エアコンを取り付けるときには「真空引き」という作業が必要です。
真空引きの役割や行わなかったときのリスク、設置後のエアコンが真空引きがされているか確認する方法があるのかなどを解説します。
エアコンの真空引きの手順
真空引き自体にかかる時間は約15分、気密テストを含めたすべての工程を終えるまでの時間は約30分です。
エアコンの真空引きに必要な道具
真空引き作業を行うには3つの道具が必要です。
真空引きの作業は、各器具をホースで接続し、ポンプをゲージにつないで真空度を測りながら行います。
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この中でもチャージバルブは特に重要な道具です。チャージバルブはホース脱着時の冷媒ガスの漏出や真空引き後の空気の混入を防止する役割を果たします。
室外機のサービスポートは虫ピン構造になっており、ピンを押している間は開いている状態です。このままホースを外すと空気が混入し、真空引きの作業が無駄になります。
チャージバルブのツマミを操作すると内部の突起がへこみ、虫ピンを押さなくなります。この状態でホースを外すと外気が混入せず、真空引きが完了したことになります。
1.真空ポンプとゲージマニホールドを接続する
真空ポンプとゲージマニホールドをチャージングホースでつなぎます。
ゲージマニホールドやチャージングホースのバルブは締めたままにしてください。
2.チャージバルブを室外機側面のサービスポートに接続する
室外機の側面にあるサービスポートにチャージバルブをつなぎます。サービスポート、ゲージマニホールドともに低圧側をつなぎましょう。
チャージバルブはチャージングホースの一方についています。
バルブを締めすぎたり緩めすぎたりするとこの後の真空にする作業がうまくできなくなるので注意してください。
3.室外機と真空ポンプの間で空気が流れるようにする
チャージングホースのバルブと、室外機のサービスポートに接続したチャージバルブのツマミを開きます。室外機と真空ポンプの間に空気が流れるようにしてください。
4.真空引きを開始する
真空ポンプの電源を入れ、真空引きを開始します。真空引きが始まるとゲージマニホールドの目盛りがゆっくりと動いていくので、問題がないかしばらく観察しましょう。
5.連成計が-0.1Mpaを示すまで待つ
およそ10~15分ほど経過すると、連成計が-0.1Mpaを指します。-0.1Mpaを示していることを確認したら、バルブを閉めてポンプを停止しましょう。
6.気密テスト・ガス漏れチェックを行う
真空ポンプを取り外して5~10分ほど放置しても連成計の針が動いていなければガス漏れチェックを行いましょう。もし連成計の針が0に近づいていたら再度真空引きを行います。
しっかりと真空状態を作れていたらガス漏れチェックを行いましょう。2カ所のサービスバルのうち、細い方を六角レンチで90度回してください。
5秒経ったらすぐに閉じてガス漏れが発生していないかチェックしましょう。もしガスが漏れているとゲージマニホールドの針が動きます。
7.真空ポンプを取り外す
全てのバルブが閉じているかチェックし、室外機のサービスポートからチャージホースを外せば真空引き作業が完了です。
真空引きの所要時間と費用相場はどのくらい?
エアコン取り付け工事に必須の真空引き作業には、どのくらいの時間がかかり費用相場はいくらくらいなのでしょうか?
真空引き作業についてよくある疑問を解説します。
真空引きは標準工事に含まれていることが多い
真空引きはエアコン取り付け作業の1工程なので、真空引きのみを行ってもらうことはほぼありません。そのため真空引きのみの料金を提示している業者は少ないです。
真空引きの作業料金を比較することは難しいですが、取付工事全体にいくらかかるかを比較することでおおよその比較ができます。
大手家電量販店ではビックカメラとヤマダ電機では公式サイトで真空引きを行うと明記しています。
標準取り付け工事料金 | |
---|---|
ビックカメラ | 14,300円(冷房能力3.6kw以下のエアコン) 19,800円(冷房能力3.7kw以上のエアコン) |
ヤマダ電機 | 16,500円(冷房能力2.2~4.9kwのエアコン) 22,000円(冷房能力5.6kw以上のエアコン) |
このほかの家電量販店は公式サイト内での記載は確認できませんでしたが、標準工事に含めている口コミも確認できました。
エアコンの取り付けを家電量販店経由で依頼するときは真空引きを行っているかを念のため確認しておくと良いでしょう。
真空引きの所要時間は15分程度
配管内を真空にする作業はおよそ10~15分程度かかります。
前後に行う道具類の準備や気密テストなども含めても、真空引き作業は20~30分程度で完了することが多いです。
ただし雨天時など湿度が極端に高い日の場合は、配管内に水分が入り込まないよう長めに真空作業時間をとることがあるので時間が延びる傾向があります。
エアコンの真空引きが必要な理由
エアコンを設置するときには「真空引き」という作業が必要です。
自分で取り付ける人のみならず、取り付け業者に依頼して設置してもらう人でもどのような作業なのか、なぜ必要なのか、真空引きが不完全だとどのような悪影響があるのかなど気になりますよね。
真空引きで行うことやその必要性、配管内を真空にする手法をご紹介します。
エアコン本来の性能を発揮させるため
真空引きはエアコン本来の性能を発揮させるために必須の作業です。
真空引きをしていない冷媒配管の中には空気や水分、微小なチリなどの不純物が存在します。
効率よく冷媒を行き来させて熱交換をするには、冷媒配管内部には冷媒ガスのみが存在している状態が好ましいです。
真空引きを行わないまま冷媒ガスを解放しても、すぐに壊れてしまうことはさほど多くありません。
しかし不純物が残ったままエアコンを稼働させると、余計なパワーを使いながら運転することになり稼働効率が落ちます。月々の電気代が高くなるなどの問題もあるので、真空引きは必ず行いましょう。
真空引きの目的は「配管内を乾燥させる」こと
「真空引き」という名称から誤解している人も多いですが、真空引きの目的は配管内部を真空にすることではなく、真空状態にして水分を蒸発させ、配管内部を乾燥させることです。
乾燥させることが目的なので、雨の日や配管が濡れている場合などは真空引きの時間を長くとりしっかり乾燥させます。必ず15~20分程度で終了する作業ではない点を認識しておきましょう。
真空引きがきちんと行われたか確かめる方法はある?
真空引きは重要な作業ですから、取り付けてもらったエアコンがきちんと真空引きされているのか気になる方もいるでしょう。
残念なことに取り付けが終わってから真空引きがしっかりされているか確認する術はありません。その理由を解説します。
取付工事が完了したらチェックできない
真空引き作業は真空状態にすることが重要なので、取り付け工事が完了してから真空引きがきちんとされているか確認できません。
もし今使っているエアコンがきちんと真空引きされているか不安なのであれば、エアコン使用時のことを思い出してください。
たとえ真空引きが不完全であっても利用上は問題ないので、冷房運転をしているのに冷えないなど不具合がなければ修理等は必要ありません。
取付直後から調子が悪いなら施工業者に連絡をしよう
エアコンを取り付けた直後にも関わらずエアコンの調子が悪いのであれば、真空引きが不完全だったために不具合が生じている可能性があります。
まずはエアコンの製造メーカーのサポートセンターに相談し、修理等のサポートが受けられるかを確認しましょう。
真空引きを自分でやらない方がいい理由
道具を用意できれば真空引き作業は自分で行うこともできます。
しかし道具を用意できたとしても真空引きはプロに依頼することをおすすめします。理由は下記の3つです。
真空引き作業は難易度が高い
真空引きは普段使わない工具などを使って作業をします。作業そのものの難易度も高く、気をつけるべきポイントも複数あります。
またレンタル工具を利用して真空引きをするのであれば、レンタル品を壊さないように細心の注意を払う必要があります。
複数のことがらに注意を払って慣れない作業をすると、心理的なプレッシャーもあいまってケガなどのリスクも高まるので注意してください。
エアコンが故障するリスクが大きい
真空引きは配管内部を真空状態にして、不純物を無くすことが目的で行われます。
真空引きのよくある失敗のひとつに、コンプレッサーオイルの逆流があります。オイルは冷媒からすると異物そのものです。
冷媒管内にオイルがあるとエアコンの故障の原因になります。修理費用などを考えると自分で真空引きを行うメリットはないでしょう。
自分で行ってもさほど節約にならない
真空引きはエアコン取り付け作業の1工程なので、真空引きを含めた取り付け作業の費用と所要時間を比較します。
エアコン取り付け業者 | 自分で取り付け | |
---|---|---|
費用 | 10,000~20,000円 | 15,000~20,000円 |
所要時間 | 1時間半~2時間 (うち真空引きは15~20分) |
2~3時間 (うち真空引きは15~20分) |
費用を大幅に節約できるわけでもなく、所要時間も伸びる可能性が高いです。コストパフォーマンスという観点から見ても真空引きやエアコン取り付けを自分で行うのは推奨しません。
エアコン取り付け業者に取り付けを依頼するときのチェックポイント
エアコンの取り付けを業者に依頼するときは以下の4つのポイントを意識してください。
標準工事に真空引きが含まれているか確認する
エアコンの取り付け工事では、機器の設置だけでなく配管や既存のアース線への接続などの作業は「標準工事」としてパッケージプランとして提供されています。
ただしどの作業を標準工事に含んでいるかは取り付け工事を行う業者ごとに異なります。
正式に依頼申し込みをする前に、標準工事の中に真空引きが含まれているか確認しましょう。
真空ポンプを使用しているかを確認する
真空引きや真空乾燥を行うには真空ポンプという道具が必要です。真空ポンプを使わずに配管内を真空状態にするにはガス圧によるエアパージが行われます。
ただしガス圧によるエアパージでは真空度が不完全であり、内部に不純物が残る可能性も高いです。冷媒ガスであるフロンの漏出による地球温暖化の増進などの理由もあり、現在は行われないことになっています。
打合せ段階から「真空ポンプを使って真空引きをしてください」等伝えておくと、当日に慌てることもないでしょう。
使用する真空ポンプの種類は気にしなくてもOK
真空ポンプは電動式と手動の2種類があります。電動式の方が真空度が高まるように思えますが、プロが作業を行うのであれば違いはありません。
エアコンの取り付けになれた熟練の技術者であれば、手動式のポンプでも高い真空度を保てます。
なるべく安く依頼するなら繁忙期を避ける
エアコンの取り付け工事には依頼が集中する繁忙期があります。
6~8月は気温が高く、特に依頼が集中する時期なので安く取り付け工事をしてもらいたいのなら避けた方が良いでしょう。
また3~4月や9月頃は進学や入社、転勤などの理由でエアコンの移設工事が増えます。この時期に依頼するのであれば相見積もりを取って業者を比較することは必須といえます。
真空引きをきちんと行う業者をミツモアで探そう
エアコンの性能を最大限に活用するためには真空引きが必要です。
エアコン取り付け業者を探すときは真空引きをきちんと行ってくれるかを必ず確認しましょう。
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