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節税のつもりで脱税してない?|節税と脱税の違いを正しく理解しよう!

最終更新日: 2020年12月16日

この記事では、経営者の方ならば絶対に知っておくべき「節税と脱税の違い」を詳しく説明していきます。税務の初心者でも分かるように具体例をあげながら解説しているので、ぜひ参考にしてください。

この記事を監修した税理士

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

宮澤明宏(みやざわあきひろ)公認会計士・税理士・相続診断士 宮澤明宏(神奈川県横浜市青葉区)1976年 愛知県丹羽郡出身。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。2018年11月税理士登録。税理士登録後、ミツモアを通じて半年間で20件以上の確定申告業務を受託。デザイナー、一人親方、小売、ITエンジニア、不動産業等、多様な業種のお客様に対して丁寧なサービスを提供している。また、相続診断士として活動しており、エンディングノートの書き方セミナーを通じて「生前から相続へ備えることの大切さ」を多くの人に広める活動を行っている。

「節税」と「脱税」の違い

「節税」と「脱税」の違い
「節税」と「脱税」はどう違うの?

まず、節税と脱税は似て非なるものであることを理解しましょう。合わせて、「租税回避」や「時効」についても説明するので要チェックです。

「節税」は合法な行為

節税は合法な行為です。所得税法や法人税法など各種法律の規定を守りながら、「経費を漏れなく計上する」「各種控除制度を上手く使う」など、法律が認める方法で納税額を下げていきます。

「脱税」は違法な行為

それに対して、脱税は違法な行為です。法律の規定を無視したり、自分に都合の良い解釈をしたりして、税金逃れをします。「経費の水増し」や「売り上げの隠蔽」はその典型です。

「租税回避」はその中間の行為?

「租税回避」という言葉をご存知ですか?租税回避とは、法の穴をかいくぐって納税から逃れるグレーな行為のことです。

たとえば「親が子に対してハワイの別荘を贈与する場合、贈与税の負担を免れるために、親が一時的に国外に移住してから贈与する」などの行為が租税回避に当たります。これは、海外に居住している日本人が、日本の国籍および住所を持たない子に対して国外にある財産を贈与しても、日本の贈与税が適用されないことを悪用した租税回避の一例です(現在はこのようなケースでも贈与税が適用されます)。

租税法律主義を採用している日本では、租税回避は「ぎりぎり合法」であるため課税できないのです。租税回避を防ぐには法改正を待つ以外ありません。しかし、だからといって租税回避を乱用するのはおすすめしません。節税はあくまでも正攻法で行うようにしましょう。

時効を待って脱税しようとしてもダメ

税金には以下の表のとおり時効があります。

問題となるケース 時効期間
税金の申告書を期限内に提出した場合 申告期限の翌日から3年
申告書を期限内に提出しなかった場合 同5年
贈与税の特例 同6年
偽りまたは不正の行為がある場合(脱税のケース) 同7年

3年の時効期間が成立するケースは、「適切に申告はしたものの、納税資金がないために納税しないまま時間が過ぎてしまった」というケース。それに対して、時効期間5年は不申告のケースです。不申告というのは「うっかりして期限を過ぎてしまった」ということです。

期限に間に合わないのを知りつつ放置している場合は、「うっかり」ではなく故意になるので脱税と認定される可能性があります。脱税のケースでは時効期間が7年に延長されます。

ただし、以上の時効期間は、正確には「賦課権の除斥期間」であり、「国税の徴収権の時効期間」ではありません。賦課権とは、税務署長が税金の内容および金額を決定する権利のことです。賦課権の除斥期間の場合、時効とは違って中断や停止がありません。そのため3〜7年の期間が過ぎれば、たとえその間に中断・停止事由(納税義務者が納税義務の存在を認めるなど)があっても、時効は成立してしまいます。

それに対して、「国税の徴収権の時効期間」には時効が適用されます。徴収権とは、賦課権に基づいて、税務署が納税義務者に対して「税金を納めよ」と命じる権限のことです。時系列でみると、「賦課権の行使→納税義務発生→徴収権の行使」という流れとなります。

徴収権は、「法定納期限から5年間」で消滅時効が成立します。通常の時効と同様に中断や停止があるため、5年が経過するまでに税務署から督促状が届くと時効は中断し、ゼロに戻ってカウントされます。

このように、脱税の意図があると疑われるケースでは、賦課権の時効期間が7年まで延びるのに加えて、一度発生した徴収権は中断・停止により時効がリセットされます。「無視していればそのうち時効が成立して脱税できる……ラッキー!」というわけにはいかないのです。

脱税がバレるとどうなる?

脱税がバレると、各種加算税や刑事罰などのペナルティを受けます。脱税の程度が軽く、修正申告だけで済む場合は、延滞税、利子税、過小申告加算税、無申告加算税、重加算税などが追徴課税されます。早く修正申告するほど追徴の度合いも軽くなります。

一方、組織的な脱税事件などでは経営者や経理担当者が逮捕される場合もあります。このような重大な脱税犯の場合は追徴課税だけでは済まず、10年以下の懲役、1000万円以下の罰金という重い刑事罰が科されます。

税務署は脱税が起こりやすい業種(風俗やキャバクラなど)にターゲットを絞って調査していますが、たとえそのような業種でなくても、「前年と比べて不自然なほど売上高が増えている」「利益率が業界の平均よりも著しく低い」「交際費など特定の経費が非常に多い」といった特徴がある会社は調査対象となるので注意しましょう。

税務調査で指摘されやすい「脱税行為」

節税と似て非なる「脱税行為」を理解して税務調査に備える!
税務調査で指摘されやすい「脱税行為」をチェックしよう

ここでは、「どのような行為が脱税とされるのか」を説明します。節税と脱税を区別するためにも必須の知識ですので要チェックです。

売り上げを意図的に減らす

売り上げの一部を隠蔽し、隠し口座や隠し金庫などに振り分けることで利益を減らす手法は、もっとも古典的な脱税行為です。

仕入れを水増しする

原材料や商品の購入費など、売り上げに直接関わる費用のことを「仕入れ」と言います。仕入れの際に生じるお金は当然費用となり、経費に計上します。

そのため仕入れの単価や数量を増やしたり、架空の仕入れを作ったりして、意図的に利益を減らそうとする脱税行為も存在しています。調査官は「売上」と同様に「仕入れ」についても厳しくチェックをします。

経費を架空計上する

経費が多いほど利益が減り、納税額も少なくなります。そのため脱税では、ありもしない費用や交際費を経費として架空計上するケースが後を絶ちません。

在庫を減らす

在庫は資産として扱われるため、在庫量が多いほど納税額が増える可能性があります。そのため実際の在庫よりも少なく計上することで利益を減らす脱税行為もよく行われます。税務署も、製造業や小売業の税務調査をする際は、在庫を故意に減らしていないかを精査します。

具体的に在庫量を調節すると、以下のようにして納税額に影響が出ます。

  1. 在庫量を少なく見せかける
  2. その結果売上原価(売れた商品の仕入れや製造にかかった費用)が多く見える
  3. 利益が少ないように見える
  4. 利益が少なければ課せられる税金が少ない(脱税)

二重帳簿を作成する

税金申告用として利益をわざと少なく計上した帳簿を作成し、本当の利益を計上した裏帳簿と区別するのが「二重帳簿」。二重帳簿は脱税犯の常套手段です。

節税と脱税の違いを例で理解しよう

節税と脱税の違いを例で理解しよう
「 節税と思っていたら実は脱税だった」ということも!

ここでは節税と脱税の違いを具体例で説明します。脱税とならない範囲で節税するためのコツを紹介しますのでよく確認しましょう。

こんな行為は脱税です!

節税か脱税か、その区別を説明するのに一番わかりやすいのは「経費の発生時の改ざん」です。経費を利用して利益を減らすこと自体は節税としてもちろん認められます。しかし、だからといって経費の発生時を意図的にずらすと脱税になります。

たとえば10万円かけてオフィスのドアを工事したとしましょう。この10万円は「修繕費」として経費に計上できます。当たり前のことですが、今期の経費とするには、今期の決算日以前に修繕費が発生している必要があります。もし工事の予定が遅れてしまい、決算日の翌日に完了したとしたら、経営者は「たった1日工事が遅れた結果、今期の経費に計上できないのは不合理だ!」と考えたくなるでしょう。

しかし、だからといって決算日以前に発生した修繕費であるかのように請求書や帳簿を改ざんすれば、本来存在しない架空の経費を計上したことになり、脱税となります。

どうしたら節税と言えるの?

脱税に足を踏み入れず節税する唯一の方法は、「法律の定める基準を厳守する」ということに尽きます。

「売り上げや経費の発生時を故意にずらさない」「資産の評価を正しく行う」など、税法が納税者に求める当たり前のことを普段から守っていれば、「これ以上やると、グレーゾーンだな……やめておこう」という常識的な納税者感覚を身につけることができます。

そのためにも、経営者や経理担当者は、常日頃から税法や会計の知識を身につける努力すべきですが、どうしても自分では判断できないような難しい問題については、専門家である税理士に遠慮無く相談しましょう。難しい税務について独力で対応しようとすると、間違った納税を行ってしまうおそれがあるからです。

税務調査に不安を感じたら税理士にご相談を!

顧問税理士を活用して正しい納税を!
税務調査に不安を感じたら税理士にご相談を!

最適な節税対策をしたいのなら税務の専門家である税理士が頼りになります。経営者の中には税務の知識が豊富にある方もいますが、書籍などでは得られない税務上の経験は、税理士でないと身につけることができません。また税務調査などの緊急時における対応は、やはり税理士でないと難しいのが現実です。

税理士にお願いできること

税理士の業務は税理士法に定められており、特に以下3つの税金に関する業務は税理士の有資格者だけが行える独占業務です。

  1. 税務代理(税務署に対する申告・請求・不服申し立ての代理、税務調査の立ち会い)
  2. 税務書類の作成(申告書や申請書の作成)
  3. 税務相談(税法の定めや税額計算に関する相談)

これらの典型的な税務以外にも、日々の記帳代行や会計ソフトの使い方の指導、融資や起業のアドバイスといった周辺業務にも税理士は対応できます。

顧問税理士をつけるメリットとデメリット

税理士を利用する機会が多い場合は、その都度相談して費用を支払うよりも、顧問契約を結んだほうがお得ですし、優先的に対応してくれるのでおすすめです。

顧問税理士をつけることには、以下のようなメリット、デメリットがあります。

メリット デメリット
・節税効果が期待できる

・日々の税務・会計事務に追われなくなり、経営に専念できる。

・税法を厳守した納税ができるので、追徴課税や脱税のおそれがなくなる

・税務調査にも対応してくれる

 ・顧問料がかかる

ご覧のとおりデメリットよりもメリットのほうが圧倒的に多いと言えます。毎月支払う顧問料は、最低料金なら1万円程度ですので、費用対効果は十分にあります。

しっかりとした節税対策を行うには、税務に関する豊富な知識と経験が欠かせません。法律が認める節税効果を享受したいのであれば、顧問税理士をつける意義は多いにあると言えるでしょう。

監修税理士のコメント

京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台

脱税は違法行為ですのでもちろん行ってはいけません。一方、節税は法律の範囲内で税金を少なくするために行うことであり、うまく活用すれば税金の負担を軽くすることが出来ます。経営者は、事業が軌道に乗り、納める税額が増えてくると、税金を納めるのがもったいないと感じることが多いです。そのような時に「ばれなければ大丈夫」という安易な気持ちで脱税を行うと、後々大変なことになりかねません。  節税を正しく行うには税務・会計・法律の知識が必要となります。税理士は十分な知識を持つ専門家であり、経営者が本業に集中できるようサポートしてくれます。税金に関する心配を軽減して経営に専念するためにも、積極的に税理士を活用してみてはいかがでしょうか。

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