オオイヌノフグリは春の訪れとともに、小さな青い花を咲かせる野花です。道端や畑、公園など日本全国に分布しているため、1度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
この記事ではオオイヌノフグリの特徴や花言葉、名前の由来や別名などを徹底解説。よく似た花を咲かせるネモフィラとの違いについても紹介します。
オオイヌノフグリの花言葉は?
オオイヌノフグリの花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」です。
ネモフィラとの違いは?
最もわかりやすい違いは花の大きさでしょう。花びらの大きさが7~10mmしかないオオイヌノフグリに対して、ネモフィラは2cm程あります。その他の違いについても記事内で解説しています。
オオイヌノフグリの特徴
植物名 | オオイヌノフグリ |
学名 | Veronica persica |
科名 / 属名 | オオバコ科 / クワガタソウ属 |
原産地 | ヨーロッパ |
開花期 | 2月~5月 |
花の色 | 青 |
草丈・樹高 | 10~20cm |
特性 | 越年草、高い繁殖力 |
オオイヌノフグリは小さな青い花びらが印象的な春の野草です。
秋に発芽し、雪や霜といった冬の厳しい環境にも負けずに、春の開花までじっと耐えるタフな植物です。茎や葉にはまばらに毛が生えており、茎が分岐して横に横にと広がるように花を咲かせます。
オオイヌノフグリは日が当たるときだけ花を咲かせる一日花です。そのため花が咲いているのを見たい場合は、正午ごろの日が高く昇っている時間帯に探しにいくとよいでしょう。
花は翌日にはしぼんでしまいますが、しぼんだ後に実ができます。熟すと種がはじけて飛び、周辺に芽吹いて増えていくのです。
日本全国に分布
オオイヌノフグリはもともとヨーロッパが原産で、日本では明治のはじめ(1887年頃)に東京で発見されました。その繁殖力の強さから日本全国に広がり続け、空き地や道端などで見かけるなじみ深い植物です。
現在では日本だけでなく、ヨーロッパからアジア、南北アメリカまで世界中に分布しています。
小さな青い花が咲く
オオイヌノフグリは4枚の花びらからなる小さな青い花を咲かせるのが特徴です。
花の直径はおよそ7~10mmほどで、中央部分はやや白に近く、外に向かって青色の筋が目立ちます。花が咲く時期は2月~5月で、見ごろは3月です。
高さは10~20cm程しかなく、地面いっぱいに広がるように咲き誇ります。鮮やかで小さな青い花はなんともかわいらしい印象です。
花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」
オオイヌノフグリの花言葉は「忠実」「信頼」「清らか」です。花言葉はオオイヌノフグリの学名「Veronica persica」が、「聖女ベロニカ」の綴りと同じであることが由来といわれています。
聖女ベロニカは、磔の刑にされるためにゴルゴダの丘へ向かうキリストに、スカーフを差し出した女性です。
十字架を背負うキリストの姿に心を打たれた聖女ベロニカがスカーフを差し出したところ、キリストの顔の汗を拭ったそのスカーフにキリストの顔が浮かび上がったといわれています。
この聖女ベロニカの敬虔な行動にちなみ、「忠実」「信頼」「清らか」といった花言葉が付けられたそうです。
オオイヌノフグリの名前の由来
「オオイヌノフグリ」の名前の由来は「イヌノフグリ」という植物に関係しています。植物学者である「牧野富太郎」が発見し、その名を付けました。
名前の由来は「イヌノフグリ」より大きいことから
オオイヌノフグリは、日本に古くからある在来種「イヌノフグリ」によく似ており、イヌノフグリよりも大きい花だったためこの名が付いたといわれています。
イヌノフグリの花の見た目はオオイヌノフグリにそっくりですが、花びらの大きさはおよそ3~4mmしかありません。花は薄いピンクがかった色をしています。
イヌノフグリは繁殖力の強いオオイヌノフグリに生育地を奪われており、近年はほとんど見かけることはないでしょう。絶滅危惧II類にも指定されています。
フグリは犬の陰嚢のこと
オオイヌノフグリの「フグリ」とは、犬の陰嚢(いんのう)のことをいいます。果実の形が「犬の陰嚢=フグリ」に似ていることからこの名が付けられました。実際の果実はハートの形をしています。
別名「星の瞳」とも呼ばれる
俳人・高浜虚子(たかはまきょし)の一句に「犬ふぐり星のまたたく如くなり」という句があります。これは「地面いっぱいに咲くオオイヌノフグリの小さな花達が、まるで空から降ってきた星のようだ」という意味の句です。
日の光に当たって輝く花びらが星のように見えることから、別名「星の瞳」とも呼ばれています。
ネモフィラとの違いは?
オオイヌノフグリにはイヌフグリとは別に、「ネモフィラ」というよく似た花があります。
ネモフィラは北アメリカが原産で、淡いブルーの花びらが特徴的な植物です。「瑠璃唐草(るりからくさ)」という、オオイヌノフグリと同じ別名を持っていることでも知られています。
花びらの色や実がそっくりなこの2つの花には、何か違いがあるのでしょうか?ここでは、ネモフィラとの違いについて見ていきましょう。
オオイヌノフグリは花が小さい
オオイヌノフグリとネモフィラの見分け方は3つあります。
- 花の大きさ
- 花を咲かせる時期
- 葉の形状
1つ目は、オオイヌノフグリの方が花が小さいということです。草丈はほぼ同じですが、花びらの大きさが7~10mmしかないオオイヌノフグリに対して、ネモフィラは2cm程あります。
2つ目の違いは、花を咲かせる時期です。オオイヌノフグリはまだ寒い3月頃から咲き始めます。一方のネモフィラは、花を咲かせ始める時期が4月~5月頃と遅いのが特徴です。
さらに、葉っぱの形をよく見てみましょう。たまご型の丸い葉っぱが特徴的なオオイヌノフグリに対して、ネモフィラはギザギザとした葉っぱの形をしています。
青い花畑が話題のネモフィラ
ネモフィラといえば、あたり一面に鮮やかに咲き誇る青い花が印象的です。そんなネモフィラの花畑を見られるのが茨城県の「国営ひたち海浜公園」内にあるみはらしの丘です。
2020年に拡張された約4.2ヘクタールの丘には、約530万本のネモフィラが植えられてます。例年の見ごろは、4月中旬~ゴールデンウィークの5月上旬です。あたり一面に咲き乱れる青い花畑は一見の価値があります。
参考記事:ネモフィラ – 国営ひたち海浜公園 |
オオイヌノフグリに似た花
オオイヌノフグリによく似た花は、ほかにも存在します。それぞれの特徴や違いを確認しておけば、道端で新たな発見や出会いがあるかもしれません。
タチイヌノフグリ
タチイヌノフグリはオオイヌノフグリと似た青色の花を咲かせる野草です。開花期は4月~6月で、直立した茎の先に直径4mmほどの小さな花をつけます。
オオイヌノフグリと非常に似た姿をしているものの、花が小さく、花柄も短い点が異なります。また茎がまっすぐに直立していて枝分かれが少ないことも、見分け方のポイントといえるでしょう。
フラサバソウ
フラサバソウもオオイヌノフグリとよく似た青い花を咲かせる春の野草です。開花期は4月~5月で、道端や畑に生えることが多いです。
オオイヌノフグリと同様に、横へ横へと茎を伸ばしていく匍匐性(ほふくせい)があります。茎の先を立ち上がらせて、先端に直径3~4mmほどの淡い紫色の花をつけます。
フラサバソウは葉や萼(がく)に長い毛を生やすため、オオイヌノフグリと見分けるのは簡単です。
オオイヌノフグリの育て方
オオイヌノフグリは繁殖力が高く、自宅でも簡単に育てることができます。しかし地植えの場合、繁殖しすぎて他の植栽の生育を遮ってしまう可能性もあるため、増えすぎには注意する必要があるでしょう。
また野草のため、種はほとんど販売されていません。オオイヌノフグリを育てたい場合は、花の終わりにつく果実から種を採取する必要があります。
繁殖力が高く難易度は低め
オオイヌノフグリは繁殖力が非常に高いため、初心者でも育てやすく難易度は低めです。育て方のポイントは、よく日の当たる場所に置いておくことです。日が当たらない場所ではきれいな青色が発色しません。
もともとが野草なので、こまめな水やりも不要です。土が乾燥していたら水やりをする程度で十分でしょう。花が枯れた後も土の中の根は生きているので、3~5月の開花時期以外も水やりを続けることが大切です。
秋に入り気温が低くなるとまた芽を出し、冬にかけて成長していきます。1年だけでなく、何年にもわたって楽しめる植物です。
地植え、鉢植えどちらも可能
オオイヌノフグリは地植え・鉢植え問わず、育てやすい植物です。ただし成長のスピードが速いため、地植えをおすすめします。鉢植えやプランターで育てると横へ横へと広がっていくので、平鉢に植えると上手く育てやすいでしょう。
強い繁殖力をもつオオイヌノフグリは、肥料や土にこだわらなくても問題ありません。肥料を与えたい人は、地植えの場合は土に肥料をすき込む程度にまきます。鉢植えの場合は、赤玉土5:腐葉土5などの草花培養土に植えればOKです。
草花培養土とはあらかじめ肥料が混ぜてある土のことで、ホームセンターなどで売られています。植物が育ちやすい環境に調整されているため、園芸初心者でも扱いやすいでしょう。
オオイヌノフグリと一緒に咲く春の野草
オオイヌノフグリは3月ごろに花の見ごろを迎える春の野草ですが、この時期になると他にもさまざまな植物が花を咲かせ始めます。オオイヌノフグリと一緒によくみられる草花をチェックして、春の訪れを感じてみてはいかがでしょうか。
ホトケノザ
植物名 | ホトケノザ |
科名 / 属名 | シソ科 / オドリコソウ属 |
開花期 | 3月~6月 |
花の色 | 紅紫 |
特性 | 越年草 |
ホトケノザは道端や田畑でよくみられるシソ科の越年草です。オオイヌノフグリの開花見ごろである3月あたりから、紅紫色のきれいな花を咲かせ始めます。
花の下にギザギザとした円状の葉を付け、この形状が仏様の台座のようにみえることがホトケノザの名前の由来です。
ナズナ
植物名 | ナズナ |
科名 / 属名 | アブラナ科 / ナズナ属 |
開花期 | 3月~6月 |
花の色 | 白 |
特性 | 越年草 |
ナズナはアブラナ科ナズナ属の越年草で、白くてかわいらしい花を咲かせます。別名を「ぺんぺん草」と言い、この名前に聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。
田畑や道端などのあらゆる場所に生えており、春の七草にも数えられています。春の訪れを感じさせる、身近な草花のひとつです。
ヒメオドリコソウ
植物名 | ヒメオドリコソウ |
科名 / 属名 | シソ科 / オドリコソウ属 |
開花期 | 4月~5月 |
花の色 | ピンク |
特性 | 越年草 |
ヒメオドリコソウは密度の高い葉の形状が印象的な、シソ科オドリコソウ属の越年草です。葉には柔らかい毛が生えており、上から下にいくにつれて葉が大きくなっていきます。
4月~5月に開花期を迎え、葉の先端部分付近に小さなピンク色の花を咲かせます。開花期がオオイヌノフグリと近く、同時期にみることが多い野草です。
ハコベ
植物名 | ハコベ |
科名 / 属名 | ナデシコ科 / ハコベ属 |
開花期 | 3月~5月 |
花の色 | 白 |
特性 | 越年草 |
春の七草としても有名なハコベは、日本中いたるところでみられる越年草です。地面を這うように成長し、小ぶりな花と葉をつけます。白くてかわいらしい花が、春の暖かさにぴったりな野草です。
オオイヌノフグリで春の訪れを感じよう
オオイヌノフグリは小さいながらも、鮮やかでかわいい花を咲かせる野草です。繁殖力が強いからこそ、道端や公園、田畑の近くで目にする機会も多いでしょう。
今までその存在を意識したことがなかった人も、名前の由来や花言葉を知ることで、より身近に感じられるかもしれませんね。
春のひだまりに揺れるオオイヌノフグリを探しに、外へと繰り出してみてはいかがでしょうか。