コハウチワカエデってどんな植物?
小ぶりでかわいらしい見た目が印象的なコハウチワカエデですが、名前の由来や、ほかのカエデと比較したときの特徴はご存じでしょうか。
コハウチワカエデならではの特徴をわかりやすく紹介します。
コハウチワカエデの特徴
基礎データ
名前(和名) | コハウチワカエデ(小羽団扇楓) |
英名 / 学名 | Silver Maple / Acer sieboldianum Miq |
別名 | イタヤメイゲツ、キバナハウチワカエデ |
分類/区分 | 高木/落葉広葉樹 |
科属 | ムクロジ科カエデ属 |
草丈 | 10~15m |
開花時期 | 5~6月 |
結実時期 | 9~10月 |
生息地 | 本州、四国、九州の山地 |
コハウチワカエデは本州、四国、九州の山間部に自生している日本固有の樹木です。
5~6月ごろのにクリーム色の花をたくさん咲かせますが、小さいのであまり目立ちません。
6月ごろからプロペラ型の翼果をつけ、秋に熟します。大きさは1~2cm程です。
葉は切れ込みが浅く丸みを帯びており、赤ちゃんの手のような形です。
イロハモミジやハウチワカエデとの違いは?
コハウチワカエデの分類であるカエデ属は種類が多く、どれもよく似ています。そこで、特に間違えやすいイロハモミジとハウチワカエデとの違いを紹介します。
<イロハモミジとの違い>
「イロハモミジ」はカエデではありませんが、カエデ属に分類されます。コハウチワカエデとは葉の形状が異なります。
コハウチワカエデ | イロハモミジ | |
形状 | ほぼ円形
(長さ6~8cm、幅5~10cm) |
楕円形
(長さ4~6cm、幅3~7cm) |
葉の切れ込み | 浅い | 深い |
掌状 | 5~11に裂ける | 5~7に裂ける |
<ハウチワカエデとの違い>
ハウチワカエデは、コハウチワカエデの名前の由来になった植物で、コハウチワカエデのほうがより小ぶりな葉をつけることから名付けられたといわれています。
両者の違いは「葉の大きさ」と「花の色」にあります。
コハウチワカエデ | ハウチワカエデ | |
葉の大きさ | 直径3~5cm | 直径7~13cm |
花の色 | クリーム色 | 赤紫色 |
コハウチワカエデが人気な理由
成長しても華奢で形を保ち続けるコハウチワカエデは庭木として人気が高いです。玄関やシンボルツリーとして家庭に取り入れられることも少なくありません。
ここからはコハウチワカエデならではの魅力と、家庭でコハウチワカエデが育てやすい理由をお伝えします。
見た目が映える
和洋どちらの庭にも合う雰囲気
コハウチワカエデはモミジや他のカエデと比べると、葉っぱが鋭くありません。小さいサイズ感も相まって、優しい印象を与えます。
庭全体の調和という観点でも、コハウチワカエデは和風に染まりすぎません。洋風の庭で育てても馴染みますし、もちろん和風の庭にもマッチします。日本固有種で和洋両方の雰囲気に合うカエデとなると、コハウチワカエデが最適でしょう。
新緑も紅葉も美しい
コハウチワカエデは、季節によって楽しみ方が異なります。
5月頃の新緑は、そのみずみずしさで庭の景観を鮮やかに見せてくれるでしょう。
秋になると、葉の色が赤く変わっていきます。このとき、色が一気に様変わりせず、緑・黄・赤が1本の木の中に混在する形で色づいていきます。
葉っぱ1枚1枚を見ても、葉の中で半分ずつ赤く変化する珍しい種類のカエデです。葉の半分が緑で、もう半分が赤くなっている様は、写真に撮ってもよく映えます。
家庭で育てやすい
コハウチワカエデが庭木として人気な理由の1つにその育てやすさがあります。
狭い場所でも育てやすい
コハウチワカエデは幹が根元から複数に分かれている「株立ち」の木です。「株立ち」の木は狭いスペースでも育ち、成長も比較的遅く大きくなりすぎないので、海外のように広い庭を持つことが難しい日本にぴったりな樹木といえるでしょう。
また、株立ちは幹が真っ直ぐ伸びるので必要以上に幅を取りません。都市部のあまり広くない庭でも十分に植えられます。
例えば、人通りのある玄関先やマンションのパブリックスペースでも邪魔にならず、植えられるケースもあるようです。
害虫に強い
カエデ科の植物は一般的に毛虫が付きやすいですが、コハウチワカエデは比較的害虫に強いと言われています。
テッポウムシやカミキリムシなど、特定の害虫に気を付けていればカエデ科の中では育てやすいといえるでしょう。
必要となる害虫対策については後ほど詳しく説明します。
耐暑性/耐寒性がある
コハウチワカエデの生息地は本州、四国、九州と幅広く、暑さや寒さに比較的強いです。
乾燥を防ぎ、水はけの良い適切な土壌を用意できれば、温度に関しては気にかける必要はありません。できれば、日当たりが良く、風通しの良い場所を選ぶとよいでしょう。
剪定がほとんどいらない
コハウチワカエデは株立ちであるため、成長速度が遅く、まっすぐ伸びます。そのため頻繁に不要な枝を切ったり、形を整えたりする必要はほぼありません。
最低限必要な場合の剪定方法については後ほど詳しく解説します。
コハウチワカエデの育て方
コハウチワカエデを育て方をそれぞれの工程ごとに解説します。
特に、作業の時期はコハウチワカエデを健康に育てるうえで重要になるので覚えておくとよいでしょう。
植え付け、植え替え(12~3月)
植え付けや植え替えは、樹液が流動していない休眠期に行うことでコハウチワカエデの負担を減らすことができます。コハウチワカエデは落葉後の休眠期が短いのでなるべく早く行うようにしましょう。
鉢植えの場合は根詰まりを防ぐため2~3年に1度は土を丸ごと入れ替える作業が必要です。鉢植えの場合も落葉期に作業を行ってください。
土づくり
コハウチワカエデを育てるときに必要な用土のポイントは、水はけと保水力を兼ね備えた肥沃な土であることです。
コハウチワカエデは乾燥に弱い植物なので、用土に湿り気を持たせる必要があります。しかし、水分をため込むと根が腐らせる原因になってしまうため水はけのよさも大切です。
保湿性に優れている腐葉土と、通気性・水はけに優れているバーク堆肥と混ぜてバランスの良い用土を作るとよいでしょう。
また、傾斜を作って植えると、水の流れが作られ、水はけをよくすることができるのでそのような工夫をしてみるのも効果的です。
追肥(12~1月)
春の新芽が生えるのを助けたり、植物の育成を促進したりするのに、落葉期に行う追肥は効果的です。植え付け直後は幹周囲のみに有効ですが、根付いてからは木から離れた場所へ肥料を足すようにしましょう。
水やり
特に植え付けて2年以内は、根の吸引力が低いため乾燥に注意が必要です。
植え付け後2年以降は、コハウチワカエデが根付いているので基本的に水やりは不要ですが、暑い日や雨が降らない日が続くようであれば、朝か夕方に水やりをするようにしてください。
土が日照りで乾燥することを防ぐために株元に宿根草や常緑低木を一緒に植えることも効果的です。
鉢植えの場合は乾燥しやすいのでこまめに水やりをすることが大切です。
目安として、表面の土が乾燥してきたら、鉢の底から水が流れ出るまで水やりをするとよいでしょう。
剪定(11~12月)
先述の通り、コハウチワカエデは成長速度が遅く、まっすぐきれいに伸びるという特徴を持つため剪定はほとんど必要はありません。
ただ、下から生えてくる不要な枝や枯れ枝は、春の新芽が生えてくる前に剪定しましょう。
春になってから剪定すると、新しく成長した枝と間違う可能性があるので注意が必要です。
剪定するときは、枝の分かれ目になる根元の部分から切り落とします。剪定をしすぎると、思わぬところから細かい枝が生えてくる可能性があるので必要最低限の剪定にとどめましょう。
害虫による被害を防ごう
コハウチワカエデは害虫には比較的強い植物ですが、それでも虫による被害がないわけではありません。
被害を未然に防ぐために対策をとっておいたほうが安心です。
害虫による被害の目印
まず、害虫の被害がどのようなものか、また害虫の存在を見極める方法を知っておきましょう。以下のような症状、現象が見られたら害虫が木に巣くっている可能性が高いです。
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コハウチワカエデの主な害虫はカミキリムシやその幼虫であるテッポウムシです。
成虫であるカミキリムシが幹に穴をあけ、中に卵を産み付けることで、内部でテッポウムシが幹を食い荒らします。処置が遅れると幹が大きなダメージを受けて再生不可能になるので、コハウチワカエデを守るためには早急に対処する必要があります。
害虫に食われた部分の治療方法
カミキリムシやテッポウムシを見つけてしまった場合は、殺虫スプレーをテッポウムシが開けた穴に向け、噴射することで対処できます。処置後は縫合剤で穴をふさぎましょう。
殺虫スプレーや癒合剤といったアイテムは、園芸用品を扱う店やオンライン通販で購入できます。価格は1,000円以下のものが大半です。
予防する方法
コハウチワカエデへの被害をできるだけ少なくするためには、害虫を防除することが大切です。
以下に害虫の被害を予防する方法をまとめました。
カミキリムシやムカデが寄りつかないよう薬剤を散布する
薬剤をあらかじめ散布しておくと、ある程度害虫の対策になります。またそれだけではなくコハウチワカエデの付近でカミキリムシなどの害虫を見つけたらすぐに駆除することも必要です。
日当たりが良く、風通しの良いところに植える
湿気の多い場所や日の当たらない場所はアブラムシなどの害虫が発生しやすいので、植える位置を工夫するようにしましょう。日当たりが良く風通しの良い場所に植えれば、コハウチワカエデを健康にするだけでなく害虫対策にもなります。
コハウチワカエデは葉焼けしやすい
コハウチワカエデを育てるうえで直面しやすい問題の一つが葉焼けです。
日に当たることで秋に紅葉するコハウチワカエデですが、もともと山間部で他の木々に囲まれて自生する植物なので、西日などの強い日光に長時間当たる環境には適していません。
ここからは、葉焼けの原因と対策を解説します。
西日など強い日差しに弱い
コハウチワカエデは西日などの直射日光を浴びて乾燥することで葉焼けを起こします。もともと山間部の他の高い木々の木漏れ日を浴びていた樹木なのでその環境に近い状態を育てる際にも再現することが大切です。
葉焼けの予防方法
葉焼けしてしまった部分は、残念ながら元には戻りません。だからこそ葉焼けしないように予防することが大切です。
具体的には、
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などの対策が有効です。
コハウチワカエデを育ててみよう
和風と洋風どちらのテイストにも合わせられるコハウチワカエデは、病気や害虫にも強く、また剪定も難しくないため、園芸初心者にも育てやすい種類のカエデです。
庭や玄関先のシンボルツリーとして、コハウチワカエデを育ててはいかがでしょうか。春には新緑が、秋には真っ赤な紅葉が楽しめます。