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【税理士監修】個人事業主は源泉徴収される?請求書の書き方まで解説

最終更新日: 2020年12月15日

個人事業主は源泉徴収されるのか?独立やフリーランスとして活動している個人事業主で、最初にこのような疑問を持つ方は多いでしょう。実は、源泉徴収されるかは業種によって決まるのです。

今回は、個人事業主としてスタートしたばかりの人のために、請求書の書き方や源泉徴収についてわかりやすく解説していきます。また、源泉徴収する側になるケースもありますので、そちらも同時に説明します。

この記事を監修した税理士

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

大手監査法人で多様な業種、規模の上場企業、非上場企業の監査業務に従事。併せて、同じ監査法人でコンサルティング業務(決算早期化支援、内部統制構築支援、システム導入支援等)を実施してきました。その後、大手監査法人を退所、独立開業。独立開業後は中小企業、個人事業主を中心に税務に関して全般的にサービスを提供しています。

個人事業主は源泉徴収の対象外?

個人事業主は源泉徴収の対象外かどうかを説明していくことを表している画像
個人事業主は源泉徴収の対象外?

そもそも源泉徴収とは、個人に支払う報酬から一部を天引きして会社が国に所得税を仮納付するためのシステムです。この源泉徴収は、所得の内容、つまり業種で決まります。

そのため、個人事業主でも場合によっては源泉徴収の対象になりうるのです。では、どのような場合に源泉徴収されるのか見ていきましょう。

源泉徴収される報酬

源泉徴収の対象となるのは、主に個人に対して支払う報酬や料金です。つまり、個人事業主の場合でも、家族を専従者として給与を支払っている場合には源泉徴収の対象となります。

以下は、その他の個人が受け取る報酬や料金で、源泉徴収の対象となる業種です。

  • 1回5万円以上の講演料や原稿料、デザイン料等
  • 賞金関係(広告宣伝、競馬の馬主への支払い)
  • 特定の資格を持つ人への報酬、料金(弁護士、司法書士、公認会計士)
  • プロスポーツ選手などの契約金
  • コンパニオン、キャバレーなどに務めるホステスへの報酬(旅館やホテルの宴会での接待業務)
  • 社会保険診療報酬支払基金が支払う診療報酬
  • 芸能人の出演料や芸能プロダクションを営む人への報酬や料金
  • 外交員やモデル、スポーツ選手などの報酬や料金

一般的な個人事業主が関係するのは、原稿料やデザイン料と言ったところでしょう。

所得税が源泉所得税より多い場合

まず、源泉徴収額について確認しましょう。

所得税:国に納める税金

源泉所得税:前もって国に納めておく税金

つまり、源泉所得税は所得税の前払い税額です。所得税が源泉所得税より多いということは、不足分が発生しているということです。

所得税の支払期日は確定申告の提出期限と同じ日になります。平成30年分の所得税は平成31年3月15日(金)でしたので、これが基準となります。万が一期日を超えてしまうと、延滞税などがかかるため注意が必要です。尚、平成31年(令和元年)の期限は令和2年3月16日(月)です。※3月15日が日曜日ですので、週明け月曜日16日が期限となっています。

また、支払いが難しい場合には5月末日までの延長ができる「延納」というシステムもあります。しかし、納付すべき税額の2分の1以上を納付しておかなければ利用できず、年1.6%の利子税がかかります。

所得税が源泉所得税より少ない場合

所得税が源泉所得税より少ないということは、所得税を多く支払っているということです。実は、この払いすぎた所得税は「還付申告」をすれば「還付金」という形で返ってきます。還付申告は、確定申告の期間とは関係なく、翌年1月1日〜5年間までの間に申告することが可能です。つまり、払いすぎた所得税を5年遡って申請することができるということです。

還付申請を行ってから、1ヶ月〜1ヶ月半程度の期間で還付金を受け取ることができます。また、e-Taxというシステムを利用すれば、3週間程度での受け取りも可能です。

源泉徴収されたときの請求書の書き方

源泉徴収されたときの請求書の書き方を説明することを表している画像
源泉徴収されたときの請求書の書き方

個人事業主で仕事を受注する際、自分で請求書を作成する場合があります。デザイン業など源泉徴収の対象となる場合には、その分も考えて請求書を作成しなければなりません。

ここでは、源泉徴収された時の請求書の書き方について詳しく解説していきます。

源泉徴収額を計算する

まず、源泉徴収額の計算をします。計算方法は以下の通りです。

請求額×10.21%(※)=源泉徴収額

※請求額が100万円を超える請求額の場合は、請求額×20.42%

小計・源泉徴収額・消費税を分けて書く

請求書を作成する時には、以下のように「明細小計」「源泉徴収額」「消費税」を分けて記載します。

小計、源泉徴収額、消費税を分けて書くことを説明するための請求書の例
請求書で記載する項目について(例)

デザイン関係の仕事を行った個人事業主が、依頼をした企業側へ報酬を受け取るための請求書を作成したということを想定しています。

それぞれ記載する内容をさらに詳しく説明すると、

小計(上記例では明細小計):デザイン費のみ

消費税:デザイン費×消費税率10%

源泉徴収税額:請求額(消費税抜き)×10.21%

請求額(合計):(デザイン費+消費税)ー源泉徴収額

となります。

消費税は内税と外税に気を付ける

消費税を記載する欄は別に設けられていますが、他の項目で、内税と外税で記載する箇所が異なりますので注意が必要です。

内税と外税の記載箇所について(例)
内税と外税の記載箇所について(例)

1件ごとの単価や小計は、消費税率を掛ける前の金額が把握できないため、外税で記載します。「今回卸買上額」や「今回請求額」には内税価格や内税で源泉徴収額を引いた価格を記載します。

また、消費税の記載方法にも注意が必要です。

消費税の記載方法
消費税の記載方法(例)

消費税欄に記載するのは、各消費税の合計ですが、必ず1件ずつ税率を記載しましょう。減税対象や税率の変動など、依頼によって税率が異なる場合があるので、消費税欄に消費税額の合計を記載する際に計算を間違えないように注意してください。

振込手数料の負担者を備考に明記

トラブルを防ぐためにも、振込手数料の負担者を請求書に記載しておきましょう。記載場所は備考欄が望ましいです。

振込手数料負担者は備考欄に記入する
振込手数料負担者は備考欄に記入する

振込手数料の支払いは、発注者が行うのが基本ですがケースによって異なります。振込手数料の支払いについては、仕事を受注した際にきちんと確認しておいた方がスムーズです。

また、振込手数料の負担者と同時に「振込方法」も確認しておきましょう。振込先の銀行などを記載しておくと、企業側が誤って入金してしまうこともなくなります。

請求額と入金額が正しいか確認する

請求書を企業に送り報酬が支払われた後には、必ず請求額と入金額が正しいか確認しましょう。万が一、金額が一致しない場合には企業側に確認する必要があります。元々の請求書に記載された金額や計算が間違っている場合もありますので、うやむやにせず、入金後すぐに確認することでトラブルを防ぐことにも繋がります。

請求書の明細、品目等の書き方

請求書に記載する仕訳については、何に支払うべき費用なのかがわかるように記載します。例えば、デザイン関係の仕事を行った場合何のデザインをしたかを記載します。また、原稿料に関しては記事のタイトルなどを記載するとわかりやすいでしょう。

仕訳の書き方
仕訳の書き方

源泉徴収義務者になったとき

 源泉徴収義務者になったときのことを説明するための、給与所得者の源泉徴収票の画像
源泉徴収義務者になったとき

個人事業主でも、場合によっては源泉徴収義務者になる可能性もあります。どんな時に対象になるのか理解しておかなければ、知らず知らず脱税をしてしまっていた。なんて言うことにもなりかねません。

そういった事態をふせぐために、どのような時に源泉徴収義務者になるのか、なった場合にはどうすれば良いのかなど詳しく見ていきましょう。

取引先が法人の場合は基本的に免除

個人事業主の場合は、基本的に源泉徴収義務者になることはありません。しかし、人を雇って給与を支払っている場合には対象となります。つまり、家族が青色専従者であっても源泉徴収義務者になるとうことです。

ただし、例外として以下の場合には源泉徴収義務者の対象にはなりません。

  • お手伝いさんや家事使用人(常時2人以下)だけに給与を支払っている
  • 税理士や弁護士などに報酬や料金だけを支払っている場合

源泉徴収の対象となる税理士などへの報酬ですが、給与の支払いがない外注のみの報酬などの場合には、源泉徴収義務者にはなりません。

また、取引先が法人の場合には基本的に源泉徴収の必要はありません。

徴収後は管轄の税務署に納入する

源泉徴収は、給与所得から天引きする形で徴収します。徴収した源泉徴収額は管轄の税務署に納入するのですが、同時に提出しなければならない書類も定められています。

〈管轄税務署への提出書類〉

  • 給与支払事務所等の開設届出書
  • 法定調書

「給与支払事務所等の開設届出書」は、従業員を雇用し、給与の支払いを初めて1ヶ月以内に届け出を提出しなければならない書類です。「法定調書」は、源泉徴収後に、年間の給与支払金額と源泉徴収額の報告をする書類です。

納入期限・納入方法

源泉所得税は、報酬や給料を支払った月の翌月10日までに納付しなければなりません。しかし、納期の特例の承認を受けている場合は、年2回にまとめて納付することが可能です。

参考:国税庁 納期の特例の承認

また、源泉所得税の納付窓口は、以下の通りです。

  • 銀行、信用金庫
  • 郵便局(ゆうちょ銀行)
  • 税務署
  • クレジットカード納付

滞納に気を付ける

定められた期限内に、源泉所得税を納入できない場合は、「不納付加算税」※1など罰則として税金を支払う必要があります。滞納した場合、納付するべき源泉所得税の5%〜10%の不納付加算税が必要となりますが、規定に当てはまる場合には、免除されます。

※1 参考:国税庁 源泉所得税の不納付加算税の取扱いについて

監修税理士のコメント

多田紘大税理士事務所 – 兵庫県

従業員を雇用していない個人事業主の方については、自らが源泉徴収義務者になることはありません。しかし、得意先に対して請求書作成の際には先方が源泉徴収義務者に該当する場合、源泉徴収を差し引いた金額で請求書を作成する必要があります。そのため、いたずらに請求書のやりとりで手間が取られることを避けるためにも、源泉徴収の金額算定の仕組みを理解しておくことが重要となります。

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