危篤(きとく)とは医師が「回復の見込みがほとんどなく、いつ息を引き取るかわからない」と判断した状態です。
ご家族や親族の危篤の連絡を受けたとき、冷静ではいられないかもしれません。ただしそんなときこそ、パニックにならず落ち着いて行動することが大切です。
ご家族が危篤になった場合にすべきことや、その後の流れを解説します。
この記事を監修した専門家
株式会社SAKURA 代表取締役/一級葬祭ディレクター
近藤 卓司
危篤とは:医師が死亡が近いと判断した、危険な状態
危篤とは死期が極めて近いと医師が判断した状態です。回復の見込みがほとんどない危険な状態であり、医師に危篤と言われたら覚悟を決める必要があります。
危篤と言われてから亡くなるまでの時間は人それぞれです。数十分後に亡くなることもあれば、数日~1週間以上、やや回復している「小康状態」が続くこともあります。
危篤と重篤(じゅうとく)の違い
危篤と似た言葉が重篤(じゅうとく)です。重篤も極めて危険な状態であることを意味しますが、あくまでも症状の度合いを表しているだけの言葉であり、死期が近いという意味は含まれません。重篤な状態に陥っている場合は、延命治療を行うかどうか聞かれるケースもあります。
身内が危篤になったときの対応
病院から危篤の連絡を受けたら、まずは深呼吸して、落ち着きましょう。財布や携帯電話、着替えを用意して病院に向かいます。病院に着いたら、一親等~三親等の親族を中心に、親族や親しい人に連絡しましょう。
まずは深呼吸して落ち着こう
入院中の身内が危篤状態になったことを伝えられたら、パニック状態に陥ってしまう人もいるでしょう。しかし気が動転している状況が長引くと、適切な行動をとれなくなります。
最期の瞬間にきちんと立ち会うためにも、連絡を受けたらまずは深呼吸して気持ちを落ち着かせましょう。吐く息を長めにすると、心が整いやすくなります。
気持ちが落ち着いたら現状を理解し、最期を看取る覚悟を決めることが大切です。間に合わずに後悔することがないよう、とにかく急いで病院へ向かいましょう。
準備をして病院へ
危篤状態になった場合は、いつ亡くなってしまうのか誰にも予測できません。数十分後にはこの世にいない恐れもあるため、ゆっくりと準備をしている暇はないです。
病院や近隣の宿泊施設に泊まり込むことも考慮し、財布・携帯電話・充電器・着替えを準備してすぐに病院へ行きましょう。危篤の連絡をしたい人の連絡先も必要です。
自家用車で移動する場合、気が動転したままスピードを出して運転すると、事故を起こしてしまう恐れがあります。運転中は慌てない気持ちを持つことが大切です。
親族や親しい人に電話で連絡を
病院に着いたら、または病院に向かいながら、速やかに一親等~三親等の家族に連絡します。配偶者・親・祖父母・子・孫・ひ孫・兄弟姉妹・おじ・おば・おい・めいが三親等までの家族です。
危篤の連絡をする際に時間帯を気にする必要はありません。一刻を争うため電話で手早く連絡しましょう。電話に出ない人にはショートメールを送っておくのもおすすめです。
危篤の際に優先して連絡すべき人は、患者の最期に立ち会ってもらいたい人です。血縁関係がない人でも、患者と仲の良い友人がいるなら、危篤の連絡を入れるとよいでしょう。危篤者がエンディングノートを用意している場合、それを見れば親しい友人が分かるケースがあります。
遠方や疎遠の親族にも、迷う場合はできるだけ危篤の連絡を入れておきましょう。患者との面会を促す必要はなく、あくまでも現状を知らせるだけの内容で構いません。
連絡しない方が良い場合も
相手が高齢・病気療養中・妊娠中の場合は、危篤連絡による精神的なショックで体調を崩してしまう恐れもあります。相手の状況によっては連絡しない配慮も必要です。
患者に声を掛けてあげよう
危篤者のもとに着いたら、すぐに声を掛けてあげましょう。危篤状態に陥っている人は、意識もないように見えますが、人は亡くなる直前まで耳が聞こえているといわれています。
「○○と会えてよかった」「○○できて楽しかったね」といった、楽しかったときの思い出話をしたり、普段は言えなかった感謝の気持ちを伝えたりすれば、患者も安らかに旅立てます。
励ましたり応援したりするような言葉を掛けるのは避けましょう。危篤であることの意味を理解した上で、あくまでも普段通りの口調で、ポジティブな内容の声掛けを意識しましょう。
危篤で駆けつける際のマナー
身内や親しい人が危篤だと連絡を受けたとき、慌てていても周囲に配慮する必要があります。危篤時に注意すべきマナーを覚えておきましょう。
会社は有休を使って休暇・早退を
身内の危篤を理由に会社を早退したり休んだりする場合、亡くなっているわけではないため忌引は使えません。有休をとって対応しましょう。
数日間泊まり込むことを想定し、会社には早めに相談しておくのがおすすめです。しばらく会社を休むことになっても、事前に相談して会社が対策を考えてくれれば、職場への迷惑を考えずに休めるでしょう。
会社にいないときに危篤連絡を受けた場合は、急いで連絡しておかなければ仕事に支障をきたす可能性があります。会社が営業中なら電話で連絡を入れましょう。時間外の場合は上司へメールしておいて、後から電話をするのがおすすめです。
喪服を着るのはマナー違反
危篤連絡を受けて病院へ駆け付ける際、喪服を着ていくのはNGです。亡くなっていないにも関わらず、喪服を着るのは、ご臨終を望んでいる行為にみえてしまいます。
服装は通常のお見舞いと同じの平服で構いません。ただし場にそぐわない派手なアクセサリー、メイクは避けたほうがよいでしょう。
身内がいつ危篤になるか分からない状況なら、連絡を受けてすぐに病院へ行けるような服装で仕事に行くのがおすすめです。
葬儀に関する話題は出さない
危篤者は耳が聞こえている可能性があるため、葬儀や死後に関連する話題を出すのはNGです。また回復を願う家族や周囲の方にとっても、気持ちの良い話題ではありません。
危篤者のもとに着いたら、本人にはこれまでの感謝を、家族には労わりの言葉をかけるに留めましょう。
患者が自宅で危篤になった場合
患者が自宅で最期を迎えたいと考えている場合は、自宅で危篤状態となるケースもあるでしょう。自宅で危篤になった場合にすることを解説します。
まずは主治医に連絡をしよう
患者本人が自宅での臨終を希望していたり、自宅療養のために一時帰宅していたりする場合、自宅で危篤になることがあります。
患者の様子が急変しても慌てずに、まずは主治医へ連絡を入れましょう。すぐに救急車を呼ぶのではなく、主治医の指示を仰ぎます。
いざというときにどのような行動をとればよいのか、普段から主治医や家族と確認し合っておくのがおすすめです。
死亡した場合、主治医が不在だったら119番
自宅で危篤になり、そのまま亡くなった場合も、主治医への連絡が基本です。主治医と連絡がとれない際やかかりつけの医師がいない場合、119番に電話して救急車を呼びましょう。
正式に死亡と認められるのは、医師が死亡を宣告した時点です。搬送先の病院で医師による死亡確認がなされるまでは、家族が自宅で判断できたとしても亡くなったことにはなりません。
主治医が自宅まで来てくれる状況なら、自宅で主治医が死亡を確認します。
危篤の人が亡くなった後の対応
危篤の患者が亡くなった場合、悲しむ間もなくやるべきことがたくさんあります。
具体的には以下の流れです。翌日または2~3日後には葬儀を執り行うことが一般的なため、把握しておくとスムーズでしょう。
- 医師による死亡告知・死亡診断書の受け取り
- 身内へ訃報の連絡
- (病院の場合)ご遺体搬送の手配・葬儀社に連絡
- 退院手続き
医師から死亡診断書を受け取る
危篤の人が亡くなったら、医師により死亡診断書が発行されます。死亡診断書とは人が亡くなったことを法的かつ医学的に証明する書類です。基本的に、死亡届と一体になっています。
死亡診断書・死亡届は役所や役場に提出し、火葬許可書を取得しなければなりません。原則として、亡くなったことを知った日から7日以内に提出する必要があります。
なお役所や役場に死亡診断書・死亡届を提出すると、原本は戻ってきません。金融機関・保険会社・携帯電話会社の手続き時にも提出を求められるため、10枚程度コピーしておきましょう。
原本が必要な場合には、発行元の病院で再発行手続きができます。死亡診断書・死亡届けを葬儀社に渡しておけば、火葬までの手続きは葬儀社が進めてくれるので安心です。
親族に電話で訃報を伝える
親族への訃報連絡は、亡くなった後できるだけすぐに電話で行いましょう。簡潔な内容で死亡を伝え、葬儀の連絡はこの時点では不要です。
葬儀の案内は、葬儀社と打ち合わせを行って日程が確定したら改めて行います。親族以外への葬儀の案内は最小限にとどめ、代表者から関係者に連絡してもらうと良いでしょう。
死亡直後にはひとまず親族へ訃報連絡をしておけば、余計な精神的負担をかけずに済みます。葬儀が近いことを意識してもらい、準備しやすくなることもポイントです。
ご遺体の搬送先を決め、退院手続き
死亡後、最初に決めなくてはならないことはご遺体の安置場所です。病院にはいつまでもご遺体を置いておけないため、葬儀まで別の場所で安置させる必要があります。
ご遺体は自宅に搬送するのが一般的でした。しかし近年は斎場や葬儀社の安置室で安置してもらうケースが増えています。
ご遺体の搬送先を決めたら病院で退院手続きを行い、葬儀社に連絡してご遺体を搬送してもらいましょう。葬儀社が決まっていない場合は、安置場所への搬送のみ紹介された業者に依頼し、その後に葬儀を行う業者を選んでも問題ありません。
葬儀社を選ぶ時のコツ
葬儀社は焦って決めると希望しない葬儀を行うことになる可能性があります。病院に常駐する葬儀社にその場で依頼することもできますが、費用が高くつきがちです。
また死亡後から葬儀まではやらなければならないことが数多くあります。精神的にも落ち着かない状況が続くため、葬儀に関する死亡診断書・死亡届けの提出といった諸手続きも、信頼できる葬儀社にお任せする方が良いでしょう。
葬儀社を決める際は、料金設定が明確かどうか確認しましょう。総額しか提示しない業者は、後から追加料金が発生しかねません。何にいくらかかるのかがはっきりと分かる葬儀社を選びましょう。
スタッフの対応をチェックすることもポイントです。葬儀社とは数日間付き合うことになるため、葬儀が終わるまで気持ちよくやりとりできそうなスタッフがいる葬儀社を選ぶとよいでしょう。
お急ぎで複数の葬儀社から相見積もりを取って比較したい場合は、ミツモアの活用がおすすめです。ご希望にあわせた見積もりを最大5社から一括で集め、口コミも参考にできるので、ぴったりの葬儀社を探せるでしょう。
詳しい葬儀の流れや、公的な手続きについて以下記事にまとめました。いざというときに参考にしてみてください。
危篤の連絡を受けたら、落ち着いて行動を
危篤の連絡を受けたら、まずは落ち着いて行動することが何よりも大切です。急いで病院へ向かって、危篤者に寄り添い、声を掛けましょう。
また迅速に、親族や親しい人へ速やかに連絡を入れます。会社に連絡するといったマナーも忘れないようにしましょう。
もし亡くなられた際は、休む間もなく葬儀の準備や公的な手続きを行う必要があります。
いざというときに慌てることのないよう、事前に葬儀について相談しておくのもおすすめです。
監修者:近藤 卓司
株式会社SAKURA 代表取締役
厚生労働省認定 一級葬祭ディレクター
1964年東京都生まれ、中央大学卒。大手互助会で大型葬儀や社葬、合同葬を担当。独自の音楽葬スタイルを研究し、世に広めるため家族葬専門葬儀社を経て株式会社 SAKURAへ転職。2012年代表取締役に就任後、音楽葬プランの立ち上げ、日本のおもてなしの原点である茶道の取り入れを含め、葬儀プランをすべて見直す。これまでに3,000名以上のお葬式を手掛ける、現役の一級葬祭ディレクター。
著書・監修
- 『わたしの葬式心得』(幻冬舎) 2016/07/01発行
コメント
大切なご家族が医師から危篤を告げられると、深い悲しみやこれからの不安により、冷静ではいられなくなるのが普通です。冷静でいられようはずもありません。
1つだけ確実なことは「万が一」ではなく『必ず』最後の時は訪れます。大切なことは「お心づもりをしなくてはならない」ということです。お心づもりをするにあたっては、1人で考え抱え込まずに、他のご家族や友人・知人、または経験のある親しい方に相談するのも良いでしょう。
よく「後悔しないように」といわれることがありますが、後悔は必ず残るものです。大切なことは「現実を受け止め、お心づもりをして、行動しなければならない」ということです。周囲のお力を借りながら。不謹慎かもしれませんが、そこから葬儀は始まっているのです。