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相続税 物納の手引き!制度の概要と納付方法を徹底解説【税理士監修】

最終更新日: 2018年11月07日

親が亡くなり、住んでいた家や土地を相続するケースは多いと思います。

しかし相続した不動産の評価額が高かった場合、相続税を支払うことになります。その際に現金で納める以外にも、例外的に「物納」という方法が認められているのをご存知でしょうか?

今回は、そんな「物納」の制度について解説していきます。

相続税の物納とはどんな制度?納付方法は?

不動産の相続税を払うお金がない時、どうする!?

まずは、相続税の物納がどのような制度なのか、概要および納付方法について解説します。

相続税の物納とは?制度の概要

相続税は、金銭で一括して納付期限内に支払うことが原則です。

預貯金や現金を相続した場合であれば、相続した金銭から支払うことができるため、何ら問題はありません。

しかし相続するのが自宅や土地などの不動産や株式などの有価証券、車などの動産だと事情が変わってきます。金銭を1円も受け取れない場合でも、それぞれの評価額を基に計算された相続税を支払わなければならないのです。

しかも期限を過ぎても支払えないと、税額に応じて年14.6%の延滞税(納期限の翌日から2ヶ月以内は年7.3%)が本来の税額に加算されてしまいます。

そんな方のために用意されているのが、相続税の「物納」です。所有財産を現金の代わりに国に収められる制度で、物納した相続財産の評価額に応じた金額を納税したものとして扱われます。

物納が認められるのはどんな時?

税務署によって物納が認められるのは、相続税を金銭で一括して支払うことができない時に限られます。

さらに、相続税を金銭で一括して支払うことができない場合でも、物納より先に分割で現金払いをする「延納」による納付を検討しなければなりません。

まずは延納の適用が検討し、それでも納付が困難である場合や、延納でも払いきれない部分にのみ、物納が許可される可能性があるのです。

延納とはどのような納付方法?

延納とは相続税を分割で納付する方法です。

分割期間は、相続財産のうち不動産や自社株などの割合が高いほど長く設定することができ、数年から最大20年まで設定が認められています。

物納は、この延納を利用してもなお税金の支払いが難しい部分に限って認められるのです。

物納の申請方法

実際に物納の許可を得るには、相続税の申告期限(通常、亡くなった日の翌日から10ヶ月以内)までに「物納申請書」という書類を税務署に提出しなければなりません。

この申請書を受けた税務署は、申告期限から原則3ヶ月以内に許可または却下の判断を行います。そして最終的に許可された場合のみ、物納で納税することが可能です。

物納の納付方法

許可を受けたら、許可を受けた税額分の物納財産を納付します。

具体的な納付方法は、物納する財産の種類によって変わります。引き渡しが可能なものはその引き渡しを完了した時、登記が必要なものは第三者に対抗できる要件を満たした時に、それぞれ物納終わったものとして扱われます。

物納が認められている物

物納は、どのような財産でも納付できるわけではなく、対象となる財産とその順位が決められています。

どの財産を優先的に物納に充てなければならないかを示した指針を「順位」といいます。順位は以下の通りです。

  • 第1順位 不動産、船舶、国債や地方債、上場株式など
  • 第2順位 非上場株式など
  • 第3順位 動産

第1順位の物から物納の対象となり、該当するがない時は、第2・第3順位の財産を物納に充てることができます。

なお、注目して頂きたいのが、上場株式や国債といった有価証券でも物納ができることです。こうした価値が絶えず変動する物は、亡くなった日やその周辺日の終値で価値を算定します。

これらを物納に充てていた場合、相続税の納期限が近づくにつれてその株価が大きく下落したとしても算定当時の価格で納められるというメリットがあります。

物納劣後財産とは

物納の際に売却しにくい不動産などを「物納劣後財産」と呼びます。

物納が認められている物の中には、売却しやすいもの(買い手がつきやすいもの)とそうでないものがあります。

例えば土地の場合、入り組んだところにある土地など使い勝手の悪い形状の土地は、広い道路に面した土地よりも通常は買い手がつきにくいもの。また、株式ならば上場企業の株式と比べて非上場企業の株式は買い手がつきにくいでしょう。

このような物納劣後財産に該当すると、同順位の物納可能な財産の中でも、充てられる順位が後になります。順位は下記の通りです。

  • 第1順位 不動産、船舶、国債や地方債、上場株式など
    →なければ、不動産及び上場株式の物納劣後財産
  • 第2順位 非上場株式など
    →なければ、非上場株式の物納劣後財産
  • 第3順位 動産

例外もありますが、基本的には同じ順位の物納財産があるのに物納劣後財産を先に納税に充てることは認められません。

先ほどは、使い勝手の悪い土地や非公開株式の例を挙げましたが、他には以下のような物が物納劣後財産に掲げられています。

  • 地上権、永小作権若しくは耕作を目的とする賃借権、地役権や入会権が設定されている土地
  • 事業の休止(一時的な休止を除きます。)をしている法人に係る株式

管理処分不適格財産とは

不動産や株式の中には、売却そのものが難しいものがあります。

例えば、担保権などがついている土地、耐用年数が過ぎた古い建物などのことで、これらを物納されても、国が買い手を見つけて処分することは大変です。

こうしたものは、金銭納付の代わりとは言えないので、「管理処分不適格財産」といって、物納に充てることが禁止されています。

どのような物が物納劣後財産や管理処分不適格財産に該当するのか気になる方は、国税庁のホームページに一覧が記載されているので、確認してみてください。

超過物納とは?

「超過物納」とは、相続税額を超える評価額の財産を物納することです。

超過物納は原則できませんが、他に物納できる財産がない場合などのやむを得ない事情があれば認められます。

超過物納した財産の評価額と相続税との差額は、国から金銭で還付してもらえます。

しかし、この金銭は不動産や株式を売買したことによる利益にあたるため、譲渡所得税の課税対象となる点に注意が必要です。

物納が認められるのは相続税だけ!

物納は、相続税の納付時だけに用意されている制度です。贈与税や所得税など、他の税金の支払いには一切認められていないのでご注意ください。

なお、延納に関しては贈与税でも認められます。

土地で物納する際の評価方法は

土地で物納する場合、評価はどうやるの?

物納の際に充てられることが多い土地。

その評価額を決める際によく使われる3つの方法

  • 路線価方式
  • 倍率方式
  • 農地の批准方式

について、詳しくご説明していきます。

路線価方式とは

「路線価」とは相続税などを計算するために特別に算出された、道路に対する価格のことです。

宅地であれば、ほとんど路線価方式で評価することとなります。

路線価方式では、1本の路線に面した土地の場合、基本的にはその路線価✕土地の面積に、土地の形状に応じた「補正率」をかけたものが評価額となります。

補正率は奥行きや路線に接している長さ、土地の形状や向き、面する路線の数などそれぞれ細かく決められています。

その土地にどの補正率を使用しなければならないかを、実際の土地の形状から判断しなければならないのが難しいところです。

路線価は、国税庁の路線価図で確認できますが、正確な評価額の計算は専門知識がなければ困難といえるでしょう。

倍率方式とは

路線価が設定されていない地域の土地を評価する場合は、倍率方式を使用します。

倍率方式とは、国税局が一定の地域ごとに定めた倍率をその土地の固定資産税評価額にかけて評価する方式です。

倍率は、国税庁の路線価図で確認することができます。

農地を評価する批准方式とは

農地は、その農業の生産力に応じて大きく4つに評価を分けています。

農業生産力の高い順に「純農地」「中間農地」「市街地周辺農地」「市街地農地」と分けられています。そして評価額は農業生産力とは「反比例」して上がる仕組みとなっているのです。

そして批准方式とは、この4つの区分のうち、「市街地周辺農地」と「市街地農地」を評価する方法をいいます。※純農地と中間農地は倍率方式で算定

具体的には、まずその農地が宅地だったと仮定した場合の価格を、路線価方式などによって求めます。そしてその価格に農地独自の補正率をかけた評価額から土地の造成費を差し引いた上で、土地の面積をかけて計算します。

路線価方式の計算でさえ複雑なところ、批准方式はさらに農地独自の補正を加えて計算しなければならないのです。

物納よりも売却した方がお得?

「最初から物納なんか考えずに、先に売却して納付資金を確保すれば良いのでは?」と思われる方もいるかもしれません。

確かに、適正価格で売却できればそれに越したことはないのですが、相続した不動産に都合よく買い手が現れるとは限りませんよね。

仮に買い手が見つかったとしても、売買契約を締結して代金を受け取るまでは、納税できません。

売却から納税までを相続税の納付期限までに終えることができるどうかは、非常に難しいところだと思います。

物納するのか、それとも売却するかを迷った時には専門家に相談するのも1つの方法かもしれません。

鈴木美帆税理士事務所 - 神奈川県小田原市城山

『最近では、物納が認められるケースは徐々に少なくなってきています。ですので、延納などを駆使しながらなんとか相続税を現金で払える方法はないのか、依頼者様へアドバイスを差し上げております。また、近年では地方都市における土地の売却価格が下がってきており、相続税評価額より低くなるケースも。その場合は持ち続けているよりも、売却してしまった方が相続税額も低く抑えられます。売却して現金で支払うか、それとも物納するか。そうした判断も知識や経験がないと難しいと思いますので、ぜひ我々専門家にご相談頂きたいです。』
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相続税の仕組みは複雑!専門家に相談しては?

不動産を相続する場合は、早めに税理士に相談することがカギとなります。

ここでは、物納で相続することの問題点と、税理士に相談することのメリットや注意点などを解説します。

物納で相続することの問題点

・物納ができるかどうかの判断が難しい

物納は、まず物納が可能かどうかを判断することから始まります。

延納が可能と判断されるケースに該当しないか、また物納劣後財産や管理処分不適格財産に該当するものがないかを把握する必要があるのです。

その上で、本当に物納がベストの選択肢かどうかを判断するのは、至難の業と言えるでしょう。

・相続税の計算が難しい

相続税は、財産ごとや相続した人ごとに計算されるのではなく、すべての相続財産に対する相続税の合計額(法定相続分に応じた税額の合計値)について計算します。その上で、各相続人の法定相続分に応じて負担するのです。

この計算方法は相続税独自のもので、一般の人にはなじみがないのでは。

しかし、わからないからといって税金のことを後回しにして遺産分割協議を進めると、大変なことになります。例えば、相続人のうち1人だけ納税負担が異様に大きくなるなどの不公平感につながったり、争いに発展したりすることも。

遺産分割協議は相続人全員の承諾がなければ成立しませんから、話合いがまとまりかけた時期に税金のことでいさかいが起こると、それまでの話合いが白紙に返ることだってあり得ます。

また、宅地を相続する場合は、「小規模宅地の特例」を活用することで、大きな節税効果を得ることができます。しかし活用せずに高い税金を支払ったとしても、税務署から教えてもらえることはありません。

税理士にお願いするメリット

・物納の適否の判断もしてもらえる

税理士は多くの相続のケースを扱っているため、物納が可能なケースかどうかの判断はもちろん、必要な手続きを教えてもらえます。

もし相続税の支払いが難しいと感じたら、なるべく早い段階で税理士に相談しましょう。

・1人に納税負担が集中しないようシミュレーションできる

税理士に依頼すれば、遺産分割パターンごとの各人の相続税負担額をシミュレーションすることができます。

そうすると、1人に納税負担が集中しない対策を考えることもできますし、例えばあなたが不公平な納税負担に異議を唱えるために、シミュレーションの結果を客観的な資料として親族に示すことも可能です。

税理士にお願いする際の注意点

・依頼費用がかかる

専門家に依頼すれば、もちろん費用はかかります。

しかし宅地の特例や税額控除などの相続税の節税策によって、依頼した方がお得になるケースもあるのです。

また土地の財産評価は、専門家でないとなかなか正確な計算が難しくいもの。ここで評価を誤ると、税金の追徴や延滞税がかかるリスクもあります。

そのため、依頼費用はかかっても税理士に相談した方が、早くて正確で、しかも節税策を最大限に活用した相続税申告を行うことができるといえるでしょう。

・相続を専門としていない税理士もいる

税理士にも、得意な分野とそうでない分野があります。中には相続税を扱った経験がほとんどない税理士もいるのが実情。

税法は毎年改正が行われており相続税も年々変化していますので、もし相続に強い税理士が事務所に1人もいなければ、こうした改正に対応する地盤がありません。

依頼する際には、相続税に関する案件を多く経験している税理士を選びましょう。

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さらに口コミも掲載されているので、実際のお客さんの声を通じてどのような先生か想像できることも魅力です。

ぜひミツモアで、あなたの不安を解消してくれるステキな先生を探してみてください。

【監修税理士紹介】

鈴木美帆税理士事務所 - 神奈川県小田原市城山

鈴木美帆税理士事務所代表。相続に関する豊富な経験を持ち、土地や不動産の相続案件は提携する不動産会社と連携を取りながら顧客をサポートする。また、最近では財産管理を信頼できる親族に委託する「家族信託」の普及にも注力している。
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