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新築ホームインスペクションの重要性|タイミングや費用、選び方

最終更新日: 2024年07月03日

ホームインスペクションとは、住宅購入時や売却時に、住宅の状態を専門家が調査し、欠陥の有無や修繕すべき箇所などを客観的に診断することです。住宅診断や建物検査と呼ばれることもあります。

中古住宅を購入するときに依頼する方は一定いるようですが、「新築でもホームインスペクションはするべき?」「そもそも必要性がわからない…」と、気になる方もいるのではないでしょうか。

新築でもホームインスペクションを受けることで、以下のメリットがあります。

  • 雨漏り、シロアリ、不同沈下などのリスクを早期発見できる
  • 将来的な修繕費用を抑えられる
  • 住まいの安心を高められる

この記事では、ホームインスペクションの概要や必要性、新築で依頼する場合のタイミングや費用、調査を依頼する会社の選び方などを紹介します。

なお、住宅診断を検討するなら、プロに相談するのも一つの方法です。
専門家が第三者として建物を診断するため、事前に住まいの不安を解消できます。

安心して新築住宅の購入・居住するために、ぜひ見積もりも検討してみてください。

新築住宅でもホームインスペクションは無駄じゃない

夫婦とスタッフ

戸建てやマンションなど、住宅の購入は人生の中で大きな買い物です。
特に新築は価格も高額なため、安心して長く住み続けるうえで不安は大きいでしょう。

ここでは、そもそもホームインスペクションとは何か、実施することで何がわかるのかを解説します。

そもそもホームインスペクションとは

ホームインスペクションとは、簡単に言えば住宅診断サービスです。

専門家が第三者の視点で、建物の劣化状況や欠陥の有無を確認して診断・報告してくれるため、建物の状態を把握できます。この結果は、住宅購入時や売却、リフォームなどの際に役立つでしょう。

新築住宅であっても、購入前や定期的な点検として検討することをおすすめします。

ホームインスペクションによってわかること:検査項目

ホームインスペクションでは、建物の構造、外壁、内装、水回り、電気設備など、建物の主要な部位をくまなく調査します。

代表的な検査項目は以下のとおりです。

検査項目
構造
  • 基礎:不同沈下、ひび割れ、コンクリートの劣化など
  • 柱、梁:腐朽、シロアリ被害、接合部の欠陥など
  • 屋根:雨漏り、棟瓦のズレ、垂木の腐朽など
外壁
  • ひび割れ、欠損、塗装の劣化、雨染み
  • 外壁材の種類、状態(モルタル、サイディング、タイルなど)
  • 窓やドアの開閉状態、サッシの腐食
内装
  • 床:床鳴り、レベル差、表面材の劣化
  • 壁:クロスや壁紙の破れ、カビ、シミ
  • 天井:シミ、カビ、結露跡
水回り
  • キッチン:水栓金具の劣化、排水管の詰まり、ガスコンロの状態
  • 浴室:タイルの浮き、カビ、防水層の状態
  • トイレ:水栓金具の劣化、タンクの汚れ、排水管の状態
電気設備
  • ブレーカーの容量、感電防止ブレーカーの設置
  • コンセント、スイッチの破損、接触不良
  • 配線の状態

上記以外にも、シロアリ被害やアスベスト調査、給排水設備、換気設備など、オプションで調査項目を追加することもできます。

新築でホームインスペクションが重要な理由

男性と女性

中古物件の購入やリフォーム時にホームインスペクションを受ける方は一定いるようですが、新築には必要なのでしょうか。

ここでは、新築住宅でも受けたほうがいい理由や重要性を紹介します。

新築でも欠陥や不具合が存在する可能性があるため

新築住宅は、完成したばかりで目に見える欠陥は少ないように思えますが、以下のような欠陥や不具合が存在している可能性があります。

  • 施工不良:基礎の不同沈下、柱の腐朽、雨漏りなど
  • 設計ミス:構造的な欠陥、断熱材の不備など
  • 部材の欠陥:シロアリ被害、アスベスト含有建材の使用など

不同沈下とは、建物の基礎が沈下して傾く現象です。建物の構造や安全性を損なう重大な問題のため、ホームインスペクションでは、建物の傾斜や亀裂などを調査し、不同沈下の兆候がないかを確認します

その他、設計ミスや部材の欠陥など、実際には見えない部分に欠陥や不具合が存在する可能性があるため、新築住宅でもホームインスペクションが重要と言えます。

雨漏り、シロアリ、不同沈下などのリスクを早期発見できるため

ホームインスペクションは、様々なリスクを早期発見できます

先ほど説明したとおり、新築住宅であっても施工不良や設計ミス、部材の欠陥などの不具合が存在する可能性は大いにあります。

不同沈下の他、雨漏りやシロアリ被害がないかなど事前に兆候を把握できれば、健康被害の防止など未然にリスクを軽減できるでしょう。

将来的な修繕費用を抑えられるため

将来的な修繕費用を抑えられるのも、ホームインスペクションが重要な理由の一つです。

被害の内容によって異なりますが、修繕費用の例は以下の通りです。

  • 雨漏り:数十万から数百万円
  • シロアリ:数百万円から数千万円
  • 不同沈下:数千万から数億円

被害内容によっては数千万から数億円の高額になるケースもあります。

ホームインスペクションは、建物の劣化状況や欠陥を早期に発見することで、修繕費用を大幅に節約できる可能性があるのです。

住まいの安心感を高められるため

建物の構造や設備の安全性について、専門家が検査するため、安心して暮らせる環境を確保することができます。

雨漏り、シロアリ、不同沈下などに対する不安や心配など、将来的なトラブルを未然に防ぐことで、精神的な負担や経済的な損失も減らせるでしょう。

新築で後悔しないために:ホームインスペクションでよくある指摘事例

ここからは、新築住宅で実際にあった指摘事例を紹介します。

構造躯体(建物の骨組みとなる構造部分)

以下は、基礎のひび割れと不同沈下の事例です。

ひび割れ

この状態は、将来的に建物の傾斜や倒壊につながる恐れがあります。

外壁

実際の指摘事例として、外壁材のひび割れが挙げられています。

外壁ひび割れ

こうしたひび割れがあると、雨水が浸入し、内部の腐朽やカビの原因になります。

他にも、目地劣化も指摘事項の一つです。

劣化

このような劣化は、雨水が侵入し、建物の内部を損傷する可能性があります。

屋根

実際の事例として、屋根材の破損がありました。

屋根破損

こうした欠陥があると、台風などの強風によって飛ばされる可能性があります。

他にも、棟板金の浮きも指摘事項として挙げられています。

屋根欠陥

こうした欠陥は、雨水が浸入し、屋根内部を腐朽させる原因になります。

雨漏り

天井の雨漏りが確認された事例もあります。

雨漏り

また、サッシの隙間も指摘事項として挙げられています。

サッシ
このままだと、雨水が浸入し、室内のカビやダニの原因になります。

白アリ

実際、床下の蟻道を発見した事例があります。

シロアリ

これは、白アリが活発に活動している証拠です。
他にも、木材の被害が確認された事例もあります。

床にシロアリ

これは表面がボロボロに削られたり、内部が空洞になったりしている状態です。
過去の白アリ被害として、床下に過去の被害跡や薬剤散布の跡が見られた事例もありました。

設備

実際の事例として、コンセントの破損が挙げられます。

コンセント

また、ガス管の錆が確認された事例もあり、ガス漏れにつながる恐れがあるため注意が必要です。

錆びたパイプ他にも、エアコンの冷暖房機能不良が発見されたケースもあり、夏場など暑い時期に快適な室温を維持できなくなります。

その他

その他に、以下の事例も確認されています。

  • 換気不良
  • 断熱材の劣化
  • 耐震性の不足
  • 結露
  • カビ

ホームインスペクションは、こうした様々なリスクを事前に把握できます。指摘事例を参考に、安全で快適な住まいを守れるようにホームインスペクションの実施を検討してみてください。

新築のホームインスペクションを受けるタイミングや費用

住宅の検査

ここからは依頼のタイミングや費用、ホームインスペクションをお願いする会社の選び方を紹介します。

ホームインスペクション実施のタイミング:完成前検査や引渡前検査

新築住宅であれば、以下のタイミングでホームインスペクションを実施するとよいでしょう。

  • 完成前検査:上棟後、屋根の施工が終わる前頃
  • 引渡前検査:引き渡しの1週間~2週間前頃

ただし、以下のメリットやデメリットもあるため、しっかり確認しておきましょう。

依頼のタイミング メリット デメリット
完成前検査
  • 基礎や構造躯体など、建物の重要な部分を調査できる
  • 問題を発見した場合、建築業者に修正を依頼できる
  • 補修費用を抑えられる可能性がある
  • 仕上がりを確認できる
  • すべての調査ができない場合がある
  • 検査後も工事が行われるため、新たな問題が発生する可能性がある
引渡前検査
  • 完成した建物全体を調査できる
  • 雨漏りやシロアリ被害など、生活に支障をきたす欠陥を発見できる
  • 問題を発見した場合、売主や施工業者に修繕・補償を依頼できる
  • 安心して引き渡しを受けられる
  • 完成前検査に比べて調査できる範囲が限られる
  • 問題を発見した場合、修繕に時間がかかる場合がある

実施時期はあくまでも目安です。建物の状況や契約内容によって最適なタイミングは異なるため、ホームインスペクターに相談することをおすすめします。

一般的な費用

ホームインスペクションの一般的な費用の目安は以下のとおりです。

  • 戸建て住宅:5万円~7万円程度
  • マンション:4万円~6万円程度
  • 新築住宅:30万円~50万円程度

費用は、調査対象となる建物の種類や広さ、調査内容、依頼する業者によって異なります。

失敗しない新築のホームインスペクション会社の選び方

国土交通省認定業者を選ぶ

新築のホームインスペクション会社を選ぶ際は、国土交通省認定業者かどうかを確認しましょう

国土交通省認定業者とは、住宅瑕疵担保責任法に基づく認定を受けた業者であり、以下の基準を満たしていることが国土交通省によって審査・認定された者を指します。

  • ホームインスペクターの資格・経験
  • 調査内容
  • 報告書
  • 料金
  • 顧客対応

国土交通省認定業者の場合、専門知識を持ったホームインスペクターが写真や図面などを用いてわかりやすく報告書を作成してくれるため、欠陥や不具合の詳細をしっかりと把握することができます。

また、万が一トラブルがあった場合に、国土交通省に相談・苦情を申し立てることが可能です。アフターフォローも充実しているため、新築を購入するときにも安心と言えます。

検査内容や費用を明確に説明してくれる業者を選ぶ

検査内容や費用をしっかりと説明してくれる業者かどうかも選ぶときのポイントです。

たとえば、国土交通省認定業者ではない業者の中には、十分な資格や経験を持たないホームインスペクターが調査を行ったり、調査内容が不明確だったり、報告書が簡素だったりするケースがあります。

また、国土交通省認定業者ではない業者だと、トラブルがあった場合に国土交通省に相談・苦情の申し立てができないケースもあり、損をしてしまう可能性もあるでしょう。

丁寧に細かく検査内容や費用を説明してくれる業者かどうか、しっかり見極めることが大切です。

過去の施工実績や評判を調べる

過去の施工実績や評判を調べることも、依頼会社を選ぶうえで大切です。

具体的には、以下のような情報を調べましょう。

  • どのような建物のホームインスペクションを行ってきたか
  • どのような問題を発見・指摘してきたか
  • 顧客からの満足度
  • トラブルがあったかどうか

ネット上にはさまざまな口コミが広がっています。一つの情報をうのみにせず、知人や友人におすすめの会社を聞いてみるのもよいでしょう。

複数の業者から見積もりを取る

ホームインスペクションは会社によってサービス内容や料金が大きく異なるため、複数の業者から見積もりを取ることが非常に重要です。

特に見るべきポイントは以下です。

費用 相場や妥当性
サービス内容
  • 調査内容
  • 報告書の形式
  • 写真や図面の有無
  • オプションサービス
  • アフターフォローの内容
対応の質・早さ
  • 見積もりの依頼から回答までの時間
  • 質問に対する回答の丁寧さ
  • 調査日程の調整の柔軟性
  • アフターフォローの充実度
会社の信頼度
  • 会社の設立年数や資本金
  • 役員の経歴**
  • ホームインスペクターの資格や経験
  • 過去の施工実績や評判
過去のトラブルの有無
  • 過去のトラブルの内容
  • トラブルに対する対応
  • 顧客からの苦情

複数の業者から見積もりを取って、自分に合ったホームインスペクション会社を選びましょう。

新築のホームインスペクションを実施するときの流れ

三人

それでは実際にホームインスペクションを依頼するときの流れを紹介します。

主なステップは以下です。

  1. 業者選定・見積もり
  2. 検査申込
  3. 検査実施
  4. 報告書交付
  5. 必要に応じて修繕

業者選定・見積もり

まず、複数のホームインスペクション業者から見積もりを取り、比較検討しましょう。

国土交通省が定める「ホームインスペクションの技術基準」に基づいた調査を行っているかどうか、資格を持つ検査員が在籍しているかどうか、調査内容や料金などを確認することが重要です。

検査申込

希望する業者を選んだら、検査を申し込みます。申し込みには、物件情報や希望する検査日時などを伝える必要があります。

検査実施

検査員が実際に物件を訪れ、外観、屋根、基礎、内装、設備などを調査します。調査時間は、物件の規模や状態によって異なりますが、2時間程度と言われています。

報告書交付

検査後、1〜2週間程度で検査結果をまとめた報告書が交付されます。す. 報告書には、建物の状態や修繕が必要な箇所、修繕費用などが詳しく記載されているため、確認しましょう。

報告書のサンプルは、日本ホームインスペクターズ協会の「報告書PDF(ホームインスペクション(住宅診断)報告書」からダウンロードできるため、実際の報告書と照らし合わせてわからないことはしっかりと確認するようにしましょう。

参考:報告書PDF(ホームインスペクション(住宅診断)報告書|日本ホームインスペクターズ協会

必要に応じて修繕

報告書の内容を参考に、必要であれば修繕を行います。修繕は、自分で行うことも業者に依頼することもできます。

新築のホームインスペクションを実施で留意しておくこと

,風呂場の検査

ホームインスペクションを依頼する際、事前に理解しておくことがあります。具体的に紹介します。

ホームインスペクションを断る不動産会社もいる

すべての不動産会社がホームインスペクションを快く受け入れてくれるわけではありません。中には、ホームインスペクションを断ったり、調査内容を制限したりする不動産会社もあります。

建物の品質に自信がある、トラブルを避けたい、費用負担を避けたいなど断る理由はさまざまですが、別の不動産会社に相談したり、ホームインスペクションの内容を限定して依頼したりと他の方法を検討してみましょう。

立ち合いのときは動きやすい服装を選ぶ

新築ホームインスペクションでは、建物の隅々まで調査するため、かがんだり、上り下りをしたりすることが多いです。そのため、伸縮性のある動きやすい服や汚れてもいい服装を選びましょう

なお、靴は脱ぎ履きしやすいスニーカーなどがおすすめです。

チェックするときに便利なアイテムを用意する

以下のアイテムを持っていくと、検査時に便利でしょう。

  • メモ
  • カメラ
  • 懐中電灯
  • メジャー
  • 水平器
  • マスキングテープ
  • 虫よけスプレー
  • ボールペン
  • 帽子
  • 軍手

特に、メモやボールペン、マスキングテープは気になる箇所を記録したり、目印をつけたりするのに役立ちます。

その他、検査は2時間程度が目安と言われていますが、思った以上に時間がかかる場合があります。飲み物を持参しておき、水分補給ができるようにしておきましょう。

お子様に配慮した工夫をする

小さなお子様がいるご家庭の場合、安全面や集中力への配慮も忘れないようにしましょう。

検査時間をお昼寝の時間帯や、お子様が遊びたい時間帯は避けたり、検査中に水分補給ができるように、おやつや飲み物を用意しておいたりするなどです。

ホームインスペクターの中には、お子様がいるご家庭への対応に慣れている方もいますが、事前に伝えておくと双方にとって安心です。

新築のホームインスペクションはプロに相談|安心の住まいを手に入れよう

男性

今回は、新築のホームインスペクションについて、必要性やメリット、依頼方法などを紹介しました。

新築のホームインスペクションは、トラブルを未然に防ぎ、安心してマイホームを購入するために役立ちます。断られた場合も諦めずに、自分に合った方法で建物の状態を確認しましょう。

なお、ホームインスペクションを依頼するならプロに相談するのも一つの方法です。複数の会社から見積もりを出し、一つひとつのご家庭にあった提案をしてくれます。安心した住まいを手に入れるために、ぜひ専門家への相談も検討してみてください。

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