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物件の原状回復について知っておきたいポイント

最終更新日: 2022年12月14日

原状回復という言葉をご存知ですか?

個人のお引越しやオフィス・店舗など、借りた物件を退去する際、元の状態に戻すための行為を指します。

賃貸契約を結ぶ際、退去時に必ず『原状回復』に触れる機会があります。

ここでは、原状回復に関するガイドラインから、費用負担の考え方、賃貸オーナーにとっての原状回復工事の重要性などをご紹介します。

原状回復とは?ガイドラインを解説

貸主と借主の原状回復の認識ギャップを埋めます。
ガイドラインは国交省が提示しています。(画像提供:violetblue/Shutterstock.com)

専門用語に聞こえますが、賃貸契約に付いて回るのが原状回復。

マンションを借りたことがある方なら、必ず触れたことがあるはずです。

「原状」をどう見るかが人によって違うのでトラブルになりやすいため、国土交通省からガイドラインが出ています。

義務的に費用が発生する場合もありますので、しっかりガイドラインを確認しましょう。

国交省が提示するガイドライン

「原状回復」の基本的な考え方は、民間の賃貸住宅を想定して位置づけられています。

通常の使用をしている場合に起こる原状回復の費用は貸主の負担としているのですが、「通常の使用」は人によってまちまちですよね。

通常の使用とはどのように定義されているのでしょうか?

貸主(大家さんや管理会社等)の負担義務

家具を置いた場所に出来た床のへこみ、日光が入る畳の部屋の日焼け等、これらは通常の使用によって発生するものとされています。

これらは通常使用していても当然に起きる現象としてみなされ、費用負担は貸主側(大家さんや管理会社等)に起こります。

通常の消耗は賃料として払っている扱いになっていますので、これらの劣化に関する原状回復の費用は貸主の負担になるのです。

借主(借りる人)の負担義務

一方で、「通常の使用ではない」と扱われる劣化があります。

クロスに液体をこぼして放置した結果、カビが生えてしまった・壁に子どもが落書きをした・台所の油汚れを放置している等の場合の清掃費用が借主の負担になります。

要するに、通常通りゴミを出す、拭き掃除や掃き掃除をする・カビや油汚れの清掃をするなどの、物件に住まうために常識的に行っているであろう管理を怠った場合に借主の負担が起こるのです。

また、ペットの臭いや傷なども借主負担になり得ますので、気を付けましょう。

ちなみに、ガイドラインでは「原状回復は、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではないことを明確化」と強調して書かれています。経年劣化は当たり前に起こり得ることなので、借主が○年前の状態に完璧に戻す事ではありませんよ、ということですね。

ガイドラインに法的拘束力はない

しかし、ガイドラインはあくまで退去時のトラブルを未然に防ぐために提示されているもの。法的拘束力はないので、もしトラブルに発展して裁判になったときは、契約自由の原則が勝ってしまいます。

ですので、契約時に貸主、借主双方で細かく契約内容を確認しておくことが何より大切なのです。

貸主必見!原状回復を行うメリット・デメリット

原状回復が担う役割とは何でしょう。
原状回復を丁寧に行うとメリットが。(画像提供:Dmitry Galaganov/Shutterstock.com)

原状回復にはお金がかかりますが、確かな原状回復工事を行うことでメリットが生まれます。

ここでは原状回復に関するメリット・デメリットを見てみましょう。

原状回復を行うメリット3つ

■部屋の商品価値を上げる
原状回復は上記したように、入居される前の、元の状態まで物件を回復させることが目的です。

借主は入居する際には築年数やセキュリティ等、あらゆる条件を持っていますが、入居の決め手として大きな割合を占めるのは内覧の際に室内が整っているかどうかではないでしょうか。

カビが生えている箇所があったり、壁紙の変色が放置されていたりする部屋ですと、そこに住もうとは積極的には思えません。

部屋の商品価値を上げ入居率を高めることにより、定期的な収入に繋がるのであれば、原状回復工事はたしかなメリットと言えるでしょう。

■定期的なメンテナンスの役割を兼ねる
物件は時間と共に資産価値が低下していきます。
しかし、入居者が変わるたびに行う原状回復の工事はメンテナンスとしての役割も兼ねており、劣化や消耗などを細めに直していくことで物件の資産価値を不要に下げることはなくなります。

原状回復の工事は居室全体を点検してから着工するため、物件の価値を維持していくためにも手を抜かずに行いたいものです。

■入居者が早く決まることによる広告費等の削減
賃貸物件を扱っているのであれば、絶え間なく入居者がいることが理想的ですよね。

入居者募集の宣伝費や入居者が決まるまでの維持費などは、きちんと原状回復工事を行い、常に魅力的な物件にしておくことである程度押さえることができます。

物件を綺麗な状態に保ち、余計なコストを抑えていきましょう。

原状回復を行うデメリット

基本的に物件を維持していくために必要な行為ですので、デメリットと言えるものはありません。

強いて言うならば、工事期間中は利用者を得られないので家賃収入が望めないことです。
それらも踏まえて、日程や予算を信用できる事業者と打ち合わせをしましょう。

原状回復工事の内容とは

原状回復工事の内容は大きく2つ。

では、原状回復の工事とはどのような事をするのか、具体的な内容を見ていきましょう。

居住だけでなく、店舗やオフィスとして使用した賃貸物件では、原状回復の費用負担や内容がどういった扱いになるかも合わせてご紹介します。

原状回復の主な内容

原状回復は、ハウスクリーニングとクロスの張り替えがメインです。
台所や洗面所、トイレなどの水回り、エアコンの内部清掃、カーペットのシミ抜きなど、専門の道具を使ってプロがクリーニングを行います。

また、壁紙は日光や電化製品による影響を受けやすく、室内の臭いを吸収しやすいこともあり、生活感が出やすい箇所です。
それらを綺麗に張り替えることにより、フレッシュな印象を与えます。

住宅用賃貸での原状回復の考え方

住宅用賃貸は、個人としての借主と事業者としての貸主との契約が行われます。

その為、個人契約を行う住宅用賃貸では『交渉力や情報収集力が個人と企業とで差が出る』とみなされており、消費者契約法が適用されます。

住宅用の賃貸での原状回復は、ガイドラインにある通り、経年劣化による自然消耗された部分に関しては貸主の負担。

管理義務を怠った場合の消耗に関する劣化は借主の負担となるのです。

住宅用賃貸の工事内容

居住空間の原状回復は、主に壁・床・エアコン内部の清掃・水回りの消毒など。
これらは貸主負担で行われます。
また、専門業者が必要になるハウスクリーニングも貸主が行います。

事業用賃貸の原状回復の考え方

事業用賃貸と住居用賃貸では、原状回復義務の範囲に違いが生じます。

営利目的での利用が主となる事業用賃貸は、事業者と事業者間の契約とみなされる為、原状回復の費用負担は基本的にはすべて借主負担と考えるようになります。
※個々の契約内容による

同時に、事業用賃貸は個人利用とは違い多くの人が出入りしますし、一般的に個人で考えられる通常使用の範囲をこえる消耗が想定される為、消費者特約が適用されません。

事業用賃貸の工事内容

工事の範囲は貸事務所内の床・壁・天井・照明等々、自然消耗かどうかは関係なく、基本的に借主負担です。

飲食店も同様なので、タバコのヤニ汚れや臭い・油汚れ・食べ物をこぼしたシミも原状回復の対象ですので、小まめな清掃を心掛け、工事費用をなるべく抑えたいところです。

事務所や店舗の使用は、居住目的とは違い借主によってどのような使い方をするか分からない為、原状回復費用は借主の負担となるのです。

余談ですが、居住用のマンションをオフィスとして使用した場合は借主の使い方が限定されており、原状回復にかかる費用も大体予想が可能なので、ガイドラインが適用された事例もあります。

原状回復の期間・費用の相場は?

工事期間と費用は要確認です。

では、実際に原状回復の工事を行う場合、期間や予算はどれくらいかかるのでしょうか。
コストがかかる重要な場面ですので、ある程度の予測は付けておきたいですね。

原状回復の工事の期間は?

原状回復工事は大体1週間程度を目安として考えます。

ただし、約30坪ほどの広さがあれば1~3週間、約100坪ほどの広さを考えると1ヶ月は見るのが一般的です。

また、劣化具合によってクリーニングにかかる手間も違いますので、綿密に打ち合わせをして余裕をもって施工期間を設定しましょう。

原状回復の工事の費用は?

一般的に原状回復工事には、坪2万~3万の費用が予測されます。
また、高層ビルの工事となると坪10万かかることも。

大きな工事になりそうなときには、原状回復工事にかかる期間や費用を計算して、計画的に実行しましょう。

原状回復はトラブルが起こりがち

原状回復によるトラブルは頻発しています。
トラブル回避の為に備えましょう。(画像提供:PR Image Factory/Shutterstock.com)

ガイドラインが作成されるほどに頻発する、原状回復関連のトラブル。
お金が絡むことでもありますし、その金額が到底納得できない程の額に上ってしまうことも珍しくないからです。

住居目的の賃貸で起こるトラブル

住居目的で部屋を借りていた場合に起こり得るトラブルとしては、入居の際に既に壊れていた部分・傷がついていた箇所等があったにも関わらず、それを管理会社に申し出ていなかった為に退去時に原状回復の料金を請求されてしまうケースが上げられます。

他にも退去時のトラブルで多いのが、壁紙の一部のみ傷がついてしまったが、もっと広い面積の張り替え費用を請求されたという事例。

日光での劣化や、ふいに付いた汚れ、家具による傷など、些細なことで傷が付いてしまうのが、壁紙の張り替えに関する費用負担の問題は度々起こります。

面積が広いが為に金額が大きくなり、トラブルになりやすい案件と言えるでしょう。

トラブルを回避するために留意すること

■契約書の内容を隅々まで確認すること
当然のことではありますが、まずはしっかり貸主と借主で契約内容を確認し、双方合意の上で契約をすることです。

ガイドラインはあくまでもガイドラインで、法的な拘束力はありません。

契約内容の中に、「ハウスクリーニングは借主負担」など紛れ込んでいたにも関わらず契約を結んでしまった場合、契約の自由が優先されてしまいます。

見落としのないように、契約書をしっかり読み込みましょう。

■荷物の搬入の前に、傷等をチェック
つぎに、契約が成立したら入居時の物件の状態をチェックしておきましょう。

チェックリストを予め渡す管理会社もありますが、全ての大家さんや管理会社がチェックリストを実行している訳ではありません。荷物を運び込む前に、既に傷がついている箇所や汚れている箇所を記入しておくと良いでしょう。もし間取り図を所持しているようでしたら、そこに書き入れていくとより分かりやすくなります。

また、画像は何よりの証拠になりますので、日付を入れた写真を撮っておくことをおすすめします。

■設置機器のトラブルは速やかに報告
実際に住み始めてから、排水溝がつまったり、エアコンや給湯器などあらかじめ設置されていた機器の故障などが発生したら、速やかに貸主に連絡を入れてください。

放置していてカビが生えたり劣化してしまったりした時に、思わぬ請求が発生しない為にも、何かあったら必ず速やかに連絡です。

原状回復の工事のプロを探そう

原状回復の費用を考えると、ピッタリな業者を選びたいですね。
原状回復の事業者にも特色があります。(画像提供:Dragon Images/Shutterstock.com)

原状回復と一口に言っても、事業者それぞれに強みがありますね。

物件の価値を維持していく為に、定期的に必要になる原状回復工事。必ず費用が発生するものだからこそ、物件に合った事業者を選んで、価格と技術を見直していきたいものです。

ミツモアでは、原状回復の工事に強みをもった事業者探しのお手伝いをいたします。

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