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消石灰とは?良い土壌を作る効果的な使い方やおすすめの商品も

最終更新日: 2024年06月28日

消石灰は強いアルカリ性を持つ石灰資材で、園芸では主に土壌のpH調節に使用されます。毒性はありませんが、皮膚や粘膜に触れると化学外傷を起こすため、正しい使い方を確認しましょう。家庭園芸で使えるおすすめの消石灰も紹介します。

消石灰とは?

消石灰

ガーデニングや家庭菜園の土壌作りに欠かせないのが「消石灰(しょうせっかい)」です。土壌環境を整えたり、植物や野菜の生育を促したりする役目があり、一般的にホームセンターや園芸店などで販売されています。

「生石灰」や「苦土石灰」との違いについても理解を深めましょう。

石灰石を加工したもの

消石灰の原料は「石灰石(炭酸カルシウム)」と呼ばれる鉱物です。石灰石を砕いて炉で加熱した後、加水・消化・熟成のプロセスを経て、消石灰が誕生します。

消石灰の大きな特徴はpH値が12以上の「高アルカリ性」である点でしょう。

目に入ると非常に危険ですが、ウイルスや細菌に対する消毒効果が期待できるため、鶏や豚などの家畜を飼う農家では土壌の消毒に消石灰を利用しています。

消石灰は石灰の一種

土壌の酸性を中和してくれる消石灰は、石灰の一種です。石灰には消石灰のほかに様々な種類があります。

  • 消石灰
  • 生石灰
  • 苦土石灰

生石灰との違い

生石灰の原料も消石灰と同じ「石灰石」です。消石灰は粉砕した後、加熱→加水→消化→熟成のプロセスを経る一方、生石灰は加熱後に加水を行いません。

強いアルカリ性で、水に濡れると発熱するのが特徴です。園芸には利用されず、主に工業用として「土質安定処理」や「建材原料」「鉄鋼」などに使われます。

また、湿気を吸収する性質を生かし、乾燥剤としても活用されています。湿気を吸収すると、生石灰から消石灰へと変化する点にも注目しましょう。

苦土石灰との違い

「苦土石灰」はドロマイト(苦灰石)と呼ばれる鉱石を粉状にした肥料の一種で、アルカリ性の性質を有しています。園芸では、酸性に傾いた土壌を中和させるために用いられるケースが多いでしょう。

成分は「酸化マグネシウム」と「炭酸カルシウム」です。先に紹介した消石灰の成分は炭酸カルシウムで、マグネシウムは含まれていません。

マグネシウムやカルシウムは植物の生育に欠かせない養分です。

マグネシウムは植物の葉緑素を作る成分で、不足すると葉の変色や生育不良を招きます。カルシウムは根の生育を促進したり、細胞膜を強化したりする働きがあります。

苦土石灰を土壌に混ぜれば、効率よく植物や野菜に栄養補給ができるでしょう。

消石灰でできること

畑の手入れをする男性

消石灰は生活のさまざまな場所で活用されています。園芸では土壌のpH調整に用いられるケースが多いでしょう。消毒・脱臭・水の浄化効果も持ち合わせていることから、浄水場の下水・汚水処理にも使われています。

酸性の土壌を中和する

消石灰はpH12の強いアルカリ性を帯びています。

pH(ピーエイチ)とは物質の酸・アルカリの度合いを示す値で、pH7が中性です。0に近づくと酸性が強くなり、14に近づくとアルカリ性が強くなります。

次亜塩素酸ナトリウムの漂白剤(アルカリ性)がpH13であることを考えると、pH12の消石灰は相当強いアルカリ性であることがわかるでしょう。

園芸においては酸性に傾いた土壌を中和させたり、アルカリ性に調節したりする役目があります。日本の土壌はほとんどが酸性寄りです。

植物の中にはアルカリ性でよく育つ品種もあるため、消石灰を混ぜて生育環境を整える必要があるのです。

消毒・脱臭効果

消石灰には消毒効果があります。土壌に住む病原菌やウイルスは生存できるpH域が決まっており、極度の酸性やアルカリ性の土壌では感染力を失ってしまうのです。また耐アルカリ性のない虫も死滅しますので、防虫効果もあるといえるでしょう。

この性質を利用し、畜産農家では土壌や畜舎の「石灰消毒」を行っています。「生石灰」も強アルカリ性で消毒効果がありますが、水を加えると発熱するため、取り扱いには十分注意しなければなりません。

また、消石灰と無機凝集剤を一緒に排水に注入すると、汚泥の凝集・沈殿・脱水が容易になります。消石灰には脱臭効果や殺菌効果もあるため、浄水場の「汚泥処理」や「下水処理」にも使われています。

消石灰の使い方

防護服とマスクを装備する女性

一般家庭において、消石灰は「園芸時の土壌作り」に活用できます。環境に影響を及ぼす化学物質ではありませんが、使用量や使い方を間違えると思わぬ事故につながるため、準備は万全に行いましょう。

使用する際の装備

<用意するもの>

  • 長袖
  • 長ズボン
  • 保護手袋
  • 保護メガネ
  • 消石灰

強いアルカリ性の消石灰は皮膚や粘膜に付着すると炎症を起こします。取り扱いの際には長袖・長ズボン・保護手袋を着用しましょう。粉末が目や鼻から入り込む危険性もあるため、マスクや保護メガネも必須です。

消石灰には「粉末タイプ」と「粒状タイプ」があります。粉末タイプは混ぜやすく溶けやすいのがメリットですが、風が強い日の使用は避けた方がよいでしょう。周囲に飛散すると思わぬ事故につながります。

作業を始める際は、小さな子どもやペットが周囲にいないことを確認しましょう。

消石灰の散布量

土壌作りでは、消石灰を土に混ぜ込んでpH度をアルカリ性に調節します。適切なpH度は育てる植物によって異なるため、事前の確認が必要です。

消石灰を散布する前に「土壌の酸度測定」を行いましょう。測定器はホームセンターや通販サイトなどで数千円で購入できます。

正確さには欠けますが、土壌に生えている雑草の種類で酸度を見分ける方法もあります。スギナ・オオバコ・ハハコグサ・カヤツリグサ・スイバなどの雑草が多ければ、土壌は酸性寄りの可能性が高いでしょう。

商品によっても異なりますが、pH度数を1.0上げるには、1平米あたり約60~160gの消石灰を使用するのが一般的です。

消石灰を使いすぎると土壌の団粒構造が破壊されて土が硬くなったり、植物が一部の栄養素を吸収できなくなったりと、さまざまな弊害が生じてしまいます。

消石灰を使った土壌作りの手順

土壌作りは、植物を植え付ける3~4週間前から行うのが基本です。順番としては「消石灰での土壌改良→施肥→植え付け」が一般的といえます。

<散布手順>

  1. 雑草を取り除く
  2. 土を耕す
  3. 消石灰を散布する
  4. 均一になるようにすきこむ
  5. 数週間寝かす

消石灰をまく前に畑の雑草を取り除き、土をしっかりと耕しましょう。スコップや鍬などで20~30cmほど土を掘り返した後、作物に適した量の消石灰を散布し、均一になるようにしっかりとすき込みます。

土には一定のバランスを保とうとする「緩衝作用」があり、消石灰を投入してもすぐに土壌のpHが変わるわけではありません。混ぜ込んだ後に数週間寝かせることで、徐々にpHが調節されていきます。

消石灰を購入しよう

電卓

消石灰は身近な場所で簡単に手に入ります。大袋で販売されているため、たくさん買い込む際は台車の準備が必要です。価格帯に大きな差はありませんが、損のないように大体の相場を把握しておきましょう。

家庭で使う消石灰の価格帯

消石灰の相場は10~20kgの大袋で500~1,000円前後です。「粉末タイプ」と「粒状タイプ」では、粉末タイプの方が割高になるでしょう。園芸店やホームセンターのほか、Amazonや楽天などの通販サイトでも購入が可能です。

消石灰と一口に言っても、工業用・食添用・肥料用・排水中和用などさまざまなタイプがあります。

家庭で使用する消石灰は「肥料用の消石灰」で、含有すべき主成分の最小量がアルカリ分6.0%(強アルカリ性)と規定されています。

肥料の容器や包装の外側に「生産者保証票」または「輸入業者保証票」を表示させる決まりのため、表示の有無を確認してから購入しましょう。

土壌作りにおすすめ あかぎ園芸消石灰20kg

ヤマト あかぎ園芸 消石灰 1kg|Amazon
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アルカリ分65%以上を含有する顆粒の消石灰で、主に土地のpHを中和させるために用いられます。1袋(1kg)あたり300円以内で購入できるリーズナブルさが魅力でしょう。


使用の目安は1坪あたり200~400gです。植え付けの7日~10日前までに土に混ぜ込みましょう。

あかぎ園芸は園芸資材を扱う専門メーカーで、消石灰や用土をはじめとする約500のアイテムを取り扱っています。

消石灰の使用で注意すること

注意

土壌のpHを調節できる消石灰は、家庭菜園やガーデニングに欠かせない石灰資材ですが、注意を怠ると重大事故につながるリスクもはらんでいます。使い方を間違えれば、作物を枯死させてしまう可能性もあるのです。

粘膜や皮膚に触れないようにしよう

強いアルカリ性の消石灰は粘膜や皮膚に触れると、さまざまな「化学外傷」を引き起こします。化学外傷とは刺激性や腐食性のある物質により皮膚や粘膜が傷つけられてしまう症状のことです。

実際、消石灰の入ったバケツを持ったまま転倒し、化学外傷によって失明してしまったケースもあります。万が一、皮膚や粘膜に触れた場合はきれいな水で洗い流し、すぐに医師の診察を受けましょう。

肥料用消石灰は、容器や袋に「使用上の注意点」を表示させる義務がありません。自主的に表示している製造者もありますが、普通の肥料と同じ感覚で使ってしまうと思わぬ事故につながります。

肥料と同時にまかないようにしよう

消石灰と肥料は同時に使用しないようにしましょう。

肥料に含まれる「チッ素」と消石灰の「アルカリ成分」が混じり合うと、「アンモニアガス」となって揮散してしまうためです。ガスは植物の体内に入って酸素を奪うため、野菜や草花が元気に育ちません。

土壌作りでは植え付けの3~4週間前に消石灰を散布し、その1~2週間後に施肥を行うのが一般的です。

消石灰で良い土壌を作ろう

庭の手入れをする男性

植物を元気に育てるには、それぞれに合った生育環境を用意することが重要です。消石灰は酸性に傾いた土地をアルカリ性に調節する役割があり、土壌作りには欠かせない石灰資材のひとつとして知られます。

安価で手に入りやすく、一見メリットばかりのように思えますが、使い方を間違えると化学外傷や失明などの大事故につながるリスクもあります。

消石灰の特徴をしっかりと理解したうえで、安全に注意しながら使用しましょう。