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離婚手続きの流れは?離婚前後にやるべきこと一覧

最終更新日: 2024年01月12日

夫婦が離婚した際には、離婚前の準備や離婚後にやるべき手続きが数多く存在します。協議離婚や調停離婚など、離婚の進め方によって、手続きの流れや必要な書類が異なるのが特徴です。主な離婚の進め方や、離婚前後の手続きに必要なものについて解説します。

離婚の進め方4種類

離婚といっても進め方の違いによって、4つのパターンがあります。話し合いで決まる協議離婚や調停が必要な調停離婚など、それぞれの特徴を見ていきましょう。

協議離婚

夫婦間で話し合い、離婚するかどうかを決める方法を協議離婚といいます。国内での離婚のほとんどがこのパターンに該当している、最もポピュラーな形式です。

協議離婚では互いが納得すれば離婚届を提出するだけで、離婚が成立します。夫婦双方が記入する離婚届以外に必要な書類はなく、特別な費用も発生しません。

2人で話し合っても離婚に関して同意できなかった場合は、調停や裁判を行うことになります。そのほかのパターンとは異なり、当事者だけで話し合うことで離婚を成立させるのが協議離婚です。

調停離婚

夫婦間での話し合いで離婚が成立しなかった場合、第三者として家庭裁判所の調停員が間に入ります。こうして行われる話し合いを調停といい、裁判ではない点に注意しましょう。

調停離婚を行うためには、離婚したい側から家庭裁判所に申し立てを行う必要があります。手続きをしてから第1回調停が始まるまでには1カ月以上かかるため、離婚するまでにある程度の時間がかかるのが特徴です。

調停離婚に至る例としては、話し合いでは互いに納得できなかったり、相手が話し合いに参加しなかったりするケースが該当します。申し立てに必要な書類を用意する際に費用がかかる点を覚えておきましょう。

審判離婚

第三者を交えた調停の場でも問題が解決しなければ、裁判官が離婚の審判を下すという仕組みがあります。こうした離婚の方法を審判離婚と呼びますが、ほとんど発生しないとされる珍しいケースです。

離婚調停が不成立になると、次回の調停か裁判を行う必要があります。夫婦間で離婚の合意があっても調停が成立しなかった場合に、裁判官が『調停に代わる審判』を下すのが審判離婚です。

『病気などの理由で調停を続けるのが難しい』『子どものためにも早く離婚を成立させたい』など、審判離婚に至る理由は多岐にわたります。審判は判決と同じ効果を持っているものの、不服があれば異議申し立ても可能です。

裁判離婚

調停や審判で離婚が成立しなかった場合、裁判で互いの意見を主張する段階に進みます。こうした離婚の方法を裁判離婚といい、訴訟の申し立てを行ったり訴状を作ったりとさまざまな手続きが必要です。

離婚訴訟を行うには相手の不貞行為や重い精神病など、離婚を認められるような理由がなくてはなりません。まずは裁判所で第1回口頭弁論を行い、その反論として第2回口頭弁論が行われるという流れです。

裁判離婚では証人を探すだけでなく、主張に必要となる証拠を集めるなど、弁護士とともに裁判に臨むことになります。弁護士への依頼や書類の用意など、ある程度の費用が発生するのが特徴です。

離婚前にやるべきこと4つ

離婚にまつわる手続きは非常に多く複雑なため、離婚前から準備を始めておきましょう。実際に離婚に踏み切る前に、話し合って決めておくべき内容を解説します。

慰謝料の取り決め

相手から精神的な苦痛を受けて離婚したと認められるケースでは、慰謝料を請求できます。精神的苦痛と見なされる主な離婚原因には、以下の5つが挙げられます。

  • 不倫、浮気などの不貞行為
  • DV、モラハラ
  • 悪意の遺棄(生活費を払わない、無断で別居する、家事や育児に協力しない)
  • セックスレス
  • 借金

離婚する原因を作った側を『有責配偶者』といい、性別にかかわらず有責配偶者が慰謝料を支払います。慰謝料の相場は原因によって異なるため、調停や裁判で金額を決める方法もありますが、離婚前から相場を把握しておくのがおすすめです。

財産分与の取り決め

婚姻生活中の財産を2人で配分する制度を、財産分与といいます。現金・預貯金や不動産などが財産に該当し、夫婦それぞれの貢献度に応じて配分するのがポイントです

財産には株式・保険料はもちろん、普段から使っていた家具なども含まれます。離婚後にトラブルにならないよう、事前にお互いの財産について把握しておくと、話し合いがスムーズです。

財産分与で財産を得た後も、名義変更などの細かい手続きが必要になります。不動産の査定や名義変更の方法など、どのような手続きが必要なのか離婚前に調べておきましょう。

子どもの親権

子どもがいる家庭では、親権をどちらが取得するかが決まらなければ、離婚が成立しません。夫婦で話し合いを行い、親権をどちらが持つか決めてから、離婚届を提出するのが基本です

母親側が親権者になるケースが多いですが、家庭の事情によっては父親側が親権を得ることも珍しくありません。親権者になりたいのであれば、具体的な事例などを確認し、親権に対する知識を深めましょう。

特に子どもが未成年の場合は、子どもの生活環境や幸せを考えて、どちらが親権者になるかを決める必要があります。夫婦だけでは話し合いがまとまらない可能性もあるため、第三者に間に入ってもらうのもよい方法です。

子どもの養育費・面会交流の取り決め

親権を獲得していない非親権者には、離婚後に子どもと面会交流をする権利があります。面会交流には頻度や方法などの条件があるため、事前に取り決めておくことで、離婚後のトラブルの防止が可能です。

一般的に面会交流は、月に1~2回ほど行うケースが多くなっています。ただし離婚の原因がDVだったケースなど、非親権者を子どもに会わせたくないという家庭もあるため、注意が必要です。

また親権を獲得した保護者は、非親権者に養育費を請求できます。実際の調停や裁判でも用いられる養育費算定表などを見て、養育費の相場を確認した上で話し合いを進めましょう。

離婚手続きの流れ

離婚手続きに必要なものや離婚届の書き方は、離婚の方法によって多少異なります。具体的な手続きの流れや、知っておきたいポイントを見ていきましょう。

必要な書類

離婚には主に4つの種類がありますが、それぞれのパターンによって必要な書類が異なります協議離婚のために用意するものは、離婚届のほかに運転免許証やパスポートなどの本人確認書類のみと少ないのが特徴です。

一方で調停離婚では、印鑑に加えて調停調書の謄本などを用意します。裁判離婚では判決の謄本や判決確定証明書も提出する必要があるため、必要な書類を不備なくそろえましょう。

また夫婦双方の本籍地ではない自治体の役所に書類を提出する場合には、戸籍謄本が必要です。調停離婚や裁判離婚では、離婚成立から10日以内に届出を行わなければ、5万円以下の過料が発生する恐れがあるため注意しましょう。

離婚届の書き方・提出方法

離婚届は離婚方法に関係なく提出する必要がある書類ですが、書き方にも違いがある点を覚えておきましょう。離婚届には証人の欄がありますが、この項目は協議離婚の場合のみ記入します。

家庭裁判所で調停・裁判を行っているケースでは、証人の署名は必要ありません。協議離婚では夫婦が2人で記入・押印を行いますが、調停離婚・裁判離婚では相手の署名・押印がなくても離婚届の提出が可能です。

役所に直接出向いて提出する場合には、身分確認のため本人確認書類が必要になります。協議離婚では第三者に提出を頼んだり郵送したりと、さまざまな形式で離婚届を提出できるのがポイントです。

勝手に離婚届を提出されるのを防ぐ手続き

夫婦で親権を争っている最中などに、早く離婚したいと考えている相手が、勝手に離婚届を提出する事例も存在します。このようなケースでは、双方の同意がなくても離婚が成立してしまう可能性があります。

役所で離婚届不受理申出を行うことで、勝手に離婚届を提出されるトラブルを防止可能です。一度申出を行った後は、自ら取り下げない限り離婚届を受理できなくなるのが、この制度のメリットです。

本籍地の役所に行き必要な書類を書いて提出することで、離婚届不受理申出が完了します。相手が離婚を急いでいる場合など、不安を感じているなら、不受理申出をしておくのがおすすめです。

離婚後に必要な手続き

離婚が成立した後も、名義変更などの細かな手続きは数多く存在します。離婚後に忘れず行いたい手続きと、必要な書類についてチェックしましょう。

戸籍・姓の手続き

婚姻にあたって姓を変更した人の多くは、離婚した際に姓の変更手続きを行います。離婚届にチェック欄があるため、『婚姻前の氏に戻る者の本籍』欄で『元の戸籍に戻る』『新しい戸籍を作る』のどちらかを選びましょう。

子どもがいる家庭では、子どもを旧姓に戻す手続きを踏まないと、親子の苗字が違う状態になってしまいます。親子で旧姓を名乗る場合は、新たな戸籍を作成した上で、子どもの氏の変更許可を申し立てる手続きが必要です。

離婚後も婚姻中に使っていた姓を名乗りたいなら、離婚届に加えて『離婚の際に称していた氏を称する届(婚氏続称届)』を提出する必要があります。婚氏続称届は離婚が成立してから3カ月以内であれば、いつでも提出が可能です。

住民票の手続き(異動・世帯主変更)

離婚後に引越しをする人は、役所で住民票異動届を提出する必要があります。引越し先が現在の住居と同じ市区町村内なら、役所でもらった転居届を記入し印鑑を押して届出を行いましょう。

別の市区町村に引っ越す場合は、転居届を提出するとともに転出証明書の発行が必要です。引越しが終わったら、転居先の役所で転入届を出す作業も忘れずに行いましょう。

また離婚によって世帯主が元パートナーから自分に変更されるケースもよくあります。この場合は世帯主変更届を提出することになり、印鑑に加えて本人確認ができるものと保険証が必要です。

住所・氏名の変更手続き

運転免許証やパスポートなど、身分証明書として利用するものには、必ず住所・氏名が記載されています。住民票と情報が異なっていると証明書として使えないため、それぞれ変更の手続きが必要です

免許証は警察や運転免許試験場で、パスポートはパスポートセンターで氏名・住所の変更を行います。マイナンバーカードは役所で手続きを行いますが、期限内に手続きをしなければカードが失効するため注意しましょう。

また銀行口座クレジットカードなど、金融機関に関する名義変更も重要なポイントです。手続きを行わずにいると不正利用を疑われる恐れがあるため、速やかに情報変更を行うことをおすすめします。

契約の名義変更手続き

離婚による財産分与を行っていても、名義変更をしていなければ自分の財産とは認められません。勝手に売却されてトラブルになる可能性もあるため、離婚後2年以内に名義変更を行うことが必要です。

不動産であれば離婚届の提出後に必要な書類(登記事項証明書、固定資産評価証明書など)を用意し、登記申請書を作成します。登録免許税や書類の発行費用など、どの程度のコストが発生するか調べておくとスムーズです。

の名義変更には譲渡証明書や車検証、車庫証明書など、複数の書類が必要です。夫婦双方の印鑑証明書、委任状をそろえて運輸支局(軽自動車の場合は軽自動車検査協会)で手続きを行います。普通車と軽自動車で必要なものが違うため、気を付けましょう。

保険会社との契約者や保険金の受取人が元パートナーだった場合、いざというときにお金を受け取るためにも、名義変更が欠かせません。戸籍抄本・謄本や身分証明書類を用意し、保険会社に連絡して住所・氏名を変更しましょう。

健康保険の手続き

妻側が夫の健康保険に加入している場合は、離婚することで扶養から外れるため、加入資格を失ってしまいます離婚から14日以内に手続きを行い、新たに国民健康保険に加入しましょう。

手続きの際には国民健康保険被保険者取得届と、健康保険資格喪失証明書の両方が必要です。健康保険資格喪失証明書は扶養先の会社が発行するため、事前に元パートナーの会社に依頼を行います。

離婚後に引越しをするなら、転居前に保険に加入するのは避けましょう。転居後に再び加入手続きを行わなければならないためです。二度手間にならないよう、転居してから手続きをしましょう。

年金の手続き

婚姻期間中に納付した保険料に応じて、厚生年金を分割する制度を年金分割といいます。離婚してから2年以内に年金事務所で手続きを行うことで、年金分割の請求が可能です。

分割請求を行う際は、双方の戸籍謄本に加えて、年金番号かマイナンバーが分かる書類を用意します。協議離婚が成立している場合は、互いに合意した内容が記載された公正証書が必要です。

調停や裁判を行っているなら、家庭裁判所による調書の謄本・抄本を用意しなければいけません。審判離婚や裁判離婚では、審判や判決の証明書である確定証明書が必要になるのがポイントです。

離婚時の取り決めは公正証書で残しておくのがおすすめ

離婚をする前の準備や離婚後の手続きなど、離婚にまつわる作業は多岐にわたります。用意する書類も多いため、離婚方法に応じて何が必要になるかを正しく把握しておきましょう

子どもの親権や慰謝料などに関して話し合いに時間がかかるようなら、弁護士などの専門家に介入してもらう方法もあります。話し合いで互いに納得できなければ、調停の申出を行いましょう。

公正証書は契約書の一種であり、合意内容を記載して公証人に作成してもらいます。離婚後のトラブルを防ぐためにも、養育費や慰謝料などの重要な取り決めについては、公正証書として残すのがおすすめです。

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