クロガネモチは日本庭園や造園景観で人気の高い常緑樹です。
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秋から冬にかけては赤い小さな実をつける姿が可愛らしく、縁起の良い庭木としても有名ですよね。
クロガネモチは他の庭木と比べて生育旺盛なため、適度に剪定をする必要があります。
この記事では剪定の時期や方法について解説しています。
クロガネモチの剪定時期は7月と9~10月
クロガネモチの剪定は7月をメインに、必要に応じて9~11月にも行います。
7月:樹形を乱す枝を切り、全体を整える
クロガネモチの新芽が伸びきり、開花も終わった7月は、剪定に最適な時期です。新芽の生育が落ち着いているため、この時期に剪定すれば整った樹形を維持しやすいでしょう。
新芽が勢い良く伸びるため、枝を強めに切り詰めたり刈り込んだりしても問題ありません。また、混みあった枝を間引くことで木の内部にも日光が入り、樹木の生長を促進できます。
9~10月:不要な枝を間引く
クロガネモチは寒さに強くないため、冬季の剪定は避けます。生育の悪い枝や絡みあっている枝などが気になる場合は、9~10月に軽い剪定を行いましょう。
10~12月にはクロガネモチの赤い実がついてくるので、実つきの良い枝を避けて剪定すると綺麗な実を長く楽しめます。
クロガネモチの剪定方法
クロガネモチは主に「透かし剪定」を行って整えつつ、樹高を調整するために「芯止め」を行います。
基本は「透かし剪定」で樹形を整える
透かし剪定は不要な枝や混み合った枝を間引いて、樹冠内部の日当たりや風通しをよくする方法です。
まずは枯れた枝や、以下のような不要な枝を優先して根元から切り落とします。
不要枝の種類 | 不要枝の特徴 |
---|---|
ふところ枝 | 樹冠の内部で生えた細かく小さな枝。 |
かんぬき枝 | 左右の枝が主幹を貫いて一直線になるように生えたもの。 |
逆さ枝 | 幹に向かって伸びた枝。 |
立ち枝 | 真上に向かって伸びた枝。 |
下り枝 | 下に向かって伸びた枝。 |
絡み枝 | まっすぐ伸びず、他の枝に絡むように伸びた枝。 |
徒長枝 | 極端に勢いよく伸びた枝。上に向かって伸びることが多く、ほとんど花芽をつけない。 |
車枝 | 幹の同じ高さから4本以上の枝が水平に伸びたもの。 |
平行枝 | 同じ方向に伸びる上下2本の枝。 |
胴吹き枝 | 幹から新たに直接伸び出した枝。 |
ひこばえ | 地際から主幹の隣に新しく伸びてくる枝。 |
不要枝の中での剪定の優先順位は以下の通りです。
- 逆さ枝・立ち枝・下り枝・絡み枝・徒長枝・車枝
- 樹形を乱す可能性が高いので、優先して切り落とす
- 平行枝・胴吹き枝
- 樹形を乱す可能性が比較的低いので、他の枝とのバランスを見て切るか決める
- ひこばえ
- 株立ちの幹を更新する場合は残し、それ以外の場合は切り取る
不要な枝を一通り切り落としたら、木全体のバランスを見ながら、混み合った部分を間引いて枝の数を減らしていきます。具体的なバランスのとり方は以下が目安です。
- 主幹から四方にバランスよく枝が広がった状態にする
- 枝と枝の間隔をどこから見てもなるべく均等にする
「遠くから眺めたときに、枝の密度が均等になっているか」を確認しながら進めましょう。
太い枝を剪定するときのコツ
強剪定は太い枝を切り落としたり、たくさんの枝を切る大掛かりな剪定方法で数年に一度、9月に行うのがおすすめです。
クロガネモチは生育旺盛な樹木で、そのままにしていくと10m以上まで成長するため、強剪定で樹高をコントロールする必要があります。
また、古い枝や不要枝ばかりになったときにも行うと良いでしょう。
- 太い枝はふくらみを残しつつ、付け根から少し離れた場所を切る
- 枝と幹の境目は切り落とさない(木の傷を癒す栄養が詰まっている場所だから)
- 枝おろし(太い枝を少しずつ切る)を行う
- 剪定後は癒合剤を使用して切り口を保護する
大きくなりすぎたクロガネモチは「芯止め」をする
クロガネモチが大きくなりすぎた場合に強剪定を行うことが多いですが、ただ強剪定をするだけではなく主幹(一番太い幹)を切り詰める必要があります。
クロガネモチの成長点である主幹を適切な高さで切り戻すことで、全体的な高さを低く抑えつつ、健康的な新たな枝の成長を促すことができます。
しかし、かなりの高所作業になるため自分で剪定するのはおすすめできません。
クロガネモチを剪定するときの注意点
クロガネモチを剪定するときに必ず注意してほしい点が2つあります。
冬の剪定は避ける
クロガネモチにとって冬の剪定はダメージがとても大きいです。
元々寒さに弱い樹木なので、低温期は回復力が弱く、剪定による傷が治癒しにくいため、樹木に大きなストレスを与えてしまいます。
また、凍傷や病気のリスクを高めるので冬の剪定は行わないようにしましょう。
こまめに剪定を行う
クロガネモチは、放っておくと樹高が10mを超える生育旺盛な樹木です。
大きな枝を一度に切り取るのではなく、少しずつ整えていくことで樹形を維持することができます。
年に1-2回、枝の混み具合や方向性を確認しながら必要以上に枝を切り詰めすぎないよう剪定していきましょう。
クロガネモチの剪定に必要な道具
クロガネモチの剪定に必要な道具をそれぞれ紹介します。
どれも一般的な樹木の剪定に使われることが多い道具なので、一通り揃えておくと安心です。
剪定用手袋
剪定用の手袋を準備しておきましょう。
普通の軍手ですと剪定中にトゲやささくれが刺さってケガをする場合があります。
手のひら側が樹脂コーティングになっているものがおすすめです。
剪定バサミ
クロガネモチの剪定時に一番使うのが剪定バサミです。
枝や植物の枝を切断するための専用ハサミで、片刃が鋭利な刃物、もう片方の刃は平らな受け刃になっています。
植物の枝を傷つけることなく、きれいに切断することができ、高炭素鋼やステンレス鋼などで作られているので長期間、切れ味を保つことができます。
サイズは色々あるので手の大きさ、左手用など自分にあったものを選びましょう。
植木バサミ
普通のハサミと同じような形をしています。
刃先が細く、小回りが利くため、込み入ったところにも入りやすいです。
細かい枝や最後の仕上げに使用します。
剪定ノコギリ
剪定バサミでは切れないような直径2cm以上の太さの枝を切るのに使います。
通常の木工用ノコギリとは異なり、刃が引く方向にのみ鋭利に切れる一方向切断刃が特徴です。
脚立
脚立は背の高い樹木を剪定するときに使用します。
剪定では幹や枝の隙間に足をねじ込んで脚立を立てることが多いので、三脚を使いましょう。
脚立を使う際には、以下の注意点を守って使用してください。
- 登る前に調節器具がロックされていることを確認する
- 一番上の段に載って作業しない
- 上を向いて作業しない
- 悪天候下では使わない
癒合剤
太い枝の剪定後の切り口に塗ることで病気や菌から守ることができます。
保護剤を塗ることを忘れると病気や菌が侵入し、多大なダメージを受ける可能性があるので、清潔なハケ等で塗りましょう。
クロガネモチのお手入れ方法
クロガネモチは比較的育てやすい樹木ですが、適切な管理を行うとより見た目を良く保つことができます。
また、可愛らしい赤い実を楽しみたい場合も気を付けないといけない点があります。
実を楽しむなら雌株を植え付ける
クロガネモチは雌雄異株の樹木で、赤い実をつけるためには雄株と雌株の両方が必要です。
通常、雄株は小さな花をつけ、その後、雌株に花粉を運び、雌株は秋から冬にかけて赤い実をつけます。
園芸店等で売られているクロガネモチの苗は雄株に雌株の枝をついでいるものが多いので、確認してから購入するようにしてくださいね。
水やりと肥料は適切に管理する
クロガネモチの健康的な成長には、適切な水分管理と肥料が欠かせません。
水やり
- 乾燥に弱いため、幼木期は特にこまめな水やりが必要
- 成木になると、ある程度乾燥に強くなるが長期間の乾燥は避ける
- 夏の暑い時期は、週に2-3回程度の水やりを行う
- 土の表面が乾いたら水を与え、根元までしっかりと浸透させる
肥料管理
- 春と秋の年2回、緩効性の有機肥料を施す
- 窒素、リン酸、カリウムをバランス良く含む肥料を選ぶ
- 過剰な肥料は根を傷めるので、推奨量を守る
- 施肥は樹木の根元から少し離れた根に直接触れない場所に撒く
クロガネモチの病気・害虫対策
クロガネモチはほとんど病気にかかりませんが、注意する病害虫もあります。
定期的に枝葉の状態をチェックし、早期に病気や害虫を発見しましょう。
害虫:ツノロウムシ
ツノロウムシは体長1-2mmの褐色から黒色の小さな昆虫で、主に葉の裏側や枝に寄生します。
非常に繁殖力が強く短期間で大量発生し、吸汁行動で葉の栄養を吸収して、葉に黄色や褐色の斑点を作ります。
また、排出する蜜が葉の表面に付着することですす病の原因にもるので早期発見できるよう日々チェックが欠かせません。
症状
- 葉が変色する
- 葉が萎縮する
- 樹勢が低下する
- 新芽の生育阻害が起きる
対策方法
- 早期発見できるよう日々チェックする
- 手で取り除くか、高圧水で洗い流す
- 大量発生したら天然由来の殺虫剤を使用する
病気:黒斑病
黒斑病は真菌性の葉の病気で、高温多湿の環境で特に蔓延しやすく、梅雨から夏にかけて多く発生します。
症状
- 葉に黒褐色の円形または不整形の斑点が発生する
- 斑点は徐々に拡大し、葉全体に広がる
- 重度の場合、葉が落下する
- 樹木の光合成能力が著しく低下する
予防と対策
- 風通しを良くする
- 過度の湿気を避ける
- 罹患した葉はこまめに除去する
- 銅剤などの殺菌剤を使用する
病気:斑点病
斑点病は黒斑病と似ている真菌性病害で、斑点の形状や色に違いがあります。
特徴
- 葉に小さな円形または角状の斑点が現れる
- 斑点は灰色がかった茶色や褐色で徐々に広がる
- 湿度が高く、日光が不足している環境で発生しやすい
対策方法
- 適切な剪定で通気性を改善する
- 罹患した葉を速やかに除去する
- 殺菌剤を適切に使用する
- 過度の水やりを避ける
病気:褐斑(かっぱん)病
褐斑病は葉の組織に褐色の斑点を引き起こす真菌性病害です。
症状
- 葉に褐色の不整形な斑点が現れる
- 斑点は中心部が褐色、周囲が黄色く縁取られている
- 進行すると葉が枯れ、落下する
- 樹木の全体的な活力が低下する
予防と治療
- 定期的に樹木を点検する
- 罹患した枝や葉を速やかに除去する
- 殺菌剤を使用する
- 適切な施肥と水やりを行う
- ストレスのない環境づくりをする
クロガネモチの剪定はプロに依頼するのもおすすめ
「自分でうまく剪定する自信がない」「忙しくて定期的に剪定する時間がとれない」という方は、植木屋や庭師と呼ばれる剪定のプロに依頼するのもおすすめです。
庭木の剪定料金相場
単価制で依頼した場合、一般的な庭木の剪定料金の相場は以下の通りです。
庭木の高さ | 1本あたりの料金相場 | 剪定ゴミの回収料金 |
---|---|---|
1m以下 | 950~1,200円 | 950~1,200円 |
1~2m以下 | 1,900~2,400円 | 950~1,200円 |
2~3m以下 | 2,900~3,600円 | 950~1,200円 |
3~4m以下 | 4,200~5,400円 | 1,400~1,800円 |
4~5m以下 | 5,700~7,200円 | 1,900~2,400円 |
5~6m以下 | 8,600~10,800円 | 2,900~3,600円 |
6~7m以下 | 12,400~15,600円 | 3,800~4,800円 |
7~8m以下 | 16,200~20,400円 | 5,000~6,000円 |
※ミツモアの過去3年間(2022年1月1日~2024年12月31日)の見積もり依頼データから算出
庭木の剪定をプロに依頼する流れ
庭木の剪定をプロに依頼するには、まず自宅に訪問してくれる近くの庭師を探す必要があります。
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