初夏に花を咲かせるデルフィニウムは、涼しげな色合いが楽しめる花です。暑さには強くありませんが、環境や水やりに注意しながら育てると美しい景観を得られるでしょう。
デルフィニウムを健康に育てるポイントや、種まきと苗の植え付け方を紹介します。
初夏の花として人気のデルフィニウム
デルフィニウムは和名で「ヒエンソウ」とも呼ばれる多年草で、初夏の花として知られています。
青い涼しげな花を1つの茎にたくさん咲かせるのが特徴で、寒さに強い植物です。
植物名 | デルフィニウム |
学名 | Delphinium |
科名 / 属名 | キンポウゲ科デルフィニウム(オオヒエンソウ)属 |
原産地 | エラータム種:ヨーロッパのピレネー山脈~アルプス山脈、シベリア、中央アジア~中国西南部の山地
シネンセ種:シベリア~モンゴル、中国 |
開花期 | 5~6月 |
花の色 | 青、白、ピンク、紫など |
草丈 | 20~150cm |
特性 | 寒さに強く、暑さに弱い |
日本での夏越しは難しい
本来は宿根草であるデルフィニウムですが、日本の高温多湿な夏を乗り越えることは難しく、1年で枯れてしまうこともあります。そのため園芸店などでは一年草として売られていることも。
関東以南での夏越しは難しいですが、涼しい北海道では比較的容易に夏越しできますよ。
花の名前の由来
デルフィニウムという名前は、ギリシャ語でイルカを表す「delphis(デルフィス)」に由来します。これは、ふくらんだつぼみの形がイルカに似ていることから来ているのだそう。
和名の「大飛燕草(オオヒエンソウ)」は、開花してパッと薄い花びらを広げたデルフィニウムが、ツバメが空を飛ぶ姿に似ていることに由来します。
切り花としても人気
デルフィニウムは多くの場面で切り花としても親しまれており、最近では結婚式や葬儀の祭壇などに使われることもあります。
「青い花束」が欲しい人はたくさんいるのに「青い花」は意外と少ないので、青いデルフィニウムは人気なんですよ。
切り花として飾る時には、余分な葉っぱを落としてから、涼しく風の当たらない場所に置くとよいでしょう。
有毒なので誤って食べないように!
デルフィニウムにはアルカロイド系の一種「デルフィニン」が含まれています。触る分には問題ありませんが、食べると嘔吐や下痢を引き起こします。
犬猫などのペットを飼っている方、小さな子どもがいる方は誤飲に注意しましょう。
デルフィニウムの品種
デルフィニウムは、原種だけでも200種あると言われています。17世紀ごろから品種改良が盛んに行われ、今では1,000種を超える園芸品種が存在します。
デルフィニウムの代表的な3系統をはじめ、人気の品種を見ていきましょう。
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エラータム系
エラータム系は、背の高い茎に花を縦長に付けます。3系統の中で最も大きなタイプです。値段も大きさの分だけ高めで、大きなフラワーアレンジメントに使われます。写真のような「オーロラ」シリーズが有名です。
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シネンセ系
シネンセ系は、枝分かれした細い茎に繊細な花をまといます。花屋でもよく見られ、3系統の中で最も控えめサイズのタイプです。一般的なデルフィニウムのイメージは、シネンセ系を表します。
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ベラドンナ系
ベラドンナ系は、エラータム系とシネンセ系と交配して作られました。2つのタイプを合わせたようなサイズ・見た目で、幅広い価格の品種が出回っています。
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チアブルー
デルフィニウムのハイブリッド種ですが、ほかのデルフィニウムに見られる、花弁の後ろ側に突き出た距(きょ)という部分がないのが特徴です。花が上向きに咲き、草丈は1mほどになります。明るい水色の花を咲かせます。
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ミントブルー
デルフィニウムのハイブリッド種です。チアブルーと同じように、花弁の後ろ側に突き出た距(きょ)という部分がありません。花が上向きに咲き、草丈は1mほどになります。鮮やかでくっきりとした青い花を咲かせます。
デルフィニウムの花言葉
その可愛らしい見た目から、プレゼントにもよく選ばれるデルフィニウム。選ぶ立場からすると、花言葉が気になる人もいますよね。
ここでは、デルフィニウムの花言葉をご紹介します。
デルフィニウム全般の花言葉は「清明」「高貴」です。爽やかな花色や、凛とした花姿から付けられたのでしょう。
色別の花言葉は以下のとおりです。
青・水色のデルフィニウムの花言葉 | 「あなたを幸せにします」 |
白いデルフィニウムの花言葉 | 「誰もがあなたを褒める」「可憐な瞳」 |
紫のデルフィニウムの花言葉 | 「高貴」「尊大」 |
ピンクのデルフィニウムの花言葉 | 「自由な暮らし」「気まぐれ」「心変わり」「移り気」 |
黄色いデルフィニウムの花言葉 | 「移り気」 |
デルフィニウムの育て方【用土・日当たり】
デルフィニウムを育てるためには、水はけや日当たりが大切です。まずは栽培環境を整えましょう。
水はけのよい土が適している
デルフィニウムを枯らさずにきれいな花を楽しむには、土選びが重要です。ほどよく保水性がありながらも、水はけのよい用土を選びましょう。
通気性がよく呼吸のしやすい土であれば、なお適しています。市販の培養土を使っても問題ありません。
自分でブレンドするなら赤土玉と腐葉土を7:3で混ぜ、少量の牛ふんも与えるとよいでしょう。
赤土玉と小石を混ぜて通気性をよくすると、よりデルフィニウムを育てやすい土になります。
日当たりと風通しも大切
デルフィニウムは暑さに弱く暖かい土地での夏越えが難しい花ですが、涼しいエリアだと何シーズンか楽しめる可能性があります。
夏場は直射日光を避け、風通しがよい場所で育てましょう。
また夏場は光合成をしないため、与える水も控えめにするのが夏越しのポイントです。
ただ暑さが厳しくない季節は、できるだけ日当たりのよい場所に置かなければなりません。デルフィニウムは日の光が足りないと茎を伸ばしてしまい、美しいバランスを保てなくなります。
デルフィニウムの育て方【種まき・苗の植え付け】
デルフィニウムを育てる際は、種まきから育てる方法と苗から育てる方法があります。
初心者の方は、ポット苗を購入して育てるのがかんたんでおすすめです。
種まきは寒冷地なら春・温暖地なら秋
種はホームセンターや園芸店で入手できます。ネット通販でも出回っているため、近くの店で売っていなければ目当ての品種名で検索してみましょう。
種まきは春か秋のどちらかに行います。秋にまいた種は、翌年の初夏あたりに花を咲かせてくれますよ。
適期 | 寒冷地:春まき(1月中旬~2月)
温暖地:秋まき(9月中旬~10月中旬) |
適温 | 15~20℃(25℃を超えると発芽率や生育が悪くなる) |
手順 |
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デルフィニウムはこぼれ種で育つ?
日本では多くが1年で枯れてしまうデルフィニウムですが、こぼれ種で増やすことができれば毎年花を楽しむことができますよね。
しかし残念ながら、デルフィニウムのこぼれ種はあまり発芽率がよくありません。
「こぼれ種で増える花を育てたい」という方は、ジギタリスやネモフィラがおすすめです。
ジギタリスは花姿がデルフィニウムと似ているので、草丈が高く見ごたえのある花を植えたいと考えている方にはぴったりな植物といえます。
ネモフィラは青い花がとてもかわいいので、お庭に青がほしいと考えている方はぜひ検討してみてくださいね。
苗の植え付けは秋がおすすめ
春または秋にポット苗を購入して植え付けます。
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春の植え付け
春に出回る苗は、つぼみがついた状態で売られています。3~4月の十分に暖かくなった時期に植えましょう。植え付け後はたっぷりと水やりをします。
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秋の植え付け
秋に出回る苗は、気温が下がる10月が植え付けの適期です。まだ暖かい9月に植えてしまうと間延びして不格好な草姿になってしまうので気をつけましょう。
- デルフィニウムは後から別の鉢に植え替えると、弱りやすくなってしまいます。系統が分かる場合は、エラータム系なら30cmほど・シネンセ系なら20cmほど間を開けて植え付けるのが基本です。
- 病気をできるだけ防ぐためにも、古い土は使わず新しい用土を用意しましょう。土に苗の根をなじませるように植え付けます。土に緩効性の肥料を混ぜ込んでおくのが、育ちをよくするポイントです。
- 植え付けた後は水をたっぷりと与えます。寒い土地だと霜は天敵になるため、できるだけ霜の付かない場所に置きましょう。
デルフィニウムの育て方【日々の管理】
デルフィニウムをうまく育てるためには、水やりや病害虫の対策といった日々のお手入れも重要です。
気をつけるべきポイントをおさえておきましょう。
水のやり方は季節によって変わる
デルフィニウムは夏と冬で、推奨されている水やりの頻度が異なります。
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夏は水やり不要
夏は基本的に水やりはいりません。デルフィニウムは暑さに弱いため、夏場はほとんど枯れてしまうからです。
夏越しさせたい場合も日陰に移動させて風通しを重視しますが、水やりは必要ありません。
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冬はたっぷりと
冬はデルフィニウムの成長期です。日当たりがよい場所で育て、土が乾燥してからたっぷりと水をやります。土の色が乾いて白っぽくなったら、鉢やプランターの下から水が流れ出る程度に与えましょう。
肥料は植え付け時と3月
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元肥(もとごえ)
緩効性化成肥料をあらかじめ土に混ぜておきましょう。市販の草花用培養土を使う場合にはすでに肥料が配合されているので、元肥を施す必要はありません。
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追肥
葉が付き始める3月ごろに、元肥であげたものと同じものを少量与えます。鉢植えやプランター植えなら液体肥料をあげてもよいでしょう。
ナメクジやうどんこ病に注意
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害虫
デルフィニウムの栽培過程でナメクジが付いたら、素早く駆除しなければなりません。そのまま放置しておくと、食害に遭ってしまいます。
ヨトウムシが付着する場合もあり、定期的な苗の確認が必要です。見つけ次第すぐに取り除きましょう。
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病気
葉や茎の表面に白いカビが生える「うどんこ病」も、デルフィニウムの栽培では注意したい病気です。葉の表面が覆われると光合成を阻害し、成長が妨げられてしまいます。
うどんこ病を予防するためにも、デルフィニウムは日当たりと風通しのよい場所で育てましょう。
デルフィニウムの育て方【花が咲いたら】
デルフィニウムはなんといっても存在感のある花が見どころ。花が咲いたら、適切に手入れをしてあげましょう。
上手くいけば、1シーズンに複数回美しい花が見られますよ。
支柱立て
ものによっては草丈が2ⅿ以上にもなるエラータム系のデルフィニウムは、花の重みで花茎が倒れやすくなります。
背の高い品種を育てるときは支柱を立てて、デルフィニウムを支えてあげましょう。
切り戻し
シーズンで最初に咲いた花が終わった後は、根本から茎を切り落としましょう。根元の近くから立ち上がっている茎も数本残して切り取ります。
剪定から2カ月ほどすれば、2回目の開花を楽しむことができます。暖かい土地であれば1~2回、寒い土地であれば3~4回花が咲くでしょう。
切り戻しをしないと伸びた茎に養分が取られて、次の花がよく育ちません。1シーズンで何回も花姿を楽しみたいなら、枯れるごとに剪定をしましょう。
育て方を押さえてデルフィニウムを楽しもう
デルフィニウムは春から初夏にかけて咲く花です。見た目の美しさや種類の豊富さから、ガーデニングで人気のある植物として知られています。
育てるときは風通しと日当たりがよい場所に植えましょう。水やりは頻繁にする必要はなく、土が乾燥してからたっぷりと与えます。
夏場は休眠期で光合成をしないため、枯れないように直射日光を避けて涼しい場所に置くのがポイントです。
種まき・苗の植え付け時期は春か秋です。育てるポイントを押さえ、デルフィニウムの花姿を楽しみましょう。