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離婚における財産分与とは?分与の対象や決め方、注意点について解説

最終更新日: 2024年06月28日

離婚のときに直面するのが、財産分与の問題です。知識がないと不利な取り決めをしてしまう可能性があるため、財産分与の種類や決め方、対象となるものなどを理解しておきましょう。また財産分与をするにあたって、特に注意すべき点も解説します。

離婚における財産分与について

離婚で財産分与を行う夫婦のイメージ

財産分与とは何か、当事者間の財産の分配割合はどうすべきかなど、まずは財産分与の基本について説明します。財産分与のルールやポイントを知らなければ、離婚時に不利になる可能性があるため、基本的な情報はしっかり理解しておきましょう。

財産分与とは?

財産分与とは夫婦が共同生活を送るなかで形成した財産を、離婚時に分配することを言います。基本的には当事者間の話し合いで、まとまることが多いですが、相手が分配を拒否した場合でも、相手方に請求する権利が法律で認められています。

ただし離婚する際の財産分与は、義務というわけではなく、双方が納得して財産分与請求権を放棄した場合には、財産分与をせずに離婚することも可能です。

財産分与の割合は二分の一が原則

財産分与の分配率は、財産の形成に対する貢献度で決まります。基本的には夫婦の貢献度は同等であると見なされるため、財産分与の割合は二分の一が一般的です。

仮に夫が大黒柱として稼いでいて、妻が専業主婦であったとしても、夫の稼ぎは家庭を支える妻のサポートがあってのものだと考えられます。そのため貢献度に違いはないと見なされる場合が、ほとんどです。ただし一方の特異な才能で財産を築いた場合や、両者が合意した場合など、必ずしも分配が二分の一になるとは限りません。

財産分与の種類

財産分与する様子

財産分与には大きく分けて三つの種類があります。それぞれ役割が異なるため、自身の状況に応じて、財産分与の種類を検討するようにしましょう。

清算的財産分与

清算的財産分与は婚姻中に形成した夫婦の財産を、分配するものです。一般的に多くの人がイメージする財産分与は、これに該当します。不動産や自動車などの固定資産から、家財道具や絵画まで、結婚生活で築いた共有資産を、公平に分配するものです。

清算的財産分与は、あくまでも結婚してから築いた財産を、離婚のタイミングで二分するという考えであるため、離婚に至った理由は関係ありません。そのため離婚の原因を作った有責配偶者からの請求も、基本的に認められるのが特徴です。

扶養的財産分与

扶養的財産分与は夫婦のどちらか一方が、離婚後の生活に困窮する可能性がある場合に、扶養目的で財産を分与するケースです

夫婦の共有財産がなく分与するものがない場合、専業主婦・主夫や、病気で働けない人などは、離婚によって無収入の状態になります。すぐに働くことが難しく、経済的に困窮する可能性がある場合は、扶養的財産分与がされることになります。

経済力のない配偶者に対して、経済的に自立するまでの期間、定額を支払う形が一般的です。支払う期間は半年の場合もあれば、数年に及ぶ場合もあり、状況によって異なります。

慰謝料的財産分与

離婚の原因が不貞行為や家庭内暴力など、相手に精神的苦痛を与えた場合に、慰謝料としての性質を含みつつ、分配されるのが慰謝料的財産分与です。財産分与は有責配偶者も請求する権利を有しますが、慰謝料的財産分与については、精神的被害を受けた側のみが請求できます。

財産分与と慰謝料請求は別物であるため、慰謝料的財産分与の他に、慰謝料を請求することも可能です。ただし慰謝料的財産分与で、精神的損害が賠償されたとみなされた場合には、別途慰謝料を請求できない場合もあります。

慰謝料的財産分与を検討するとき、慰謝料を含めた割合にするのか、慰謝料的財産分与と慰謝料を両方請求するのかは、それぞれの状況や話し合いの内容によって、変わってくるでしょう。

財産分与の対象になるもの

財産の対象とのなるもの

財産分与は婚姻中に築いた夫婦の共有財産が対象となります。具体的に対象となる財産について、把握しておきましょう。

預貯金

婚姻後に得た現金や貯蓄した預貯金は、稼いだ額や名義に関係なく、財産分与の対象となります。へそくりや株など、夫婦の家計から捻出した財産も同様です。すでに受け取っている退職金や、数年以内に確実にもらう退職金なども、分与の対象となります。

ただし退職金については、必ずしも全額が対象になるわけではなく、同居していた婚姻期間に相当する額が、分配されます。すでに使ってしまった分については、分与の対象とはならないので注意が必要です。

不動産

不動産も登記簿上の名義に関係なく、夫婦の共有財産となります。住宅ローンの返済が済んでいる場合は、家屋の売却額あるいは査定額の半分で、清算するのが一般的です。一方でローン付き住宅の場合は、住宅ローンがどれくらい残っているかによって、分配方法が変わってきます。

住宅ローンの残額が査定額よりも少ない場合は、売却して出た利益を折半するのが、最もスムーズです。逆に家の査定額より住宅ローンの残額が多い場合、家屋を売却してもローンだけが残ってしまうため、どちらか一方が住み続けるのが現実的でしょう。

保険

婚姻中に加入した生命保険や、学資保険などの解約返戻金も、財産分与の対象です。婚姻前に加入したものについては、婚姻後から離婚時までの期間に相当する額のみが、分配の対象となります。

仮に保険を解約しない場合は、加入し続ける方が加入しない側に対して、想定解約返戻金の半額を支払うのが基本です。また離婚後も、子どものための学資保険は残しておきたい場合には、両者の合意がなされれば、財産分与の対象から外すことも可能です。

負債

財産だけでなくローンなどの負債や、生活のために利用したキャッシングなどの借入金も、分与の対象となります。住宅ローン・自動車ローン・教育ローン・生活費のための借金など、婚姻生活のなかで生じた負債がある場合は、プラスの財産からマイナス分を差し引いた額を分配するのが、一般的な方法です。

ただし、ギャンブルや浪費など、どちらかが一方的に作った借金については対象外です。あくまでも夫婦の生活を維持する目的において、発生した負債のみが考慮されます。

財産分与の対象にならないもの

罰マークをかざす女性

夫婦のどちらか一方に帰属する特有財産は、財産分与の対象外です。特有財産には大きく分けて、以下の三つのパターンがあるため、離婚の前に確認しておきましょう。

結婚前に得た財産

独身時代に貯めた貯金や、購入した不動産・自動車など、結婚前から所持していた財産については、分与の対象外です。たとえ結婚後に家や車を共有していたとしても、共有財産とは見なされません。

ただし婚姻期間中に、ローンの残債を負担した場合などは、財産の一部が共有と認められるケースもあります。

例えば独身時代に車を購入して、ローンの六割を払い終えた時点で結婚し、残りの4割を婚姻期間中に返済したとしましょう。その場合、結婚後に返済した4割分については、共有財産と判断される可能性もあります。

婚姻中に相続で得た財産

親族からの相続や贈与などで、個人的に得た財産については、婚姻期間中であっても、共有財産とは見なされないケースがほとんどです。財産分与の対象となる共有財産は、夫婦で協力して築いたものであることが、前提となります。

相続や贈与を受けた財産に関しては、配偶者の存在が影響を与えるものではないため、財産分与の対象とはなりません。

ただし相続した不動産で家賃収入を得ており、その管理を配偶者が手伝っていた場合などは、一部が共有財産と認められるケースもあります。

別居後に得た財産

共有財産は「共同生活を送るなかで形成した財産」という定義があるため、婚姻中であっても、別居期間に得た財産については、分与の対象外です。別居が成立した時点で、夫婦の協力関係が解消されたと見なされるため、別居期間中に得た財産については、配偶者の協力は認められません。

また別居中に財産が減った場合も同様で、別居成立前の時点での財産が基準となります。そのため、例えば一方が別居期間中に財産を使い込んだ場合には、別居前に所持していた財産の半分を、もう一方に渡すのが基本的な考え方です。

ただし、実際に使い込んだ額を全額取り戻せるとは限らないため、別居前に財産の確認をしておくことが重要です。

離婚時の財産分与の決め方

話し合う夫婦の様子

離婚時の財産分与の決め方には、主に二つの方法があります。基本的には両者の協議によって、決着するのが理想ですが、協議が調わなかった場合に進むべきステップについても、理解しておきましょう。

夫婦間での協議

財産分与は夫婦間で話し合って決めるのが、最もスムーズな方法です。話し合いで解決すれば余計な費用や制約もかからないため、可能であれば両者の協議で決着するのが、理想的でしょう。

ただ会話もできないほど夫婦仲が険悪な場合や、一方が精神的な損害を受けている場合など、話し合いの場を持てないケースもあります。そのような場合は両親や知人、弁護士などの第三者を仲介役として、話し合いを進めるのが有効です。

離婚協議書・公正証書を行政書士に依頼するメリット

離婚の協議をする際には、離婚協議書を作ることで後々のトラブルを避けられます。言った・言わない問題にならないためにも、協議で決まった内容については、書面にしておくことが重要です。

財産分与の内容を離婚協議書に記載する際には、文章の解釈に幅が出ないように注意しましょう。後から解釈違いでトラブルに発展する可能性もあります。離婚時に決めた条件や取り決めは漏らさず明記し、どちらの財産になるのか、必ず特定できるように記載しなければいけません。

離婚協議書は自分たちで作成することも可能ですが、公正証書として行政書士、または弁護士の公的資格を持つ専門家に、作成してもらう方法もあります。

弁護士は業務として相手との交渉も可能ですが、行政書士が担当するのは書類の作成のみです。弁護士に依頼するよりも、行政書士の方が費用が安く、離婚問題に特化した人も多くいます。自分の状況に応じて、どの専門家に依頼するか慎重に選択しましょう。

調停

両者の話し合いで解決しない場合や、どちらか一方が話し合いを拒否している場合などは、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。調停委員が中立的な立場で双方の言い分を聞き、話し合いを進めてくれるのが、離婚調停の特徴です。

離婚調停では財産分与に関してはもちろん、親権や養育費、慰謝料など、離婚にあたっての条件を調整してもらえます。万が一調停でも決着がつかない場合は、裁判で決着を付けることになります。離婚裁判は双方にとって大きな負担となるため、よほど泥沼な状況でない限りは、調停で済ませるのが一般的です。

財産分与についての注意点

注意を促す行政書士

財産分与に関して、特に注意すべき点を解説します。知らずに離婚手続きを進めると、不利になってしまう可能性もあるため、しっかりと理解しておきましょう。

財産分与は離婚から2年以内に行う

財産分与の請求は、離婚から2年以内に行いましょう。協議や調停自体に期間の制限は設けられていませんが、離婚成立から2年が経過すると、審判ができなくなります。協議や調停で話がまとまらなかった場合の、救済措置がなくなってしまうため、2年以内に最終的な決着をつけるのが理想です。

なお財産分与権が一度確定したら、その権利は10年間有効となります。仮に財産分与を遂行するのに時間がかかったとしても、2年以内に権利の確定がされていれば、財産を受け取れない事態を避けられるでしょう。

財産隠しには要注意

離婚の当事者が相手に渡す財産を少なくするために、自身の財産を隠すケースもあります。財産分与の原則は二分の一ですが、財産があることを証明できなければ、分配もできません。

婚姻中に作った口座や、保管していた現金などを隠されてしまうと、証明するのは困難です。離婚を決意したら、婚姻期間中にしっかりと調べておきましょう。通帳・保険証書・不動産登記簿・給与明細など、財産に関係する書類は、ひと通りコピーしておくことをおすすめします。

財産隠しは法的には罪にならないため、自身の利益のみを考えて、隠す人が少なくありません。相手だけが得をする状況を生み出さないためにも、水面下で証拠を確保しておくことが大事です。

財産分与について迷ったらプロに相談しよう

ほとんどの人にとって、離婚は人生で何回も経験することではないため、詳しい知識を持つ機会も多くはないでしょう。しかし知識がないまま離婚手続きを進めると、受け取れるはずだった財産を逃してしまう可能性もあるため、基本的な内容について把握しておくことが重要です

「自分だけでは解決できない」「負担が大きすぎる」という場合は、専門家の力を借りるのも一つの方法です。弁護士や行政書士など、経験豊富なプロに助けを求めて、スムーズかつ納得のいく形で離婚や財産分与を成立させましょう。

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