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時間単位年休とは?使用・付与条件から読み解くメリットデメリット

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最終更新日: 2024年03月04日

時間単位年休とは、労働者が年5日間分の時間を、時間単位で休暇とできる制度を指します。有給消化率の低さが課題となっている日本社会において、いま注目を集めている制度です。

しかしいざ時間単位年休を使用しようと思っても「時間単位年休の計算方法は?」「どういうふうに使用すればいいの?」といった疑問は少なくないでしょう。

本記事では時間単位年休とは何かから使用・付与条件、また企業担当者向けの導入ステップまでをわかりやすく解説。自分の都合の良いタイミングで時間単位年休を有効活用する、手助けをいたします。

時間単位年休とは?

時間単位有給とは

時間単位年休とは、有給休暇を1時間、2時間と時間単位で取れる制度です。1時間が最低単位で、2時間、3時間と自分の都合の良いように有給をとることができます。

近年日本では、有給取得率が他国と比べて圧倒的に低いことが問題になっています。時間単位年休は、個々が労働状況や個人の都合に合わせて柔軟に有給を取得できる制度です。

柔軟に都合の良い時間で休暇を取ることで有給取得率の向上を促すため、2010年4月に労働基準法の改正で定められました。

従来の年次有給休暇と時間単位年休の違い

従来の年次有給休暇と時間単位年休の違いは主に2つです。

年次有給休暇 時間単位年休
1日or半休でしか取得できない 1時間,2時間と時間単位で取得できる(中抜けなどもOK)
年5日の取得義務がある(企業は導入しないと罰則) 取得義務はない(企業の任意で導入可否を決定)

労働基準法第39条において、「6カ月以上継続して8割以上出勤した労働者に対して、10日の年次有給休暇を与えること」は雇用者に義務付けられています。

それに対して時間単位年休は導入が義務ではなく、罰則はありません。

参考:3.年次有給休暇の時間単位付与(1)趣旨、(2)現行制度の概要|厚生労働省
ソフトウェア比較のイメージイラスト

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時間単位年休の付与条件

オフィスでパソコンを操作する仕事中の女性

時間単位年休にはいくつかの付与条件があります。主に挙げられるのは以下の項目です。

【付与条件】

  • 年5日分(所定労働時間×5日の時間数)付与される
  • 5日以上は付与できない
  • 計画年休として付与はできない
  • 導入には「就業規則の改定」をした上で「労使協定の締結」が必要

【付与条件その1】年5日分付与される

時間単位年休は、年5日分(所定労働時間×5日の時間数)付与されます。また、もし所定労働時間が6時間30分や7時間30分などの場合、30分は切り上げて計算するので気をつけましょう。

起算例は以下の通りです。

【事例1:所定労働時間が9:00〜19:00(休憩1時間)】

所定労働時間8時間×5=40時間/年

年に40時間の時間単位年休が付与される。

【事例2:所定労働時間が9:00〜18:30(休憩1時間)】

所定労働時間7時間30分。30分は切り上げて1日8時間とする

8時間×5=40時間/年

年に40時間の時間単位年休が付与される。

【事例3:フレックス制・コアタイム10:00~15:00, 標準時間帯9:00~18:00(休憩1時間)】

標準時間帯8時間×5=40時間/年

年に40時間の時間単位年休が付与される。

参考:(4)労使協定に規定する内容 ⅲ)時間単位年休1日の時間数|厚生労働省

【付与条件その2】5日以上は付与できない

時間単位年休は、1年間で5日分以上を超えて取得はできません。5日以上は、基本的には1日単位もしくは半日単位で取得する必要があります。

もし年内に5日分の時間単位年休を利用できなかったとすると、次年度に繰越となるでしょう。しかし次年度でも時間単位年休として利用できるのは新規付与分を含めて5日分となり、余った時間数は1日単位、半日単位で利用するかさらに次年度に繰越となります。

時間単位年休の繰越条件

【付与条件その3】計画年休として付与はできない

計画年休とは、計画的に取得日を割り振ることができる制度のことを言います。会社の創立記念日として、◯月◯日を一律で休みにするなどが該当します。

時間単位年休はこの計画年休に充てることができません。例えば会社のイベントのため◯月◯日の後半1時間は、全員が時間単位年休を使用することを義務付けるなどは不可能です。

【付与条件その4】導入には「就業規則の改定」をした上で「労使協定の締結」が必要

時間単位年休は、導入は義務ではありません。基軸として導入は企業の任意に委ねられています。

そのため導入する前には、導入や取得の条件について就業規則に記載し、労使協定を締結する必要があります。決める内容は以下のとおりです。

  • 時間単位年休の対象となる労働者の範囲
  • 1年間で利用できる時間単位年休の日数
  • 1日分の年次有給休暇に相当する、時間単位年休の時間数
  • 時間単位年休の単位時間が1時間以外の場合の単位時間

締結後に労働基準監督署へ就業規則の変更を届け出ます。

参考:(4)労使協定に規定する内容|厚生労働省

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時間単位年休の使用条件

有給休暇届とカレンダー

時間単位年休にはいくつかの使用条件があります。主に挙げられるのは以下の項目です。

【使用条件】

  • 30分単位では利用不可
  • 所定労働時間内であれば中抜けなども可能
  • 年5日の有給取得義務は履行できない
  • 看護休暇・介護休暇との併用は可能

【使用条件その1】30分単位では取得できない

時間単位年休は、30分単位での使用はできません。基本的に1時間単位での使用とされています。

【使用条件その2】所定労働時間内・標準時間帯であれば取得可能

所定労働時間内であれば、中抜けなどでの時間単位年休の使用は可能です。また、フレックスタイム制を導入している企業は、コアタイムだけでなく標準時間とされている時間帯でも使用できます。

【企業の時季変更権について】

ただし企業は時間単位年休について時季変更権の行使が認められるためお気をつけください。

時季変更権とは、事業の運営や営業などを妨げる場合、企業が労働者が希望した有給取得日を変更できる権利を指しています。

つまり企業は「この日は店に誰もいなくなってしまう」「この日は大事な商談日がある」などの業務上の理由で、時季を変更することができるのです。

しかしこの時季変更権は、1日単位の希望だったものを時間単位になど単位を変えることはできません。なおかつ業務上の理由ではなく有給取得理由に関する事由(例えば「イベントに行くなどの私的理由」を却下する目的など)での変更権の行使も不可能です。

【使用条件その3】年5日の有給取得義務は履行できない

2019年4月より、年5日以上の有給を取得することが義務となりました。(※年10日以上の有給が付与されている労働者に限る)

時間単位年休をこの5日間に該当させることはできません。5日分の時間単位年休としても別で有給を1日単位or半年単位で5日分取らなければならないということです。

【使用条件その4】看護休暇・介護休暇との併用は可能

時間単位年休を看護休暇・介護休暇と同一として休暇日を消化することも禁じられています。

例えば、「子どもの看護」を理由に時間単位年休を使用したとしましょう。

この場合時間単位年休は消化されますが、別に子どもや家族の看護休暇・介護休暇が支給されていた場合こちらが消化されることはありません。

もし時間単位年休が19時間、看護休暇・介護休暇が2日残っていた場合、時間単位年休で16時間「子どもの看護」理由で休暇を取ると、残りの各項目の残数は時間単位年休が3時間、看護休暇・介護休暇が2日残るのです。

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時間単位年休のメリット

さわやかなビジネスマン

有休が取りやすくなるように定められた時間単位年休の導入は、企業の義務ではありません。

ただ導入すれば、従業員だけでなく企業にとっても大きなメリットがあります。具体的にどんなメリットがあるのか、双方の視点で順番に紹介していきます。

1日有休を取られるより仕事に穴が開きにくい

時間単位年休を導入するメリットのひとつは、仕事に穴が開きにくい点です。

子どものお迎えや役所の手続きなど、1時間で終わるような用事でも、従来の制度では1日や半日の有休を取るしかありませんでした。フレックスの場合でもあまり変わりません。

しかし時間帯年休なら1時間単位の有休があれば、用事を終えてから業務に戻ったり、1時間のみの早退もできるでしょう。そのため授業員は、自分の生活スタイルに合わせて仕事が可能に会社は必要な人手を確保しやすくなり、仕事への影響が少なくてすむのです。

福利厚生アップで人材が集まりやすくなる

企業にとっては人材の確保につながるのもメリットです。

時間単位年休は職場に大きな迷惑がかからないため、有休を取りやすい特徴があります。適度な休みは心身の健康を保ちやすく、仕事への意欲や職場への定着率を高めてくれるでしょう。

求人においても福利厚生が充実した働きやすい会社というアピールになります。スキルや資格があっても家庭の事情で正職員に就けない人を有用に活用でき、従業員にとっても会社にとっても良いシナジーが生まれるでしょう。

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時間単位年休のデメリット

深夜にビジネスミーティングをするビジネスマン

時間単位年休のデメリットを心配している人も多いでしょう。

もし導入を検討しているなら、運用した際のデメリットもきちんと把握し、メリットと比較する必要があります。

有給の計算が複雑になる

時間単位年休の大きなデメリットは有休の計算が複雑になることです。会社は有休の日数管理に加えて、時間管理もする必要が出てきます。

従業員からみても自分があとどれだけ有休を取れるのかわかりにくく、有休の取得がトラブルの原因になる可能性も出てくるでしょう。勤怠管理ツールや人事労務ツールを利用して、管理をスムーズにすれば解決することも多い問題です。

義務化された年次有給休暇と交換はできない

2019年4月から労働基準法が改正され、企業は年10日以上の有給を取得できる立場の労働者に対して、年5日の有休を取らせることが義務付けられました。

もともと有休制度の目的は、従業員の健康のためにまとまった休みを取らせることです。従って義務付けられた5日から、時間単位で取った有休分を差し引くことはできません。

つまり時間単位年休を導入すれば、導入前に比べて従業員全体の有休取得時間が増える可能性があります。

参考:

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時間単位年休の導入に当たって必要な事項

リモート 女性 ビジネス

時間単位年休を導入するには、どんなステップを踏めばいいのでしょうか?導入がきっかけで余計なトラブルが起こらないように、事前にしっかり準備することが大切です。導入に当たって必要な3つのポイントをお伝えします。

制度の対象範囲を定める

まず制度の対象となる従業員の範囲を決めなければいけません。従業員の権利を守ることで、会社の運営自体に支障が出ないようにするためです。

たとえば工場のラインで従業員が一斉に働かないと機能しないなど、事業運営に支障が出る場合にのみ、一部の従業員を制度の対象外にできます。

対象範囲は業務内容によって定められるもので、有休を取る目的で限定はできません。導入の目的が育児支援のためだったとしても、子どものいない従業員を対象外にすることはできないのです。

参考:(4)労使協定に規定する内容 ⅰ)時間単位年休の対象労働者の範囲|厚生労働省

1日分の年次有給休暇に相当する時間数を就業規則へ記載する

時間単位年休を計算するに当たって、1日分の有給休暇が何時間に相当するかを決めておきます。一般に各従業員の1日当たりの労働時間、いわゆる所定労働時間が基準です。

ただし所定労働時間に1時間未満の端数がある場合には、1時間単位に切り上げて数えます。例えば1日当たりの所定労働時間が7.5時間なら、切り上げて8時間としてカウントするルールです。

また日によって労働時間が変わる場合は、年間での1日の平均所定労働時間を基準にします。

1時間単位の賃金を計算

時間単位年休の1時間単位の賃金を決めるには、まず1日の賃金額を以下の方法から選んで定めます。

  • 平均賃金:3カ月間に支払われた賃金総額を3カ月間の総日数で割った金額
  • 所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金
  • 標準報酬日額:原則として4月から6月までの3カ月間の給与を平均した金額、採用には労使協定が必要

企業は選んだ計算方法を就業規則に記載しなければなりません。3つのいずれかで定められた1日の賃金額を、その日の所定労働時間で割ると、時間単位年休1時間分の賃金額になります。

参考:(2)現行制度の概要|厚生労働省

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時間単位年休の導入で人材の定着率アップ

女性 ビジネス

時間単位年休は会社にとっても従業員にとってもメリットのある制度です。会社にとっては人員の確保がしやすく、福利厚生に力を入れた企業としてイメージアップもできます。

従業員にとっては気兼ねせずに有休が取れる職場として定着率のアップにもつながりやすくなります。時間単位年休の効果や、導入手順を理解して職場に役立つか見極めましょう。

次の記事では、時間単位年休の管理効率化につながる勤怠管理システムを紹介しています。ぜひ、あわせて参考にしてください。

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