ニシキギは秋になると、葉だけでなく実までも赤やオレンジに色づく植物。庭木や生垣、盆栽として親しまれています。
ニシキギの剪定方法は?
ニシキギは大がかりな剪定が必要ありません、11~3月の落葉期に、不要な枝を切る間引き剪定を行いましょう。切る枝の見分け方や注意点は記事内で解説しています。
ニシキギには毒がある?
ニシキギやその仲間の実と種子は毒を持っています。食べると腹痛や嘔吐、下痢などの症状を引き起こすおそれがあります。
ニシキギとは【見た目・花言葉・種類】
植物名 | ニシキギ |
学名 | Euonymus alatus |
科名 / 属名 | ニシキギ科ニシキギ属 |
原産地 | 日本、朝鮮半島、中国 |
鑑賞期(紅葉、実) | 10月~11月 |
樹高 | 1m~3m |
特性 | 落葉樹、育てやすい、耐寒性、耐暑性 |
漢字で「錦木」と表記し、縁起の良い樹木として知られているニシキギ。いったいどんな植物なのでしょうか。
華やかな見た目と枝の翼が特徴的
ニシキギの最大の特徴は、華やかな見た目です。
ニシキギの葉
秋になると葉が鮮やかな赤やオレンジに色づきます。その美しさは、世界三大紅葉樹のひとつとして数えられるほどです。
ニシキギの実と種
紅葉の他に、実も魅力的です。葉が紅葉すると同時に、完熟した実から鮮やかな朱色やオレンジ色の丸い種が弾け出てきます。
ニシキギの花
紅葉のイメージが強いニシキギですが、5~7月にかけては淡い緑色の花を咲かせます。葉のほうが濃い緑なのであまり目立ちません。
枝につくコルク質の翼(よく)
またニシキギの枝には、ほかの植物には見られないコルク質の「翼(よく)」が付いていることも有名です。カミソリや矢にも見えることから、ニシキギは「カミソリノキ」や「ヤハズニシキギ」とも呼ばれています。
花言葉は「危険な遊び」など
ニシキギには「危険な遊び」「深い愛情」「あなたの魅力を心に刻む」「あなたの運命」「あなたの定め」などのいくつかの花言葉があります。華やかな外見からは想像できない、意味深な花言葉が多いですよね。
これは奥州での習慣に由来しています。奥州では男性が好きな女性に想いを伝える方法として、ニシキギが利用されていました。この習慣はプロポーズだけではなく、不倫にも使われたことから、このような意味深な花言葉が付けられたのでしょう。ニシキギを異性へのプレゼントとしては贈らないことをオススメします。
ニシキギの種類
ニシキギはアジアを中心に約170種類あり、日本で生息する主な品種は4種類のみです。それぞれの名前と特徴は以下の通りです。
ニシキギ | 落葉低木。花は白い。赤い実や枝にあるコルク質の「翼」が特徴。実に毒がある。 |
コマユミ | ニシキギに似ているが、枝に「翼」を持たない。実に毒がある。 |
ツリバナ | 花はピンク。釣り下がるように付く花や実が特徴的。実に毒がある。 |
ツルウメモドキ | つる性の植物。実に毒はない。 |
特にニシキギとコマユミは非常に似ていますが、枝に「翼」が付いているかどうかで簡単に見分けることができます。
ニシキギの毒性
ニシキギの仲間の多くは実に毒を持っており、食べると腹痛、嘔吐、下痢などの症状を引き起こします。赤くておいしそうな見た目をしていますが、決して食べないようにしてください。
残念ながら人間の食用にはなりませんが、その毒性を活かして、昔は毛ジラミの駆除薬として使われていました。
ちなみに、中にはニシキギの実を好んで食べる野鳥もいます。
ニシキギの剪定方法
ニシキギをより美しく見せるためには、剪定が欠かせません。また剪定には見栄えをよくするためだけでなく、植物の成長を促進する役割があります。ここではニシキギの剪定に適した時期とやり方、注意点について解説していきます。
剪定時期は冬の落葉期
ニシキギの剪定は休眠期である11~3月の落葉期に行いましょう。伸びすぎた枝などを切り落とすことで、風通しや日当たりがよくなるため、植物が元気に育ちます。生育期に剪定を行うと枝を多く切り過ぎたり、切り込んだ先から新芽が吹き出して、余計に混みあったりするのでやめておきましょう。
ただし、落葉期の枝には花芽が付いていることもあるので注意が必要です。切り落とす前に、新芽が付いていないか確認をしながら作業しましょう。新芽を切ると実が付かなくなり、真っ赤に熟した実を楽しめなくなってしまいます。
剪定方法は「間引き剪定」
ニシキギの剪定では、生い茂った枝や元気のない枝など、不要な枝を取り除く「間引き剪定」を行います。樹木の内部への風通しと日当たりがよくなり、成長を促進したり、病害虫の発生を予防したりする効果があります。
剪定のときは、見栄えを悪くしたり、他の枝を妨害する生え方をしたりしている枝を選んで切りましょう。枝の途中ではなく、付け根部分から剪定ばさみで切り落とします。
以下の記事では、道具や切り方のコツについても詳しく解説しています。
強剪定のやりすぎに注意を
強剪定とは、太めの枝や多くの芽を切り落とすことです。木の成長を促すためや、高さ・ボリュームを抑えるために行います。
ニシキギの形を整えるために強剪定を行うと、花芽も切り落としてしまう危険性があります。そうすると、実や花を楽しむことができなくなってしまうので要注意です。木への負担もかかってしまうので、休眠期である11~3月以外は強剪定を避けましょう。
基本的に形がくずれた場合以外は、あまり剪定をせずに自然のままの姿で育てるようにしましょう。
ニシキギの育て方【これから植えたい方へ】
ニシキギはいくつかの点にさえ注意すれば、初心者でも育てやすい植物です。
ニシキギに適した栽培環境
ニシキギが好むのは、日当たりと水はけがよく、栄養をたっぷり含んだ肥沃な土壌です。
ニシキギは日向でも半日陰でも育ちますが、どちらかというと日当たりが良く明るい場所のほうが適しています。ただし直射日光に当てると日焼けを起こしてしまうので、西日が当たるような場所は避けましょう。
秋のきれいな紅葉を楽しむには、日当たりがよく、夜間には夜露や霜が当たって気温の低下を感じやすい場所がおすすめです。
鉢植えの場合には、赤玉土2に対して完熟腐葉土か樹皮堆肥を1くらい混ぜた土を使いましょう。
【苗木】株立ちで育てる場合は複数本を一緒に
ニシキギの苗木は園芸ショップなどで購入できます。売られている苗木の大きさはさまざまですが、だいたい1m以下の状態です。
庭木の樹形には、1本の幹で立つ「単幹」と地面から複数本が寄り合って立つ「株立ち」があります。株立ちで育てたい場合は、3~5本の苗を購入し、根元を寄せて植えつけましょう。
【植え付け】11月~12月、3月が最適
植物には常緑樹と落葉樹があり、それぞれ植え付けに適した時期が異なります。落葉樹であるニシキギの植え付けは、11~12月もしくは3月が最適です。これは落葉して休眠期間に入っており、植物にかかる負担が減るからです。ただし、1,2月などの厳寒期は避けるようにしましょう。
地植えでは、粒状肥料と腐葉土を混ぜ合わせたところに植え付けます。植え付けたあとは、その周りにたっぷりと水やりをしましょう。さらに棒で軽くつつきながら、根と植え土をなじませると安定します。
【水やり】成長と共に量を減らす
水やりは地植えと鉢植えの場合で、少しやり方が異なります。
地植えの場合
植えつけてからの年月がまだ浅い若木には、土表面が乾いていたらたっぷりと水を与えなくてはなりません。植え付けてから2年以上経てば、基本的に水やりをしなくても大丈夫です。
鉢植えの場合
年数に関係なく水やりが必要になります。特に暑い夏場には、水切れを起こしやすいので要注意です。
【肥料】地植えならば1回、鉢植えならば2回
地植え・鉢植えのいずれにおいても、本格的な寒さに入った12月~1月に寒肥を施す必要があります。この時期に施肥を行うと、肥料が土中で植物に吸収されやすい状態になり、春の成長期に効果を出しやすくなります。肥料の種類は、有機質のものがおすすめです。
鉢植えの場合は水やりなどの影響で、肥料の栄養素が薄くなってしまうため、3月にも追肥を行う必要があります。この時は化成肥料を株元に施しましょう。
【病気・害虫】基本的に上部だが一部害虫に注意
ニシキギは基本的に病気や害虫に強く育てやすい植物です。ただし何種類かの害虫がつく可能性があります。
- カイガラムシ
- アブラムシ
「カイガラムシ」は樹液を吸って株を弱らせる害虫です。さらに排泄物によって黒いカビが発生し、すす病の原因となります。
6月~7月に発生する幼虫は殺虫剤などで除去することができます。しかし成虫は体がロウ質でカバーされており、薬剤の効果はあまり期待できません。見つけたら竹べらなどを使って、葉を傷つけないように取り除きましょう。
植物全般に発生する「アブラムシ」は、植物を吸汁して生育を阻みます。大量発生すると植物を枯らす危険性があるため、薬剤を散布して除去しましょう。
ニシキギの増やし方
ニシキギの増やし方には、以下の3つの方法が挙げられます。
- 挿し木
- 根伏せ
- 種まき
ここではそれぞれの方法におけるやり方と、作業に適した時期について紹介します。
挿し木で増やす
「挿し木」とは、植物の成長している枝を切り取って、用土に挿して増やす方法のことです。挿し木に使う枝のことを「挿し穂」と呼びます。挿し穂には、前の年に伸びた若い枝から、15~20cm切り取った枝を使いましょう。
適した時期 | 3月上旬 |
用意するもの | 挿し穂、挿し木用の用土(赤玉土など)、水を入れた容器 |
大まかな手順 |
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根がしっかりと張る前に枝を動かしてしまうと、根が上手に張らなくなります。根付くまでは枝を動かさないように注意しましょう。
根伏せで増やす
挿し木同様に、株の一部を切り取る「根伏せ」は、短く切った根を土に埋めて発芽・発根させて増やす方法です。
適した時期 | 3月上旬 |
用意するもの | 直径1.5cmほどのニシキギの根 |
大まかな手順 |
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根を掘り起こす際には、傷つけないようにやさしく掘り起こすようにしましょう。またあまり細い根を選ぶと成長しにくいので、なるべく太く元気な根を使用します。
種まきで増やす
「種まき」は挿し木や根伏せとは異なり、事前に種をあらかじめ準備しておかなくてはなりません。
適した時期 | 3月上旬 |
用意するもの | ニシキギの種、植え付け用の土、ビニール袋 |
大まかな手順 |
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ニシキギの種は、10〜11月に完熟した実から取り出した種を使います。ビニール袋などの密閉容器に入れて、冷蔵庫で翌年の3月まで保管しておきましょう。手順は単純なため、種まきも特に難易度が高いわけではありません。ただし乾燥すると発芽しないため、水やりはこまめに行うようにしましょう。
ニシキギを育てて紅葉を楽しもう
ニシキギには様々な品種があり、それぞれ花や樹の高さなどの特徴が異なります。日当たりがよく、水はけのよい土で育てれば初心者でも庭木としても植えつけやすい植物です。
ただし、品種によっては高さ3mにまで成長するものもあり、放置したままにすると見栄えが悪くなってしまいます。適切な剪定をして、追肥を施しながら育ててあげるようにしましょう。秋には真っ赤に色づいた葉と実がなり、美しい紅葉を自宅の庭で楽しめるはずです。
ニシキギ以外の庭木も植えたい、庭を全体的にもっと華やかにしたいという方は、ぜひ以下の記事も参考に検討してみてください。