積雪地域にとって住宅の大きな悩みとなるのが、屋根から落ちる雪です。
毎年冬には、落雪によるケガや死亡事故のニュースが報道されており、決して他人事ではありません。
しかし「雪止め」というとあまり聞きなれない名前なので、
「本当に必要なの?」
「後からでも取り付けできる?」
など、疑問に思う人も多いでしょう。
この記事では、雪止めが果たす役割を紹介しつつ、種類や費用相場、メリット・デメリットなどを解説していきます。
屋根の雪止めとは?なぜ必要なのか
雪止めとは、屋根に積もった雪がいっきに地面に落ちるのを防ぐために、屋根の上に取り付ける金具のことです。
雪が降る地域の屋根をよく見ると、金具がポツポツと付いているのが分かると思います。
しかし雪がいっきに屋根から落ちることを、なぜ防ぐ必要性があるのでしょうか。
雪止めは、以下のような重要な役割を果たしてくれるからです。
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雪止めは、屋根に後付けすることもできます。
屋根のすぐ下に通路がある家、隣家との距離が近い家などでは、トラブルを避けるために雪止めを付けましょう。
上記のトラブルについて、もう少しくわしく解説します。
通行人に雪が落ちる
屋根から地面に落ちる雪は、朝晩の寒暖差などによって「溶ける・凍る」を繰り返したことで、氷の塊が混ざっています。
住宅周辺を歩いている人に当たると、最悪の場合には命の危険性もあるため大変危険です。
道路に面した場所に家がある人や玄関付近に落雪する構造の家は、雪止めが必要不可欠です。
雨どいなどの設備が壊れる
「雨どい」とは、屋根から流れる雨水を地面にうけ流す設備です。
ここに雪がいっきに落ちることで、ヒビが入ったり、金具が外れて落ちてしまう可能性があります。
雪はフワフワしていて軽いイメージがありますが、積もった雪はかなり重量があります。
新雪か湿った雪かによって密度は変わりますが、1立方メートルあたり50~500kgもあるのです。
たとえば1mの積雪があった日なら、屋根の広さを80㎡とすると4トン~40トンもの重さになります。
屋根の下にある植木鉢やカーポート
普段から雪がよく降る地域なら、冬場には植物を移動させたりしているでしょう。
ですが、普段はあまり降らない地域で雪が積もると、植物や植木鉢、カーポートの屋根などが落雪被害にあうことが考えられます。
カーポートの屋根が壊れてしまうと、車の屋根がへこむなど、思いがけない二次被害に。
雪が降る可能性がある地域なら、油断大敵です。
隣家に雪が落ち、トラブルに発展
隣家との距離が近いと、落雪によるご近所トラブルが考えられます。
- 隣の敷地内に落ちた雪を、片付けるのは誰か
- 大切に育てていた庭木が折れる
- 隣家の窓ガラスが割れる
落雪の片付けについては話し合いだけで済めばよいですが、相手の家を損壊してしまうと、補償金も発生するかもしれません。
雪で玄関が塞がれる
玄関や物置・カーポートの入り口が、屋根からの落雪によって塞がれることがあります。
積もった雪はかなりの重量があるので、力ずくで玄関を開けるのは大変です。
またドアが壊れてしまうと、修理に多大な費用がかかってしまうことに。
とくに、ひとり暮らしの方は落雪によって孤立してしまうケースもあるので、雪止めを取り付けておくのは重要です。
屋根に雪止めが必要なのは、どんな地域?
屋根に雪止めを設置しておくべき地域の特徴は以下。
- 毎年雪が屋根に積もる降雪地帯
- 数年に1度の周期で雪が冬という地域
ただ、豪雪地帯では逆に雪止めを付けないほうが一般的です。
たった数日で屋根に数メートルの雪が積もることが珍しくないので、雪止め金具は耐えきれず、変形したり破損したりしてしまうのです。
また豪雪地帯では、屋根に登って雪下ろしをします。屋根から除雪するには雪止め金具が邪魔になってしまうというデメリットも。
かえって普段はあまり雪が積もらない地域でも、屋根に積もった雪が落下すると思わぬ事故やトラブルにつながってしまいます。
とくに、住宅が密集した地域や道路に雪が滑りやすい形状の屋根は、法律違反として訴えられる恐れもあるでしょう。
民法214条により、「土地の所有者は、隣地から水が自然に流れるのを防げてはならない。他人の土地に流すことを意図した建物や工作物の設置は禁止」と定められています。
屋根の雪止めの種類と、後付けするときの費用
屋根の雪止めは、新築のときに最初から設置する「先付け」と、後から設置する「後付け」があります。
業者によっては「雪止めの後付け工事のみ」では受注しないケースがあり、屋根塗装やリフォーム工事とあわせて工事することも。
費用相場は、雪止めの種類によって異なります。以下は一般的な30坪程度の住宅を想定した、種類ごとの費用相場です。
費用相場 | |
雪止め金具 | 10~15万円 |
ネットタイプ | 10~20万円 |
雪止め瓦 | 15~30万円 |
これに加えて、屋根の勾配(傾斜)などによっては仮設足場が必要になるケースもあります。
足場が必要になったときには、15~20万円程度の費用がプラスされると考えておきましょう。
雪止め金具
金属系の雪止め施工費用 | 1,000円~1,200円/m |
雪止め金具は、スレート屋根や瓦屋根、金属屋根など多くの種類の屋根に取り付けられます。
L字型になっているものが一般的ですが、扇型や富士型など、金具の形状はは様々です。
上の写真のものは羽根つきタイプと言われます。ほかには一直線の棒を軒先に固定するアングル雪止めという種類も。
ビスや釘で固定する必要がない製品が多く、後付けしても雨漏りのリスクが少ないことがメリットです。
また材質についても、ステンレスからアルミまで、それぞれ軽さや錆びにくさなどの特徴をもった金具があります。
ネットタイプ
ネットタイプの施工費用 | 5,000円~10,000円/m |
ネットタイプの雪止めは、すべての屋根に設置可能です。
ネットタイプは、屋根の一部に金網を張り、雪との摩擦力を高めて雪が落ちるのを防ぎます。
業者によって色は選べますが、他の雪止めよりも大きな形状なので地上から目立ちます。
雪止め瓦
雪止め瓦の施工費用相場 | 1,000円~3,000円/枚 |
雪止め瓦は、既存の屋根材が瓦のときに取り付けることができ、必要な場所だけ雪止め瓦と交換できます。
持ち手のような突起が特徴的です。金具を使うと「1部分だけが金属」なので目立ちますが、雪止め瓦を使うと外観に影響しないのがメリットです。
雪止め瓦を取り付けた後も屋根の色は変わらないので、見た目の印象もメリットが大きいでしょう。
雪止めの後付けに向かない屋根は?
基本的に、どの屋根も雪止めを後付けできます。ただし、一部の屋根では取り付けが難しいことも。
- アスファルトシングル屋根
- 防水屋根
強度が弱く屋根材同士が密着しているアスファルトシングル屋根や、隙間が一切ない防水屋根は、雪止めの後付けには不向きです。
雪止めを後付けするときには、屋根に穴を開けて金具を取り付けたり、屋根材の隙間に部品を押し込んだりします。
そのため、シングル屋根や防水屋根に取り付けると、雨漏りなどの不調につながってしまう可能性があります。
これらの屋根を採用するなら、新築のときに雪止めを先付けしておくのが一般的です。
雪止めが不要な屋根とは?
雪が少しでも降る地域であれば、雪止めの取り付けを考えた方がいいでしょう。ただし、積雪地域でも、次のような環境や屋根の形状は取り付けの必要ありません。
- 敷地が広く隣家まで遠い
- 屋根の下に通路がない
- 無落雪の屋根
敷地が広く隣家まで距離があるときには、屋根から落雪しても人災が少ないため、雪止めの必要性はほとんどありません。
また無落屋根は、屋根が谷折りになっているため、積もった雪は自然と溶けて排水管を伝って雪解け水が流れるシステムです。そのため豪雪地帯によく使用され、雪下ろしの必要がありません。
このように住宅によっては雪止めが不要なケースもあります。まずは施工業者と相談してみましょう。
屋根に雪止めを設置するときの注意点・デメリット
雪止めを設置すると、落雪の二次被害を減らすことができるという大きなメリットがあります。
しかしもちろん、リスクやデメリットなどもあります。
ここでは以下のような注意点・デメリットを紹介していきます。
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雪止めを設置できないケースがある
雪止めを設置できないケースには注意しましょう。
前項でも紹介したとおり、アスファルトシングルを使っている屋根では、雪止めを設置することができません。
また屋上など、勾配の緩い(平たい)陸屋根では、雪止めを設置するまでもなく落雪しません。
さらに屋根材の条件を満たしていても、「雪止め設置」だけの工事を業者に断られてしまうケースがあります。
その場合には屋根の塗装など、別のメンテナンスやリフォームと合わせて依頼しましょう。
定期的なメンテナンスが必要
とくに金属を使った雪止め金具は、サビが発生したり、ズレてしまったりすることがあります。
屋根は雪だけでなく、1年中ずっと雨風にさらされているため、経年劣化は免れないのです。
そのため、屋根塗装でサビのメンテナンスをしたり、コーキング(接着剤)でズレをなおして補強したり、といったメンテナンスは定期的に必要です。
雨漏りのリスク
雪止めは屋根材に金具を取り付けるため、施工不良があると雨漏りする可能性があります。
業者の技術力不足であれば避けられませんが、少なくとも屋根を10年以上メンテナンスしていないときには、取り付ける前に屋根そのものを点検したほうがよいでしょう。
また、ずさんな施工をされないためにも、数社を比較して優良業者を選ぶのが大切です。
耐震性が下がる恐れがある
屋根や外壁などは、重量が増えるほど耐震性は下がります。
雪止め1つの重量はそこまで重くはないものの、設置する個数によっては耐震性が下がる恐れがあります。
とくに古い木造建築などに後付けするときには、業者と相談しておくのがよいでしょう。
雪の落下を完全に防げるわけではない
雪止め金具を設置したとしても、「完全に落石しない」という保証はないので注意しましょう。
屋根に積もった雪はひとかたまりになるため、細かく分裂して落石することはまれです。
しかし雪止めの隙間から落ちてきたり、雪止めの高さ以上に積もった雪が落ちたり、というケースはあります。
豪雪地帯ではかえって邪魔になる
雪止めの注意点として、東北や北海道などの豪雪地帯ではかえって邪魔になるというポイントがあります。
東北などで雪が積もる高さは、それ以外の地域の比ではありません。そのため日ごろから降雪作業は欠かせないのです。
屋根の雪を降ろすとき、雪止めがあると作業の邪魔になってしまいます。
太陽光パネルがある家には設置可能?
屋根に太陽光パネルを取り付けた状態でも、雪止めの設置は可能です。ただし、専用の雪止めを使うのがおすすめです。
太陽光パネルはガラス製なので、雪の滑りがよいという特徴があります。また屋根面プラス10cm程度の高さがあるため、通常の雪止めでは落雪を止めきれないのです。
しかし太陽光パネルがある屋根専用の、高さ30cm以上の商品が発売されているので、業者に相談してみましょう。
DIYはおすすめできない
雪止めの設置は、業者に頼むよりDIYした方が費用が安く済みますが、おすすめしません!
- 高所作業なので危険
- 十分な効果が発揮されないことがある
- 雨漏りのリスクがある
高所作業時の落下事故は、毎年絶えません。普段からいくつもの工事をこなす業者でさえ、注意深く作業していても起こるときには起こります。
また、取り付け位置や取り付け個数などのミスで、十分に効果が発揮されない可能性も。
最悪の場合、施工した部分の穴から雨漏りにつながることもあります。基本的には屋根工事の専門業者に依頼しましょう。
雪止めの設置を依頼するときのポイント
屋根や外壁塗装専門のプロを見つけよう
雪止めを取り付けるなら、屋根工事の専門業者を選びましょう。当たり前なようですが、屋根に対する知識・実績があるので信頼できます。
また雪止めに関しては、かなり地域の気候などの影響を受けます。そのため長年地元で経験を積んでいる業者なら、なおよいでしょう。
大手リフォーム会社などに依頼するときには、仲介料がかかる点にも注意が必要です。大手の場合は、実際の施工を下請け業者に依頼することが多く、そのぶん人件費なども上乗せされてしまいます。
費用を少しでも抑えたいなら、屋根の塗装や修理、リフォームをあわせて依頼するとよいでしょう。足場を組むケースが多いため、一度にまとめて施工したほうが長期的にみてお得です。
3社以上から相見積もりを取ろう
雪止め金具の設置には、金具を購入する費用だけではなく、足場仮設や人件費などの項目があります。
1社や2社だけで見積もりを取ると、適正な費用なのかどうかが分からず、見積書の丁寧さも比べることができません。
残念ながら、なかには悪徳業者も存在するので、いざ工事をした後に雨漏りなどが起こったときにも対応してもらえないなどのケースも考えられます。
必ず3社以上から見積もりをもらって、納得のいく業者に雪止めの設置を依頼しましょう。
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屋根の雪止め設置について、種類や費用相場、またデメリットや注意点などを解説してきました。
雪の降る地域で落雪に備えないのは命取りです。自分の敷地内だけでなく、通行人や隣人に被害を及ぼすことも考えられます。
メリット・デメリットをよく確認したうえで雪止めを設置して、冬に備えましょう!
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