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離婚協議書と公正証書の違いとは?書き方選び方のポイントを解説

最終更新日: 2022年12月09日

離婚を考えている場合に、離婚に際しての条件が気になっている人もいるでしょう。財産・子ども・住宅など、夫婦間の取り決めを形にするには、離婚協議書や公正証書の作成がおすすめです。離婚協議書と公正証書の違いや作成方法、注意点について解説します。

離婚協議書とは

通知書

離婚協議書は離婚の際に夫と妻が交わす契約書です。まずは書類の具体的な特徴や、作成のメリット・デメリットを見ていきましょう。

離婚に関する夫婦間の条件を記した書類

離婚協議書は離婚に関する条件について記した書類です。具体的には子どもの親権・養育費・慰謝料など、夫婦で取り決めた内容を記します

契約書によって条件を明確にし、お互いに納得していることを示すために作るものです。契約書を作成しない場合は条件が曖昧になり、離婚後に金銭や子どもの問題でトラブルに発展する可能性もあります。

離婚協議書のメリット・デメリット

離婚協議書を作成しておくと、離婚後のトラブルを回避できます。書面があればお互いが内容を確認し、一度は納得していると判断され、過度な金銭の要求や支払い逃れを防げるでしょう。自分たちで作れば、作成に費用がかからない点もメリットです。

しかし離婚協議書にはデメリットもあります。契約書があるからといって、必ず相手が約束を守るとは限りません。離婚協議書自体には契約違反のペナルティーはないため、期待できるのは「契約書があるから約束を守ろう」という意識を高める効果です。

また自分で作成した場合知識がないため、法的に無効となる契約をしてしまう可能性もあります。

公正証書とは

公正証書

離婚の際に作る書類としては、離婚協議書のほかに「公正証書」があります。離婚協議書とはどんな違いがあるのでしょうか。公正証書の特徴やメリット・デメリットを解説します。

公証人が内容を証明してくれる書類

公正証書は公証人が内容を証明し、契約を明確にするための書類です。公証人とは判事・検事などの職務経歴があり、法律に明るいと認められた人が任命される公務員を指します。

公証人に内容を確認してもらい法律上有効な契約を結ぶことで、離婚協議書に比べてトラブルのリスクが軽減するでしょう。

書類の作成のためには公証役場に出向く必要があり、自分たちで自由に作れる離婚協議書よりも、ハードルは高くなります。

公正証書を作るメリット・デメリット

公正証書を作るメリットは、契約を結んだ証拠としての能力が高い点です。原本は公証役場に保存され、法的に認められる養育費や、慰謝料の支払いがなされない場合、強制執行ができます。

一般的な離婚協議書には法的な強制力はなく、何らかの強制力を持たせるには別途離婚調停が必須です。公正証書は要件を満たしていれば、強制執行が可能なため、トラブルが起きた場合に役立ちます。

デメリットとしては作成に手数料がかかる点や、離婚に至った理由や、条件を公証人に明かさなければならない点が挙げられます

離婚協議書と公正証書のどちらを作るべき?

悩む女性

離婚協議書と公正証書のどちらを作るかは、離婚原因や養育費・慰謝料・親権の有無で揉めているかどうかで判断できます。主なパターンを見ていきましょう。

離婚協議書と公正証書の一番の違いは強制力

離婚協議書と公正証書の違いは強制力です。公正証書に強制執行についての文言が含まれる場合に限り、給与の差し押さえといった、ペナルティーが課せられます。公正証書であっても「強制執行について法的に認められる文言」が抜けている場合には、強制執行の対象となりません。

相手が約束を守らないときには、公正証書が効力を発揮します。何らかのトラブルが予測される場合は、公正証書の作成が向いているでしょう。作成の際は強制執行が無効とみなされないよう、公証人や行政書士に相談しておきましょう。

取り決めや内容を明確にしたいというのが目的であれば、離婚協議書でも契約内容・条件の確認は可能です。

参考:公正証書によって強制執行をするには|法務省

金銭の支払いがあるなら公正証書がおすすめ

公正証書に記載する条件の多くは、金銭に関する内容です。強制執行は基本的に金銭の支払いが対象となります。養育費・慰謝料・その他金銭の支払いが発生する場合は、公正証書を検討しましょう

財産分与や請求の項目がないのであれば、離婚協議書と大きな違いはありません。第三者を交えていることで、契約を守ろうとする意識が働く可能性はありますが、強制力が働かないため、メリットは少なくなるでしょう。

書類を作成する前に準備すること

パソコンで書類を作る人

離婚協議書や公正証書を作成する前に、下準備をしておくと手続きがスムーズです。離婚を決めた2人で話し合って決めておきたいことや、必要な道具について解説します。

離婚の条件を大まかに決めておく

まずは書類の作成前に夫婦で話し合い、離婚の条件を決めておきましょう。親権はどちらが持つのか、養育費は誰がいくら支払うのかなど、重要なポイントはいくつもあります

財産分与についても協議が必要です。特に金銭的な問題は金額や支払う期間を明確にし、お互いが納得の上で書類作成に移りましょう。

離婚協議書・公正証書どちらも離婚前の作成が推奨されます。離婚が成立してからでは話し合いが難航しやすく、会う機会を設けるのも難しくなるためです。書類作成を早いタイミングで完了するためにも、並行して話し合いを進めましょう。

印鑑の用意

婚協議書・公正証書は後日、契約の証拠として効力を発揮します。両者が押印しサインをするのが一般的です。

自作の離婚協議書であっても、両者の押印と自筆署名は残しておきましょう。万が一トラブルになり裁判に発展すると、署名押印が大きな証拠になります

署名押印がなくどちらかが契約の存在を認めない場合、勝手に作成した書類と判断されるリスクもあるためです。可能な限り印鑑は実印を用意し、契約書が2枚以上になる場合は割印を押しましょう。

離婚協議書に盛り込むべき項目

書類を書く人

離婚協議書には盛り込んでおいた方がよい項目がいくつかあります。基本的な記載項目と内容について、確認しましょう。お互いに必要な項目を話し合い、契約内容を決めるのが大切です。

離婚に合意していること

離婚協議書にはまず「離婚に合意していること」を記載します。夫婦の名前を書きお互いが協議離婚に同意していること、協議書に記載されている契約に同意していることを示す項目です。

離婚の合意に関する内容は、後日のトラブルを防ぐためにも役立ちます。どちらかの気が変わった場合でも、一度合意を交わした事実を証明しやすいでしょう。

離婚協議書の基本的な項目として、最初の一文に記載するのが一般的です。

子どもに関すること

子どもがいる場合は離婚協議書の中に、子どもに関する項目を盛り込みます。親権・養育費・面会の頻度や時間が主な項目です

親権者は子どもの養育や、財産管理を任された代理人を指します。子どもと一緒に暮らし養育する側が、親権者です。未成年の子どもがいる場合、どちらかを親権者として設定しなければ、離婚届が提出できません。

養育費は金額だけでなく、支払いの開始日・終了日、さらに支払い方法を記載します。標準的な養育費の目安は、家庭裁判所が算定表を公開していますが、お互いの状況や都合に合わせて設定が可能です。

面会については子どもの意思が重要です。できるだけ本人の意思を尊重し、回数や方法、宿泊を含むかどうかなど、具体的に取り決めをしていきましょう。

財産に関すること

夫婦の財産は離婚した時点で分割されます。一般的には半分ずつ分けることになりますが、お互いの貢献度によって話し合いも必要です

財産については財産分与の割合・価値の算定方法・住宅の取り扱いなどが主な項目です。夫婦で所有している家にどちらかが住み続ける場合、価値の算定も必要になるでしょう。

年金の支給が開始される前でも、お互いの合意があれば年金分割が可能です。婚姻期間中の厚生年金を分割したい場合は、協議書に割合や合意について記載しましょう。

慰謝料が発生している場合、財産分与との相殺になる可能性もあります。金額や慰謝料を含んだ財産分与の割合を記載し、2人の資産をどのように分けるのか具体的に取り決めましょう。

公正証書の作成方法

アドバイス

公正証書の作成には夫婦2人だけでなく、第三者が関与します。基本的な作成方法と準備するもの、申し込みの方法について見ていきましょう。申し込み手続きが必要になる分、離婚協議書よりも手間がかかります。

事前に証書に記す内容を決め、書類を準備

公正証書の内容は離婚協議書と似たようなものです。離婚の同意・財産分与・子どもに関する契約など、事前に内容を決めましょう。

公正証書の作成には本人確認書類や戸籍謄本が必要です。不動産の分割がある場合には、不動産に関する書類も別途求められます

財産分与の金額を明確にするために、夫婦の財産に関する資料や、住宅の登記謄本・住宅ローン関連の書類・年金手帳を準備しておきましょう。第三者が関わることで、判断材料となる資料を提示・提出する手間がかかります。

公証役場に申し込み

公正証書の原案作成や、必要書類が準備できた後は、公証役場に手続きを申し込みます。地域の指定はないため、2人で出向きやすい場所を選択しましょう。一般の役所のように当日申し込みと発行は不可能なので、予約が必要です

内容の確認や必要書類のチェックが行われ、問題がない場合に正式な書類の作成に進みます。公証人と打ち合わせをしながら、正式な書類を作成するため、都合が合う日を設定しましょう。

必要書類の不足や内容の確認漏れなどの問題が起きると、公証役場に出向く回数が増える可能性があるため、下準備をしっかりとしておくのが大切です。

公正証書への署名押印

予約日時に公証役場に出向くと書類が完成します。公正証書の内容を確認し、署名押印を済ませましょう。

書類に記載された内容・金額・条件が、正式な契約です。間違いがないか確認し、納得の上で手続きを行うのが重要です。法律面で有効な文言が記載されるため、内容が難しくなるケースもあります。じっくり読み込んで意味を把握しましょう。

完成した公正証書は正本または謄本として、2人に渡されます。紛失しないよう大切に保管しましょう。

公正証書を作る際の注意点

相談を受ける法律家

公正証書を作るにあたって、離婚協議書とは異なる注意点があります。公証役場が関与する、法律に基づいた書類のため、作成方法と内容については専門家の意見を聞くのが適切です。基本的なポイントを解説します。

夫婦どちらかだけでは作成できない

公正証書は原則的に、夫婦2人が公証役場に出向いて作成します。1人で進められる手続きもありますが、最終的には2人がそろっていることが条件です

都合が合わない場合や、お互いに顔を合わせるのが難しい場合は、代理人による出頭も可能です。代理人が公証役場に出向く場合は、本人の印鑑証明書や委任状を持参しましょう。

代理人は公正証書の内容や金額を確認し、最終的な判断を行う役割です。本人の意向に沿うよう、契約の内容を把握している人が望ましいでしょう。

決められる内容は法律上有効な範囲内

公正証書は法律の専門家である公証人が、内容をチェックします。夫婦2人だけの問題ではないため、法律で認められる内容が基本です。

法律違反や法律上認められている内容を制限するような条件は、チェックの際に契約内容から外されます。お互いに合意していても認められないため、法律に従って作成されるものと考えておきましょう。

たとえば子どもの養育費を親が放棄する、子どもとの面会を全面的に禁止するといった内容は、子どもの利益に反すると判断されると、無効になる可能性があります。夫婦間の取り決めであっても、再婚禁止の約束や、無理な金銭要求など、違法性のある項目は記載できないため、注意しましょう。

行政書士に依頼するメリット

公正証書は行政書士に依頼すると、スムーズに作成できます。行政書士は法律に基づいた書類作成に精通しており、契約内容や文言も適切に記載してくれるでしょう

自作の場合には内容や文言の修正で、手続きが複雑になる可能性があります。離婚協議書の場合は無効となる契約を、盛り込んでしまうリスクもあるでしょう。公証人がチェックする公正証書でも、原案を行政書士に提示し、正式な書類を作ってもらうと、確認や修正の手間が省けます。

ミツモアでは離婚協議書・公正証書の作成をサポートしてくれる行政書士から、一括で見積もりを取得できます。数万円程度で法律上有効な書類を作成できるため、まずは状況を相談してみましょう。

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後悔しないためには冷静な判断が必要

行政書士

離婚前には離婚協議書または公正証書を作成し、金銭面や子どものことを取り決めておくと、トラブル回避に役立ちます。行政書士に依頼すると、法律に基づいた文言・条件を盛り込んだ契約書が作成でき、無効な契約を結ぶ心配がありません

相場の確認や親身になってくれる行政書士を探したい場合は、一括見積もりがおすすめです。ミツモアでは行政書士の相見積もりができます。状況に応じて離婚協議書・公正証書どちらを選ぶべきかも相談できるでしょう。

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