億2,900万円

③相続税の課税対象となる金額

1億2,900万円-3,600万円=9,300万円

④税金の額

9,300万円×30%-700万円=2,090万円

実際の相続税の計算は更に複雑になる場合も多いですが、税率が10%下がり370万円の違いが出ました。

このように複数回行えるという暦年贈与の特性を利用すると、税負担を大きく減らすことができるのです。

生前贈与で多額のお金を一括で渡す場合は相続の方が有利

生前贈与で多額のお金を一括で渡す場合は、相続の方が税金の負担を少なくできます。贈与税と相続税は共に最高税率55%です。しかし贈与税は課税される額が4,500万円超で55%相続税は課税される額が6億円超で55%となります。

そのため同じ金額を一括で渡す場合、相続した方が税率が低くなりやすく、税負担も軽くなるのです。生前贈与を用いて節税を行いたい場合は、長期に渡って暦年贈与をするべきです。

相続の方が有利な例

一括で多額の資産を引き継ぐ場合は、相続の方が税金の負担を減らせます。

【状況】

財産の総額:5,000万円(現金)

被相続人(贈与者)への配偶者:なし

法定相続人:子(1人)

生前贈与を行わない場合における相続税額は「160万円」です。

【生前贈与をしない場合】

①相続税の課税対象となる金額

5,000万円-3,600万円(基礎控除)=1400万円

②税金の額

1,400万円×15%(税率)-50万円(控除額)=160万円

一方で5,000万円を一括で生前贈与すると「約2,050万円」の贈与税が生じます。受贈者が直系尊属でなく一般贈与財産となる場合は、更に税額が上がります。

【生前贈与をする場合】

①贈与税の課税対象となる金額

5,000万円-110万円(基礎控除)=4,890万円

②税金の額

4,890万円×55%(税率)-640万円(控除額)=2,049.5万円

このように多額の資産を一括で渡す場合は相続税の方が税率が低いため、税金の額を抑えることが可能です。

生前贈与にかかる贈与税をさらに減額できる4つのケース

生前贈与をすると税金の負担を軽くしやすいですが、更に減額できるケースがあります。条件に該当すれば1,000万円以上の控除を受けられるので、該当する贈与があるかどうかを確認しましょう。

【贈与税をさらに減額できる4つのケース】

住宅を購入する資金を生前贈与する場合【1,000万円まで控除】

住宅購入等の目的で直系尊属から生前贈与を受けた場合、一定条件の下1,000万円まで控除できる制度があります。これを「直系尊属からの住宅取得資金の贈与非課税の特例」といいます。

対象期間 平成15年1月1日~令和5年12月31日
非課税限度額 【消費税率10%が適用される場合の非課税限度額】

  • 契約の締結期間が2019年4月~2020年3月
    • 省エネ等住宅:3,000万円
    • 上記以外の住宅:2,500万円
  • 契約の締結期間が2020年4月~2021年12月
    • 省エネ等住宅:1,500万円
    • 上記以外の住宅:1,000万円

【上記以外の場合の非課税限度額】

  • 契約の締結期間が2015年12月まで
    • 省エネ等住宅:1,500万円
    • 上記以外の住宅:1,000万円
  • 契約の締結期間が2016年1月~2020年3月まで
    • 省エネ等住宅:1,200万円
    • 上記以外の住宅:700万円
  • 契約の締結期間が2020年4月~2023年12月
    • 省エネ等住宅:1,000万円
    • 上記以外の住宅:500万円
対象者 直系尊属から住宅購入などの目的で贈与された受贈者が次のいずれかに該当すること

  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに住み始める、もしくは住み始めるのが確実と見込まれる
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに増改築を行う。かつ3月15日までに住み始める、もしくは住み始めるのが確実と見込まれる
受贈者の要件 次の2つの要件を共に満たす者

  1. 贈与を受けた年の1月1日において18歳以上(令和4年3月31日以前の贈与については20歳以上)
  2. その年の合計所得金額が2,000万円以下(住宅用の家屋の床面積が40㎡以上50㎡未満の場合は1,000万円以下)
購入する家屋等の要件 ①②③の要件を全て満たす家屋

①以下のいずれかに該当する家屋

  • 新築
  • 建築後使用されていない
  • 2つのどちらかに該当する中古住宅
    • 築後25年以内の耐火建築物の家屋もしくは築20年以外のその他の家屋
    • 地震安全基準に適合する家屋等

②家屋の床面積の2分の1以上が住宅用

③家屋の床面積が40㎡以上240㎡以下

増改築の要件 次の3つ全てを満たす家屋に関する増改築

  1. 自己が所有し居住している家屋
  2. 工事費用が100万円以上で、居住用部分の工事費用が全体の工事費用の2分の1以上
  3. 増改築後の家屋の床面積が40㎡以上240㎡以下で、床面積の2分の1以上が住宅用

なお当該特例を使用するには、贈与税の税金の額が0円であっても確定申告の手続きが必要です。

参考:直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁

配偶者へ生前贈与する場合【2,000万円まで控除】

配偶者に居住用不動産もしくは取得費用の生前贈与が行われた場合、最大2,000万円の控除が受けられます。この特例を「夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」といいます。

【この特例を受けるための要件】

  • 夫婦間の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われる
  • 贈与された財産が住居用不動産または住居用不動産を取得するための金銭である
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、当該不動産に居住しており、その後も引き続き住む見込みである

この特例は基礎控除と併用ができる点も特徴です。そのため最大2,110万円の控除が受けられます。

なお特例を使用するには、税金の額が0円であっても贈与税の確定申告を要する点に留意しましょう。また事実婚は対象外で、一生に一度しか適用できません。

参考:夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除|国税庁

結婚・子育て資金を生前贈与する場合【1,000万円まで控除】

結婚や子育ての支払いに充てるために生前贈与された資金は最大1,000万円の控除が受けられます。これを「結婚・子育て資金の一括贈与にかかる贈与税非課税の特例」といいます。

対象期間 平成27年4月1日~令和5年3月31日
非課税限度額 受贈者1人につき最大1,000万円(結婚に関する支払は最大300万円)
対象者 受贈者:18歳以上50歳未満

贈与者:受贈者の直系尊属

結婚・子育て資金の範囲 次の2つに該当する結婚に際して支払う金銭

  • 結婚挙式・衣装代等の婚礼費用
  • 家賃・敷金等の新居費用・転居費用

次の3つに該当する妊娠・出産・育児に要する金銭

  • 不妊治療・妊婦健診に要する費用
  • 分娩費等・産後ケアに要する費用
  • 子の医療費、幼稚園・保育園等の保育料

なお当該特例を利用するには金融機関と管理契約を結び、子や孫名義の口座に一括での贈与資金の入金が必要です。そして子や孫は、結婚や子育てに使用したことを証明する領収書等を提出すれば、非課税でお金を引き出せます。

目的外で引き出した資金には税金が発生するため注意しましょう。

参考:直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁

教育資金を生前贈与する場合【1,500万円まで控除】

教育資金の生前贈与には最大1,500万円の控除が認められる特例が存在します。これを「教育資金一括贈与の贈与税非課税の特例」といいます。

対象期間 平成25年1月1日~令和5年3月31日
非課税限度額 教育資金最大1,500万円

(学習塾といった学校等以外のものに支払われる金銭については最大500万円)

対象 受贈者の直系尊属が子・孫の教育資金として贈与した金銭
受贈者の要件 30歳未満で前年の合計所得金額が1,000万円以下
教育資金の範囲 学校等に支払われる次のような金銭

  • 入学金・授業料・入園料・保育料等
  • 学用品の購入費・修学旅行費・学校給食費等

学校等以外の者に支払われる金銭で社会通念上相当と認められるもの

当該特例を使用するには受贈者名義の口座を開設したうえで、教育資金非課税申告書の提出が必要です。合計額が1,500万円までであれば、何度贈与しても税金はかかりません。

生前贈与を行う際に注意すべきポイント

生前贈与を行う際に注意すべきポイント

生前贈与を行う際に注意すべきポイントが5つあります。これらを知らずに贈与の手続きをしてしまうと、結果として多くの税金を支払う失敗に繋がるかもしれません。

【注意すべき5つのポイント】

遺産の総額が相続税の基礎控除未満なら生前贈与は不利

遺産の総額が相続税の基礎控除未満の場合、生前贈与は不利になります。相続税の基礎控除額は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」です。つまり法定相続人が1人の時、資産の合計が3,600万円以下であれば税金が発生しません。

例えば2,000万円の遺産を相続する場合、相続税額は0円です。一方で2,000万円の資産を10年かけて200万ずつ贈与する場合は90万円の贈与税が生じるのです。

またデメリットとして、暦年贈与をする場合は毎年確定申告する手間が発生してしまいます。

そのため遺産の総額が相続税の基礎控除以下である場合は、相続税での手続きを選択すると良いでしょう。

相続開始日から3年以内の生前贈与は相続分に加算される

相続開始日から遡って3年以内の生前贈与は相続財産に加算されます。これを「生前贈与加算」といいます。既に贈与税の申告をしている場合は、支払った税額分が相続税から控除される仕組みです。

例えば2022年4月1日に相続が発生した場合で考えましょう。このケースの場合2019年4月1日から死亡時までの間に行われた贈与は、相続財産として加算されます。

「税金対策で被相続人が亡くなる直前に贈与を行う」などの行為は効果がありません。余裕をもって計画的に生前贈与を行うようにしましょう。

土地・不動産の生前贈与は慎重に行う必要がある

土地・不動産の生前贈与は慎重に行う必要があります。土地や不動産は高額な評価額が付きやすく、110万円分の土地だけを贈与するといった対策もできないためです。

贈与税の税率は相続税よりも高いので、土地や不動産に高額な評価が付くのであれば、相続の方が支払う税金が少なくなります。また土地の持分を複数年に分けて贈与するとしても、登記費用や司法書士への報酬などが都度発生します。そのため発生する税金と各種費用を総合的に検討して、慎重に手続きを行いましょう。

なお相続で不動産を取得しても不動産取得税が発生しませんが、贈与の場合は発生する点にも留意が必要です。

「名義預金」と判断されないよう注意する

生前贈与を行う際は「名義預金」と判断されないように注意しましょう。名義預金とは「預金口座の名義人と管理人が異なる預金」です。例えば両親が子名義の通帳を作って、入金を続けるといったケースが挙げられます。

名義預金は原則として贈与には該当しませんが、相続財産としてはカウントされます。そのため名義預金と判断されると相続財産が増えてしまって、多くの税金を課されるリスクが生じるので注意しましょう。

【名義預金と判断される3つの基準】

  • 贈与を行った人が被相続人であるか
  • 口座が被相続人の名義であるか
  • 口座の管理を被相続人がしていたか

名義預金であるかどうかはこれら3つの基準から判断されます。口座を被相続人以外の名義に変更したり、口座の管理を被相続人以外が行ったりすることが重要です。

贈与契約書を贈与の度に作成する

生前贈与では贈与をする度に贈与契約書を作成するのが重要となります。贈与契約書を作成すると、税務署に生前贈与があったことを証明しやすくなるためです。

また贈与契約書を贈与の度に作成すると、定期金給付契約と判断されるのを防げるでしょう。定期金給付契約とは「定期的に分割して金銭をもらう契約」のことで、贈与税が発生します。

例えば2,000万円の贈与を20年に分割して、毎年100万円贈与する場合は税金が発生しません。しかし、定期金給付契約と判断されると「2,000万円の贈与を20年間に渡って行った」と判断される可能性があります。この場合2,000万円の贈与として贈与税が課されるので注意が必要です。

生前贈与を現金手渡しで行っても大丈夫?

生前贈与を現金手渡しで行っても大丈夫?

基本的に生前贈与は金融機関の預金口座を通じて行われます。しかし、中には現金の手渡しで行いたいといった方もいるでしょう。

生前贈与を現金の手渡しで行っても制度的な問題はありません。

しかし生前贈与を現金手渡しで行うと、税金面で少なからずデメリットが生じるため、やめておいた方が賢明です。

生前贈与を現金手渡しで行っても制度的な問題はない

生前贈与を現金手渡しで行っても、受け取った現金について適切に申告手続きを行えば制度的な問題はありません。

しかし「300万円を手渡しで受け取れば申告をしなくてもバレない」といった考えで、手渡しにするのは大変危険です。税務調査の際に用途が分からない300万円の動きがあれば、過去に遡って口座の確認をされるためです。

この場合本来支払うべき税金だけでなく、悪質な案件として加算税を課されるリスクも生じます。また相続税の課税対象と判断される可能性もゼロではないでしょう。

そのため現金手渡しで生前贈与を行うにしても、必ず申告手続きは行うことが大切です。

現金手渡しで行うのはやめたほうが良い

生前贈与を現金手渡しで行うのは避けた方が良いです。お金の動きを税務署にばれる可能性が非常に高く、不要な誤解を与えるリスクも発生します。

また現金を手渡しで贈与すると定期金給付契約であると判断され、税金が課されるリスクが生じます。その結果、暦年贈与が認められない可能性が生じる点もデメリットです。

このように多くのデメリットがある一方で特段のメリットがないため、特別な事情がなければ避けた方が良いでしょう。

生前贈与に関する改正が先送られたが今後はどうなる?

生前贈与に関する改正が先送られたが今後はどうなる?

2020年の税制改正大綱では相続税と贈与税の一体化が発表されました。その結果「相続税の暦年課税ができなくなる可能性が生まれる」などの様々な変化が示唆されています。しかし2022年現在においては、生前贈与に関する改正は先送りされている状況です。

将来的な改正は予想できますが、具体的にいつ改正されるかまでは予想できません。そのため「生前贈与をしても問題ないか」と不安な方も多いでしょう。

結論から述べると、今現在の状況であれば生前贈与を行っても問題ないと考えられます。

なぜなら相続税と贈与税の一体化が行われたとしても、生前贈与ができなくなるわけではないためです。税制が変わっても民法で定められた生前贈与自体は廃止になることはないでしょう。また相続税と贈与税の一体化が進められるとしても、段階的に行われることが予想されます。

そのため将来の税制改正を考慮して選択するのではなく、今現在最も良い選択をするのが大切です。

なお2022年の改正で大きな変化はありませんでしたが、細かい点で改正されたポイントが存在します。

  • 住宅取得資金の贈与税の非課税措置の期間延長・非課税限度額や要件の見直し
  • 財産債務調書制度の見直し

また現在は生前贈与加算が相続開始前3年以内と定められていますが、今後の法改正で10年から15年への延長されることが予想されています。

財務省の資料では、相続税と贈与税の制度がある外国諸国と日本が比較されており、ドイツとフランスはそれぞれ10年、15年が生前贈与加算の基準となっているのです。これらの外国諸国に倣って、日本も生前贈与加算を10年や15年にすることは十分に考えられます。

実際に改正されると「贈与による税金の節税対策がしにくくなる」といった影響が出てくるでしょう。

生前贈与には2,500万円が非課税になる相続時精算課税もある

生前贈与には2,500万円が非課税になる相続時精算課税もある

生前贈与には暦年課税以外に「相続時精算課税」といった選択肢も存在します。

相続時精算課税とは「60歳以上の直系尊属から、18歳以上の直系卑属への生前贈与で任意に利用できる制度」です。

相続時精算課税を用いると、生前贈与の額が2,500万円を上限として非課税となります。そして累計額が2,500万円を超えた場合は、超えた部分に対して一律20%の贈与税が生じる仕組みです。

贈与者が亡くなった際に「相続時精算課税制度を利用した贈与財産」と「亡くなった際の相続財産」の2つを合計して、相続税の計算を行います。つまり相続時精算課税制度は、税金の支払いを相続発生時に先送りしているのと同義です。

相続時精算課税で得ができる例

例えば「2,000万円の資産を一括で子に生前贈与する」といったケースでは、相続時精算課税が得です。2,000万円の特例贈与財産を、一括で暦年贈与した際の税金の額は「588.5万円」になります。この際に相続時精算課税を用いれば、贈与税は非課税となり相続税も基礎控除以下となるので、負担する税金はありません。

もちろん贈与せずに相続まで待っても税金は発生しません。しかし前贈与によって今すぐ財産を渡せる点」が大きなメリットに繋がるでしょう。

相続時精算課税のメリット

基本的に相続時精算課税には直接的な税金の節税効果はありません。贈与税の負担が軽くなる一方で、相続税時に清算する必要があるためです。

しかし生前贈与を相続時精算課税で行うと、直接的な節税以外のメリットが生じます。

【相続時精算課税のメリット】

  • 相続時の争いを防止できる
  • 値上がりが確実な財産の場合は相続税を抑えられる
  • 収益性のある財産の場合は収益の分だけ相続税が節税できる

①相続時の争いを防止できる

相続時精算課税を用いると相続時の争いを防止できます。財産を生前贈与しておけば、贈与者が亡くなった際に遺産分割協議の対象から外すことができるためです。

また相続時精算課税を用いれば、贈与税の負担は軽減されます。そのため特定の直系卑属に税金の負担をさせずに資産を受け渡したい時に有効な手段となるでしょう。

②値上がりが確実な財産の場合は相続税を抑えられる

相続時精算課税は直接的な節税に繋がる制度ではありません。しかし、値上がりが確実な財産を有する場合は節税に繋がります。

相続時精算課税で生前贈与をした場合、相続税の計算で加算する金額は贈与時の時価であるためです。時価が低いうちに贈与をすれば、相続税の計算に使われる評価額も低くなり税金の額が抑えられます。

そのため不動産や株式などで今後値上がりが確実な場合は、相続時精算課税の利用が有効です。

③収益性のある財産の場合は収益の分だけ相続税の節税ができる

賃貸不動産や利回りが良い株式といった収益性のある財産の場合は、早期に贈与すると相続税の節税に繋がります。

収益性のある財産を被相続人が持ち続ける場合、それらの財産によって生まれた資産も相続財産となるためです。早めに生前贈与をすると相続人の収益となるので、その分相続税として課税される金額は減少します。

しかし受け継いだ財産で収益を出すと、本人の所得として所得税が課税されます。そのため一概に税金面で得になるとは言えない点に注意しましょう。

相続時精算課税のデメリット

一方で生前贈与で相続時精算課税を用いるとデメリットも生じます。これらのデメリットを知らずに利用してしまうと、税金の負担が増えるリスクも生じるため注意が必要です。

【相続時精算課税のデメリット】

  • 暦年贈与が使えなくなる
  • 110万円以下の贈与でも申告の必要がある
  • 小規模宅地等の特例が使えない
  • 贈与税の節税にはなるが相続税の節税効果は薄い
  • 届出書の提出を忘れると贈与が暦年課税になる

①暦年贈与が使えなくなる

相続時精算課税を用いて生前贈与を行うと、その後の贈与でも相続時精算課税を用いる必要があります。つまり暦年課税に戻すことはできません。

暦年贈与は金額が110万円以下であれば、税金の負担が0円になります。しかし相続時精算課税の場合は110万円以下であっても、清算する際に相続財産に課税されるため、使用する際は慎重に決定しましょう。

②110万円以下の贈与でも申告の必要がある

暦年課税の場合は生前贈与の額が110万円以下であれば確定申告は不要です。しかし相続時精算課税を用いる場合、税金が発生していなくても、贈与を受けた年について確定申告の手続きが必要です。

本来する必要がなかった手続きを手間と思う方にとっては、大きなデメリットとなるでしょう。

③小規模宅地等の特例が使えない

小規模宅地等の特例とは、一定の要件を満たした土地の相続税評価額を最大で80%減額できる制度です。条件に該当するならば、相続税の税金の額を大きく減らすことが可能となっています。

しかし相続時精算課税を選択して生前贈与をすると、小規模宅地等の特例が使用できなくなります。結果として、多くの税金を支払うリスクが発生するため注意が必要です。

④贈与税の節税にはなるが相続税の節税効果は薄い

相続時精算課税は贈与税の節税にはなりますが、相続税の節税には繋がりにくいです。相続時精算課税は生前贈与時に支払わなかった税金を、相続時にまとめて支払う制度であるためです。

最終的に支払う税金は変わらないケースが多いので、それ以外のメリットがある場合に活用しましょう。

⑤届出書の提出を忘れると贈与が暦年課税になる

相続時精算課税を適用するには「相続時精算課税選択届出書を添付した確定申告書」の提出が必要です。期限が贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までとなっており、失念すると生前贈与が暦年課税になります。

例えば1,000万円の贈与を行った際、相続時精算課税を使用すれば税金は発生しません。しかし暦年課税となると、177万円の税金を納税する必要があるのです。

そのため相続時精算課税を用いる際は、必ず届出書を添付した確定申告の提出を忘れないようにしましょう。

監修税理士からのコメント

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

贈与と相続のどちらを選んだ方が税金が少なくなるかについては、ケースバイケースであり慎重に判断する必要があります。判断を誤ると払う必要のない税金を負担しなければならなくなることがあるため注意が必要です。様々な特例や制度を理解することは容易でないため、専門家である税理士に相談すると良いでしょう。

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この記事の監修税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

横浜市青葉区を拠点として、個人及び中小規模法人のお客様を中心に税務サービスを提供しております。 「小規模事務所ならではのフットワークの軽さ」「代表税理士の顔が見える安心感の提供」をモットーに、日々お客さんのお役に立てるよう業務に邁進しております。