ゲラニウムは寒さに強く育てやすい花です。鮮やかでかれんな花姿が庭を彩ってくれるでしょう。
はじめてゲラニウムを育てる人は、品種や基本の育て方を押さえておきましょう。
肥料の与え方や病害虫への対策も、ゲラニウムを健康に育てるポイントです。
ゲラニウムの基本情報
ゲラニウムはりんとした印象を持つ、色鮮やかな花を咲かせる植物です。どんなお庭にも合い、育てやすい植物ですよ。
ゲラニウムは寒さに強い多年草
植物名 | ゲラニウム |
学名 | Geranium |
科名 / 属名 | フウロソウ科(フウロソウ属) |
原産地 | ヨーロッパ、小アジア |
開花期 | 4月~6月 |
花の色 | ピンク、白、青紫、紫 |
草丈 | 40~60cm |
ゲラニウムは春から夏の時期にかけて花を付ける、多年性の植物です。
「フウロソウ」とも呼ばれ、漢字では風露草と書きます。
ゲラニウムは種類によって草丈や花の色、葉の形がさまざまなのが特徴。紫色やピンクの花を咲かせ、庭を華やかな雰囲気に演出します。
ほとんどのものが株立ちになり、まっすぐもしくは斜めに茎を伸ばします。
一般的に花が咲く時期は初夏ですが、品種によっては秋まで楽しめるものもあります。
寒さに強いため冷涼な地域の方が育てやすいでしょう。しかし種類によっては暖地でも栽培でき、日本中の広いエリアで花を咲かせられます。
ゲラニウムの栽培カレンダー
ゼラニウムと何が違う?
ゲラニウムとゼラニウムは非常に名前が似ていますが、異なる植物です。ゲラニウムはフウロソウ属、ゼラニウムはテンジクアオイ(ペラルゴニウム)属に分類されます。
実はゲラニウムとゼラニウム、どちらも英語で書くとGeranium。Gを「ゲ」と読むか「ゼ」と読むかで、異なる花を指すのです。
元々はどちらの花も同じフウロソウ属だったのですが、1789年にゼラニウムをぺラルゴニウム属に分ける際にも日本では「ゼラニウム」という名前が浸透していたため、そのままの名前で現在でも親しまれているのです。
ちなみに欧米では、ゼラニウムのことを「ぺラルゴニウム」と呼びます。
花言葉は「変わらぬ信頼」「陽気」「慰める」
ゲラニウムの花言葉は「変わらぬ信頼」「陽気」「慰める」です。
「変わらぬ信頼」は青いゲラニウムの花姿は誠実な印象を与えることから、「陽気」はピンク色のゲラニウムが持つ明るいイメージから付けられたと言われています。
また、ゲラニウムは5月6日、6月29日、7月27日の誕生花です。プレゼントなどの参考にしてみるのもよいかもしれませんね。
ポピュラーな品種と特徴
ゲラニウムにはさまざまな種類があり、花姿や葉の形も品種によって異なります。
どれもポット苗で、500~900円ほどで販売されています。
代表的な5種類の特徴をチェックして、お気に入りの品種を選びましょう。
初心者でも育てやすい「ロザンネ」
通常ゲラニウムの開花期間は1〜2カ月程度ですが、ロザンネ(ロザンネイ・ロザンヌ)と呼ばれる品種は約6カ月も咲き続けます。
暑さに弱いため夏になると花が咲かなくなってしまうこともありますが、涼しい土地であれば開花したまま夏を越せるでしょう。
ロザンネは頻繁に手入れをしなくても株がきれいにまとまるので、初心者でも扱いやすいという特徴があります。
流通量が多く入手しやすいため、詳しい育て方の情報も多く出ている品種です。
紅葉を楽しめる「マクロリズム」
寒さに強いゲラニウムの中でも丈夫なマクロリズムは、冬でも葉をまといます。寒さが厳しすぎると葉が傷む場合がありますが、春になればしっかり芽を出してくれるでしょう。
秋には紅葉を楽しむことができます。
病気になったり害虫が付いたりする心配が少ないため、初心者でも育てやすい品種のひとつです。
ただし大株に育てると地面に沿って根茎が広がり、中心部にあまり芽を出さなくなります。植え替えや株分けの手間を省きたいなら、できるだけコンパクトに育てたい品種です。
シックな花姿が特徴「ファエウム」
ファエウムは、春から初夏にかけて濃い紫のシックな花を咲かせる姿が特徴です。下向きに咲く花がそよ風に吹かれると顔を上げ、また違った顔をみせてくれます。
ファエウムは一度根付くと、あまり手入れをしなくても毎年4〜6月に花を付けます。花の大きさは直径2cm程度と小輪ですが、広く花を咲かせるため存在感のある魅力を楽しめるでしょう。
近年は色のバリエーションも増えてきているので、お庭の雰囲気に合った色を探してみはいかがでしょうか。
グランドカバーにも「ジョンソンズ ブルー」
さわやかな青系の花を咲かせるジョンソンズブルーは、冷涼感をまとい初夏の花として最適な品種でしょう。中大輪で透明感ある花びらに、紫の筋がくっきりと見られる特徴があります。
5~6月の初夏に開花する品種であり、植え付け時期は2~6月です。10~11月の秋にかけて植えられる場合もあります。
日光がよく当たる場所を好みますが、夏場は半日陰の環境が向いているでしょう。花壇でも鉢植えでも栽培できます。地植えで育てるならグランドカバーとして栽培するのも手です。
カラーリーフが魅力「プラテンセ」
プラテンセ系と呼ばれる品種は、高く伸びた太めの茎の先に数輪ずつ花をつけます。花付きもよく、とても見ごたえのある品種です。
ゲラニウムの中ではやや遅咲きで、一季咲きです。
またほかの品種に比べ、肥沃で保水性のある環境を好みます。ただし高温多湿は苦手なので、暖地で育てる場合には水はけの良い土を用意してあげましょう。
写真のプラテンセ系「ダークレイター」という品種は、春から秋にかけて赤みがかった深緑の葉を楽しめます。
バラとの寄せ植えがおすすめ
イングリッシュガーデンをはじめナチュラルガーデンにもよく植えられている、万能なゲラニウム。
ゲラニウムは開花時期がバラと同じですので、バラと一緒に植えて楽しむのもおすすめです。
青いバラはなかなかありませんが、ゲラニウムは青い品種もあるので、ローズガーデンに植えれば良いアクセントになります。
小花のゲラニウムは、豪華な花をつけるバラの魅力をいっそう引き立ててくれるでしょう。
ゲラニウムの育て方【栽培環境】
ゲラニウムは比較的育てやすく、さほど手を入れなくても長い間花を咲かせる植物です。
家に迎える前に基本的な育て方や肥料の与え方、特に気を付けたい病害虫をチェックしておきましょう。
日当たり・風通し
ゲラニウムは品種を問わず、日当たりの良好な場所に植えて育てるのが基本です。
しかし暑さには弱いので、夏場は直接日光が当たらないような場所を選びます。落葉樹が庭にあるなら下に植えるのもよいでしょう。
湿気が多い場所も苦手とする性質があるため、風通しがよい環境も大切です。
用土
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暖かい地域の場合
粗くて空気を多く含んだ土を用意してあげましょう。鹿沼土:軽石:赤玉土=1:1:2になるようにします。
ゲラニウムは本来やや湿った重い土を好みますが、暑さの厳しい関東以西の低地でそのような土に植えると、根が酸素不足になり枯れやすくなってしまうのです。
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寒い地域の場合
寒冷地では、一度地に植えれば特に神経質にならなくてもすくすくと育ってくれます。赤玉土小粒:腐葉土=7:3になるようにしてあげるとよいでしょう。
あとは宿根草の基本的な世話のみで十分です。
ゲラニウムの育て方【植え付け・植え替え】
ここではゲラニウムの植え付けや植え替えについてかんたんに紹介します。元気な株を維持するには、定期的に株分けと植え替えを行ってあげましょう。
植え付け
植え付け時期は、新芽が出る前の2~3月頃です。
ゲラニウムは太い根を多く張るので、鉢植えの場合には大きな鉢を用意しましょう。
植え替え
地を這うように株が広がってきた場合は、株分けと植え替えをしましょう。
茎が伸びて倒れやすくならないように、支柱を立てるのがおすすめです。
▽株分けの時期や方法に関する詳しい記事はこちら
ゲラニウムの育て方【日々の手入れ】
ガーデニングには欠かせない日々のお手入れ。さほど難しくはありませんので、水やり・施肥・病害虫対策のポイントをおさえておきましょう。
水やり
水は常に与える必要はありません。乾燥しすぎて枯れないように、土が白く乾いたらたっぷりと水をやるのがポイントです。
施肥
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元肥
ゲラニウムは植えるときに元肥としてカリウムとリン酸を多く含む緩効性肥料を与えると、安定した成長に期待が持てます。
緩効性肥料は土の肥料濃度を急速に高めるのではなく、長期間かけて効果を持続させるものです。商品によりますが肥料効果は1~2カ月持続するでしょう。
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追肥
追肥の頻度は3~9月にかけて月に1回です。
液体肥料を約2000倍に薄めて与えましょう。夏場は株が弱っているため3000倍に薄めて施肥すると安心です。
水やりのタイミングで追肥しましょう。
病害虫
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害虫
ゲラニウムにつく害虫としては「アブラムシ」や「ヨトウムシ」が代表的です。
そのほか、ハダニも付くことがあります。
春から初夏にかけて被害が多くなるため、小まめに点検して害虫がいないか確認しましょう。
害虫が付着している場合は物理的に除去します。数が多い場合は駆除剤をまくとよいでしょう。
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病気
風通しが悪い場所で育てると、葉や茎に白いカビが生える「うどんこ病」を発症する恐れがあります。
病気には強い園芸植物ではありますが、カビに覆われると光合成がうまくできなくなってしまいます。
予防策としてはできるだけ通気性のよい場所で育て、葉が混み入ってきたら間引いてあげるとよいでしょう。
うどんこ病の症状が見られる葉は早めに取り除き、被害が広がらないようにします。
ゲラニウムの増やし方
ゲラニウムは、種まきや株分けで増やすことができます。それぞれ、やり方を見ていきましょう。
種まき
ゲラニウムの種まきは2~3月中旬に行います。
ゲラニウムの種は皮が厚いので、発芽しやすいように白い部分が見えるまでヤスリで削りましょう。
まく際は、あまり種が密集しないようにします。
上手く育てば2年ほどで花を咲かせることができますよ。
株分け
株分けとは、株を掘り起こして複数に切り分け、それぞれ別の場所に植え直すことです。ゲラニウムを増やせるだけでなく、株を若がえらせるきっかけにもなる作業です。
株分けの手順 |
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▽株分けの時期や方法に関する詳しい記事はこちら
ゲラニウムの美しい花姿を楽しもう
ゲラニウムは多年性の植物で、寒さに強いという特徴があります。寒冷地でも育てやすいため、イングリッシュガーデンではポピュラーな植物として知られています。
種類が豊富で流通量も多いので、比較的入手しやすいでしょう。青を基調とした色が多い花からは冷涼感が感じられ、初夏の庭を彩る植物としてぴったりです。
高温多湿に弱いので夏場は直射日光を避け、風通しがよい場所で育てます。
ぜひ春から夏にかけてゲラニウムの花姿を楽しんでみてはいかがでしょうか。
▽お庭を彩るおすすめの宿根草はこちら