ターミナルケア(終末期医療)は患者が心穏やかに最期を迎えられるよう、苦痛を緩和するケアのことです。身体的な痛みや不快感を軽減する身体的ケア、ネガティブな気持ちを取り除く精神的ケア、費用負担といったプレッシャーを取り除く社会的ケアの3つがあります。
ターミナルケアの開始は延命治療の中止を意味するため、開始する時期は本人や医師と十分に相談を重ねる必要があるでしょう。
ターミナルケアにかかる費用や、家族が考えておくべきことについて解説します。
この記事を監修した専門家
城北さくらクリニック
副院長 犬丸真理子
ターミナルケアとは?
「ターミナルケア」とは余命宣告を受けた人が、最期まで心穏やかに過ごせるように行うケアのことです。終末期医療ともいわれます。
具体的には延命措置よりも、痛みや不快感の緩和を優先し、平穏な生活を過ごしてもらうためのケアです。残り少ない命でも自分らしく、満足度の高い生活を送るために、QOL (クオリティオブライフ)を向上させることを、ターミナルケアは目的としています。
何をもって終末期とするかについては、医師によって考え方が異なります。しかし治療による回復が見込めなくなったときや、寝たきりで自分で食事ができなくなったときとするのが一般的です。
緩和ケアや、そのほか似た言葉との違い
ターミナルケアと似た言葉に、以下の用語があります。
- 緩和ケア
- ホスピスケア
- 看取りケア
- エンドオブライフケア
「緩和ケア」とは大きな苦痛を伴う病に冒された患者の、心と体の痛みを和らげるケアです。主にがん患者に対して行われます。ターミナルケアと共通する部分がありますが、末期以前のフェーズから行われる点が相違点です。
「ホスピスケア」は終末期の患者や、家族の苦痛を和らげるためのケアを指します。病院のような施設で行われるケアのことです。
「看取りケア」とは無理な延命治療をせず、自然な形で最期を迎えさせてあげるためのケアです。尊厳死を実現させるためのケアといえます。
「エンドオブライフケア」は最期まで、自分らしく過ごすことに重点を置いたケアです。病名や年齢を問わず実施されます。
ターミナルケアで行う3つのケア
ターミナルケアは身体面・精神面・社会面の3つの内容に分けられます。それぞれのケアの内容を確認しましょう。
身体面のケア
身体面のケアとは、身体的苦痛や不快感を取り除くためのケアを指します。具体的には以下のような内容です。
- 痛みを和らげるための投薬
- 食事・入浴・排泄の介助
- 食事ができなくなったときの点滴や胃ろう
- 体を動かせなくなった場合の清拭
これらのケアは主に、医療従事者によって行われます。点滴や胃ろうなどの栄養補給は、延命治療に当たるため、実施する際には、本人や家族との相談が必要です。
精神面のケア
患者は死への恐怖や遺される家族への心配に、心を悩まされるケースがしばしばあります。そうした患者のネガティブな気持ちを取り除き、心穏やかに過ごせるようにするのが、精神面のケアです。
具体的には以下の取り組みが挙げられます。
- ベッドの周りをコーディネートする
- 家族や友人と会う機会を設ける
- 好きな音楽をかける
- 趣味の時間を設ける
精神面のケアは医療従事者だけでなく、家族も一緒になって行います。
社会面のケア
社会面のケアとは、患者が経済面や仕事の面で「周りに迷惑をかけているのではないか」などと心配する気持ちを、緩和するためのケアです。
ターミナルケアには大きな金額がかかります。高額な治療費を家族に負担させることを、プレッシャーに感じる人もいるでしょう。
こうした負担を軽くするために、医療ソーシャルワーカーと呼ばれる人たちに、治療費の軽減をはじめとする支援を依頼することが挙げられます。
また社会的な役割や立場を失うことに対して、ネガティブな感情を抱く可能性もあるでしょう。患者が孤独感にさいなまれないよう、コミュニケーションを取ることも社会的ケアの1つです。
ターミナルケアを行う場所とかかる費用
ターミナルケアは病院だけでなく、介護施設や自宅でも可能です。それぞれのメリットやデメリット、費用面の違いを解説します。
病院の場合
病院でターミナルケアを行う一番のメリットは、医師や看護師がすぐに対応してくれる点です。家族の負担も軽減できるので、安心してケアを任せられます。
しかし病院である以上大きな費用がかかる点と、いざというときに家族が駆けつけるのに時間がかかる点は、デメリットです。
病院でターミナルケアを行う際の費用は、保険制度によって一律で決まっています。1日3万円~5万円の治療費+食事代で、所得者の場合は3割負担と考えましょう。
75歳以上であれば原則は1割負担、さらに高額療養費制度も利用可能です。仮に月の治療費が100万円だった場合、諸々の制度の適用後は、実質6万円弱の負担になります。
介護施設の場合
介護施設の場合もスタッフがすぐに対応してくれるのはメリットです。また介護士がコミュニケーションを取ってくれるので、孤独感も抱きにくいでしょう。
しかし病院と同様に施設の利用料がかかる点と、家族が駆けつけにくい点はデメリットといえます。
介護施設の利用料は、施設の種類や部屋のグレード、サービス内容によってさまざまです。入居一時金に0円~数百万円、月額費用に数万~30万円ほどかかると考えてよいでしょう。
介護保険が利用できる場合は、1~3割負担になる場合があります。
自宅の場合
自宅でターミナルケアを行う大きなメリットは、家族と一緒に過ごす時間が多い点です。また住み慣れた我が家で最期を迎えられるのは、患者にとっても嬉しいことでしょう。
また施設を利用しない分、費用を抑えられるのも利点です。しかし家族の負担が大きくなる点と、医師がすぐに駆けつけられない点には注意が必要です。
在宅の場合は、往診費や訪問介護費がかかります。1割負担であれば、往診費は1回数千円、訪問介護費は1回につき数百円が相場です。
ターミナルケアで家族がやるべきこと
ターミナルケアは医師や看護師に、任せきりにするものではありません。家族も一緒になってケアに取り組むからこそ、患者が満足して最期を迎えられます。ターミナルケアにおいて家族が行うべきことを確認しましょう。
ターミナルケアをいつ始めるかを決める
ターミナルケアをいつ開始するかは、デリケートで慎重に検討すべき問題です。ターミナルケアを開始することは、延命治療をやめることを意味します。
ターミナルケアの開始時期は、本人や家族の意思に任されます。がんのような病気の場合は、余命と治療効果のバランスを考慮して、決めるのが一般的です。老衰や認知症の場合は、寝たきりで食事もままならなくなったときが、タイミングとされています。
しかし本人に意思決定能力がなくなっている場合は、家族がタイミングを決めます。
本人の気持ちに寄り添う
ターミナルケアを行う際は本人の気持ちに寄り添い、精神を安定させてあげるのが家族の役割です。
余命宣告を受けると多くの人は、否認、怒り、取引(何かにすがる気持ち)、抑うつ(喪失感)、受容の5段階の心理状態をたどるとされています。
否認から抑うつまでのフェーズにおいては、「どうして自分がこんな目に遭うのか」と気持ちを取り乱す場合も、少なくありません。
家族にとっても苦しい時間ですが、本人が安らかに最期を迎えられるよう、気持ちの整理をサポートしてあげることが大切です。
ターミナルケアで本人が満足できる最期を
ターミナルケア(終末期医療)とは余命がわずかな人に、心穏やかに過ごしてもらうためのケアです。
具体的には身体的苦痛、精神的な不安、費用といった社会的な負担を取り除くため、介護や治療、看護を行います。
ターミナルケアは延命治療の停止を意味するので、行う際には、本人の気持ちに寄り添いながら、よく話し合う必要があるでしょう。
医療従事者に任せきりにするのでなく、家族も一丸となって、本人が満足できる最期を迎えさせてあげることが重要です。
監修者:犬丸真理子
在宅療養支援診療所・在宅緩和ケア充実診療所
東京都練馬区練馬1-1-12
城北さくらクリニック 副院長
コメント
現状のコロナ禍において、病院や施設での面会が制限されています。自宅での最後を希望する方が増えている中、介護者の負担があるのも現状です。自宅で過ごす際には、訪問診療、訪問看護、訪問入浴、ヘルパー、福祉用具等の在宅チームを形成することで、ご本人やご家族の負担を軽減しながら生活できます。まずは、病院や地域の包括支援センターに相談していくことが大切です。