外壁塗装は、ただ単に壁を塗ればよいというわけではありません。塗料の性質を最大限に活かし、壁を保護する効果を発揮させるには、正しい手順を踏む必要があります。塗装において重要な工程である下塗りの目的や内容、費用の相場などについてまとめました。
下塗りとは?
外壁塗装を行うにおいては、塗料をただ壁に塗っておしまいではありません。準備から完了までの間には、さまざまな工程を経る必要があるのです。
欠かせない作業のひとつに「下塗り」があります。塗装の品質を高めるには、不可欠な工程です。まず下塗りの概要について触れていきましょう。
塗装の工程のひとつ
塗装には、いくつもの作業が必要です。まずは塗装する面をきれいにする下地処理をし、次に足場を組み、そして養生もしっかりと行います。
準備ができたら、いよいよ塗料を塗布します。この作業が塗装作業のメインといえ、職人としても腕の見せ所です。
塗装し終えたら、養生や足場を撤去し、清掃した後に発生した廃棄物の処理をして、全ての工程が完了します。
このように塗装には、いくつもの作業が必要ですが、その中に「下塗り」があります。数ある工程のひとつで、重要な働きを果たす作業です。
外壁は複数回塗装するのが基本
塗装の完了までには、数多くの作業を経る必要があることを説明しましたが、塗装に関しても、1度だけ塗料を塗ればよいわけではありません。ここでも作業が分かれており、基本的には複数回の塗装を施します。
一般的な塗装の過程は、下塗りからはじまり、中塗り、上塗りへと進みます。そのどれを省いてもよい状態には仕上がりません。
通常、中塗りと上塗りでは同じ塗料を使用します。しかし下塗りでは、原料も機能も異なる別の塗料を用いるのです。このことからも、下塗りには必要不可欠な意義や目的があることが分かるでしょう。
下塗りの目的
「表面的には一緒なのだから塗装は1度で十分なのでは?」と考える人もいるようです。確かに、何度塗っても見た目は同じに思えます。しかし下塗りは、重要な意味を持つ、欠かせない工程です。
塗料を塗布する作業だけでも複数回必要である塗装において、下塗りはどのような目的を持っているのでしょうか。必要性について掘り下げていきましょう。
中塗り・上塗り塗料の付きをよくする
下塗りの目的を一言でまとめると「塗装面に塗布する新たな塗料の付きをよくする」ことです。これは塗装の完成度にも関わる、とても重要な役割といえます。
塗装面によって、使用されている材質は異なります。壁材ひとつをとってみても、サイディング材の場合もあればモルタルの時もあり、あるいはタイルを使っているケースもあるでしょう。
特徴が異なるいずれの壁面にもしっかりと塗装を施すためには、どの面にもしっかりと塗料を付着させなければなりません。
塗料の付きが甘いと、すぐに剥がれや膨れが生じかねません。そのため、重ねて塗る塗料の付きがよくなるように、下塗りでベースを形成するのです。
色ムラを防ぐ
外壁塗装において、色ムラは絶対に避けなければなりません。住宅を眺めた時に壁の色が所々違っていたら、美観を大いに損ねてしまいます。そのような家に住みたいと思う人はいないでしょう。
壁の色ムラが生じる原因にはいくつかありますが、職人の技術力不足もそのひとつです。そして下塗りを省き、疎かにすることも、色ムラを引き起こす原因になります。
外壁材は、上塗り用の塗料を吸い込もうとする性質を持っていて、その結果色ムラを引き起こすことがあります。下塗りには吸い込み止めの機能があり、色ムラを防ぐ役割を担うのです。
先に説明した通り、下塗りには、中塗り・上塗りで使用する塗料の付きをよくする役割もあります。下塗りを省いたり雑だったりすると、上塗りの状態は一定かつ均等ではなくなり、色ムラを引き起こす要因にもなるのです。
外壁の美観を長持ちさせる
下塗りは、長期間にわたって外壁の美観を保つためにも欠かせない工程です。毎日の暮らしを送る住宅は、できるだけ美しい外観を維持させたいものです。
下塗りをしないと、壁面に中塗りや上塗りの塗料が密着しにくくなりますが、それは塗膜の耐久性を低下させ、早期の剥がれや劣化にもつながりかねません。
外壁は、強い紫外線を含んだ日射しや激しい雨風にもさらされます。環境から受ける負荷は塗膜にダメージを与え、塗装の劣化を招くのです。
下塗りで上塗りのクオリティーを高めておくことで、塗膜の劣化を抑え、ひび割れや剥離といった症状を先延ばしできます。それだけ外壁の美観を長持ちさせられるのです。
利用される塗料の種類
下塗りに使用する塗材にも、いくつかの種類があります。それぞれに用いられている材料が異なり、特性にも違いがあるのです。
外壁塗装の下塗りに使用される、主な3タイプについて詳しく見ていきましょう。
シーラー
「シーラー」の語源は、物を密着・接着する意味を持つ「シール」が語源となっています。このことからも、上塗り用塗料の付きをよくする効果が期待されている塗材であることが分かるでしょう。
塗装現場で広く取り入れられているシーラーですが、主に水性と油性に分かれています。水性タイプはコンクリートやモルタル、石膏ボードでは高い効果を発揮しますが、それ以外には使用できません。
その他の壁材に適しているのは「浸透性シーラー」とも呼ばれる油性タイプです。水性と比較すると接着力がとても強い特徴があります。
外壁材の内部にまで下塗りの効果が及ぶ性質を備えていて、その結果、外壁自体の強度が高まるのです。
油性シーラーは主にPC板やALC板、GRC板をはじめ、風化の激しいコンクリートやモルタルなどにも使用されます。
プライマー
「プライマー」も、下塗り用の塗料として普及しているタイプです。英語の「primary(最初の)」を語源としていることから、現在では下塗り材の総称としても用いられているほど、一般的だといえます。
シーラーと同様に、プライマーにも水性と油性それぞれの種類があります。浸透性が低く、吸い込みが少ない水性タイプは、壁面の劣化が小さい場合に適したタイプです。
刺激的な臭いもあまり生じさせず、塗装道具の洗浄も楽にできるなど、環境に及ぼす影響が小さく扱いやすい点も特徴です。
一方で油性タイプは、高い浸透性や下地強化機能、優れた密着度を誇ります。劣化が激しい現場にも対応し、30〜60分という短い乾燥時間によって効率的な作業ができることも魅力です。
フィラー
「フィラー」の名称は「埋める、詰め物」の意味を持つ言葉に由来しており、ひび割れや凸凹の隙間を埋めて平らにする効果を備えた下地調整剤です。
ひび割れなどの損傷が見られる壁面では、十分に処置してからでなければ、塗装の仕上がりを低下させてしまいます。目止め効果を持っていることで、ひび割れが生じやすいモルタル素材の現場などでよく採用される塗材です。
顔料やセメントといった無機成分を含んでおり、わずかに弾力性があります。この弾力性が、裂け目などへの追随性を生んでいるのです。
近年はシーラーの機能を合わせ持ったフィラーも数多く登場しました。
塗料の選び方
数ある下塗り用の塗料の中から、どれを選んだらよいのでしょうか。選び方のポイントについて解説します。
上塗りに合わせて選ぶのが基本
下塗りと、そこに重ねて塗る上塗りには、それぞれ異なる塗料を使用します。そしてそれらには、相性の良し悪しがあるのです。
相性がよければ付きがよく、お互いがしっかりと密着します。その結果、表面の塗膜の状態も良好になり、塗装の完成度も高まるのです。
反対に、相性の悪い物同士を組み合わせてしまうと、早い段階での剥がれやひび割れを起こすことにも繋がってしまいます。
外壁塗装においては、施主が判断するものは上塗りに関する部分になります。色や機能など、住む人の意向が大きく反映されるものだからです。
そのようなことから考えて、下塗りに使用する塗料は、上塗りに合わせて選ぶことが基本となります。
失敗すると色ムラの原因に
下塗りは、上塗りで覆われるからといって、いい加減に作業することは厳禁です。下塗りを失敗は、色ムラの原因にもなってしまいます。
中塗りや上塗りに、隠蔽率が低く透けやすい塗料を使うこともあるでしょう。その際に下塗りに失敗していると、表面の色に濃淡が生じ、結果として色ムラを起こすことがあるのです。
下塗りをミスすると、外壁材が持つ塗料を吸い込む性質を、均等に抑えられない状態を生む場合があります。吸い込み止めの効果が場所によって異なることも、色ムラの要因にもなるのです。
下塗りに必要な費用は?
塗装工事を発注するにあたって、費用について気になる人は多いでしょう。いくらくらいのコストがかかるのかは、事前にしっかりと把握しておきたいものです。
下塗りの相場は、素人にはなかなか分かりにくい所です。費用の相場について解説します。
平米単価の相場
塗装工事では、中塗りや上塗りと同様に、下塗りも平米単価をもとに計算します。養生などでも、広さを基準にして費用を割り出すことが多いのです。
従って、下塗りの費用には定価がなく、広さに応じて金額が増減します。
標準的な相場は、次の通りです。
内容 | 相場(平米あたり) |
シーラー | 600~900円 |
フィラー | 900~1,200円 |
なお、クラック補修などについては、下地処理としてみなすか、下塗りでまかなうかは、症状によって違ったり業者の判断が異なったりする部分です。細かく確認することをおすすめします。
塗装費用の内訳
外装工事全体を眺めた時に、その内訳は次のように考えられます。
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塗料は材料費にあたりますが、その中には以下のような内容が含まれます。
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このように、工事の全体像を把握すると、下塗りにかかるコストの割合もイメージしやすくなるでしょう。
塗料によって変動する点に注意
下塗りに要する費用は、一定ではありません。塗料によって変動する点は注意しておきましょう。
下塗り材の種類によっては、原料の違いもあれば、同じ原料を用いていても性能や機能が異なります。タイプやランクの違いによって、価格には差が生じるのです。
当然、外壁を保護する働きが高く、耐用年数が長ければ。高価になります。どの塗料を使うかは、予算と照らし合わせて選びましょう。
優良業者を選ぶポイント
住宅の安全性にも関わる外壁工事は、信頼できる業者に依頼したいものです。しかし、頻繁に行うものではないため、安心してお願いできる業者を知らない人も少なくありません。
そこで、優良な業者を選ぶポイントについて解説します。
安い業者には要注意
小さくない費用をかけるからには、できるだけコストを抑えたいと思うのは当然です。だからといって、金額だけで業者選びをすることは避けるべきでしょう。格段に安い業者もいますが、要注意です。
金額を下げられる主な理由には、次のようなことが考えられます。
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人件費を削ると、職人の数が減らされ、その結果仕事が雑になる恐れもあるのです。それは、手抜き工事にもつながりかねません。
材料の必を落として経費を抑えていることも考えられます。質の低下は、安全性や完成度にも悪影響を及ぼします。
後になって、当初の契約にはなかった作業について請求されるかもしれません。安過ぎる業者には、慎重に対応する必要があります。
現地調査をして見積をもらう
仕事の依頼に見積は欠かせませんが、きちんと現場を確認したうえで見積を作成してもらいましょう。そのためには、丁寧な現地調査が不可欠です。
いい加減な見積だと、劣化の進行を見逃して不十分な施行で済まされてしまったり、反対に軽微な劣化に過剰な工事が施されたりする可能性があります。
前者では完成度の低い塗装となり、後者では不要な金額が発生してしまうでしょう。
対応のよい業者であれば、脚立で屋根付近の高所までチェックし、損傷などを画像に撮って知らせてくれるなど、細かい配慮が見られます。
細かく説明してもらい、納得して依頼するためにも、現地調査は重要です。
内訳を確認する
見積をもらったら、作業の工程や必要な材料、そしてそれらにともなう個別の費用などが細かく記載されているか、内訳をしっかりと確認しましょう。
下塗りにかかる費用を知りたいのに「塗装一式」などの表現で一括りにされている場合があります。これでは、見積として不十分です。
下塗りであれば、外壁がどのような状態であるのかを説明してくれたうえで「使用する塗料」「その分量」「材料費」「手間賃」などを細かく記載した見積をくれる業者だと安心できます。
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外壁塗装において下塗りは、ともすると地味な工程に思えます。しかし塗装の仕上がりにも、住宅の安全性にも影響する、とても大切な作業です。
外壁塗装を依頼する際には、決して下塗りを軽んじてはいけません。目的を理解し、使用する塗料のタイプなどをしっかり確認してから発注しましょう。
そこで重要なのが、相見積(あいみつもり)です。複数の業者から提示された見積額を比較検討し、納得できる費用で依頼をしましょう。
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