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役員報酬の変更できるタイミングはいつ?手続きの流れや注意点を解説

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最終更新日: 2024年06月28日

従業員に対して給与が支払われるように、役員にも「役員報酬」という報酬が支払われます。ただし会社の業績が好調だからといって、経営者の独断で役員報酬が変更できないのをご存じでしょうか。実は法律に基づいて変更する必要があるんです。

この記事では金額の決め方を含め、役員報酬の変更できる時期や変更方法、注意点について解説します。

役員報酬を変更するべきタイミングはいつ?

役員報酬の変更は原則として期首(事業年度開始日)から3か月以内に行ないます。4か月目以降に変更することも可能ですが、その場合は役員の職制が変わったなどの例外を除いて損金算入ができません。

役員報酬の変更はどのような手続きをするの?

役員報酬の金額を決定した後、株主総会を開いて決議を実施します。またこのときの正式な決定を証明するためにも、議事録の作成が必要です。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

役員報酬を変更できるのは原則期首から3か月以内

ビジネスマン

役員報酬の変更は原則として期首(事業年度開始日)から3か月以内にしなければなりません。たとえば、毎年4月1日から翌年3月31日までを1事業年度としている場合には、6月30日まで役員報酬の変更の手続きができることになります。期首から3か月以内の変更であれば、損金算入が可能です。

役員報酬を変更する場合は株主総会を開き、株主の同意を得て正式に決議しなければなりません。また変更内容を証明するためにも、株主総会の議事録を取る必要があります。

4か月目以降でも、臨時株主総会を開いて役員報酬を変更すること自体は可能です。ただし、経営状況の著しい悪化や役員の職制が代わったなどの一部例外を除いて、損金算入ができません。

期首から3か月以内の変更なら全額損金として認められる

役員報酬のうち定期同額の部分は、会社の損金(法人税を計算する際に経費として差し引ける金額)として処理できます。もし事業年度の途中で役員報酬を変更した場合、定期同額でないことになりますが、次の図1のように期首から3か月以内の変更であれば、全額損金として認められる扱いになります。

役員報酬を期首から3か月以内に変更した際の損金算入
【図1】役員報酬を期首から3か月以内に変更した際の損金算入

一方で、事業年度開始から3か月を経過した後に役員報酬を変更した場合には、役員報酬の一部を損金とすることはできません。損金とならない部分については法人税が課税されてしまうことを認識しておきましょう。

【定期同額給与とは】

 

役員報酬の基本的なルールとして定期同額給与があります。これは「役員報酬は原則として1年間毎月同じ金額でなければならない」というものです。同じ金額である必要があるのは1年間だけなので、翌年度は変更してもかまいません。

期間外に役員報酬を増額した場合

期首から3か月の期間を経過した後、役員報酬を増やしたらどうなるでしょうか?

期間外に役員報酬を増額した場合、増額前の役員報酬が定期同額給与の基準として設定されます。図2でいえば、8月以降は役員報酬が50万円となっていますが、損金算入できるのは30万円が限度のため、増額した20万円分は損金不算入として扱われます。

役員報酬を期首から4か月目以降に増額した際の損金算入
【図2】役員報酬を期首から4か月目以降に増額した際の損金算入

役員報酬を増額した部分には、法人税がかかります。一方、役員個人にかかる所得税は受け取った額が基準になるので、増額した部分についても所得税が発生します。つまり、期間外に役員報酬を増額すると増額した部分に法人税と所得税が二重に課税されてしまい、負担が大きく増えてしまうのです。

期間外に役員報酬を減額した場合

事業年度開始から3か月の期間を経過した後で役員報酬を減額した場合には、減額後の役員報酬が定期同額給与の基準になります。下の図3で、減額前の超過部分20万円は損金に算入できません。

役員報酬を期首から4か月目以降に減額した際の損金算入
【図3】役員報酬を期首から4か月目以降に減額した際の損金算入

なお、期間外の減額の場合にも減額前の超過部分には法人税と所得税が二重課税されるので注意しましょう。

事業年度中の役員報酬変更で損金算入が認められるケース

会社で働くビジネスパーソン

役員報酬を期首から3か月の期間経過後に変更すると、増減した部分が損金として認められないので注意が必要です。ただし事業年度中でも正当な理由や、やむを得ない事情があれば損金計上が認められます。

事業年度中に役員報酬を変更しても損金計上できるケースは、下記のとおりです。

  • 役員が昇格・降格する場合
  • 新たな役員が増える場合
  • 業績が悪化した場合

役員が昇格・降格する場合

役員または従業員が役員の役職に変更があったとき、臨時改定事由として役員報酬の増額が認められ、損金として計上できます。たとえば、代表取締役が任期の途中に辞任して取締役が代表取締役に昇格したケースや、不祥事が発覚して役員が降格したケースが挙げられます。

新たな役員が増える場合

事業年度の途中で役員を増やしたいとき、毎月一定の金額で役員報酬を支給すれば、損金として認められます。ただし月の途中で役員に就任しても、給与のように日割りにできないので注意しましょう。

業績が悪化した場合

会社の業績が著しく悪化して株主や債権者、取引先などに影響を与える可能性がある場合、役員報酬の減額の損金算入が認められます。ただし認められるのは、自然災害や感染症の影響、会社や役員の不祥事によるものです。単に少し収益が悪化した程度では認められません。

なお、どのようなケースであれば認められるかは、最終的には税務署の判断になります。

役員賞与も「やむを得ない事情」に該当した場合、業績悪化改定事由・臨時改定事由が認められますが、税務署への変更届出が必要なので注意しましょう。

役員報酬を変更する手続きの流れ

役員報酬について話し合う役員

役員報酬を変更するには、原則として株主総会の開催・決議、議事録の作成を行なう必要があります。また変更の内容によっては、各種公的機関への届出も要します。

期限内に手続きが終わらないと、変更した役員報酬を損金に算入できません。そのため余裕を持って変更の手続きを行なうことが大切です。

<役員報酬変更までの流れ>

  • 役員報酬変更後の金額を決める
  • 株主総会開催に向けた招集通知の準備と発送
  • 株主総会の開催による決議
  • 株主総会議事録の作成
  • 役員報酬の変更
  • 必要な届出の提出

役員報酬変更後の金額を決める

最初に変更後の金額を決めましょう。役員ごとに金額を決めたり、総会で役員報酬総額を決めた後、取締役会で内訳を決めたりする方法があります。ただし決めた金額はあくまでも株主へ提案する金額である点に留意しましょう。余裕を持ってこの後の手続きを行なうためにも、前事業年度内から決定しておくのが理想です。

株主総会開催に向けた招集通知の準備と発送

役員報酬額を決めたら、株主総会開催の準備を進めましょう。基本的には、確定申告の期限にあわせて決算日から2か月以内に開催する必要があります。たとえばある企業が3月決算の場合、5月末までに開催できるようにしましょう。

なお株主総会の招集通知は、通常株主総会の2週間前までに発送します。3月決算の企業の場合は、遅くとも5月上旬から中旬に発送するスケジュールで進めましょう。また株主全員が同意する場合に限り、招集通知の発送を省略できます。

株主総会の開催による決議

株主総会当日は議決権の過半数を有する株主が出席し、半数以上(定款に特別の定めがない場合)の賛成票で可決すれば、役員報酬の変更が認められます。決議を得る方法は原則として対面で開催する必要がありますが、株主全員から同意を得られれば、メールを含む文書もしくは挙手による投票でも問題ありません。

なお議決権を行使できる株主全員が提案内容に同意した場合、株主総会を開催せずに可決することが可能です。

株主総会議事録の作成

株主総会で役員報酬の変更の議決を取ったら、株主総会議事録を作成しましょう。様式や書式には特段の定めはありませんが、記載内容については会社法施行規則で決まっています。

なお、株主総会議事録には株主総会に出席した役員の署名捺印を要する点も留意しましょう。

株主総会議事録を作成しないと、税務調査の際に決議された証拠が不十分と判断される可能性があります。その結果損金算入した役員報酬が否認され、附帯税が発生するため注意が必要です。

役員報酬の変更を報告

株主総会議事録を作成したら、変更した役員報酬に基づいて支払いを始めましょう。変更のタイミングは株主総会の月と翌月のいずれでも問題ありません。しかし株主総会の月から支給を始める方が、損金に算入できる額が多くなるため節税につながります。

必要な届出の提出

役員報酬の変更によって社会保険料の標準報酬月額の等級が2等級以上変わった場合、年金事務所に届出を提出します。また、役員賞与の支給予定している場合、管轄の税務署へ届出を提出する必要があります。

【社会保険料の等級を2等級以上変更する場合】

役員報酬を変更して社会保険料の等級が2等級以上変わる場合、変更後の役員報酬の支払いを3ヶ月終えてから年金事務所に対して「被保険者報酬月額変更届」の提出が必要です。2等級以上の変更とは、金額で表すと月額4万円から6万円程度の増減のことを指します。

参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構

【役員賞与の支給を予定している場合】

役員賞与の支給を予定している場合は、管轄の税務署に対して「事前確定届出給与に関する届出」を提出する必要がありま提出期限が株主総会から1か月以内と定められている点に注意しましょう。提出を忘れると役員賞与を損金として認められません。

なお役員報酬を変更した場合であっても、役員賞与を設定しなければ税務署への届出はとくに必要ありません。税務署から問い合わせが来たら適切に対応できるように、株主総会議事録を保存しておきましょう。

株主総会・役員総会の議事録の書き方、テンプレート

パソコンを使用する男性の手元

役員報酬を変更するときには、株主総会で決議をした後、株主総会議事録を作成しなければなりません。役員報酬を変更したとき、主総会議事録の記載事項や書き方を知っておきましょう。

株主総会議事録のサンプル
株主総会議事録のサンプル

株主総会議事録は取締役が作成します。株主総会議事録の書式に厳密なルールはありません。株主総会議事録に記載すべき事項としては、会社法施行規則で次のように定められています。

  • 株主総会の開催日時・場所
  • 株主総会の議事の経過の要領およびその結果
  • 株主総会で述べられた意見または発言の概要(会社法で定められている場合)
  • 出席した取締役、執行役、監査役等の氏名
  • 議長の氏名
  • 議事録を作成した取締役の氏名

また、株主総会議事録のテンプレートは以下よりダウンロード可能です。ぜひあわせて参考にしてください。

役員報酬の金額の決め方は?

グラフと電卓

役員報酬の金額を決める際、損益の予測や資金繰り、役員報酬の相場を理解する必要があります。主なポイントは下記のとおりです。

健全な経営ができる範囲内で金額を決める

役員報酬は会社が出した利益の中から払うものです。1年間にどれだけの利益が出るのかがわからなければ、役員報酬を決められません。役員報酬の金額は企業の健全な経営が実現できる範囲内で決めましょう。

利益を見積もるためには売上を予想し、そこから固定費などの経費を差し引いて計算する必要があります。借入金がある場合には、役員報酬を差し引いても返済に回せるお金が残るようにしなければなりません。

世間の相場に合った金額にする

そもそも役員報酬はいくらにすれば良いのか、一般的な相場についてわからない人がいるかもしれません。同業他社と比べて役員報酬額が高すぎると、税務署から認められない場合があります。人事院の「令和5年民間企業における役員報酬(給与)調査の概要」によると、令和4年の民間における役員の年間報酬額は下記のとおりです。この表を参考にして、適正な金額を決めましょう。

企業規模計 3,755万5,000円
3,000人以上 5,920万2,000円
1,000人以上3,000人未満 3,613万8,000円
500人以上1,000人未満 2,909万6,000円

税金・社会保険料を基準に決める

役員報酬の金額は会社が負担する税金や、社会保険料に影響します。役員報酬が高い、つまり「損金として算入する金額が多い」と法人税が少なくなりますが、その分役員個人の住民税や社会保険料が増えてしまい、税負担が偏ってしまうかもしれません。

役員報酬の金額を決めるときには、会社と個人が負担する税金や保険料のバランスを考えることも大切です。

役員報酬を変更するときは、慎重に判断を

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役員報酬を変更することは、会社の経営に直結します。業績や法人税だけでなく、株主や取引先、金融機関などの関係者に対して納得できるように説明しないと経営を揺るがしかねません。業績が良いまたは悪化したからといって、自己判断で役員報酬を変更するのではなく、まずは税理士に相談しましょう。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

役員報酬を税務上の経費に入れるためには、意外に細かな要件があります。 特に、役員へのボーナスは届け出が無ければ経費にすることはできません。 分からない場合は税理士に相談してみましょう。