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ヤマボウシは実も花も紅葉も楽しめる落葉高木!人気の品種から育て方まで徹底解説

最終更新日: 2024年06月28日

ヤマボウシは四季ごとに異なる表情が楽しめる落葉高木。春になると可憐な白い花を咲かせ、夏は葉の鮮やかな緑が印象的です。秋にトゲのついた丸く赤い実をつけ、冬にかけては紅葉を楽しませてくれます。

この記事ではヤマボウシの特徴をはじめ、人気の品種、育て方や剪定方法について徹底解説します。

ヤマボウシ(山法師)は赤い実と白い花をつける落葉高木

ヤマボウシの実

ヤマボウシは年間を通じて四季折々の姿を楽しませてくれるうえに、日常の手入れも比較的簡単であることから、シンボルツリーなど庭木としての人気が高い花木です。

ヤマボウシ(山法師)の基本情報

植物名 ヤマボウシ
学名 Cornus kousa
科名 / 属名 ミズキ科 / ミズキ属
原産地 中国、朝鮮半島、日本
開花期 6月~7月
花の色 白、ピンク、クリーム色
樹高 5~15m
特性 落葉性、育てやすい

ヤマボウシは白い花と赤い実、楕円形で波打った葉が特徴的な落葉高木。英語名を「Kousa dogwood」「Japanese dogwood」といいます。

花のように見える部分は葉の一部

ヤマボウシの花は、先端のとがった4枚の大きな白い花びらをつけているように見えますが、実はこの部分は本来の花びらの部分ではありません。

「総苞(そうほう)」という花の付け根の葉の部分にあたり、総苞片の中心部分に30前後の小花を密に咲かせます。これを花序(かじょ)といいます。

そのため、花の鑑賞期間が比較的長く、開花期を十分に満喫できるのも庭木として人気が高い理由のひとつです。

ヤマボウシの名前の由来

ヤマボウシは漢字で書くと「山法師」となります。

この名前の由来は、総苞の真ん中にある小さな球形の花序(複数の花が集まって咲くこと)を「僧侶の頭」に、その下の4枚の総苞を「頭巾」に見立てたものです。

また中国では「四照花」と呼ばれています。これは樹木全体を覆う白い花が、四方を照らすよう美しいことから付けられた名です。

花言葉は「友情」

ヤマボウシの花言葉は「友情」です。この花言葉の由来は、ヤマボウシによく似たハナミズキの花言葉である「返礼」から連想してつけられたといわれています。

友人に贈り物として花を送る際には、これ以上なくふさわしい花言葉といえますね。

栽培しやすいヤマボウシは庭のシンボルツリーにおすすめ

シンボルツリーとは住宅や家族を象徴する、背の高い樹木のこと。家の外観を豊かにしたり、玄関内や敷地の内側を見せないようにするブラインド (目隠し) 効果を得られるのがメリットです。

ヤマボウシは高さがあり、花や葉の付き方もよいため庭のシンボルツリーにピッタリです。日本に自生する植物なので日本の気候と相性がよく、比較的簡単に育てることができます。生育が遅いので厄介な剪定も要らず、初心者にもやさしい樹木です。

適した栽培環境などの詳しい育て方は、ヤマボウシの育て方以降の項で解説しています。

ヤマボウシの育て方

ヤマボウシの栽培カレンダー(植え付け・開花期・剪定・肥料)
ヤマボウシの栽培カレンダー

ヤマボウシは水やりの必要がほとんどなく、栽培環境さえ整っていれば育てやすい庭木です。ヤマボウシの育て方と、そのポイントを解説します。

ヤマボウシが好む栽培環境

日当たり

日当たりのよい場所を好みます。一方で日光が長く当たり続けてしまうと夏季に葉焼けを起こしてしまうこともあるので、西日がきつい場所への植え付けは避けるようにしましょう
生命力は比較的強いため、1日に数時間しか日が当たらない半日陰でも一定の成長は見られます。しかしあまり日当たりがよくない場所では、紅葉がうまく見られなかったり花付きが悪くなってしまうので気をつけましょう。

土壌

水はけのよい土が適しています。水はけが悪い場所では、湿気による根腐れの原因にもなるので注意しましょう。

水やり

庭植えの場合は水やりをしなくても大丈夫です。
鉢植えの場合、春と秋には表面の土が乾いたらたっぷり水をあげましょう。夏には毎日暑くならない朝のうちに水やりをします。冬には水やりの必要はありません鉢土が乾燥しているくらいが適度な状態です。

肥料

庭植えでも鉢植えでも、1~2月に緩効性肥料、油かすと骨粉を等分に混ぜた有機質肥料などゆっくり効果が出る肥料を与えてあげましょう。
鉢植えの場合はそれに加えて、花が咲き終わる時期と紅葉し始める時期にも与えてください。花後と紅葉前は化成肥料を施します。

 

植え付け時期・方法

ヤマボウシの植え付け時期は、休眠期である12月~3月ごろが適しています。特に2月中旬~3月ごろの、春が近づいて暖かくなりだしているタイミングでの植え付けがおすすめです。

地植えの場合の植え付け

地植えの場合は日当たりと水はけのよい場所を選ぶようにしましょう。

  1. 植える場所に穴を掘ります。その際苗木の根鉢よりも2割程度広めに、また深めに掘ることが重要です。
  2. 腐葉土を底に入れてから根鉢を入れます。
  3. 堆肥と緩効性の化成肥料を混ぜた用土を、穴の2/3程の高さまで敷き詰めます。
  4. 支柱を添えて水を十分に与えましょう。

鉢植えの場合の植え付け

鉢植えで育てる場合の植え付け方法は以下の通りです。

  1. 7号程度の鉢を使用し、鉢底ネットと鉢底用の石を敷きます。
  2. 苗木の根鉢をやや崩してから鉢に入れ、そこに赤玉と腐葉土を7:3程度で混ぜた用土を、鉢の9割程度の高さまで入れます。
  3. 支柱を添えて、鉢の底から溢れ出るくらいたっぷりの水を与えましょう。

鉢植え:2〜3年に1度植え替えが必要

鉢植えの場合は、定期的に植え替えをすることが望まれます。頻度としては2~3年に1度を目安にするとよいでしょう。

それより短い期間であっても、鉢に根がまわってしまったときは植え替える必要があります。そのため、根のコンディションを定期的にチェックすることも大切です。

また植え替えは植え付けと同じ時期に行います。これは鉢から地植えする場合も同様で、2月中旬~3月にかけての期間がおすすめの時期です。

ヤマボウシの苗の選び方

ヤマボウシの木を庭に植える様子

ヤマボウシは単幹(木の根元から上部までまっすぐ1本に生えている樹形)よりも、株立ち(木の根元から複数の枝が立ち上がった生え方)の方が人気です。単幹だと高さが出たときに花が上の方についてしまうため、横に広がってくれる株立ちの方が見た目がきれいになるのです。

常緑ヤマボウシは自然に株立ちになる苗が多いですが、落葉ヤマボウシを株立ちにするには剪定による管理が必要です。

ヤマボウシは、小さな苗の状態からある程度成長した木の状態まで、さまざまな大きさで販売されています。株立ち苗の価格は約1~3万円です。

常緑山法師(常緑ヤマボウシ) 株立ち 苗木 樹高1.1m

下草も一緒に選んでみよう

下草とは庭木の根元に植える植物のこと。葉がついていない部分を彩ってくれ、樹木の引き立て役になります。また真夏の直射日光や西日から、地面が乾燥するのを守ってくれます。

ヤマボウシの下草には細長い葉を持つマホニアコンフューサやベニドラ葉に斑のあるギルドエッジやギボウシ丸い葉がかわいいイワナンテンなどがおすすめです。

【花・実・葉の特徴】季節ごとの見どころ

ヤマボウシは季節ごとに色を変えます。春には白い花、秋には甘い実と紅葉が魅力的で、葉が落ちる冬を除いて一年中楽しむことができます。

【春~夏】白い花を咲かせる

白い花を咲かせるヤマボウシ

ヤマボウシは春から夏に葉が出揃ったあと、6月~7月の初夏の頃にかけて白い花を咲かせます。

10~15mほどの大きさに育つこともある高木の枝先に花を咲かせるため、風にそよいで揺れる可憐な姿を楽しめるでしょう。

【秋】甘くて赤い実をつける

たわわに実ったヤマボウシの実

ヤマボウシは秋になると、真っ赤な実を葉の間にたくさんつけます。

開花後の7月ごろになると薄緑色の実を覗かせ始め、9月~10月頃になると熟して赤く色づき始めてきます。

実の表面にはトゲがついていますが、外側の皮を向けば果肉を食べることが可能です。

毒々しい見た目をしているものの、毒性はないので安心してください。黄色の果肉を食べれば、シャリシャリとした食感とマンゴーのような甘みを楽しめるでしょう。

ただしヤマボウシの実をそのまま現代人が食べることはあまりありません。ジャムや果実酒として加工されることがあります。

【秋~冬】赤く紅葉する

ヤマボウシ

ヤマボウシは長さ4~12cm・幅3~7cmほどの大きさの葉を、枝先に集中的につけます。そして秋の終わりごろになると葉が赤く色づき始め、美しい紅葉の姿を見せてくれるのです。

柔らかさをたたえた春の緑や、生命力に満ちた夏の濃いグリーンとは打って変わり、鮮やかな紅葉で季節の移り変わりを感じさせてくれます。

植栽に人気なヤマボウシのさまざまな品種

春を感じさせるヤマボウシの芽吹き

ヤマボウシは常緑性のものや低木に育つものなど、様々な品種があります。豊富な種類を誇るヤマボウシの中から、庭木として育てるのに特に人気の高い5種類を紹介します。

【常緑・最も一般的】ホンコンエンシス

ホンコンエンシス常緑で、光沢のある葉が特徴の品種です。ホンコンエンシスは庭木としてとても人気で、一般的に常緑ヤマボウシといえばホンコンエンシスを指します。

常緑種ですが、寒さに弱いので気温によっては関東地方でも葉を半分から全部落としてしまうことがあります。

ホンコンエンシスは6月ごろになると、ヤマボウシに似たきれいな花を咲かせます。葉の光沢感と花のコントラストが、より一層花びらを美しく際立たせます。

また剪定などの手入れにあまり手間がかからないことも、うれしいポイントです。樹形が自然に整いやすいため、育成に不安がある人でも育てやすい品種でしょう。

【常緑・花付き◎】月光 (ホンコンエンシス)

月光(ヤマボウシ)

月光はホンコンエンシスの選抜品種です。花つきが非常によく、数多くの花をいっぱいに咲かせるのが特徴です。

また常緑性のホンコンエンシスの仲間であるため、月光も1年を通じて葉をつけます

【葉に白斑】ウルフアイ

葉の斑模様が特徴的なウルフアイ

ウルフアイは葉の縁に白い斑模様が入ったヤマボウシの品種です。

斑入りの葉を持つ植物は直射日光に弱い場合が多いですが、ウルフアイは直射日光に強く、葉焼けしないのが特徴です。

また秋になると葉の斑部分も合わせて紅葉します。落葉性のため年間を通じて葉を楽しむことはできないものの、斑模様の入った独特の姿は、見た者を魅了する力を持っています。

【花色が変化】ミルキーウェイ

ミルキーウェイ

咲き始めはクリーム色、やがて白に変化する大きな花(実際は総苞)を咲かせます。花付きがよく、樹形も整いやすい品種です。

また樹高が5~8mほどとそこまで高く育たないため、シンボルツリーとして植えやすいのが魅力です。

ヤマボウシのなかでは寒さに強く、寒冷地での栽培にも適しています。

【ピンク色の花】ベニバナヤマボウシ

ベニバナヤマボウシ

ピンク色の花(実際には総苞)が特徴的な品種です。ベニバナヤマボウシの中でも、ベニフジ(紅富士)は総苞の幅が細くサトミ(里美)はふっくらと丸い総苞をしています。

【常緑・小さい花】ヒマラヤヤマボウシ

ヒマラヤヤマボウシ

ヒマラヤヤマボウシは常緑ヤマボウシの一種です。葉が少し黄緑がかっており、花も少し黄色がかったようなクリーム色になるのが特徴です。また花の大きさもヤマボウシより一回りほど小さく育つ傾向にあります。

樹高は3~12mほどと幅がある品種のため、高く育った際にはその花木のバランスからスタイリッシュな印象を与えてくれるでしょう。

その他にも多くの品種がある

そのほかにも、幅広の葉の縁に真っ白な斑が入った「スノーボーイ」、葉の中央に黄色い斑が入った「ゴールドスター」など、ヤマボウシには多くの品種があります。

一年中葉をつける常緑のヤマボウシもある

青空と常緑ヤマボウシ

本来、ミズキ科ミズキ属のヤマボウシは落葉樹です。しかし近年は1年を通して葉が茂る、常緑ヤマボウシも流通するようになりました。常に葉を付けた姿を見せてくれるので、シンボルツリーとしての人気も高まっています。

また通常の落葉ヤマボウシが10~15mほどの高木に育つのに対し、常緑ヤマボウシは5mほどのコンパクトなサイズ感に育つことから、庭の限られたスペースでも栽培しやすいのが特徴です。

中国を原産地とする常緑ヤマボウシの代表的な種類は以下のとおり。

ホンコンエンシスとヒマラヤヤマボウシは前段で詳しく紹介しているので、名前のところをクリックしてみてください。

育てるときには、日当たりのよい場所に植える必要があります。日当たりの時間が短く、水はけのよくない場所だと、花付きが悪くなることには注意が必要です。

ヤマボウシの剪定時期と方法

緑の葉をたくさんつけるヤマボウシ

ヤマボウシは樹形が自然に整いやすいため、大掛かりな剪定は基本的に必要ありません。

樹形が気になる場合は根本から飛び出している枝や枯れた枝を切るだけで、十分にまとまった姿に育ってくれるでしょう。

しかし、大きく育ちすぎた場合や、鉢植えにしている場合は適切な剪定が必要です。

関連記事:ヤマボウシの剪定方法や適した時期は?失敗しないためのコツを解説|ミツモア

【時期】ヤマボウシの剪定は11~2月

ヤマボウシの選定時期は、葉が落ちる11~2月が最適なタイミングです。

またヤマボウシは8月ごろになると花芽を枝の先端につけるため、剪定の際に誤って切り落としてしまわないようにしましょう。

剪定時期のあたりには肉眼で確認できるほどの大きさになっているため、目視でしっかりと注意しながら剪定するのが大切です。

【方法】透かし剪定が基本

先ほども述べたとおり、ヤマボウシは大がかりな剪定をしなくても自然に樹形が整います。

風通しや日当たりをよくするための軽い剪定(透かし剪定)が適しています。

下の図のように上向きに生えている徒長草や、幹の根元から生えているひこばえ枯れ枝を切り落とします。

透かし剪定のビフォーアフターイラスト

ヤマボウシ剪定のポイント
  • 枝の先についた花芽や葉芽を落とさないようにする
  • 枝分かれしている箇所の根本部分から切る
  • 強剪定をしなくてすむように定期的に剪定する

 

ヤマボウシがかかりやすい病気・つきやすい害虫

たくさんの実をつけるヤマボウシ

ヤマボウシは病害虫にも比較的強い花木ですが、環境によっては病気にかかってしまう場合があります。

大切なヤマボウシを枯らしてしまわないためにも、異変を感じた場合は早期の対処を心がけましょう。

病気:うどんこ病

ヤマボウシの葉の表面が白くなっている場合は、葉にカビが生える「うどんこ病」にかかっているおそれがあります。

乾燥した時期に起こりやすい病気です。

樹木を弱らせてしまうため、発見したら早めの対処が求められます。

症状が軽ければ、1mlの酢を350mlの水に溶かしたものや、1gの重曹を500~1000mlの水で希釈したスプレーが有効です。スプレーを葉に吹きかけて、葉が治癒するのを待ってみてください。

しかし、葉の一面いっぱいに白い斑点が広がっている場合は、手遅れの可能性が高いです。周囲の葉に感染を広げないためにも、病気にかかった葉を除去するようにしましょう。

害虫:毛虫(イラガ)

イラガは毒のある毛を持つ蛾です。幼虫の毛虫が葉について、食害やます。触ると電気が走ったような痛みを伴います。

葉を食べながら成長するため、イラガがついていると葉の裏に白く透けた斑点ができます。

放っておくと葉をほとんど食べられてしまうこともあるので、見つけ次第樹木全体に殺虫剤を散布しましょう。

ヤマボウシとハナミズキの違い

白い花を咲かせるヤマボウシ
白い花を咲かせるヤマボウシ
白い花を咲かせるハナミズキ
ヤマボウシに似た花を咲かせるハナミズキ

ヤマボウシとハナミズキは同じミズキ科・ミズキ属に属していることもあり、似たような花を咲かせます。しかし、よく見てみると違いがあることにお気づきでしょうか?

ヤマボウシとハナミズキの見分け方

ヤマボウシ
  • 開花期は6月~7月
  • 花びらの先端がとがっている
ハナミズキ
  • 開花期は4月~5月
  • 花びらの先端が丸い

よく見てみると、ヤマボウシの花びらは先端がとがっているのに対し、ハナミズキの花びらは先端が丸みを帯びているのが確認できると思います。

外出先で似たような花を見かけた際は花びらの形に注目して、ヤマボウシかハナミズキかを見極めてみるのも面白いかもしれませんね。

ハナミズキの別名はアメリカヤマボウシ

ハナミズキはアメリカ原産です。明治45年に東京市長がワシントンにサクラを贈ったお返しとして日本に伝わった樹木なのだそうです。

日本のヤマボウシに似ているアメリカの樹木なので「アメリカヤマボウシ」と呼ばれました。

ヤマボウシは四季折々の姿が楽しめる花木

ヤマボウシ

ヤマボウシは春の花と夏の鮮やかな緑色の葉、秋には真っ赤な実をつけ、秋から冬にかけては紅葉する、四季折々の姿が楽しめる花木です。

その印象的な姿は、庭木のシンボルツリーとしても高い人気を誇り、多くの人々の心を癒やしていることでしょう。またシンボルツリーは住宅の外観に個性を持たせると同時に、立体感と華やかさをもたらす効果も期待できます。

1年を通じて楽しめるヤマボウシを育てて、大切な住宅と一緒に寄り添ってみてはいかがでしょうか。