電気自動車ユーザーにとって悩ましい問題の1つが、自宅に充電設備を作るかどうかです。自宅で電気自動車を充電するメリットとデメリットを解説します。
電気自動車を自宅で充電するメリット
まずは自宅で電気自動車を充電するメリットを確認しましょう。
自由に充電ができる
必要なタイミングで自由に充電ができることが、自宅に電気自動車の充電設備を設ける最大のメリットです。誰にも気兼ねすることなく、自分のペースで電気自動車を充電できます。
街中の充電スポットは公共の設備です。時として充電待ちの渋滞が発生し、充電を済ませるまでにかなりの時間を要してしまう場面もあるでしょう。
自宅の充電設備なら、好きな時間に自由に充電可能です。お出かけの前日や就寝中など、スマホを充電する感覚で手軽に充電ができます。
充電料金を安く抑えられる
充電料金が安くなるのも、自宅で電気自動車を充電するメリットです。
街中の充電スポットでフル充電するとき、かかる費用は2,000円前後です。急速充電を活用すると、9,000円前後まで跳ね上がります。一方、自宅の充電設備でフル充電する場合、かかる費用は1,500円前後です。深夜帯の電気代が安くなるプランや、電気自動車所有者向けのプランに加入すれば、さらにコストを抑えられます。
コストが安くなれば、当然自由になるお金が増えます。浮いたお金を電気自動車のメンテナンス代や消耗品代に充てれば、さらにカーライフが充実するでしょう。
バッテリーの劣化を軽減できる
自宅で電気自動車の普通充電ができるようになれば、バッテリーの消耗を抑える効果も期待できます。
ガソリンスタンドやカーディーラーなどに設置されている充電設備の多くは、急速充電です。急速充電は満充電までにかかる時間が短い一方で、頻繁に利用すると、電気自動車に搭載されているバッテリーの劣化を早めてしまう可能性があります。
バッテリーの劣化が進むと、満充電で走行できる距離が短くなるといわれています。愛車に長く乗りたいと考えているなら、自宅に普通充電ができる設備を作り、バッテリーに配慮してあげたいですね。
電気自動車を自宅で充電するデメリット
自宅に電気自動車用の充電設備を設けることは、メリットばかりではありません。どうしても避けては通れないデメリットもあるので、併せて頭に入れておきましょう。
設備の設置に費用がかかる
自宅に電気自動車用の充電設備を設ける最大のデメリットは、決して安くはない初期費用です。電気自動車の充電設備を作ることを見越して家を建てていない限り、10万円単位の初期費用がかかってしまいます。
そのため充電設備の設置にかかる費用と、自宅で充電した場合に浮く料金とを天秤にかけ、設置を検討する必要があります。多大な初期費用がかかったとしても、長い目で見ればコストパフォーマンスがよくなるケースもあります。慎重に検討して決めましょう。
充電完了まで時間がかかる
満充電になるまでに時間がかかるのも、自宅で電気自動車を充電するデメリットです。自宅に設置する充電設備の多くは普通充電なので、カーディーラーやガソリンスタンドに設置してある急速充電よりも、充電スピードが遅くなってしまいます。
普通充電で電気自動車を充電しようとすると、フル充電までにかかる時間は8時間ほどです。一方急速充電なら、30分の充電で満充電の8割程度までチャージできます。
満充電になるまで時間がかかる自宅充電の場合、就寝中に充電を済ませるのがスタンダードです。寝ている間に充電を終えられれば、フル充電までに時間がかかるデメリットも払拭できます。
しかし出かける前に電池切れに気づいたときなどは、やはり不便に感じてしまうでしょう。
電気自動車の充電設備3タイプ
一口に「電気自動車用の充電設備」といっても、実際には3つのタイプが存在します。それぞれ特徴や費用感が異なるので、どのような充電設備を実現したいかを考えてタイプを選択するようにしましょう。
最も手軽な「コンセントタイプ」
自宅に電気自動車用の充電設備を作りたい人の第1選択肢となるのが、住宅の外壁に充電用ケーブルをつなぐ差込口を設置する、コンセントタイプです。費用を抑えて充電設備を設置したい人にはおすすめでしょう。
コンセントタイプは設備本体の価格が安く、手頃なものでは5,000円以内で買える製品もあります。加えて設置工事も他のタイプよりも簡単なため、工事費用も安く抑えられます。
ただコンセントタイプは、充電のたびに車載ケーブルを取り付ける必要があります。ケーブルの取付作業が面倒だと感じる人は、他のタイプを選んだ方が利便性が高まるかもしれません。
街でよく見かける「スタンドタイプ」
駐車場に電気自動車を充電できる、ポールのようなものを設置するのがスタンドタイプです。家と駐車場が離れていても設置できるため、コンセントタイプよりも設置場所の自由度が高いのが特徴です。
スタンドタイプは充電ケーブルが一体になっている製品が多く、充電のたびにケーブルを運んで取り付ける必要がありません。充電ケーブルの取付作業を面倒だと思う人には、ぴったりのタイプといえるでしょう。
ただスタンドタイプは、コンセントタイプよりも本体価格が割高な傾向があります。スタンドタイプを希望する人は、本体価格として10万~25万円は見積もっておきましょう。
非常時に活躍する「V2H機器」
V2Hとは「Vehicle to Home(車から家へ)」を略した言葉です。電気自動車に蓄えた電気を、家庭で利用できるようにする設備を指します。
V2H機器が真価を発揮するのが災害時です。非常時用の電源として電気自動車を使用できるため、停電が起きても電気自動車から供給される電気でしばらく生活できます。
自然災害が多い日本において設置のメリットが大きいV2H機器ですが、ネックとなるのが初期費用の高さです。本体の購入費用として50万~90万円かかることに加え、設置工事にかかる費用も高額です。価格に見合った価値を感じられる人におすすめといえます。
自宅で電気自動車を充電するための工事とは
電気自動車用の充電設備を自宅に設置するときに必要な、工事の内容を紹介します。工事の内容を事前に理解しておけば、安心して業者に工事を任せられるでしょう。
EV充電用のブレーカーを設置する
電気自動車用の充電設備を設置する際、まず行うのが電気自動車充電用ブレーカーの設置です。
自宅に電気自動車用の充電設備を設置する場合、家庭全体で使用する電力量が増えます。工事を行わずに通常のブレーカーのままだと、ブレーカーが落ちてしまう可能性が高まります。
電気自動車の充電を快適に行うためには、専用のブレーカーを設置するのが基本です。また、元々設置されている分電盤に空き回路があれば、それを使用して工事を行えます。この場合は工事費用が抑えられるかもしれません。
充電設備までの配線工事
専用のブレーカーを設置したら、次は分電盤から充電設備まで電気を流す線を引く工事です。配線工事にかかる費用は、充電設備をどのような環境・場所に設置するかで決まってきます。
人目のある場所に配線を施す場合は、配線を隠す隠蔽配線工事やモール工事が必要です。隠蔽配線を行う場合、床下や天井裏に入って作業をする必要があるので、それだけ工事が大掛かりになります。
充電機器を設置する
最後に行うのが充電設備の設置です。配線工事で伸ばした配線を、コンセントと接続するための工事になります。
本体設備にコンセントタイプ・スタンドタイプ・V2H機器のどれを選択したかによって、設置にかかる時間はかなり変わってきます。見積もりの段階で業者に確認しておくと安心でしょう。
自宅に電気自動車の充電設備を設置する費用
電気自動車用の充電設備の設置工事には、相場が存在します。相場を理解した上で工事を任せる業者を選べば、適正価格で工事をしてくれる業者が見付かるはずです。
工事費用の目安は10万~40万円
一般家庭に電気自動車の充電設備を設置する際の費用相場は、10万~40万円です。価格を左右する要素として挙げられるのが、「充電機器の本体価格」と「設置工事にかかる費用」です。
コンセントタイプを選べば、工事費含め10万円前後で充電設備を整えられます。しかしV2H機器の場合は、設備の本体価格だけで50万円を超えるケースも少なくありません。費用対効果をしっかり検討して、機器の種類を選ぶことが大切です。
また、分電盤が200V非対応だった場合は電気を引き込む工事が必要になるため、さらに費用がかかります。充電設備と分電盤の距離が15m以上ある場合も、配線工事に追加料金がかかるので費用が高くなりがちです。
条件によっては補助金が使える
マンションやアパートなどの集合住宅に住んでいる場合、充電設備の設置に対して、国の補助金を受けとれます。2023年度においては、充電設備費の50%と工事費の100%を補助してもらえます。
集合住宅で補助金を利用する場合、マンションの管理組合・管理会社・オーナーなどの承認が必要です。個人では申請できないので注意しましょう。
また国の補助金は、個人が住む戸建て住宅の工事には適用されません。戸建て住宅で補助金を受けたい時は、地方自治体の補助金制度を活用しましょう。
例えば横浜市では、戸建て住宅・集合住宅・事業所が設置するV2H機器に対して補助金を出しています。本体購入費から国と神奈川県の補助金を除いた額の、1/2を補助しています。
自宅に充電設備を設置してカーライフを充実させよう
充電設備を自宅に設置することには多くのメリットがあり、デメリットのほとんどは少しの工夫で克服できます。継続して電気自動車に乗り続けようと考えているのであれば、充電設備の設置を検討する価値があるでしょう。
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