会社の「損益計算書」には利益を表す言葉が5つあります。
5つとは「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」です
「経常利益と営業利益の違いは?」
「会社の経営力を判断するにはどの数字をみればいいのか?」
など、この記事では「経常利益」「営業利益」「純利益」の違いについて詳しくお伝えしたいと思います。
この記事の監修税理士
竹田健司税理士事務所 - 東京都豊島区南池袋
経常利益・営業利益・純利益の違い
「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」はそれぞれ異なった数字になります。まずは、これらの5つの言葉をしっかり確認していきましょう。
売上総利益について
会社の利益は一般的に「粗利」と呼ばれます。単純に魚屋が100円で仕入れた魚を300円で売れたとすると粗利は200円です。この粗利を「売上総利益」と呼びます。
売上から売上原価を引いた利益が「売上総利益」です。経常利益や営業利益などの数字を把握するには売上総利益がわからなければ求めることはできません。経営の基となる数字です。
売上 - 売上原価 = 売上総利益(粗利) |
営業利益について
魚屋を経営するにも仕入れた魚以外にもお金がかかります。例えば店の家賃、人件費、光熱費、広告費…これら経費を「販売費及び一般管理費」と呼びます。「営業利益」とは売上総利益から、この販売費及び一般管理費を引いた利益のことをいいます。
売上総利益(粗利)- 販売費及び一般管理費 = 営業利益 |
販売費及び一般管理費に含まれるものは多岐に渡ります。
- 人件費
- 家賃
- 通信費
- 水道光熱費
- 広告宣伝費
- 接待交際費
- 交通費
- 消耗品費
などがあり、これらの数字を売上総利益(粗利)から引かなければ営業利益を求めることができません。
経常利益について
営業利益は、売上からその会社の本業に関わる経費を引いたものですが、「経常利益」とは営業利益から本業以外の損益を加えたものを示す言葉です。本業以外の損益を「営業外収益・営業外費用」と呼びます。
営業利益 + 営業外収益 - 営業外費用 = 経常利益 |
本業以外の損益というとイメージしにくいかもしれません。具体的に例をあげると、わかりやすくなるでしょう。
営業外収益の例)
- 銀行の利息
- 株の配当金
- 有価証券売却益
などがあります。
- お金の支払利息
- 有価証券で損をしてしまった場合の有価証券売却損と有価証券評価損
などがあげられます。
さて、「経常利益」と「営業利益」の違いについては理解できたと思います。
ここから更に少しだけ掘り下げて理解を進めていきましょう。「売上総利益」「営業利益」「経常利益」以外の2つ「税引前当期純利益」と「当期純利益」についてみていきましょう。
税引前当期純利益について
税引前当期純利益はその名から想像できるとおり、法人税などの税金を支払う前の稼いだ利益を示す言葉です。税金はここでは差し引きませんが、その代わりに特別利益や特別損失を計算します。
経常利益 + 特別利益 — 特別損失 = 税引前当期純利益 |
特別利益や特別損失という言葉を使うとちょっとわかりにくいので、ここでも例を出してみたいと思います。
特別利益とは、固定資産売却益などがあり特別損失には火災損失などがあります。通常では起こらない、異常な利益や損失と考えればわかりやすいかもしれません。
当期純利益について
当期純利益は、会社が最終的に稼いだ利益を示す言葉です。税引前当期純利益から法人税や都道府県税などを差し引いた数字が当期純利益となります。
当期純利益 = 税引前当期純利益 - 税金 |
以上が、会社の利益を表す5つの言葉の意味です。
読んだだけではなかなかわからないかもしれません。会社の利益を知る際には、どのような利益であるのかを見るかによって見るべき指標は異なるのです。
普段から実際の損益計算書などを見て、その会社の利益の特徴などを客観的に見極められるようにしましょう。
経常利益・営業利益の計算
前章では営業利益や経常利益.純利益といった言葉の意味を解説してきました。ここからは実務的に重要な、経常利益や営業利益の計算方法を解説します。視覚的に分かりやすいよう損益計算書の形式で説明するので、まずは以下の表をご覧ください。
売上高・経常利益は同額であっても、片方の営業利益が赤字になる場合があります。
営業利益の計算
営業利益は営業活動によって生じた利益を指します。上記事例で言えばA社の場合、
100万円(売上高)- 30万円(売上原価)- 40万円(販売費及び一般管理費)= 30万円
B社では、
100万円(売上高)- 60万円(売上原価)- 60万円(販売費および一般管理費)= △20万円
です。
販売費および一般管理費(販管費)について
販売費および一般管理費とは、簡単に言えば、商品の製造や販売に占める費用のうち、販売活動や企業全体の管理活動に要する費用です。販売費および一般管理費の具体的な項目は、以下の通りです。
- 給料・賞与・役員報酬
- 法定福利費・福利厚生費
- 広告宣伝費
- 旅費交通費
- 支払手数料
- 賃借料・水道光熱費・通信費
- 保険料・租税公課
- 減価償却費
- 消耗品費
販売費は、販売活動にかかる経費で販売員の給料や広告宣伝費、販売活動のための旅費交通費などが該当します。また一般管理費は、販売活動とは関係のない管理活動で発生する経費で、役員報酬や管理事務所の水道光熱費などが含まれます。
経常利益の計算
前の見出しでも説明したように、経常利益は会社が事業全体の活動から経常的に得た利益を指します。上記の例におけるA社の経常利益は、
30万円(営業利益)+ 100万円(営業外収益)- 50万円(営業外費用)= 80万円
B社の経常利益は、
△20万円(営業利益)+ 130万円(営業外収益)- 30万円(営業外費用)= 80万円
となります。
営業外収益・営業外費用について
営業外収益とは経常的に毎期発生する本業以外から生じた収益を指します。営業外収益が生じる原因は1つではありませんが、一般的には財務活動から生じる可能性が高いです。営業外収益の具体例は、以下の通りになります。
- 受取利息:貸付金や預金に対して受け取る利息
- 受取配当金:株式等を出資する企業から受け取る配当金
- 有価証券売却益:有価証券を売却することによって得られた利益
- 有価証券評価益:有価証券を時価評価した際の評価差益
- 有価証券利息:国債や地方債、社債等の債券の保有により受け取る利息
- 雑収入:少額であり他のどの勘定項目にも当てはまらない重要性の低い収益
一方、営業外費用は企業の主たる営業活動以外から、経常的に発生する費用を指します。営業外費用の大部分を占めるのは、借入金の利息・社債発行時に必要な費用、株式の評価損や売却損などです。営業外費用の具体例は、以下の通りになります。
- 支払利息:借入金に対して支払う利息
- 社債利息:社債に対して支払う利息
- 手形売却損:銀行に手形を買い取ってもらうことにより支払う割引料
- 有価証券売却損:有価証券を売却したことによる損失
- 有価証券評価損:有価証券を時価評価した際の評価差損
- 雑損失:少額であり他のどの勘定項目にも当てはまらない重要性の低い損失
営業利益・経常利益・純利益が示す経営体質
ここからは経常利益と営業利益の関係について例を出して考えてみましょう。経常利益・営業利益の計算ができるようになったら、その会社がどのような経営状態にあるのかを客観的に考えることができるようになります。更に経常利益と純利益の関係についても掘り下げて考えてみたいと思います。
営業利益が赤字で経常利益が黒字のとき
営業利益が赤字で経常利益が黒字のとき、その会社はどのような経営状態だといえるでしょうか。営業利益が赤字なので本業の業績が悪い状態にあることがわかります。しかし、経常利益が黒字というのは、本業以外の収益があったことを示しています。
事業を多角化しているのか、資産運用が順調であるのか…。事業全体としては問題ないように見えますが、その内容を精査する必要があるかもしれません。
営業利益が黒字で経常利益が赤字のとき
営業利益が黒字で経常利益が赤字である会社は、本業は順調であることがわかります。しかし、会社全体としてはやや問題があり、資産運用の点で失敗をしていたり借りたお金の利息が非常に大きかったりして、経営を苦しめている可能性があります。
経常利益が黒字で純利益が赤字のとき
経常利益が黒字で純利益が赤字のときは、どんな会社の状態でしょう。この会社はこの年に利益を生み出せなかったということになります。しかしながら経常利益が黒字であることから、長期的には黒字化できる可能性がある会社であるということがわかります。もしかしたらこの年だけ何かの影響で大きな損失を出してしまったのかもしれません。
経常利益が赤字で純利益が黒字のとき
経常利益が赤字で純利益が黒字の会社は、年間を通じて利益を生み出したことになります。しかしながら、経常利益が赤字ということは事業の収益としては悪化している可能性があります。たまたま、一時的な収益があったのかもしれません。基本的にはこの会社は赤字体質である可能性が高いといえるでしょう。
経常利益と営業利益どっちが重要か?
さて、これまで経常利益と営業利益の意味や計算方法、その見方について考えてきましたが、「経常利益と営業利益どっちが重要なの?」という疑問がわいた人もいるかもしれません。経常利益と営業利益、その重要性について改めて考えてみることにしましょう。
経常利益の重要性
経常利益は一般的に、会社の本来の実力を計るものとして考えられています。会社が通常に運営された利益を示す数字です。「損益の実態評価」として経常利益の数値は非常に重要な意味を持ちます。
営業利益の重要性
営業利益は一般的に、本業での利益を示すものとして考えられています。会社の軸となる部分の実力がどのようなものであるか端的に示すものです。営業利益が安定している会社は、継続的な価値のある企業として評価されやすいために重要性が高いものです。そのため、経常利益より営業利益の方が重視される傾向が強いのです。
総合的にはどっちが重要?
トータルで捉えると、一般的に最も重視されるのは営業利益です。営業利益は本業の活動によって得られた利益なので、ビジネスモデルの好調性・経営者の手腕といった、事業の根幹を成す部分の評価に適しています。
営業利益や営業利益率を同業他社と比較すれば、本業で優位性を持っているか確認をすることが可能です。しかし営業利益は本業の活動以外における収益が除外されているため、企業の恒常的な収益を示す指標としては適していません。
一方経常利益は、主に財務活動を通して生じた借金の利息や資産運用益も含めて考えるので、事業全体を俯瞰して見ることができます。経常利益からは、資産運用は順調なのかや貸付金からはどれだけの利息を得られているのか等の判断が可能です。
基本的には営業利益の方が重要ですが、目的や用途によっては経常利益を確認した方が適している場合もあります。営業利益が最も重要だとは決めつけずに、ケースバイケースで捉えましょう。
監修税理士のコメント
竹田健司税理士事務所 - 東京都豊島区南池袋
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