「普段なかなか発生しない経費をどうやって処理しよう・・・」そんなときに使える勘定科目が「雑収入」です。
雑収入の定義や仕訳例など、経費計上のポイントをわかりやすく解説します。
この記事を監修した税理士
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
大手監査法人で多様な業種、規模の上場企業、非上場企業の監査業務に従事。併せて、同じ監査法人でコンサルティング業務(決算早期化支援、内部統制構築支援、システム導入支援等)を実施してきました。その後、大手監査法人を退所、独立開業。独立開業後は中小企業、
雑収入とは一体?
雑収入とは、本業以外の収入で金額が小さいものの処理に使用する勘定科目のことです。例えば補助金や助成金、保険金や消費税還付金の受取などの取引が発生した際に使用します。
適当な勘定科目がなく、発生頻度や金額的な重要性が低い収入の勘定科目に雑収入を使うことで、会計処理をまとめて行えるようになります。仕訳の際には補助科目や摘要を活用しつつ、内訳がわかるようにしておくとよいでしょう。
雑収入は、事業所得の一部!
税法上、所得は大きく10種類に分類されます。
所得の種類 | 内容・具体例 |
利子所得 | 預貯金・公社債等の利子 |
配当所得 | 株式・投資信託等の配当 |
不動産所得 | 土地・建物などの貸付け |
事業所得 | 農業・漁業・製造業などからの所得 |
給与所得 | 勤務先から受け取る給料・賞与 |
退職所得 | 勤務先から受け取る退職手当など |
山林所得 | 山林を伐採し譲渡した時など |
譲渡所得 | 土地・建物などを譲渡した時など |
一時所得 | 懸賞や福引の賞金などを得た時など |
雑所得 | 上記9つのいずれにも該当しない所得 |
雑収入は上記の10種類の所得のうち「事業所得」に該当します。
事業による営業外収益のうち、他のいずれの勘定科目に該当しないもの、あるいは独立の科目とするほど金額的に重要ではないものを処理する時に「雑収入」の勘定科目を使用するのです。
事業所得は原則として帳簿付けが必要で、基本的には「売上高」勘定で処理を行いますが、雑収入は「雑収入」勘定で処理を行います。
◆作業くず(雑収入)を売却し、代金として10,000円を現金で受け取った
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 10,000 | 雑収入 | 10,000 |
雑収入と雑所得の違い
雑収入とは事業所得の一部であるのに対し、雑所得とは、10種類の所得区分のうち、他の9つのいずれの所得にも該当しない所得です。
たとえば下記のような所得を受け取った場合が、雑所得に該当します。
|
会社員が副業で得た収入の中でも、事業所得に該当しない所得は雑所得に分類されます。
事業所得となるには「継続した期間で安定した収入が得られる」、「儲かる可能性がある」、「相当な時間を費やしている」、「職業として認知されている」などが判断材料となります。
会社員の副業などは、「片手間に稼いだ所得」と判断され、事業性は認められず、事業所得ではなく雑所得となることがほとんどでしょう。
具体的な雑収入の例
雑収入は営業外収益のうち、取引金額が少額で継続的ではない重要度の低い収入を指します。
金融商品取引法の財務諸表等規則では、営業外収益の10%までを雑収入として認めており、1項目でもこれを超えるものについては、独立した勘定科目で処理するように定められている点に注意が必要です。
具体的な雑収入の例は以下の通りです。
◆現金過不足
帳簿上の残高と、実際の現金残高が一致しない場合は、その差額を「現金過不足」の勘定科目を用いて帳簿付けを行います。
ただし「現金過不足」は一時的な勘定科目であり、過不足の原因が判明すれば、正しい勘定科目に振り替えなければなりません。
◆還付加算金
税金を払いすぎた場合に税務署から返還してもらうことができ、預けた期間に応じて利息を付けて返還されます。
法人の場合、還付加算金は益金となるため、収益に計上する必要があります。
◆消費税還付金
一定の条件を満たす事業者は、消費税を納めなければなりません。
事業を行う際に、消費税を支払うこともあれば受け取ることもあり、期末にそれらを相殺し、受け取る消費税が多くなればその分が還付されるのです。
なお帳簿付けでは「税込方式」と「税抜方式」のどちらかを採用することとなっています。
◆保険金
生命保険で「死亡保険」や「満期返戻金」、「解約返戻金」、「払済保険金」などを受け取った場合も雑収入に該当します。
なお勘定科目には「保険料」も存在しますが、こちらについては支払い保険料を処理するために用いるため、収益にあたる保険料ではなく、それぞれの違いをよく理解しておきましょう。
◆作業屑やスクラップの売却収入
製造業で製品を製造する際に発生する残り屑を作業屑といい、売却価値があるものについては資産とみなされます。
しかし作業屑は恒常的ではなく、売却してもごく僅かな金額であるため、雑収入で処理を行います。
◆アフィリエイト収入
アフィリエイトとは成果報酬型の広告収入のことで、自身のHPやブログに広告を載せ、訪問者がその広告をクリックすることで広告主から収入が得られる仕組みです。
アフィリエイトが本業である場合で、事業として認められる時は営業収益として売上に計上しますが、それ以外は雑収入として処理を行います。
雑収入はいくらまで大丈夫?
少額で重要度の低い雑収入ですが、いくらまでが雑収入として認められるのがわかりにくいです。実は雑収入が認められる範囲はある程度限られており、どのような収入でも雑収入として計上するわけにはいきません。
以下で雑収入の範囲について見ていくことにしましょう。
基準は営業外収益の10%
雑収入として処理する範囲は、会社によって異なることが多いですが、金融商品取引法では営業外収益の10%を基準としています。このため売上も営業外収益も極端に低く、雑収入だけが多くなると認められない可能性があるので注意が必要です。
雑収入は一時的な目的で使われる収入の一つであるため、現在雑収入に該当していても、今後継続的に発生するようになると認められるなくなる可能性があります。
消費税は課税なのか、非課税なのか
雑収入といっても様々な種類があり、消費税が課税されるものと、不課税、非課税となるものがあります。ところで消費税が「非課税」という言葉はよく聞きますが、「不課税」を聞いたことある方は少ないことでしょう。消費税の課税区分には、消費税がかかる「課税取引」と、消費税がかからない「非課税取引」、「不課税取引」に分けることができます。
課税取引とは、文字通り課税される取引のことで、国内で事業者が対価を得て行う資産の譲渡、貸付、輸入取引などが該当します。
一方非課税取引ですが、国内において対価性のある取引であっても、課税対象に馴染まないものや、社会政策的配慮から消費税を課税しない取引などです。具体例として、土地や建物の貸付け、有価証券の譲渡などが挙げられます。
最後に不課税取引ですが、課税取引に該当しない取引で、国外取引、対価性がない、事業として行われていない取引が該当します。
以下で課税取引、非課税取引、不課税取引の具体例について確認してみましょう。
取引の種類 | 具体例 |
課税取引 |
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非課税取引 |
|
不課税取引 |
|
わかりにくい例として、「住宅の譲渡」は課税対象ですが、「住宅の貸付け」は非課税取引です。「住宅だから課税対象」、というような覚え方をしてしまうと、確定申告の仕訳の際にミスをしてしまうので、それぞれの違いをよく理解しておきましょう。
雑収入の仕訳
確定申告で青色申告を行うには、帳簿の記帳が必要なります。帳簿の記帳で仕訳を行う際、雑収入の扱い方について具体例を用いながら見ていくことにしましょう。
①当社社員が事故に合い、損害保険会社より保険金200,000円が普通預金口座に振り込まれた。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
普通預金 | 200,000 | 雑収入 | 200,000 |
雑収入の概要は損害保険金と記載します。
②駐車場の賃貸収入10,000円を現金で受け取った。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
現金 | 10,000 | 雑収入 | 10,000 |
雑収入の概要は賃貸収入と記載します。
決算時には注意が必要!
雑収入は事業所得の一部として決算時に処理できます。しかしあまりに雑収入が多いと税務署から指摘される場合があります。以下で決算時の雑収入の取り扱いと注意点について見ていくことにしましょう。
決算時に注意が必要な理由
事業を行う上では売上を上げることが大切ですが、売上に対して雑収入が多すぎると、どのようにして収入を得ているのかわからなくなってしまいます。あくまで雑収入は営業外利益であるため、営業以外のところで多額の利益が出ていれば不思議に思うことでしょう。そのため仮に雑収入が多くなってしまう場合は、独立した勘定科目を用いて処理することを検討してみましょう。
特にこれから法人化し、銀行からの融資を検討している場合、雑収入が多すぎると融資を受けられなくなる可能性があります。雑収入は営業外収益の10%程度を目安に計上しましょう。
雑収入の損益通算の考え方
損益通算とは、一定期間の利益と損失を相殺する取引です。株式投資である年に、別々の株で利益と損失が発生した場合、利益から損失を差し引いて税金を減らすことができます。事業所得も利益と損失が発生した場合、損益通算することが可能です。
つまり雑収入は事業所得であることから、他の所得と損益通算することが可能です。
一方雑所得の場合は、税法上の扱いが片手間で稼いだ収入であることから、損益通算はできません。
雑収入の青色申告決算書の書き方
青色申告決算書とは、確定申告の際に計算した事業所得などの明細書です。青色申告決算書を作成すると、以下の3つの特典を利用することができます。
①青色申告特別控除で10万円もしくは55万円か65万円の所得控除が受けられる
②純損失の繰り越し控除で赤字を3年間繰越することができる
③家族の給与を必要経費にできる
雑収入は事業所得であることから、青色申告の対象ですが、雑所得の場合は対象となりません。
以下で雑収入と雑所得の計算の違いを見てみましょう。
例1)売上155万円、必要経費100万円、雑収入10万円
155万円(売上)+10万円(雑収入)-100万円(必要経費)-65万円(青色申告特別控除)=0円
例2)売上155万円、必要経費100万円、雑所得10万円
155万円(売上)-100万円(必要経費)-65万円(青色申告特別控除)=-10万円(0円)
事業所得の課税金額は0円ですが、雑所得10万円が発生しているため、10万円に対し税率がかけられ、税金が発生します。雑収入と雑所得では、税金額も変わるので決算の際は取り扱いに注意しましょう。
監修税理士からのコメント
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
雑収入は、同様の収入であっても各人によって「事業所得」になる人もいれば、「雑所得」になる人もいます。各人にとってその収入がどういった位置づけによるものかということを理解したうえで区分する必要があります加えて、「事業所得」と「雑所得」では税金計算が異なることとなるため、明確に区分して所得計算する必要があります。
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