ジギタリスはインパクトのある花の存在感から、植えると一気にお庭を映えさせてくれる植物です。
しかし全草に毒性があり、扱いには注意する必要があります。
今回はジギタリスの育て方や品種ごとの特徴を解説していきます。
ジギタリスとはどんな植物?
植物名 | ジギタリス |
学名 | Digitalis |
英名 | Digitalis
通称:Foxglove |
科名 / 属名 | オオバコ科 / キツネノテブクロ属(ジギタリス属) |
原産地 | ヨーロッパ、北東アフリカ~中央アジア |
開花期 | 5~6月 |
花の色 | 白、ピンク、オレンジ、黄、紫、茶、複色 |
草丈 | 30~180cm |
特性 | 寒さに強い、育てやすい |
洋風ガーデンで人気の花
ベル型の形をしたジギタリスは、イングリッシュガーデンの定番として有名です。目を引く華やかさがあるので、数本あるだけでガーデンを美しく彩ってくれるでしょう。
ジギタリスの花名は見た目が「指サック」に似ていることから、ラテン語のdigitus(指)を語源として名づけられました。日本では「狐の手袋」とも呼ばれています。
カラーや草丈、斑点の有無などによって印象が変わるのも特徴のひとつです。花のカラーバリエーションは紫や白・ピンク・黄色などがあり、草丈は30cm~180cmと品種によって異なります。
花に斑点が付いているものが多いですが、最近では斑点が付いていない品種も登場しています。開花期は5月~6月で、環境に合えばこぼれ種が発芽して毎年開花するでしょう。
日本では二年草
ジギタリスは、本来は毎年花をつける宿根草です。
しかし暑さに弱いため日本の高温多湿な夏には耐えられず、多くの場合2年ほどで枯れてしまいます。そのため日本では二年草として扱われている植物です。
秋に種をまいて翌々年の春に花を咲かせるか、春に種をまいて翌年の春に花を咲かせます。
毒性を持つため誤食に注意
ジギタリスは葉、根、花など全草が有毒です。
触る分には何も問題ありませんが、誤って口にしないように気をつけましょう。
食べてしまうと胃腸障害、おう吐、下痢、不整脈、頭痛、めまいなどを引き起こします。さらに、重症になると心臓機能が停止して死亡してしまうこともあり、大変危険です。
コンフリーと葉の形が似ているため、間違えて食べてしまう事故が発生しています。食用されてきたコンフリーの葉も、過剰に摂取すると肝障害を引き起こすピロリジジンアルカロイドを含むことがわかっています。どちらの植物も食べないようにしましょう。
また、子どもやペットの誤飲にはくれぐれも気をつけましょう。
強心薬としても使用される
ジギタリスには、心臓の収縮力を強化させる強心薬としての作用や、脈をゆっくりにする作用があります。
従来は心不全や不整脈の治療に用いられてきましたが、ジギタリスには予後改善効果が見られないため、最近では別の薬が用いられることが多くなってきているようです。
副作用には食欲不振・吐き気・嘔吐・下痢などの消化器症状、物が黄色く色づいて見える・物が二重に見えるなどの視覚症状、めまい・頭痛などの精神神経系症状などがあり、ジギタリス中毒と呼ばれます。
また食べ合わせ・飲み合わせにも注意が必要なので、処方された際には医師や薬剤師の方から受けた説明事項をきちんと守るようにしましょう。
ジギタリスを育てるための準備
ジギタリスを育てるためには、まず植える場所を決めて土や苗を用意することが必要です。ここでは、ジギタリスが好む栽培環境から種・苗を植えるまでの過程をご紹介します。
水はけのよい土を用意
ジギタリスは水はけのよい土を好みます。鉢植えで用土を配合する場合は、例えば赤玉土を4と腐葉土を3、バーライトか川砂を3の割合で混ぜ合わせた土を元肥とし、堆肥と混ぜ込みます。
自分で土を配合するのが面倒な場合は、市販されている草花用の培養土を準備しましょう。市販の土でも問題なく育ちます。
地植えする場合は掘り起こした土に腐葉土を混ぜ合わせるのがおすすめです。水はけが悪いときは、小粒の軽石を追加して調整しましょう。
種・苗の価格相場と販売時期
ジギタリスを育てるには、まず種か苗を購入します。
種はいつでも購入することができ、その発芽率は8割ほど。1袋1000~2500粒入ったものを平均的に500~800円で買うことができます。
苗の場合は平均的に1ポット800円前後で購入することができ、購入する季節によって商品の状態が異なります。
季節ごとの苗の販売状態(一例) | |
春 | 芽出し~成長 |
夏 | 開花 |
秋 | 葉が茂っている状態〜落葉 |
冬 | 休眠期 |
種まき・植え付けのやり方
ジギタリスの種まきは9月~12月に行うのが最適です。
種が小さいので、ある程度成長するまでは育苗ポットで育てましょう。
ジギタリスの種は好光性のため、光がないと発芽しません。種をまいた後は土をかけない、もしくは薄くかける程度にするのがポイントです。
種まきの手順 |
|
本葉が何枚か生えたら植え付け作業を行います。3月~4月が植え付けの適期です。
大きく成長しやすいので、50cmほどの間隔を空けながら植え付けましょう。
知っておきたい育て方のポイント
ジギタリスを上手に育てるためには、把握しておくべきポイントがあります。ポイントをしっかり押さえておけば、毎年きれいな花を咲かせてくれるでしょう。
日当たりの良い場所に置く
ジギタリスは半日陰または日の当たる場所で管理しましょう。
日光を好むものの、日に当たり過ぎると枯れる恐れがあります。強い西日や直射日光が当たらない場所で育てるのがおすすめです。
またジギタリスは、日の当たる方向へ花を咲かせる特性を持ちます。植え付けの際は、花が咲く方角も考えながら行うとよいでしょう。
水やりはしすぎない
水は与え過ぎないのがポイントです。
水はけのよい環境を好むジギタリスは、常に土がぬれている状態だと、根腐れを起こす恐れがあります。
庭植えの場合は基本的に水やりの必要はなく、乾燥が続くときだけ水を与えます。鉢植えで育てる場合は、土の表面が乾いたら水やりをしましょう。
施肥は1か月に1回ほど
まずは植え付けの際に緩効性化成肥料を土に混ぜてあげましょう。冬を終えて株が成長し始める3月にも、同じ肥料を追肥します。
また1か月に1回の頻度で液体肥料を与えてあげると、株が大きく育ちます。
支柱で支えてあげよう
背丈のあるジギタリスは、ひざ丈まで伸びたら支柱を立てて、花茎を支えると美しく真っすぐ成長してくれます。
1本の茎に花がたくさん咲くので、雨が降ると花についた水滴の重みで倒れてしまうのです。そのため花穂がでたら、1本1本に支柱を立ててあげてください。
立てる支柱は花穂の長さを想定し、草丈の2/3ほどの高さが目安です。
花が終わったら剪定と花がら摘みを
ジギタリスは開花した後も新しい茎を伸ばし、新たに花を咲かせようとします。
一番花が終わったら大きく切り戻してあげると脇芽が増え、もう一度開花を楽しめます。花茎の付け根で思い切って切り落としてみてください。
またジギタリスの花は大きく存在感があるため、ずっとそのままにしておくと頭が重くなり倒れてしまうことがあります。背丈が伸び過ぎる前に、花が咲き終わったら早めに剪定しておきましょう。
全体の8割程度の花が咲き終えたら、草姿が乱れたり枯れた花が目立ち始めたりするので、花がら摘みを行います。
枯れた花は病気の発生源になり兼ねないので、小まめな花がら摘みを意識しましょう。
気をつけたい病害虫
ジギタリスは新芽から花が咲く頃、花穂にアブラムシが発生します。
アブラムシはジギタリスの栄養分を吸い取ったり、排泄物によってすす病(植物が黒くなる病気)を誘発したりする恐れがあります。
対処法としてはアブラムシが発生した花茎を切る、殺虫剤や農薬で駆除するなどが効果的です。害が広がる前に、早めの対策を心がけましょう。
こぼれ種や挿し芽で増やせば毎年花を楽しめる!
-
こぼれ種
種まきの項でも説明したとおり、ジギタリスの種は土をかぶせなくても発芽するので、花から落ちたこぼれ種が勝手に発芽することがあります。こぼれ種が発芽していたら、ポットに移し替えて育ててみましょう。成長すると親とは違う色の花が咲いたり、思わぬ変化を楽しめることもありますよ。
-
挿し芽
また、ジギタリスは挿し芽でもかんたんに増やすことができます。春に伸びた若い茎や、一番花が終わったあとの脇芽を挿し穂にしましょう。
挿し芽のやり方 |
|
ジギタリスの品種
ジギタリスにはさまざまな品種があります。種によって草丈は30~180cmと幅広く、花色も異なります。
ここではジギタリスの人気品種をおおよその背丈ごとに写真付きで紹介するので、育てる品種を迷っている方は参考にしてみてくださいね。
背丈が高いジギタリス(70~100cm)
-
ジギタリス・プルプレア
ジギタリスのなかで最も一般的な品種で、5~6月にベル状の小さな花を穂のように咲かせます。どんな植物にも合わせやすく、単色群植も素敵です。
-
グランディフローラ
グランディフローラは原種の1つで、開花期がほかの種よりも若干遅めです。クリームイエローの花穂は上品で派手さがなく、落ちついた雰囲気のお庭を演出してくれます。
背丈が中くらいのジギタリス(40~60cm)
-
シルバーフォックス
イギリスの伝統的なコテージガーデンに植えられており、上品な花付きが目を引きます。株が成長すると葉が綿毛に覆われ、白い花とよく調和します。
- ジギタリス・メルトネンシス
グランディフローラとプルプレアの交雑種です。草丈は30〜150cmととても幅が広く、5~6月にピンク色の大きな花を花茎の片側に下向きに咲かせます。
背丈が小さいジギタリス(25~35cm)
- ジギタリス・ドゥビア
草丈が20~30cmの矮性ジギタリスで、葉には写真のように細い産毛が生えています。可愛らしいピンク色の花を咲かせます。
華やかなジギタリスをお庭で楽しむ
ジギタリスは基本的に丈夫で育てやすい花です。インパクトがあり、華やかな見た目はイングリッシュガーデンには欠かせないでしょう。
今回紹介した「育てるためのステップ」と「育て方のポイント」を参考に、ぜひジギタリスをお庭に取り入れてみましょう。
▽お庭に植える植物を迷っている、もしくはジギタリスと一緒に植える植物を探したい、という方はぜひこちらもご覧ください。