大切な実家を相続する際、相続税は避けては通れない問題です。しかし、正しい知識と準備があれば、相続税の負担を軽減できます。
本記事では、親名義の家の相続税の計算方法や、知っておきたい節税対策などを詳しく解説します。相続税の基礎知識を身につけ、安心して相続手続きを進められるようにしましょう。
親名義の家の相続税がいくらか確認する前にやるべきこと
親名義の家の相続税を計算するには、先に準備すべきことがあります。相続税を計算する前に必要なことは以下のとおりです。
- 相続財産の総額を確認する
- 法定相続人や遺言状の有無を確認する
相続財産の総額を確認する
まずは相続財産の総額を確認する必要があります。これは、相続税は相続する財産すべてに対してかかる税金だからです。家だけでなく、預貯金や株式、生命保険、自動車、貴金属なども含まれます。
財産の存在を把握せずに家だけの価値で相続税を算出してしまうと、実際の税額と大きく異なる可能性があります。思わぬトラブルやペナルティが発生しないよう、まずは相続財産の総額をしっかりと確認しましょう。
法定相続人や遺言状の有無を確認する
親名義の家の相続税を計算するためには、法定相続人や遺言状の有無も重要です。誰が相続人になるかが分からないと相続税の計算ができません。
遺言状がある場合は、その内容に従って相続人や相続割合が決まります。例えば、法定相続人ではない親戚や友人に財産を渡すことも可能ですし、特定の相続人に多くの財産を残すことも可能です。
一方、遺言状がない場合は、民法で定められた法定相続人が相続することになります。法定相続人が誰になるのか、そしてそれぞれの相続割合はどのくらいになるのか確認が必要です。
法定相続人は、配偶者や子供、親、兄弟姉妹などが該当し、それぞれの関係性によって相続割合が異なります。
①親名義の家の財産価値(相続税評価額)を計算する
相続税を計算するためには、相続する家屋の評価額を計算する必要があります。家屋の評価額は、家屋と土地それぞれで異なる計算方法を用いて算出します。
- 家屋の相続税評価額
- 土地の相続税評価額
家屋の相続税評価額
家屋の相続税評価額は、固定資産税評価額によって算出します。計算方法は以下のとおりです。
つまり、固定資産税評価額がそのまま相続税評価額となります。固定資産税評価額は、毎年市町村から送られてくる「固定資産税納税通知書」に同封されている「課税明細書」で確認可能です。
土地の相続税評価額
土地の相続税評価額は「路線価方式」と「倍率方式」で計算可能です。どちらの方式を用いるかは、土地の状況によって異なります。
路線価方式は、都市計画区域内の土地で路線価が定められている場合に適用されます。計算方法は以下のとおりです。
路線価は、国税庁が毎年7月頃に公表する路線価図で確認できます。補正率は土地の形状や奥行、間口の広さなどに応じて調整されます。
一方、倍率方式は、路線価が定められていない土地や、農地、山林などに適用されます。計算方法は以下のとおりです。
②親名義の家の相続税を計算する
家屋の評価額が確認できたら、それを基に相続税の計算を行いましょう。主な手順は以下のとおりです。
- 課税遺産総額を計算する
- 相続税を計算する
課税遺産総額を計算する
家屋の評価額が確認できたら、他の遺産相続と合算して総額を算出します。次に、基礎控除額を差し引いて、課税遺産総額を計算します。
基礎控除とは一定額までは相続税がかからないという制度です。基礎控除額は法定相続人の数によって変動します。計算方法は以下のとおりです。
仮に、法定相続人を子ども3人とすると、基礎控除額は
3,000万円 + (600万円 × 3人) =4,800万円
となります。このとき、家屋の評価額が1億2,000万円だとすると、基礎控除額を除く課税資産総額は、
となります。
相続税を計算する
課税遺産総額を基に相続税を計算します。相続税は累進課税制度が採用されており、課税遺産総額が増えるほど税率が高くなる仕組みです。
課税遺産総額を下記の速算表に当てはめて税額を算出しましょう。
課税遺産総額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
1,000万円超~3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
3,000万円超~5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
5,000万円超~1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超~2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
2億円超~3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
3億円超~6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超~ | 55% | 7,200万円 |
例えば、課税遺産総額が7,200万円、法定相続人が3人の場合、各相続人の取得金額は2,400万円です。
速算表に照らし合わせると、2,400万円のときの税率は15%、控除額は50万円なので、
となり、各相続人の相続税額はそれぞれ310万円となります。
3人の相続税の総額は930万円です。
親名義の家の相続税を節税する方法
家屋を相続する場合、多額の相続税が発生する場合があります。少しでも負担を減らすために、節税対策を行いましょう。
親名義の家の相続時に活用できる節税方法は以下のとおりです。
- 小規模宅地等の特例
- 未成年者控除
小規模宅地等の特例
親名義の家を相続する際の相続税負担を大幅に軽減できる方法として「小規模宅地等の特例」の活用があります。
小規模宅地等の特例は、亡くなった方が住んでいた家や事業に使っていた土地の評価額を、最大80%も減額できる制度です。相続税は相続する財産の評価額を基に計算されるため、評価額が下がることで相続税負担を大きく軽減できます。
例えば、評価額が5,000万円の家屋を相続する場合、小規模宅地等の特例を使えば評価額を1,000万円まで減らすことが可能です。
ただし、特例の適用には相続人が一定の要件を満たす必要があります。主な要件として、相続開始時に被相続人と同居していた、または、相続開始後3年以内にその家屋に居住することなどが挙げられます。
未成年者控除
未成年者控除を活用することで、相続税を節税できます。これは、その未成年者が満18歳になるまでの年数1年につき10万円で計算した額が控除される制度です。
1年未満の期間がある場合、切り上げて1年として計算されます。例えば、相続開始時に15歳9ヶ月の子供がいた場合、18歳までの期間は2年3ヶ月ですが、3年として計算され30万円の控除を受けられます。
未成年者控除は相続税の基礎控除とは別に適用されるため、基礎控除と合わせて利用することで相続税の負担を大きく減らすことが可能です。
親名義の家の相続税がかからないケース
相続税は、相続によって得た財産の価値から基礎控除額や各種特例措置による控除額を差し引いた残りの金額に対して課税されます。つまり、控除額が相続財産の価値を上回れば、課税対象となる財産がなくなり、相続税は発生しません。
例えば、家屋の評価額が4,000万円で、相続人が3人の場合の基礎控除額は4,800万円となります。このケースでは、基礎控除額が家屋の評価額を上回るため、相続税はかかりません。
他にも、先述した特例や控除によって控除額が自宅の評価額を上回る場合も、同様に相続税は発生しません。
親名義の家の相続税の申告期限
親名義の家を相続する場合、相続税の申告期限は原則として被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内です。この期限内に相続税の申告と納税を行う必要があります。
もしこの期限までに申告を行わなかった場合、延滞税や加算税、無申告加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。また、各種控除を受けられなくなってしまうため、経済的な負担が大きくなってしまうでしょう。
親名義の家をスムーズに相続するためのポイント
親名義の家をスムーズに相続するためのポイントは以下のとおりです。
- 家屋のみの相続放棄はできない
- 共有名義を避ける
- 親が元気なうちから相続対策を始める
- 生前贈与は贈与税が発生する
家屋のみの相続放棄はできない
親名義の家を相続する際、家屋のみの相続放棄はできないことを理解しておく必要があります。相続放棄はプラスの財産もマイナスの財産も全て放棄することになるため、家だけ相続しないという選択はできません。
例えば、親が家と預貯金を所有していた場合、家を相続したくないからといって相続放棄をすると、預貯金も相続できなくなります。
共有名義を避ける
親名義の家をスムーズに相続するためのポイントは、共有名義を避けることです。
複数人で家を共有すると個人で判断できる自由度が下がり、売却やリフォームといった重要な決定をする際に全員の合意が必要になります。共有者の中に意見が異なる人がいると、手続きが滞ったり、最悪の場合は裁判に発展するかもしれません。
また、共有状態のまま相続が繰り返されると、相続人の数が増え、持分が細分化されていきます。共有者間の合意形成がさらに難しくなり、管理や処分が困難になるでしょう。
そのため、親名義の家を相続する際は共有名義を避ける事が重要です。例えば、遺産分割協議を行い不動産を特定の相続人に相続させる、または売却してその代金を分割するなどの形で共有名義を解消できます。
親が元気なうちから相続対策を始める
親名義の家を相続する際には、親が元気なうちに相続対策を始めることが大切です。親の判断能力が低下してしまうと意思表示が難しくなり、相続手続きがスムーズに進まなくなる可能性があります。
例えば、遺言書を作成しようと思っても、親が認知症を発症してしまうと法的な効力を持つ遺言書の作成が困難になります。親が元気なうちに将来の相続について話し合い、遺言書の作成や生前贈与などの相続対策を検討しておきましょう。
生前贈与は贈与税が発生する
先述のとおり、親名義の家をスムーズに相続するためには、親が元気なうちに相続対策を始めるべきです。特に、親が生きている間に財産を子や孫に譲る「生前贈与」は、相続発生後の手続きを簡素化できる大きなメリットがあります。
しかし、生前贈与を行うと贈与税が発生する点には気を付けましょう。年間110万円を超える贈与を受けると贈与税が発生します。贈与税は相続税よりも税率が高く基礎控除額も少ないため、高額な税負担が生じる可能性があります。
親名義の家の相続税がいくらか事前に確認しよう
本記事では親名義の家の相続税について解説しました。
親名義の家の相続税を計算するには、まず家屋を含めた遺産総額を算出する必要があります。遺産総額に各種控除を反映して課税遺産総額を算出し、それを基に相続税の算出が可能です。
しかし、相続税を正確に申告・納税するためには専門的な知識が必要になります。もし自分一人で進めるのが困難だと感じたら、税理士に相談するのも一つの手です。
税理士に依頼することで、相続税の申告をすべて任せられます。また、適切な控除を活用して節税対策を行ってくれるため、税負担の軽減にも繋がるでしょう。
もし税理士に依頼する場合は、まずは無料見積もりサービスの活用をおすすめします。例えば「ミツモア」であれば、いくつかの簡単な質問に答えるだけで、あなたの状況に合った税理士から無料で見積もりを取得できます。是非利用してみてください。