配信で稼いでいる人は、特定の条件を満たしたら確定申告の義務が発生します。手続きを怠ったらさまざまなペナルティが課されるので、期日のうちに申告を完了しなければいけません。
この記事では、配信者(ライバー)の確定申告について詳しく解説していきます。
【働き方別】配信者・ライバーに確定申告の義務が生じるケース
配信者に確定申告の義務が生じるパターンは、働き方によって3通りに分かれます。
- 副業の場合
- 専業の場合
- 事務所に所属している場合
順番に詳しく解説していきます。
【副業の場合】年間所得20万円がボーダーライン
副業として配信活動をしている場合、副業所得が年20万円を超えたら確定申告の義務が発生します。
この20万円には、配信以外の副業所得も含める必要があります。たとえば配信で年15万円、ほかの副業で年10万円の所得が発生していたら、あわせて25万円になるので確定申告をしなければなりません。
また会社員の場合、配信者としての所得に関係なく、以下の条件に当てはまる場合も確定申告をする必要があります。
- 2つ以上の会社から給与をもらっている場合
- 本業の年収が2,000万円以上ある場合
- 年末調整では対応できない控除を受ける場合
【専業の場合】年間所得48万円がボーダーライン
専業配信者の場合は、年間の所得が48万円を超えたら確定申告の義務が発生します。
そもそも税額は、所得から「控除」という金額を差し引いた金額をもとに計算します。その控除の中でもほとんどの人が利用できる「基礎控除」が48万円であるため、所得が48万円以下だと課税対象の所得が0円になり、確定申告の必要性がなくなるのです。
【事務所から給与をもらっている場合】確定申告の義務は原則なし
事務所に雇用されて配信者として給与を受け取っている場合は、確定申告をする必要はありません。事務所が税金の計算と支払いを代わりに行ってくれるからです。
配信者・ライバーは確定申告をしなくてもバレない? 手続きを怠った場合のリスクとは
「確定申告をしなくてもバレないのでは?」とお考えの人もいるかもしれません。しかし確定申告を怠ると、さまざまなペナルティが課せられます。
ここでは、手続きをしなかった場合に想定されるリスクについて解説していきます。
ペナルティとして追加の税金を支払わなければならなくなる
期日までに確定申告を行わなかった場合、以下のような追加の税金を請求されます。
- 無申告加算税:支払う税金の15~30%
- 重加算税:支払う税金の35~40%
特に重加算税に関しては、税額の35〜40%を課されてしまう大変重いペナルティになっています。本来は支払う必要のないお金ですので、期日までにしっかりと手続きを終えるようにしましょう。
悪質だと判断されると刑罰の対象になるリスクがある
悪質な脱税行為だとみなされると、刑事罰の対象となってしまう可能性もあります。
具体的には、意図的に所得を隠したり、特別な理由なく確定申告をしなかったりした場合が該当します。懲役になる可能性もあるため、確定申告を怠るのはNGです。
【e-Tax】配信者による確定申告の手順
確定申告がまったく分からない人が確定申告を行うなら、e-Taxを活用することをおすすめします。
e-Taxはマイナポータルと連携することで手間なくスピーディに確定申告書の作成と提出が可能です。
e-Taxを利用して確定申告を行うときの流れは以下をご参照ください。
- e-Taxの利用者登録をする
- 電子証明書を取得する
- 「確定申告書等作成コーナー」で申告書類を作成する
- 作成書類に間違いがないかチェックし電子署名をする
- 作成書類を提出する
- 送信した結果を確認する
- 追加納税・還付金受け取りをする
①e-Taxの利用者登録をする
はじめにe-Taxの利用者登録をして「利用者識別番号」を作成します。
このステップで必要なのは、電子証明書が有効なマイナンバーカード、利用者証明用電子証明書(数字4ケタ)、マイナンバーカード読取対応スマホ、マイナポータルアプリの4つです。
- マイナポータルアプリにログインする
- 下にスクロールし「おかね」エリアの「確定申告」ボタンをタップする
- 「e-Taxと連携」ボタンを押す
- e-Taxにページ移動するため画面の案内にしたがって「利用者情報の登録」をする
② 電子証明書を取得する
e-Taxへの登録が完了したら電子証明書を取得します。これは、利用者本人が書類を作成し、不正や改ざんが行われていないことを示すための署名です。
電子証明書の取得において、マイナンバーカードのパスワード3種類すべてが必要になります。
マイナンバーカードのパスワード
- 署名用電子証明書(英数字6~16文字)
- 利用者証明書電子証明書(数字4ケタ)
- 券面事項入力補助用(数字4ケタ)
③ 「確定申告書等作成コーナー」で申告書類を作成する
電子証明書の付与が完了したら、「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、申告書類を作成します。
確定申告書等作成コーナーは、PC、スマートフォン、タブレットからアクセスできます。スマートフォン・タブレットからでは所得税と消費税の確定申告書作成のみ可能です。
「作成開始」ボタンをタップすると、税務署への提出方法を選ぶ画面が表示されます。PCを持っているのであればおすすめは「スマートフォンを利用してe-Tax」です。
提出方法を選ぶと、作成する申告書と何年分の書類を作成するか選択する画面に移動します。
サラリーマン(給与所得者)であれば一番左の「所得税」のボタンをタップして、申告書を作成しましょう。
④ 作成書類に間違いがないかチェックし電子署名をする
すべての項目に入力が完了したあとは、作成した申告書に間違いがないかをチェックします。
誤った情報で申告してしまうと、受けられる控除が受けられない、還付金の額が不適切な額になるなど様々なトラブルが発生するので、慎重にチェックをしてください。
間違いがなければ電子署名をし、申告書の作成は完了です。
⑤ 作成書類を提出する
確定申告書を任意の手段で提出します。提出方法は以下の3つです。
- e-Taxによる電子申請
- 郵送提出
- 窓口への直接提出
おすすめはe-Taxによる電子申請です。税務署等に向かう手間もなく、自宅で確定申告の作業が完了するためです。
⑥ 送信した結果を確認する
確定申告書を提出したあとに、送信データの審査結果が配信されます。
e-Taxのメッセージボックスに配信されるので、提出後しばらくの間はこまめにメッセージボックスを確認しましょう。
万が一書類に不備があった場合は再度、確定申告書を作成し直します。
⑦ 追加納税・還付金受け取りをする
e-Taxのメッセージボックスに追加納税や還付金に関する情報が配信されていたら、適切な対応を取ってください。
特に追加納税のお知らせを見落としてしまうと脱税として処罰されるリスクがあるのでご注意ください。
追加納税や還付金受け取りは、すべての納税者で発生するわけではありません。メッセージが配信されたら忘れずに手続きを行うという認識でいてください。
配信者・ライバーが経費に計上できる支出と仕訳例
配信に関係のある支出は経費として計上できます。具体的には以下のような支出を経費にできます。
- 撮影機材・配信用デバイス
- 衣装・メイク用品
- 小道具やインテリア
- 旅費交通費・外出配信関連
- ゲーム機・ソフト・サブスク代
- 投げ銭(他ライバーへのギフト)
- 事務所所属の場合のマネジメント料
- プレゼント企画・グッズ作成
- 家賃、水道光熱費、通信費、メイク用品、自宅のオフィススペースの一部
- 喉のケア用品
ここからは、ライバーの方が実際によく使う経費をカテゴリ別に整理し、注意点や仕訳の例を示します。
10万円以上の機材は減価償却が必要になるケースもあるので、後述の「5. 減価償却・少額資産の考え方」もあわせてチェックしましょう。
撮影機材・配信用デバイス
- 対象例:PC、カメラ、マイク、照明、スマホ、スタンド など
- 注意点
- 10万円未満 ⇒ 「消耗品費」で一括経費
- 10万円以上 ⇒ 「器具備品」で計上し、減価償却する(または特例を使う)
仕訳例(10万円未満) | |
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状況 | ライト(8,000円)を配信用に購入、現金で支払い |
借方:消耗品費 | 8,000 |
貸方:現金 | 8,000 |
仕訳例(10万円以上) | |
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状況 | PC(150,000円)をカード払いで購入 |
借方:器具備品 | 150,000 |
貸方:未払金 | 150,000 |
ヒント:減価償却・少額資産の考え方
10万円以上の機材や備品は、購入した年に一括で経費にできない場合があります。所得税法上、耐用年数に応じて「減価償却費」として毎年少しずつ経費に計上するルールです。
- 金額の目安
- 10万円未満:消耗品費で全額経費
- 10万~20万円未満:一括償却(3年)もしくは少額減価償却資産(青色申告なら30万円未満OK)
- 20万~30万円未満:少額減価償却資産の特例(年300万円まで)
- 30万円以上:通常の減価償却
少額減価償却資産の特例で一括計上した場合 | |
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状況 | PC(150,000円)を購入し、この特例を適用 |
借方:器具備品 | 150,000 |
貸方:未払金 | 150,000 |
同じ期内で減価償却費計上 | |
借方:減価償却費 | 150,000 |
貸方:器具備品 | 150,000 |
ポイント
青色申告をしていれば、「年間300万円まで」の枠内で30万円未満の資産は一度に経費にできます。配信で使う高性能PCやカメラなどを購入する際は、この特例が大きな節税効果につながるため、青色申告での確定申告をおすすめします。
衣装・メイク用品
- 対象例:コスプレ衣装、衣装用ウィッグ、舞台メイク、特殊メイク など
- 注意点
- 仕事でしか使わないもの → 全額を「消耗品費」に計上可能
- 普段使いするもの → 按分が必要(私用分は経費にできない)
仕訳例 | |
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状況 | 衣装(10,000円)を通販で購入し、銀行振込 |
借方:消耗品費 | 10,000 |
貸方:普通預金 | 10,000 |
家事按分例
週5日は配信用、2日はプライベート使用 → 7日間のうち5日分を経費とする。
もし合計7,000円のメイク用品を買ったら、5,000円を経費計上して2,000円は「事業主貸」に仕訳します。
小道具やインテリア
- 対象例:配信背景のパネルや装飾品、観葉植物 など
- 注意点
- 10万円未満 → 消耗品費
- 10万円以上 → 器具備品として減価償却要検討
仕訳例 | |
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状況 | 背景用の観葉植物(5,000円)を現金購入 |
借方:消耗品費 | 5,000 |
貸方:現金 | 5,000 |
旅費交通費・外出配信関連
- 対象例:ロケ配信のための交通費、宿泊費など
- 注意点
- 「配信のために必要だったこと」を示す証拠(配信ログ、SNS投稿)を残す
- 観光目的が混ざる場合は、事業関連分だけ経費に
仕訳例 | |
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状況 | 大阪で外配信を行うため交通費・宿泊費(50,000円)をクレジットカードで支払い |
借方:旅費交通費 | 50,000 |
貸方:未払金 | 50,000 |
ゲーム機・ソフト・サブスク代
- 対象例:ゲーム実況用のハード、ソフト、月額のサブスク料金
- 注意点
- 10万円以上のゲーム機本体は器具備品の可能性あり
- サブスクは契約期間によって前払費用になるケースもある
仕訳例(サブスク一括払い) | |
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状況 | 1年分のゲーム配信サブスク(7,000円)をカード払い |
借方:消耗品費 | 7,000 |
貸方:未払金 | 7,000 |
他ライバーへの投げ銭
- 対象例:自分の配信の宣伝や勉強を目的とした投げ銭
- 注意点
- 「広告宣伝費」または「研修費」で計上する考え方が一般的(事業関連性を説明できる場合)
- 単なる個人的応援の場合は経費にならない
仕訳例(広告宣伝費) | |
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状況 | 他ライバーへの投げ銭(3,000円)をクレジットカードで支払い |
借方:広告宣伝費 | 3,000 |
貸方:未払金 | 3,000 |
事務所へのマネジメント料
- 対象例:所属事務所への仲介手数料・マネジメント料
- 注意点
- 事務所からの報酬明細で差し引かれている場合でも、自分の経費として計上する
- 科目は「支払手数料」などが一般的
仕訳例 | |
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状況 | 売上10,000円中、20%がマネジメント料で差引8,000円入金 |
借方:売掛金 | 10,000 |
貸方:売上 | 10,000 |
続きの仕訳 | |
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借方:普通預金 | 8,000 |
借方:支払手数料 | 2,000 |
貸方:売掛金 | 10,000 |
プレゼント企画・グッズ作成
- 対象例:視聴者プレゼント用の商品、配布ノベルティ、販売用グッズの制作費
- 注意点
- 特定の視聴者へのプレゼント → 接待交際費
- 不特定多数への抽選プレゼント → 広告宣伝費
- 販売用グッズ → 仕入(在庫も考慮)
- ノベルティ・プロモーション目的 → 販売促進費や広告宣伝費
仕訳例(接待交際費) | |
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状況 | 特定のファン向けプレゼント(5,000円)を現金購入 |
借方:接待交際費 | 5,000 |
貸方:現金 | 5,000 |
家事按分が必要な経費
- 対象例:家賃、水道光熱費、通信費、メイク用品などプライベート使用分あり
- 注意点
- 面積・時間・利用頻度など客観的根拠を準備
- 事業利用分だけを経費にし、残りは「事業主貸」に仕訳
仕訳例 | |
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状況 | 電気代(10,000円)が口座引落され、うち20%を経費と判断 |
借方:水道光熱費 | 2,000 |
借方:事業主貸 | 8,000 |
貸方:普通預金 | 10,000 |
喉のケア用品
- 対象例:加湿器、のど飴、喉スプレーなど
- 注意点
- 仕事(配信)に不可欠と説明できる範囲なら「消耗品費」に計上可能
- プライベート利用も大きい場合は按分
仕訳例 | |
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状況 | のど飴(1,000円)をコンビニで購入、現金払い |
借方:消耗品費 | 1,000 |
貸方:現金 | 1,000 |
仕事とプライベート両方に関わる経費は「家事按分」で算出しよう
仕事とプライベート両方にまたがる支出を経費にしたい場合、両者の使用割合をもとに経費にする分の金額を計算します。この考え方を「家事按分(かじあんぶん)」といいます。
たとえば仕事とプライベート兼用でスマホを使っている場合、それぞれどのくらいの時間使っているのかをざっくりと割り出し、その割合で経費を計上します。
特にライバーは自宅一室で配信する方が多く、家賃や光熱費、通信費などを「どれだけ配信活動に使っているか?」を判断する必要があります。
客観的根拠を示せるほど、税務上も認められやすくなります。
- 時間按分:配信時間・配信準備時間を1日の総利用時間に対して割合を出す
- 面積按分:配信部屋の面積が自宅全体の何%かを計算
- 利用頻度按分:メイク用品なら「週5日は配信用で使っている」という日数ベースなど
例:一人暮らしで自宅面積30㎡のうち、6㎡を配信スペースとして使っているなら、配信スペースは全体の20%と考える。電気代や家賃をこの率で経費として計上すると、一定の合理性があると言えます。
配信者・ライバーの確定申告についてよくある質問
最後に、配信者の確定申告についてよくある質問をまとめました。
- 副業で配信者をしていることは会社にバレない?
- 学生や主婦など、扶養内で配信をしている場合は確定申告が必要?
- 確定申告について全くわからない場合はどこに相談すればいい?
順番に詳しく解説していきます。
副業で配信者・ライバーをしていることは会社にバレない?
副業のことを会社にバレたくない場合、確定申告書の徴収方法のパートで「普通徴収」にチェックをいれてください。この処置をすることで、本業の会社とは別で住民税が計算されるため、予定納税額にズレが生じなくなります。
また自身が副業をしていることを、安易に周りに話したりSNSで発信したりしないことも大切です。
学生や主婦など、扶養内で配信をしている場合は確定申告が必要?
扶養に入っていながら配信で稼いでいる場合、所得が年48万円を超えると扶養を外れることになってしまいます。確定申告の義務も発生するので、扶養を外れたくない場合は年48万円以下の所得に抑えることが必要です。
確定申告について全くわからない場合はどこに相談すればいい?
自力で確定申告を進めるのが難しい場合は、以下のような場所へ相談に行ってみましょう。
- 税理士事務所の無料相談サービスを利用する
- 税理士会の無料相談会に参加する
- 商工会議所や自治体の相談会に参加する
- 税理士に相談できるオンラインサービスを活用する
- 国税局電話相談センターに電話する
詳しくは以下の記事で解説していますので、参考にしていただければと思います。
配信者・ライバーでも確定申告を期日までにしっかりと終わらせよう
配信者は気軽に挑戦できる副業ですが、基準の所得を超えたら確定申告をする必要があります。確定申告をしないとさまざまなペナルティが課されるので、期日までにしっかり対応しましょう。
もし「どこから手を付ければいいかわからない」とお困りなら、ミツモアで税理士を探してみるのもおすすめ。いくつかの質問に答えるだけで、最大5名の税理士から見積もりをもらえます。