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相続手続きの費用はいくら?誰が負担し安く抑えるコツはあるのか

最終更新日: 2025年07月08日

相続に関する手続きは多岐にわたります。代行を依頼した場合はどの専門家に依頼し、どの作業を代行してもらうかによって費用が大きく変動します。

相続手続きの代行先と代行の費用相場、自分で相続手続きを行った場合の費用目安を紹介します。

相続する遺産の内容別依頼先

相続手続きを代行してもらう場合は、遺産の内容別にマッチした依頼先を見つける必要があります。5つの依頼先と得意分野や特徴を表形式でまとめました。

依頼先 得意分野・特徴
税理士 相続税の申告
司法書士 不動産の名義変更、遺産分割協議書の作成
弁護士 相続の手続き全般、相続人同士の紛争解決
行政書士 戸籍収集、遺産分割協議書の作成
銀行 ワンストップで手続きを代行

相続税の申告が必要なら税理士

相続手続きで税理士に依頼できること

  • 相続税の計算・申告の代行
  • そのほか税理士の独占業務

相続手続きで税理士ができないこと

  • 登記の変更手続き
  • 相続人同士の紛争解決

相続財産の控除額が基礎控除額を上回る場合は相続税の申告が必要です。相続税申告は税理士の独占業務で、他の専門家は代行できません

相続税申告の作成は非常に複雑で、財産の評価方法を間違えると納付する税額が大きく変動します。そのため、自力で相続税申告をすることはおすすめできません。

特に土地や非上場株式など評価が難しい財産がある場合は、相続を専門に取り扱っている税理士に依頼しましょう。

税理士に依頼する場合の費用は、遺産総額の0.6%~1.5%です。実際には加算報酬が追加されることが多いので、税理士報酬の額については余裕を持っておいた方が良いでしょう。

相続税申告の税理士報酬額の目安:250,000円~497,575円
※ミツモアにおける「相続税申告に強い税理士」サービスの成約価格より算出。(2024年1月1日~12月31日)

税理士に相続税申告を依頼すると費用がかかりますが、正確な申告により追加徴税のリスクがないことや節税対策の提案を受けられることから、メリットは大きいです。

不動産の名義変更が必要なら司法書士

相続手続きで司法書士に依頼できること

  • 不動産の名義変更(登記変更手続き)
  • 相続人・財産調査、遺産分割協議書の作成

相続手続きで司法書士ができないこと

  • 140万円以上の相続人同士の紛争解決

土地や建物などの不動産を相続するときは、法務局で所有権の移転登記をする必要があります。これは不動産の名義変更ともいいます。

不動産登記の申請代理は司法書士の独占業務であるため、他の専門家は代行できません。

相続登記は義務化されているため、手続きを怠ると過料が科される可能性があるので注意しましょう。

相続登記を司法書士に依頼した場合の報酬相場:60,000円~130,000円

司法書士に相続登記のみを依頼した場合の報酬の相場は、60,000円~130,000円です。これに加えて、登録免許税が実費でかかるのでご注意ください。

司法書士への報酬額が高くなる要因

  • 複数の不動産の相続手続きをする
  • 評価の難しい土地の財産評価を依頼する
  • 戸籍の収集・遺産分割協議書の作成など相続登記以外の作業も依頼する

司法書士に依頼すれば、複雑な書類作成や法務局とのやり取りをすべて任せることが可能です。

相続人の間でトラブルが起きそうなら弁護士

相続手続きで弁護士に依頼できること

  • 相続手続き全般
  • 相続人同士の紛争解決

相続手続きで弁護士にできないこと

  • 不動産登記
  • 相続税の申告

遺産分割協議で相続人同士の意見がまとまらない、特定の相続人と連絡が取れないなど、法的なトラブルが発生している場合は弁護士に相談しましょう。

弁護士は依頼人の代理人という立場で他の相続人と交渉したり、家庭裁判所での調停や審判の手続きを進めたりできます。他の専門家は法的な紛争に介入できません。

弁護士費用は着手金と成功報酬で構成されるケースが多いです。着手金は数十万円、成功報酬は得られた経済的利益の10%~20%程度が相場です。

費用は比較的高額ですが、法的なトラブルを解決できる唯一の専門家です。

遺産分割協議書作成や相続人調査が必要なら行政書士

相続手続きで行政書士に依頼できること

  • 相続人調査
  • 遺産分割協議書の作成
  • 預貯金・自動車の名義変更手続き

相続手続きで行政書士に依頼できないこと

  • 相続税の申告
  • 不動産登記変更

相続に関するトラブルがなく、不動産登記や相続税の申告が不要なのであれば、行政書士に依頼をしましょう。

行政書士には、相続人を確定させるための相続人調査や相続人全員の合意内容をまとめた遺産分割協議書の作成を依頼できます。

行政書士に依頼する場合の費用は作業内容によって異なるものの、相続人調査と遺産分割協議書の作成を合わせて100,000円前後が目安です。

比較的費用を抑えながら、煩雑な書類作成や収集作業を任せられるのがメリットです。

自分で代行先を選ぶ余裕がない場合は銀行

どの専門家に依頼すれば分からない場合や、手続き全般をまとめて任せたいのであれば、銀行や信託銀行の遺産整理業務を利用しましょう。

銀行が窓口となり、提携している司法書士や税理士などの専門家を手配してくれます。金融資産の相続手続きはもちろん、不動産や相続税申告まで幅広く対応可能です。

サービスが包括的である分、費用は高額になる傾向があります。最低報酬額が100万円程度に設定されていることが多いです。さらに遺産総額に応じた手数料がかかるので、利用するかどうかは慎重に検討しましょう。

遺産相続の手続きの流れ

遺産相続手続きは以下のように進めます。

相続する財産の内容によっては一部の手続きが不要になることもあります。

① 死亡・葬儀関連の手続きをする

相続手続きの第1ステップは、死亡や葬儀に関連する手続きです。まずは故人の死亡診断書を受け取り、7日以内に市区町村役場に死亡届を提出します。

死亡・葬儀関連の手続きの流れ

  1. 市町村役場に死亡届を提出する
  2. 火葬許可申請をする
  3. 年金受給者の場合は年金受給停止手続きをする
  4. 世帯主の場合は世帯主変更届を提出する
  5. 健康保険・介護保険の資格喪失届を提出する
  6. 葬儀の手配を行う

葬儀の手配と並行して行政手続きを進める必要があるため、非常に慌ただしくなります。

各種手続きには死亡診断書のコピーが必要になる場面が多いため、複数枚用意しておくことを推奨します。

② 遺言書の有無を確認する

相続の手続きを進めるときに遺言書の有無は最優先で確認してください。遺言書がある場合は原則として、その内容に従って遺産を分割します。

遺言書は以下の2種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言

自宅や貸金庫などを探し、遺言書がないか確認します。法務局の「自筆証書遺言書保管制度」を利用している可能性もあるため、法務局への照会も行いましょう。

自筆証書遺言を法務局以外で保管していた場合は、家庭裁判所で検認手続きが必要です。検認を経ずに遺言書を開封すると過料が科されるため注意してください。

③ 相続人の調査をする

遺言書がない場合は、法律で定められた法定相続人が遺産を相続します。誰が相続人であるかを確定させるため、個人の出生から死亡までの戸籍謄本などを収集します。

戸籍謄本を収集することで、現在の家族構成からは分からない前妻の子や認知した子などの存在が明らかになることもあります。

法定相続人の順位 備考
配偶者 常に法定相続人になる。事実婚は含まれない
第1順位 子供や孫など、被相続人(故人)の直系の下の世代(直系卑属)
第2順位 両親や祖父母など、被相続人(故人)の直系の上の世代(直系尊属)
第3順位 被相続人(故人)の兄弟姉妹や甥・姪(傍系血族)

相続人調査は遺産分割協議を確実に行うために重要な手続きです。すべての相続人を確定させないと、後から有効な相続人が見つかった場合に遺産分割協議が無効となり、やり直しになってしまいます。

④ 相続財産の調査をする

相続人を確定させる作業と並行し、故人がどのような財産をどれだけ所有しているかを調査します。

相続できるプラスの財産の例

  • 預貯金
  • 不動産
  • 有価証券

相続できるマイナスの財産の例

  • 借金
  • ローン
  • 未払いの税金

相続財産というと、預貯金などのプラスの財産を思い浮かべてしまいがちですが、借金やローン、未払いの税金といったマイナスの財産も相続できるので、忘れずにすべて洗い出すようにしましょう。

預貯金は金融機関に名寄せを依頼し、不動産は名寄帳や固定資産評価証明書を取得して確認します。

財産目録を作成し、相続財産の全体像を正確に把握することが、後の遺産分割協議や相続方法の決定において不可欠です。この調査が不十分だと後から財産が見つかり、再度協議が必要になることがあります。

⑤ 相続方法の決定をする

相続財産の調査が完了したら、財産をどのように相続するか決定します。選択肢は主に3つあります。

相続の方法 備考
単純承認 プラスの財産もマイナスの財産もすべて相続する
相続放棄 すべての財産の相続権を放棄する
限定承認 プラスの財産の範囲内でのみ、マイナスの財産を相続する

相続放棄と限定承認を選択する場合は、自分が相続人であることを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申し立てをする必要があります。この期間を過ぎると単純承認をしたとみなされるため注意が必要です。

財産の状況を正確に把握し、最適な相続方法を選択しましょう。

⑥ 遺産分割協議をし協議書を作成する

法定相続人が複数いる場合は、誰がどの財産をどの割合で相続するのか、相続人全員で話し合って決めます。この話し合いを遺産分割協議といいます。

協議がまとまったら、その合意内容を証明するために遺産分割協議書を作成します。遺産分割協議書は相続人全員が署名し、実印を押印する必要がある書類です。

遺産分割協議書は、不動産の名義変更や預貯金の解約、相続税の申告など、その後のさまざまな相続手続きで必要となる重要な書類です。

全員の合意形成が難しい場合は、家庭裁判所での調停や審判に移行します。

⑦ 財産の名義変更・解約をする

遺産分割協議書の内容に基づき、個々の財産の名義変更や解約手続きを行います

遺産の内容 手続きをする場所
不動産 法務局
預貯金 各金融機関
株式など有価証券 証券会社
自動車 運輸支局

財産の名義変更・解約手続きには、遺産分割協議書や戸籍謄本、印鑑証明書などの書類が必要です。手続き先ごとに必要書類が異なるので、事前に必要書類を確認することが重要です。

⑧ 相続税の申告・納付をする

相続した財産の額が、基礎控除額である3,000万円+600万円×法定相続人の数を超える場合は、相続税の申告と納付が必要です。

相続税の申告・納付期限は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税などのペナルティが課されます。

相続税の申告書の作成は専門性が高く複雑なので、相続税が発生する場合は税理士に依頼をしましょう。

相続手続き代行の費用は誰が負担するのか

相続手続きにかかる費用を誰が負担するかについて、法的には決まっていません。そのため、相続人の中から代表して1人が費用負担をすることも、相続人全員で均等に費用負担をすることも可能です。

金銭トラブルを避けるためには、相続人全員で均等に費用負担をすることをおすすめします。均等負担にすることで不平等感を抑えられます。

相続手続きで必ずかかる費用

相続手続きで必ずかかる費用には、戸籍謄本等の書類を取得する費用が挙げられます。具体的には以下の通りです。

取得する書類名 取得費用(1通)
戸籍謄本 450円
除籍謄本 750円
改製原戸籍 750円
戸籍の附票 300円※市区町村によって異なる
住民票除籍の写し 300円~400円※市区町村によって異なる
住民票の写し 300円~400円※市区町村によって異なる
印鑑登録証明書 300円※市区町村によって異なる

これに加え、不動産の登記手続きを行う場合は以下の費用がかかります。

  • 登録免許税(相続対象の不動産の評価額×0.4%)
  • 登記簿謄本(登記事項証明書)(1通600円)
  • 固定資産税評価証明書(不動産1件につき1件400円)

相続手続きにかかる費用が高くなる原因

以下の条件に当てはまると、相続手続きにかかる費用が高額になりやすいです。

① 銀行などに一括代行依頼を出す

銀行や信託銀行の遺産整理業務は、手続きの窓口を一本化ができ利便性が高いですが、費用が高額になりがちです。

銀行は自社で手続きを行うわけではなく、提携する司法書士や税理士に再依頼をします。そのため、銀行への手数料に加えて、各専門家への報酬も含まれ、結果的に割高になります。

最低手数料が100万円以上と高額に設定されている場合が多く、相続財産がそれほど多くないケースでは代行費用で相続財産が0円になってしまう可能性があります。

手間を省くための必要経費と割り切るのであれば候補に入りますが、費用を抑えたい場合は注意が必要です。

② 連絡の取れない相続人がいる

相続人の中に行方不明者や音信不通で連絡が取れない人がいると、手続きが非常に複雑になります。

遺産分割協議は相続人全員の参加が必須です。そのため行方不明の相続人を無視して手続きを進めることはできません。

相続人の中に行方不明者がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てる必要があります。

不在者財産管理人は行方不明の相続人に代わって遺産分割協議に参加します。選任申立てには数十万円の予納金が必要になるほか、選任された弁護士などへの報酬も発生するため、費用が大幅に増加します。

③ 相続人同士でトラブルが起きた

遺産の分割方法を巡って相続人間で意見が対立し、協議がまとまらなくなると、相続人間のトラブルを収束させてから遺産相続を行わなくてはなりません。

当事者間での解決が難しい場合は、家庭裁判所での遺産分割調停や審判に移行します。調停や審判を行う場合は弁護士へ依頼する必要があり、弁護士に支払う報酬も発生します。弁護士費用は着手金と成功報酬で構成され、総額で100万円を超えることもあります。

④ 相続の限定承認や相続放棄など特殊な手続きを行う

相続財産に借金などのマイナスの財産が多い場合は、相続放棄や限定承認などの特殊な手続きをとることがあります。これらの手続きには家庭裁判所への申し立てが必要です。期限も被相続人の死亡を知ってから3か月以内と短く設定されています。

特に限定承認は相続人全員で共同して行わなければならず、財産調査や財産目録の作成を素早く行わなければなりません。手続きも煩雑なので専門家への依頼が必須となるケースが多く、通常の相続手続きと比較した場合、追加費用が発生します。

相続手続きにかかる費用を抑えるコツ

相続手続きにかかる費用を抑えるには4つのコツがあります。

① 悩みにマッチした依頼先に依頼する

相続手続きの費用を抑える最も効果的な方法は、今遺族が抱えている悩みに最適な専門家を選ぶことです。

たとえば不動産の名義変更だけが必要なのであれば司法書士に、相続税の申告が必要なら税理士に、それぞれ直接依頼しましょう。

銀行などの遺産整理業務はワンストップで便利な反面、中間マージンが発生し割高です。

自分の状況を整理し必要な手続きを精査しましょう。そうすることで無駄な費用が発生しづらくなります。どの専門家に頼むべきか分からないときは、初回相談無料サービスを活用して、複数の専門家から話を聞きましょう。

② 一括見積もりで依頼先を見つける

相続手続きを依頼する専門家を見つけるときは、一括見積もりサイトを活用しましょう。

専門家ごとに報酬の価格やサービス内容が異なるため、一括見積もりで複数の専門家を比較してコストパフォーマンスが高い依頼先を見つけましょう。

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③ 費用負担について相続人同士で等分する

相続手続きにかかる費用の負担について、誰か1人に負担が集中してしまうと相続人間でトラブルになる可能性が高いです。

金銭負担に関するトラブルを防ぐためには、相続手続きを開始する前に発生する費用の負担について取り決めをしておきましょう。

手続きに関する費用負担の例

  • 法定相続分に応じて按分する
  • 相続人全員で等分する
  • 相続人の代表が全額負担をするが、その分相続遺産を多くする

相続財産の中から費用を支払うという取り決めをし、遺産分割協議書に明記しておくのも有効な方法です。費用負担を明確にすることで、円滑な協力体制を築き、スムーズに手続きを進められます。

④ 自分で相続手続きをする

自分で相続手続きをすれば、かかる費用は戸籍謄本などの必要書類を取得する際の実費のみですみます。

ただし、相続財産の価値評価や相続税の申告など、相続に関する手続きは複雑です。知識のない人が付け焼刃で手続きをすると高額な追加徴税などのリスクがあります。

場合によっては節約するつもりが、かえって大きな出費が生まれる可能性があります。相続手続きは、なるべく専門家に代行してもらいましょう。

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相続手続きは専門家への依頼がおすすめ

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相続手続きは戸籍の収集から財産調査、遺産分割協議、各種名義変更、税務申告など多岐にわたります。

法律や税務の専門知識が求められる場面も多く、手続きに不慣れな個人がすべてを正確に行うのは大変な労力と時間がかかるので、専門家に代行を依頼することをおすすめします。

専門家に依頼すれば費用はかかるものの、煩雑な手続きを迅速に、かつ正確に進めてもらえます。

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