個人塾の開業を検討しながら「開業するには資格が必要?」「塾の開業で失敗したくない!」と思われる方も多いのではないでしょうか。
塾の開業に資格は必要ありません。開業届さえ提出すれば開業できるんです。
開業の際は、生徒が通いやすい立地を選んだりSNSで情報発信したりすれば、生徒集めにも大きく役立つでしょう。
経営が厳しいといわれる個人塾の経営でも成功できるよう、開業するために必要な手続きや開業資金、失敗しないポイントを徹底解説します。
塾を開業し、自身のスタイルで子供たちに最適な指導をしていきましょう。
塾の開業は「開業届」1枚でOK!【資格は不要】
個人で塾を開業するにあたって、必要な資格は特にありません。個人で事業を始める際に必要となる「開業届」さえ税務署に提出すれば、誰でも塾を開業できます。
塾とは生徒に勉強を教える場ではありますが、塾にとって生徒とその親御さんはサービスを受ける「お客さん」であり、教育機関ではないのです。
そのため教員免許のような資格がなくても、塾を開業することが可能です。
塾には設備基準もないため、勉強を教える指導力と熱意さえあれば、資格の有無に関係なく誰でも開業できます。
塾を開業する際に準備するべきこと【教室・備品・宣伝等】
塾の開業に必須となる資格は特になく、比較的簡単に始められる事業です。だからと言って思い立ってすぐに塾を開けるわけではなく、準備する内容はさまざま。
次の順序に従って開業準備を始めましょう。
- 塾形態の選択
- 教室の選定
- 備品の準備
- 生徒の募集・宣伝
塾開業時に良いスタートダッシュを切るためにも、万全の準備が重要です。
①塾の形態の選択
開業にあたって、まずは塾の形態の選択が必要です。次の3つの形態から選んでいきます。
集団指導 |
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個別指導 |
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少人数 |
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一言で学習塾といっても、形態によって特徴やメリットが大きく異なります。
塾の開業をスムーズに進め、理想的な学習塾を実現するには「だれに」「なにを」「どのように(提供するか)」を事業計画で描くことが大切です。
②教室の選定
指導する教室は「自宅」か「テナント」かの2択です。
【自宅・テナントの比較】
メリット | デメリット | |
自宅 | ・少人数向き
・初期費用削減 ・自分の通勤時間・費用を削減 |
・宣伝すると個人情報が拡散される
・同居する家族に負担がかかる
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テナント | ・大人数向き
・アクセスの良い立地を選べる |
・敷金礼金、月々の家賃がかかる
・備品・冷暖房費用がかかる |
開業時に生徒数が少ない場合、テナント代が毎月の固定費として出ていくので金銭的な負担になるでしょう。
初めのうちは自宅で開業し、事業が拡大したら新しく教室を借りるのも1つの方法です。
自宅にもテナントにもメリット・デメリットがあるので、自身のスタイルに合わせて慎重に検討しましょう。
③備品の準備
塾の開業に向けて、備品などの準備も大切です。塾に必要なものとして、以下の備品があげられます。
【開業に必要な備品例】
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これらの備品を新品で揃えるには、最低でも約100万円はかかります。
塾の開業には必要な備品が多いですが、リサイクルショップでの購入やリースの利用などをすれば、想定より安く済む可能性が期待できます。
④生徒の募集・宣伝
塾で売り上げを発生させるためには、生徒集めが欠かせません。他の開業準備と並行しながら、生徒を募集するための宣伝も進めましょう。
塾の開業に向けた宣伝・生徒集めの方法を4つ紹介します。
ホームページの作成
塾を探すにあたって、多くの人がWebを使うことが想定されるため、ホームページの作成は早い段階から着手したい宣伝方法です。
開業までにホームページを用意しておけば、塾を探している人の目にとまる可能性が期待できます。
ホームページは多くの情報を掲載できる点が強みです。
塾の概要や料金などの基本情報から、塾の雰囲気が伝わるブログ記事など、さまざまな情報を発信できます。
SNSでの発信
情報収集を進めるにあたってWebだけでなく、SNSを活用する人も多くいます。発信できる情報量は少ないですが、最初の接点を作る手段として非常に有用です。
塾の開業のためには、できるだけ多くの人の目に留まる必要があります。
ホームページだけでなくSNSでも情報発信をすることで露出が増え、生徒数増加にも大きく貢献するでしょう。
チラシの作成
チラシの作成も、塾の開業に向けて行いたい準備です。チラシは近隣住民を中心に直接アプローチできるため、高い集客効果が期待できます。
ただしチラシの作成および配布には手間と労力がかかるため、バランスに注意が必要です。
紹介制度を作る
塾の開業準備が進み生徒が集まってきたら、紹介制度を作るのに良いタイミングといえます。
紹介制度があれば直接アプローチしなくても、担当する生徒が新しい生徒を呼び込んでくれるので生徒募集に効果バツグンです。
授業料の割引やちょっとしたプレゼントなどの特典を用意すれば、紹介による入会が増えると期待できます。
塾の開業資金・運営費はどれくらいかかる?
塾の開業資金として、最低でも「初期費用300万円+備品代100万円=400万円」は用意しておくと安心です。
【開業資金の内訳】
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なお、塾は開業時の初期費用だけでなく、運営するにあたって以下のようなランニングコストも多くかかります。
【運営費の内訳】
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塾の開業資金だけでなく、運営費についても注意が必要です。
個人塾の開業で失敗しないためのポイント
個人塾には必要な資格や設備基準が特にないため、比較的開業しやすいです。しかし塾経営が簡単で必ず上手くいくというわけではありません。
塾の運営に失敗しないためのポイントは次の6つです。
- 開業資金を最低限に抑える
- 生徒が通いやすい立地を選ぶ
- システムを導入する
- オンライン授業を取り入れる
- 家庭教師から始める
- フランチャイズを検討する
開業した後も安定した経営ができるよう、以上のポイントは押さえておくとよいでしょう。
開業資金を最小限に抑える
塾の開業段階では、必要最低限のものを揃えれば問題ありません。開業費はなるべく最小限に抑えましょう。
塾は初期費用だけでなく、ランニングコストも大きな額が発生します。そのため開業資金をかけすぎてしまうと、運営資金が足りなくなる恐れがあるのです。
内装にこだわりすぎたり、必要以上に文房具を買ったりすると、運用資金が減ってしまうため注意が必要です。
ただし、見た目が悪い・設備が少ないといったボロボロな状態では生徒が集まりません。
塾の開業資金はなるべく抑えつつも、学習できる環境は十分に整える必要があります。
生徒が通いやすい立地を選ぶ
立地選びも塾の開業・運営を成功させるためのポイントです。通いにくい場所を選んでしまうと、移動の負担を懸念して生徒が集まらなくなってしまいます。
【塾の立地で気を付けるポイント】
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塾の運営における失敗を防ぐには、通いやすい立地選びも重要な要素です。ターゲットとなる生徒を設定したうえで、慎重に立地を選びましょう。
システムを導入する
塾の開業および運営の失敗を防ぐには、業務効率化を図るITシステムやITツールの導入も有用な手段です。
ITシステムの導入には一定のコストがかかるため、なるべく避けたいと考える方もいるかもしれません。しかし、個人が運営する学習塾では、1人の事務負担が大きくなってしまいます。
【塾の開業・運営におすすめのシステム例】
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業務量が多すぎるとミスが起こりやすくなり、トータルのコストは大きいという恐れがあります。
システム・ツールの活用による業務の効率化が、結果として無駄なコスト削減につながる可能性が高いのです。
オンライン授業を取り入れる
授業の種類・サービスのひとつとしてオンライン授業を取り入れるのも、塾の開業を成功につなげるのに効果的です。
オンライン授業であれば、生徒と先生の空間的制約を受けずに授業ができます。塾に通いたいけれど距離的に厳しい、移動時間をなるべくおさえたいという生徒を集められる可能性が高いです。
オンライン授業はリアルタイムだけでなく、録画した映像を使って授業を行う方法もあります。
録画映像なら多くの生徒に授業を提供できるため、人件費削減にも効果的です。将来的には教室なしでの塾運営も考えられます。
個人塾開業の段階からオンライン授業を検討するのも、失敗を避けるうえでおすすめの方法です。
家庭教師から始める
いきなり個人塾開業ではなく、まずは家庭教師で評価を得つつ資金を集めながら開業を準備するのもひとつの方法です。
塾の開業・運営にはテナントが必要です。ほかにも人件費や水道光熱費などさまざまなランニングコストがかかるため、ノウハウや実績がない状態では、ややリスクがあるといえます。
そこで家庭教師から始めれば、指導に関するノウハウ・評価を集めながら資金を貯め、より良い状態でのスタートダッシュが切れるのです。
家庭教師は家に限らず、近くのカフェやレンタル会議室を利用する方法も可能です。
開業資金がなくても始められるため、塾の前に経験する事業としておすすめできます。
フランチャイズを検討する
個人でゼロから塾を開業するのではなく、フランチャイズを検討するのもひとつの手段です。
【フランチャイズ経営のメリット・デメリット】
メリット |
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デメリット |
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一言でフランチャイズといっても選択肢は多数あります。フランチャイズを利用する際は、自身の理想的な塾を開業・運営できそうな塾を選ぶことが大切です。
塾開業に必要な公的手続き【各種書類の提出】
塾には資格・設備基準などの規定が特にないため、比較的容易に開業できます。次の書類を作成して提出すれば開業手続き完了です。
- 開業届
- 事業開始申告書
- 【法人の場合】給料支払事務所の開設届出書
開業届
塾開業を含め、個人で何か事業を始める場合には税務署に「開業届」の提出が必須です。
開業届は事業開始の日から一か月以内に提出しなければなりません。提出期限の日が土日祝日に当たる場合には、その翌日が提出期限です。
開業届はマイナンバーカードあるいは本人確認書類があれば、簡単に手続きすることができます。届出書を作成し、税務署へ持ち込むか郵送すればOKです。
手数料などはかかりません。書類の中に屋号の記入欄があるため、塾の名前は考えて行きましょう。
ただし、移転のときには、移転前と移転後の両方の所轄税務署に提出する必要があります。
開業届に関する詳しい内容は以下の記事をご覧ください。
青色申告承認申請書
青色申告承認申請書は、確定申告を青色申告で実施するために必要な書類です。塾の開業に必須なわけではありませんが、提出することで得られるメリットが大きいです。
青色申告は会計帳簿や書類などの要件が厳しいですが、最大65万円の控除などの大きな節税効果があります。
個人事業主は毎年2〜3月半ば頃に確定申告を行い、所得税を確定・納付する必要があります。特に手続きをしない場合は自動的に白色申告となります。
塾に限らず、個人事業を営むのであれば、開業届とあわせて青色申告承認申請書も提出するのがおすすめです。
青色申告の手続きの仕方、条件等は以下の記事で詳しく紹介しているので、参考にしてみてください。
事業開始申告書
開業届の他に、各都道府県の定める最寄りの役所に事業開始申請書を提出する必要があります。
この事業開始申請書は、役所のホームページなどでダウンロードすることが可能です。予め必要事項を記入し、捺印をしておき、窓口に提出しましょう。
個人で塾を開業する場合には、税務署への「開業届」提出と役所への「事業開始申請書」提出で完了です。
【法人の場合】給料支払事務所の開設届出書
法人として自分の他に講師や事務員などの従業員を雇うときは、税務署に「給料支払事務所の開設届出書」も提出しなければなりません。
併せて、源泉所得税に関する手続きも必要です。
また、給料支払事務所の開設届出書は、従業員の給料の支払い日から一か月以内に提出する必要があります。
塾を開業すると年収はどれくらいになる?
塾を開業した経営者の平均年収は約500万円です。ただし最初の内は年収100万円以下のところも多く、軌道に乗るまでが苦労すると言われています。
生徒数が100人単位に増加し、複数の塾を経営することになれば1,000万円を超えることもあります。
塾開業の資金が足りない場合は助成金・補助金を活用しよう
塾開業の際には以下のような助成金・補助金制度を利用することができます。
- 新創業融資制度
- 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
しかし、制度が少なく採用枠も少ないため、支援金をもらえる前提で開業するのにはリスクがあるので注意しましょう。
新創業融資制度
日本政策金融公庫では新たに事業を始める方に向けて「新創業融資制度」を行っています。担保や保証人は原則不要で、融資限度額は3,000万円です。
【新創業融資制度の条件】
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地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金は厚生労働省が地域雇用を活性化させるために提供している助成金です。
雇用機会が不足している地域の事業者がその地域の居住者を雇った場合に、整備費用や雇い入れた人数に応じて助成金が支給されます。
【地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)の条件】
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