空き家問題の深刻化に伴い、多くの自治体が空き家対策のための取り組みを実施しています。空き家の片付けでごみや家財の運搬・処分を行う場合は、補助を受けられるかもしれません。利用できる補助金の条件や対象、補助金額を紹介します。
空き家片付けの補助金制度がある自治体の特徴
空き家片付けの補助金は、各自治体が独自に運用しています。補助金制度を設けているケースが多い自治体の特徴を3つ紹介します。
- 空き家率が高い
- 過疎化が進んでいる
- 空き家バンクに参画している
空き家率が高い
空き家率とは、自治体の総住宅数に占める普段人が居住していない家の割合を表した数値です。
この率が高い自治体は空き家の再利用・活用の緊急性が高いことから、空き家に関する補助金が充実しているのが一般的です。
国土交通省住宅局が発表した資料によると、別荘や賃貸物件などをのぞく「その他空き家」の比率が高いのは、高知県・和歌山県・鹿児島県などであることが分かりました。
過疎化が進んでいる
過疎化とは地域の人口が著しく減少していくことです。過疎化の主な原因は、都市部への人口流出と少子高齢化です。
かつて農村・漁村として栄えた地域の過疎化傾向が顕著となっており、空き家も増える傾向にあります。多くの自治体では空き家・移住関連の補助金を充実させ、若年層の移住・定着を支援しているのが現状です。
総務省が発表した「令和3年度版過疎対策の現況」によると、過疎地域の市町村数割合の大きい都道府県は、島根県・鹿児島県・秋田県などです。
空き家バンクに参画している
空き家バンクとは、空き家を売りたい・貸したい人と、空き家を買いたい・借りたい人を結ぶ、自治体運用のマッチングプラットフォームです。2018年からは国による全国版の「全国版空き家・空き地バンク」の運用も開始されています。
空き家バンクに登録している自治体は、全国の約7割といわれます。全国版についても、約6割の自治体が参画中です。各自治体は空き家所有者の積極的な登録を促すため、空き家バンクへの登録を前提とした補助金を設定しています。
補助金の対象となる空き家の条件
空き家片付けの補助金は、必ず支給されるわけではありません。補助金の対象となる空き家の主な条件を2つ紹介します。
- 売却または賃貸予定の空き家である
- 新たに取得した空き家である
なお条件は自治体によって異なることがあるため、事前に自治体に確認しましょう。
売却または賃貸予定の空き家である
自治体の空き家片付けの補助金となるのは、売却・賃貸を予定している空き家です。
空き家を売ったり貸したりする場合、まずは家財やごみを処分しなければなりません。空き家の所有者がスムーズに空き家を売買・賃貸に回せるよう、自治体が片付けの補助を行っています。
空き家の売却・賃貸を前提とした補助金は、空き家バンクへの登録が必要となるものがほとんどです。条件の詳細は自治体のホームページなどで確認しましょう。
新たに取得した空き家である
自治体によっては新たに取得した空き家の片付けについて、補助金を設けているケースもあります。ただし片付けのみで利用できるケースは少なく、改修・リフォーム工事を含むのが一般的です。
新たに取得した空き家についても、「空き家バンクを通すことが必須」とするケースが少なくありません。自治体によっては、「他の自治体からの転入であること」などの条件を設けているケースもあります。
空き家バンクを利用する場合は登録要件の確認が必須
空き家の片付けに使える補助金の多くは、空き家バンクへの登録を前提としています。そのため空き家の所有者はまず空き家バンクに登録する必要があります。しかし、どのような空き家でも簡単に登録できるわけではありません。
空き家バンクに登録するには、主に以下の条件を満たすことが必須です。
- 相続・登記が適切に行われている
- 建築基準法に関する是正指導を受けていない
- 災害の危険性が低い場所にある
- 差し押さえを受けていない
- 暴力団等追放推進条例に規定する者が所有していない
空き家バンクは国や自治体が運営していますが、空き家バンク上で行われる交渉・契約等には、一切関与していません。万が一トラブルが発生したとしても、「国や自治体に責任を問えない」ということは覚えておきましょう。
補助金の対象となる片付け作業
空き家の片付けと一口にいっても、必要な作業はさまざまです。補助金の対象となり得る片付け作業を4つ紹介します。
- ゴミの処分
- ごみ・家財の収集・運搬
- リサイクル家電の処分
- 清掃・伐採
ごみの処分
家庭ごみとして出せないごみは、処分場に搬入しなければなりません。自分でごみの運搬と処分場への搬入を行った場合、かかった費用は補助金の対象となります。
注意したいのは、処分場の利用費以外の扱いについてです。ごみの処分にかかった費用のどこまでを「ごみの処分費」として認めるかは、自治体によって異なります。
例えば、ごみ搬入のために車両をレンタルした料金を補助する自治体がある一方で、対象外とする自治体もあります。ごみの処分費用に含まれる範囲については、詳細を必ず確認しましょう。
ごみ・家財の収集・運搬
自分でごみや家財の処分が難しい場合は、業者に委託することも可能です。業者にごみや家財の収集、処分場への運搬・搬入を依頼した場合、かかった費用は補助金の対象となります。
このとき依頼する業者は、誰でもよいわけではありません。ごみを仕分けて処分場に運搬・搬入するためには、自治体の廃棄物収集運搬の許可を受けている業者であることが必須です。
リサイクル家電の処分
家財のうち、エアコン・テレビ・冷蔵庫などの家電は、家電リサイクル法の対象です。処理場への自己搬入は認められていないため、「一般廃棄物収集運搬業の許可」または「市町村の委託」を受けた業者に処分を依頼しなければなりません。
リサイクル家電の処分にかかる費用も、空き家片付け補助金の対象となるのが一般的です。
清掃・伐採
空き家を売ったり賃貸に出したりしたい場合、汚れたままの状態では買い手が付きにくくなります。空き家片付けの補助金では、空き家の清掃・ハウスクリーニングまで含まれることも少なくありません。
空き家の見た目を整えるには、敷地内の不要な庭木を伐採したり、雑草を処分したりなどの作業も必要です。自治体によっては、伐採や雑草の処分費も補助金の対象として認めています。
自治体によって認められる作業の範囲が異なるため、事前に自治体に相談するのがおすすめです。
空き家片付けの補助金の事例
空き家片付けの補助金を設けている自治体は、全国にあります。小山市・前橋市・池田市の事例を見ていきましょう。
小山市:小山市空き家バンク利用促進補助制度
補助金の対象は、栃木県小山市で空き家バンクに登録している空き家です。住居内の家財処分について、補助金を利用できます。
以下の費用について補助を受けることができます。
- 家財処分に必要な費用
- 清掃に必要な費用
補助金の補助率は1/2となっています。家財処分については上限10万円、清掃については上限1万円まで支給されます。
補助金を利用したい場合は、物件の登録者は初めて登録された日から2年以内、利用登録者は売買契約日または賃貸借契約日から2年以内に申請しなければなりません。
申請に必要な書類は、自治体のホームページからダウンロードできます。
前橋市:前橋市空き家対策事業(空き家バンク家財処分補助)
群馬県前橋市における空き家バンクの利用を促進するために、設定された補助金です。空き家バンクを通じて契約された空き家について、家財道具の処分費の補助を受けられます。
補助金の対象となるのは、主に以下の費用です。敷地内の樹木伐採・草刈りなどの費用は対象外になっています。
- 家財の搬出・処分に必要な費用
- リサイクル家電の処分に必要な費用
- ごみなどの処分に必要な費用
補助範囲は、家財の処分にかかった費用全てです。ただし、補助金の上限は10万円と定められています。(1,000円未満は切り捨て)
補助金を申請する場合は、「空家利活用センター」での事前相談が必須です。審査を受けて交付が確定すれば、空き家の片付けに着手できます。補助金が支払われるのは、片付け後に実績の報告と補助金の申請を行った後です。
池田町:池田町空き家家財道具処分支援事業
池田町の住環境向上と移住者の増加・定住化を促進するために設けられた奨励金です。池田町内に空き家を持ち、「池田町住情報ステーション(空き家バンク)」を通じて身内以外の人への売買を検討している人が対象となります。
奨励金の対象となるのは、主に以下の作業にかかる費用です。
- ごみの収集・運搬費用
- 一般廃棄物処理費
- リサイクル家電の処分費用
- 遺品整理費用
- ハウスクリーニング・排水管清掃などの費用
補助率は総費用の1/2で、上限は10万円です。奨励金は、町内在住者には池田町商工会の商品券で交付されます。町外在住者は、金額が2割減るものの現金も選択可能です。
このほかの費用については、個別に相談して認められれば対象となります。関係書類は、自治体のホームページからダウンロードしましょう。
空き家の片付けは補助金を利用して負担を減らそう
空き家の片付けにはまとまったお金がかかります。補助金を上手に活用して、少しでもお得に空き家を片付けましょう。
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