スマートフォンを使っていると、動作が重くなったと感じることがあるでしょう。同様のことがパソコンで起きれば「デフラグ」で解決可能です。しかしスマホではデフラグできません。スマホが重いとき、動作を改善する方法を紹介します。
デフラグとは?
そもそもパソコンで行われるデフラグとは、どういった作業なのでしょうか。まずはデフラグについての知識を押さえましょう。
ファイルの断片化を解消する作業
デフラグはファイルの断片化を解消する、メンテナンス作業のひとつです。正式名称は「デフラグメンテーション(defragmentation)」で、デフラグと略されます。
パソコンのハードディスクでデータの読み書きを繰り返すと「断片化(フラグメンテーション/fragmentation)」と呼ばれる現象が発生します。これがパソコンの動作を重くする原因のひとつです。
断片化はハードディスクのあちこちに、同一ファイルのデータが保存されている状態を指します。ハードディスクのさまざまな場所に散らばったデータを、整理整頓する作業がデフラグです。
断片化が起きる理由
断片化が起きる理由は、ハードディスクにパソコンがデータを記憶する仕組みにあります。パソコンの空き容量が多いうちは、ひとつのデータを1カ所に保存可能です。しかしデータの削除や移動によって、保存されていたデータに隙間ができます。
ハードディスクに新しいデータを書き込むときは隙間を詰めず、空き領域にデータを保存します。書き込むデータが空き領域より大きい場合、はみ出たデータがハードディスクの別の空き領域に保存される仕組みです。
断片化が進むと、同じファイルのデータがハードディスクのあちこちに保存されます。ひとつのファイルを開くために、さまざまな場所を探す必要があります。参照する場所が多ければ時間がかかるため、パソコンの動きを重く感じやすくなるでしょう。
スマホのデフラグは必要?
パソコンでは定期的なデフラグが必要です。その一方で、スマホのデフラグは必要ありません。スマホのデフラグが不要な理由を押さえ、適切に対処しましょう。
デフラグは必要ない
スマホのデフラグが必要ない理由は、データの保存場所の違いにあります。パソコンの保存場所であるハードディスクに対して、スマホの保存場所は「フラッシュメモリ」です。
名前の違い以外に、ハードディスクとフラッシュメモリは、データを読み込むときの動作も異なります。ハードディスクの場合、データを読み込むために、ヘッドやアームを動かす必要があります。
ヘッドとはパソコンのハードディスク上にある、データの読み取り部分です。アームというのはそのデータを読み取る際に動く部分で、この部位が動くことでパソコンはハードディスクのデータを読み取っています。
一方フラッシュメモリは、ヘッドもアームもないため、高速でデータの読み取りが可能です。元々速くデータを読み込める分、情報が断片化しても、さほど重さに影響はありません。
スマホが遅くなる理由は?
そもそもスマホが遅くなる理由には、さまざまなものがあります。自身のスマホに原因となる要素があるか、確かめてみましょう。
メモリの空き容量が少ない
「メモリ」の空き容量が少ないと、スマホの動作が遅くなります。メモリはスマホの短期的な記憶装置です。複数アプリの起動中に、メモリの許容範囲を超える場合があります。
メモリ以外にも「ストレージ」の空き容量の不足が、スマホを重くする原因のひとつです。ストレージは長期的な記憶装置で、写真や音楽などのデータが格納されます。
スマホのストレージの使用状況は、iPhoneでもAndroidでも「設定」アプリから確認可能です。「写真」「ゲーム」など、項目ごとにストレージの使用状況を把握できます。空き容量が1GB以下なら、スマホの動作の遅さは容量不足が原因かもしれません。
本体やバッテリーの劣化
ストレージやメモリの使用状況に余裕がある場合、別の原因が考えられます。今の機種を使い始めて、数年以上が経つのであれば、本体やバッテリーの劣化を疑いましょう。
本体の劣化が考えられるケースには、アプリの強制終了が頻繁に起こったり、再起動に時間がかかったりすることがあります。最新アプリの性能に、古いスマホのスペックが追い付かないのも、動作を遅くする原因のひとつです。
充電しながらのスマホ操作や、充電のし過ぎは、スマホのバッテリー消耗を早めます。これらの行為は、スマホ本体に熱を発生させて処理速度の低下を招くため、スマホの動作を遅くさせます。
OSが最新ではない
OSが最新ではない場合も、スマホの動きを遅くする原因として考えられます。古いOSのままスマホを使い続けると、動作が遅くなるだけでなく、不具合やバグも起こりやすくなります。
もし使用しているスマホのOSが古ければ、最新版のOSにアップデートしましょう。最新OSへのアップデートは、動作スピードの改善だけでなく、スマホのセキュリティ強化にもつながります。
ただしすべてのスマホで、最新OSにアップデートできるとは限りません。古い機種はOSアップデート対象から外れていくため、メーカーや通信会社のホームページで、アップデート対象かを確認しましょう。
スマホが遅いときの対処法
スマホが遅くなる理由が分かれば、原因にあった方法で対策可能です。スマホが遅いときの対処法をできる範囲で実践し、スマホの動作が速くなるかを確認しましょう。
不要なアプリをアンインストールする
「面白そう」「便利そう」とインストールしたものの、ほとんど使っていないアプリが画面に並んでいる人もいるのではないでしょうか。不要なアプリをアンインストールすれば、ストレージやメモリの空き容量を増やせます。
ただしプリインストールされているアプリには、アンインストールできないものもあるため、注意しましょう。例としてiPhone・Android問わず、ブラウザ・地図アプリ・メール・アプリストアなどが、アンインストールできないアプリです。
端末を再起動する
端末を再起動すると、スマホの動きが速くなります。電源を入れっぱなしにして充電を繰り返すと、不具合が生じやすくなります。メモリが開放されなかったり熱がこもったりするなど、原因はさまざまです。
端末の再起動によって、長時間稼働による不具合が解消されるので、スマホが速くなります。簡単にできる方法のため、定期的に行うとよいでしょう。
このときのコツは「再起動」ではなく「電源を切る」を選ぶことです。「再起動」すると電源をオフにしてすぐ、再び電源が入ります。
しかし「電源を切る」では、手動で電源をオンにします。電源をオフにしてから少しの間スマホを放置し、放電を促すことで、スマホの熱を逃しやすくなるでしょう。
メモリを増やす
メモリの使用量が増えると、スマホに不具合が発生しやすくなります。動作が遅くなるほか、アプリの強制終了や画面のフリーズなどがその例です。
スマホの動作を速くするには、空きメモリの容量を増やしましょう。スマホ本体に保存した画像や動画、音楽などをmicroSDカードやパソコンなどに移し、本体に保存するデータを減らします。不要なアプリのアンインストールも、メモリを増やすのに有効です。
ブラウザのキャッシュを削除する
ストレージに保存されたブラウザのキャッシュの削除も、スマホを軽くするのに有効です。キャッシュとはブラウザで検索・閲覧したページの情報を指します。
キャッシュがたまると、スマホの動作は重くなるため、定期的にキャッシュを削除しましょう。ただしキャッシュを削除するときに、各ホームページに保存したログイン情報も、一緒に削除されないよう慎重に作業しましょう。
iPhoneなら「Safari」、Androidなら「Chrome」が、プリインストールのブラウザです。またブラウザ以外の各アプリにも、キャッシュが存在します。動作はアプリによって削除方法が異なります。
最終手段は初期化
すでに紹介した対処法を試しても、スマホが軽くならない場合もあります。その場合、最終手段としてスマホを初期化しましょう。
初期化するとスマホ本体のデータがすべて消えます。初期化前のデータは復元できないため、必ずバックアップを取りましょう。初期化後にバックアップしたデータを戻せば、不具合が直る場合もあります。
ただし初期化したデータを全部スマホに戻すと、ストレージやメモリを圧迫する恐れがあります。必要に応じて、本体に戻すデータを取捨選択しましょう。
iPhoneが遅いときの対処法
すでに紹介している対処法以外に、iPhoneならではの対処法があります。iPhoneを持っている人は、初期化の前にiPhoneが遅いときの対処法を試しましょう。
ストレージに写真や動画を移す
iPhoneの場合、端末にmicroSDカードを挿し込めません。写真や動画などのデータは、パソコンや外部ストレージに移しましょう。
外部ストレージには、2種類あります。データをデバイスに保存する「外付けストレージ」と、オンライン上に保存する「クラウドストレージ」です。
外付けストレージの場合、Lightning端子付きのリーダーでiPhoneと接続し、microSDカードやUSBメモリにデータを移します。クラウドストレージの場合、「iCloud」「Google ドライブ」「Dropbox」などがあります。
バックグラウンド更新を無効にする
バックグラウンド更新を無効にすると、iPhoneの動きが速くなります。バックグラウンド更新とはアプリ画面を開いていないときも、処理や通信を続ける機能です。
たとえばスマホの画面をオフにしても、地図アプリの位置情報が更新され続けたり、アプリで音楽を聴けたりします。これはバックグラウンドでのアプリの稼働が理由です。
起動していないアプリにも、バックグラウンドで稼働しているアプリがあります。メールアプリが例で、メールの受信通知がすぐに届くのも、バックグラウンド更新が理由です。
バックグラウンドで稼働しているアプリも、メモリを消費しています。使っていないアプリのバックグラウンド更新を無効化すれば、メモリの消費を防止可能です。
視覚効果を見直す
iPhoneには「視覚効果」と呼ばれる、表現機能が搭載されています。視覚効果は画面をきれいに見せる一方で、iPhone端末に負荷をかけます。視覚効果の見直しにより、負担軽減と動作の高速化が実現できるでしょう。
なかでも効果的なのが「視差効果」と「透明度」の見直しです。視差効果はiPhoneを傾けたときに見やすいよう、アイコンや壁紙が動く機能です。
透明度はコントロールセンターや、アプリのフォルダなどを透明にし、壁紙の色を透かします。どちらも設定アプリから変更可能です。
不要な機能を無効にする
さまざまな便利機能が、iPhoneには搭載されています。不要な機能を無効化するのも、iPhoneを軽くするのに効果的です。
たとえばWi-Fiの自動検索は、メモリもバッテリーも消費します。Wi-Fiを必要としない場面で有効化にしていると、常にバックグラウンドで電波を探すため、iPhoneが重くなります。Wi-Fiの電波を探す場面で、自動検索を有効化すれば十分でしょう。
iPhoneに搭載されたAI機能「Siriからの提案」も、iPhone上の操作をAIが学習し続けるため、メモリを消費します。Wi-Fiの自動検索もSiriからの提案も、設定アプリから無効化可能です。
Androidスマホが遅いときの対処法
Androidスマホにも特有の対処法があります。メーカーやキャリアが違っても、Androidスマホなら、スマホが遅いときの対処法は同じです。
不要なウィジェットを削除する
Androidスマホにはウィジェット機能があります。ウィジェットはアプリのショートカット機能で、カレンダーや天気、時計などをホーム画面に表示可能です。
ウィジェットを使えば、アプリを開かずに、必要な情報を得られるように見えます。しかしウィジェットで表示されているアプリは、常に起動中です。スマホの電源が入っている間は、ずっとアプリが稼働中のため、不要なウィジェットは削除しましょう。
あくまでウィジェットは、ショートカット機能です。ウィジェットを消しても、アプリはスマホ上に残ります。アプリを開く手間は増えるものの、ウィジェットの削除でスマホの動作が軽くなるでしょう。
ライブ壁紙をやめ静止画にする
動く壁紙を設定できる「ライブ壁紙」も、スマホの動作に影響を及ぼします。ライブ壁紙がホーム画面に使われている場合は、常時メモリを消費します。
ライブ壁紙にこだわりがなければ、ライブ壁紙をやめて静止画にしましょう。特にスペックが低かったり、古かったりする機種の場合、動きがよくなりやすいです。
スマホの動きを重くすると同時に、ライブ壁紙はバッテリーを消費します。壁紙を静止画にすれば、スマホがサクサク動くうえに、バッテリーの消費が減るため一石二鳥です。
SDカードでストレージを追加する
AndroidスマホはmicroSDカードを端末に挿し込める機種が多く、microSDカードでストレージを追加する方法もあります。microSDカードの容量次第で、自由にストレージを調整できるのがメリットです。
microSDカードの値段は、ストレージの容量以外に転送速度によって変わります。転送速度が速いほど、一般的にmicroSDカードは高額です。
特に4K・8K、VR・ARなどのコンテンツを移す場合は、microSDカードの性能が悪いと、データが劣化する恐れがあります。容量はもちろん、規格にも十分注意を払いましょう。
故障かもと思ったら
できる対処法を尽くしても、スマホの動作に改善が見られない場合、スマホが故障している可能性があります。故障かもと思ったときは、早めの対策が必要です。いずれの方法で対処する場合も、対処前にデータのバックアップを取りましょう。
メーカーやキャリアのサポートに連絡
スマホの故障が疑われる場合、メーカーやキャリアのサポートに連絡しましょう。キャリアに連絡する場合、加入しているプランや補償サービスに応じたサポートを受けられます。
修理費用や所要期間は、故障状況により異なります。故障状況がひどければ、機種変更が必要になる可能性もあるでしょう。
スマホ修理業者に出す
メーカーやキャリアのサポートを受けられない場合、スマホ修理業者に出す方法もあります。メーカーやキャリアのサポートで修理するより、安く修理できる可能性もあるため検討するのも一案です。
スマホ修理業者を選ぶポイントがいくつかあります。まずは口コミや評判で、技術力や実績を確認しましょう。そのあと実店舗の有無や対応機種、修理費用をチェックします。
アフターケアに当たる修理保証や、修理パーツの品質も重要です。特にiPhoneの場合は、「総務省登録修理業者」に認定された業者を選びましょう。電気通信事業法と電波法に則った、正しい修理ができる業者の証です。
スマホが重いと感じたら早めに対策
スマホが重いと感じても、デフラグは必要ありません。スマホデフラグ用のアプリは存在せず、無理にデフラグしようとすると、スマホ本体の寿命を縮める原因になります。
スマホの動作が重くなる原因は、主に「空き容量の不足」「本体やバッテリーの劣化」「古いOS」です。それぞれの原因に合った対策があるため、ひとつずつ対処法を試し、それでも直らなければプロに修理を依頼します。
スマホが重いと感じたら早めに対策し、できる範囲で動作の改善方法を試しましょう。