キッチンに小さな黒っぽい虫が大量発生していたら、もしかするとそれはシバンムシかもしれません。乾いた食品から発生しやすく、駆除後も適切な処置をとることが大切です。シバンムシの発生原因や駆除方法、再度発生させないための予防策について解説します。
シバンムシとは?
シバンムシがどのような虫なのか、パッとイメージできない人もいることでしょう。まずは見た目や生態サイクルなど、特徴を解説します。
シバンムシの特徴
シバンムシは鞘翅目(しょうしもく)シバンムシ科に分類される甲虫の総称です。
シバンムシの成虫時の体長は約2~3㎜です。体の色は赤褐色で、全体が黄色の短毛に覆われています。また幼虫の見た目は「カブトムシの幼虫」のようなイモムシですが、とても小さく動かないので発見が困難です。
日本全土に分布し、食品工場やタバコ工場などのほか、スーパーや一般家庭の乾燥食品からも発生します。
シバンムシの成虫は飛ぶことができ、ライトの光に向かっていくことも。午前中は活動が鈍く、午後から夜間に活動が活発になります。
名前の由来は?
シバンムシの名前の由来は、「Death-Watch Beetle(死を見る虫)」から来ています。
なぜ、「死を見る虫」と呼ばれるのか?それは、シバンムシ同士がコミュニケーションをとる際の音が、「臨終のシーンと静まったときに、ひそかに聞こえる音」に似ているからです。
放置は危険!繁殖力が高いシバンムシ
シバンムシを放置していると、気づかないうちに大量発生してしまいます。
シバンムシの成虫は1匹が約50~100個の卵を産みます。卵は約23℃の環境下で約10~12日後にふ化し、約40日後のサナギを経て約5~7日後に成虫になります。成虫の寿命は約10~25日です。
もっとも繁殖しやすい環境は、「温度25℃、湿度60%以下」の環境だと言われています。
主な発生時期
シバンムシの主な発生時期は5~10月です。基本的に全国で見られます。主に家の中で見られる成虫が発生し始めるのは5月頃で、9~10月にかけて活動が活発になります。
成虫の平均寿命は最大3週間程度でそこまで長くないですが、繁殖力が強く世代交代も早いため、放置していても絶滅することはありません。また、シバンムシは冬眠せず、幼虫の姿のまま越冬します。
シバンムシによる被害と発生する場所
シバンムシは体長が小さいため、網戸のわずかな網目からでも家に入ってくることがあります。完全な防御は難しいですが、玄関や窓を開けっぱなしにせず、網戸の破れなどのすき間はできる限りふさぎましょう。
また家に侵入したシバンムシがどこに発生するかもまとめました。主に乾燥食品や畳、紙類への被害がみられます。
侵入経路 |
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発生場所 |
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なお、シバンムシ自体は人体に無害です。人を刺したり噛んだりするといった事例はなく、誤って口に入ってしまっても食中毒を起こすこともないようです。
とはいえシバンムシに食い荒らされた食品を食べようとは思えないですよね。どちらかというと、精神的なダメージのほうが大きいでしょう。
発生場所①乾燥した食品やドライフラワー
一般家庭に発生するシバンムシは、乾麺・米・小麦粉・かつお節・お菓子など、乾燥した食品全般を好みます。ビニール袋に入れられた乾燥食品も、包材をかみ破られて食害に遭う可能性があるため注意が必要です。
また、ドライフラワーにもシバンムシが発生することがあります。食害に気付かず放置していると、ボロボロに食いちぎられてしまいます。
そのほかにも、タバコの吸い殻・ペットフード・医薬品など、あらゆる乾燥植物質から発生する可能性があります。
発生場所②畳
屋内で発生するシバンムシは、畳にわいてしまうこともあります。家の中でシバンムシを見た場合には、畳に小さな穴がないかチェックしましょう。
畳に発生する虫としては、ダニやチャタテムシも挙げられます。しかし、ダニは肉眼で見つけられないほど小さく、チャタテムシも畳に穴を開けることはありません。畳に湧いたシバンムシを放置しておくと、畳が穴だらけになることも。
シバンムシを見つけたら早めに駆除するようにしましょう。
以下の関連記事では、チャタテムシやダニの特徴を紹介しています。「もしかしたらチャタテムシ?ダニ?」と思った方はぜひ参考にしてみてください。
シバンムシに寄生するアリガタバチは人を刺す
アリガタバチとは、シバンムシの天敵にあたる「蜂」の1種です。見た目はアリに似ていて、2.5mm程度の小ささ。シバンムシの幼虫に寄生し、卵を植え付けて繁殖する虫です。
「天敵だからシバンムシを勝手に駆除してくれるのでは?」と思うかもしれませんが、アリガタバチは人間に危害を加えます。
アリガタバチのメスは毒針を持っていて、何度か刺されるとかゆみや腫れといったアレルギー症状を引き起こすことに。まれにアナフィラキシーショックを起こしてしまうケースも。
シバンムシが繁殖するとアリガタバチも繁殖してまずしまうので、はやめの駆除が必要です。
シバンムシを駆除する方法とおすすめの駆除グッズ
シバンムシが大量発生しているのを見つけたら、まず発生源となった乾燥食品などは処分しましょう。いくら衛生被害がそこまで大きくないとはいえ、放っておくとどんどん繁殖する可能性もあります。
また防虫剤への耐性も強いので、市販の殺虫剤を使用するときには「シバンムシに有効なもの」を選ぶ必要があります。おすすめ殺虫剤を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
①殺虫剤を使う
殺虫剤といっても様々なタイプがあります。この小見出し内では、「スプレータイプ」と「煙タイプ」の殺虫剤について紹介します。
スプレータイプのメリットは、目の前にいるシバンムシをすぐに殺せることです。しかし、隠れているシバンムシなどを殺すことはできません。「スプレータイプ」の商品の中には駆除効果が1か月程度持続するものもあります。
「煙タイプ」の駆除剤には主にくん煙剤があります。燻煙剤を使用すると家の中にいる隠れたゴキブリまで駆除することができるのがメリットです。しかし、土の中に隠れている卵や幼虫を駆除することはできません。
くん煙剤を使用する際は、1度使用した後、2~3週間あけて再度使用しましょう。1回目では殺せなかった卵や幼虫も2度目の使用時には成虫となって、土の外で生活するため、駆除することができます。
KINCHO(キンチョー) 「イヤな虫キンチョール」
シバンムシはかなり小さいので、直接スプレーをかけると吹き飛んでいってしまう可能性があります。少し離れた場所から、発生源全体に散布しましょう。
「キンチョール」にはピレスロイド成分が使われているので、爬虫類や魚類にとって毒になります。ペットとして飼っている方は使用時に注意が必要です。
バルサン 「いや~な虫用 くん煙剤」
カメムシやムカデ・ゲジ・アリに対しても効果があり、駆除範囲が広いのが特徴です。火災報知器カバーもついているため、わざわざカバーを購入する必要がありません。
②シバンムシを誘引して駆除する
光に集まるシバンムシのの習性を利用したライトトラップや、フェロモンで誘引するタイプのトラップを使って駆除する方法があります。
【タバコシバンムシ用】ニューセリコ
「ニューセリコ」は、オスにもメスにも対応した誘因成分を含んでいるため、フェロモン成分でオスを、「食物性カイロモン」という成分でメスを引きよせて捕獲します。また、効果も約1か月間持続します。
【タバコシバンムシ用】ドームトラップ
タバコシバンムシが誘引源を探して坂を上り、誘引源にたどり着くとオイルが付着して死亡するという仕組みです。
実験によると、2週間で384匹ものタバコシバンムシを駆除したという記録があります。
【ジンサンシバンムシ用】フジトラップ ハイレシス
ジンサンシバンムシ用のトラップは世界で「ハイレシス」しかありません。
トラップの組み立て方法も簡単なため初心者でも簡単に設置することができます。
ライトトラップ 電撃殺虫器 バタン虫(チュウ)
光に集まる虫の習性を利用したトラップです。薬剤を使わないため、安全に子供やペットがいても安心して駆除することができます。
電気代も安く、一晩使い続けても約2円~3円でシバンムシを駆除することができます。
また、ライトに集まったシバンムシを高電圧で駆除することができるので、わざわざ自分で駆除する必要もありません。
③畳の天日干しや高熱処理を行う
畳にシバンムシが発生した場合は、畳の天日干しを行いましょう。
完全に駆除したい場合には、畳店やシバンムシを駆除してくれる業者に依頼して高熱処理を行ってもらう方法がおすすめです。
シバンムシが棲みついた畳を使い続けることに抵抗のある方や、畳が古くなって傷んできているという方は、思い切って新品に張り替えてしまうのも1つの手です。張り替えの際、畳の下にホウ酸をまいておくとシバンムシ予防に効果があります。
④駆除業者に依頼する
最も確実にシバンムシを駆除できる方法は、害虫駆除業者に依頼することです。費用は高くなりますが、「自分で何度も駆除しているのにすぐシバンムシが出る」という方はおすすめです。
予防まで行ってくれるため、駆除後もシバンムシの発生を防ぐことができます。
業者から見積もりを取る際はぜひミツモアを活用してみてください。無料で最大5件の業者から見積もりが届くため、紹介された業者の中から自分にぴったり業者を選ぶことができます。
ハッカ油・蚊取り線香で駆除することはできない
シバンムシをハッカ油で駆除することはできません。誘引する効果もなく、シバンムシの餌になる可能性があリます。
蚊取り線香にも駆除効果がありません。蚊取り線香に含まれる防虫菊という成分が、シバンムシの餌になり、家に棲みつくきっかけを与えてしまいます。
また、シバンムシを1匹ずつつぶしても根本的な駆除はできません。衛生的にもよくはないので、物理的な駆除ではなく広範囲の殺虫効果がある方法を用いましょう。
シバンムシの発生を予防する方法
発生源を処分して1度は駆除できても、同じような環境なら再び大量発生する可能性があります。もっとも大切なのは、日頃からシバンムシが発生しにくい環境作りを心掛けることです。
①食品は密閉容器に入れておく
食品を開封したらできるだけ早めに使い切ることが大切です。
保存が長期に渡ったり、食べきるまでに時間がかかったりするものは、穴が開きにくいケースに乾燥食品を入れて保管して入れましょう。ビニール袋だとシバンムシに破られてしまいます。
発生源になり得るものにシバンムシを発生させないようにすることが大切です。シバンムシは乾麺・米だけにかかわらず、乾燥した食品全般を食べてしまいます。
②部屋を清潔な状態にしておく
部屋に食べカスやゴミが落ちていると、シバンムシが発生する原因になります。ゴキブリもわきやすくなるため、部屋を清潔な状態にしておくことが大切です。
こまめに部屋を掃除しておくことで、シバンムシの発生を防ぎましょう。
③定期的に換気する
シバンムシは湿気が高い環境を好む傾向があります。窓を締め切っていると、湿度が高くなり、シバンムシ発生のリスクが高まります。
2時間に1回、5分程度を目安にして換気を行いましょう。特にシバンムシが1度発生した部屋は小まめに換気し、湿気がこもらないようにしましょう。
④食材を冷蔵庫に入れて保管する
夏場に食材を常温保存していると、シバンムシが寄ってきます。冷蔵庫に入れても大丈夫な食材は冷蔵庫に入れて保管しましょう。気温が低い環境には棲みつ来ません。
シバンムシが冷蔵庫の中まで浸食することはないため、安心して保管することができます。
⑤ヒバ油を使う
「ヒバ」という木から精製される「ヒバ油」は、シバンムシに対する防虫効果が大きいとされています。
精製水100ccに対してヒバ油5滴程度を垂らしてスプレーを作り、シバンムシが出現しそうな箇所や屋外との境目にシュッと吹きかけましょう。
シバンムシだけでなく、ゴキブリやシロアリを寄せ付けない効果もあるといわれます。また防カビ効果も期待できます。
シバンムシの種類
シバンムシは、日本内では60種以上、世界中では2,000種以上と多くの種類に分かれています。
一般家庭で繁殖しやすくよく見られるのは、タバコシバンムシとジンサンシバンムシの2種。日乾麺やカツオ節などの乾燥食品や、畳、そしてタバコなど毒性の強いものもエサにしてしまいます。
和紙や本の紙を食べるおもな種類は、フルホンシバンムシとザウテルシバンムシ。書籍に害を与える「紙魚(しみ)」と違い、本の表面に1mmほどの穴を開けて進行します。
建造物や家具、仏像を食い荒らすのはケブカシバンムシ、マツザイシバンムシ、オオナガシバンムシの3種類です。
タバコシバンムシ | ||
体長 | 色 | |
成虫 | 1.7~3.1㎜ |
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さなぎ | 3㎜ |
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幼虫 | ふ化直後:0.5㎜
老熟幼虫:3.0~4.0㎜ |
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卵 |
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ジンサンシバンムシ | ||
体長 | 色 | |
成虫 | 1.7㎜~3.0㎜ |
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さなぎ | 2.0㎜ |
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幼虫 | ふ化直後:0.35㎜
老熟:3.5㎜ |
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卵 | 0.4㎜以下 |
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タバコシバンムシとジンサンシバンムシの見分け方
タバコシバンムシとジンサンシバンムシは小さいため、見分けるのが非常に困難ですが、よく見てみると違いがあります。
タバコシバンムシ | ジンサンシバンムシ | |
触角 | 細い(糸状) | ギザギザ |
体色 | 判断しづらい | |
背面 | 背中に縦線がない | 背中に縦線が入っている |
2種類のシバンムシを見分けるポイントは、「触角の形」です。タバコシバンムシは、触角先端のギザギザが小さいですが、ジンサンシバンムシは、触角先端にあるギザギザが大きいです。
また、ジンサンシバンムシは畳からは出ないため、畳からシバンムシが出た場合にはタバコシバンムシだと断定できます。
【写真あり】シバンムシに似た虫
シバンムシは、マメゾウムシやダニ、チャタテムシに特徴が似ているため、見間違えてしまうことがあります。
シバンムシに似た虫の見分け方を紹介しているので参考にしてみてください。
マメゾウムシ
見分けるポイント | |
マメゾウムシ |
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シバンムシ |
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シバンムシとマメゾウムシを見分けるポイントは「どの食材で発見されたか」です。
マメゾウムシは主に小豆やインゲン豆などの豆類を食害する害虫で、乾燥した食品を食害することはありません。一方シバンムシは、乾燥した食品に食害をもたらします。
シバンムシマメゾウムシは、同じ赤褐色で、体長も似ているため、発生源で見分けるようにしましょう。
ダニ
見分けるポイント | |
ダニ |
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シバンムシ |
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ダニとシバンムシを見分けるポイントは「大きさ」です。
ダニは肉眼で注視しないと見えないほど小さいため、発見することも難しいです。しかし、シバンムシはダニより体長が大きく、肉眼でも確認することができます。
また、ダニは人を刺すことがありますが、シバンムシが人を刺すことはありません。吸血されると、感染症を発症する可能性があります。
以下の記事では、畳にダニが発生した場合の対処について紹介しています。畳にダニが発生してしまった方は参考にしてみてください。
チャタテムシ
見分けるポイント | |
チャタテムシ |
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シバンムシ |
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チャタテムシとシバンムシを見分けるポイントは「体の色」です。
チャタテムシは淡い黄色の体で、シバンムシは赤褐色の体を持っています。また、屋外で発生するチャタテムシには、羽がついています。
チャタテムシに関してもっと深く知りたいという方は以下の関連記事を参考にしてみてください。
発生源を見つけてシバンムシを駆除しよう
シバンムシが卵を産み付けている場所を放置していると、シバンムシを駆除してもシーズンを通して繁殖し続けます。まずは発生源を特定することが重要です。
キッチン周辺にシバンムシが湧いているなら、乾燥食品やお菓子をチェックしましょう。包材に穴が開いている場合は、そこから侵入した可能性があります。
食品類に卵を産んだ形跡がなければ、ドライフラワー・本・畳・タバコの吸い殻など、家の中にある植物性の乾燥物をくまなく確認しましょう。
発生源には卵が残っている可能性が高いため、早めに処分することが大事です。畳が発生源の場合は天日干しが有効ですが、難しいようなら業者へ高熱処理を依頼しましょう。
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