赤い実と深い緑の葉が特徴的な南天の木は、日本で古くから庭木として親しまれています。


初心者でも育てやすい木ですが、枝が伸びて樹形を崩したり根元が混み合ったりするため剪定が必要です。剪定の基本から手順・ポイントまで解説します。
南天の剪定時期は3~4月と5~6月
南天の木は、開花期前~花芽の形成期前である3月下旬~4月と、5月中旬~6月に剪定をします。南天はひこばえが生えやすく、また枝も上に伸びやすいため、樹形を乱す枝はこの時期に切り落としましょう。常緑樹であり寒さに弱いので、気温が低い時期の剪定は避けます。
花芽をつけ始める前に剪定を完了することで、木の内部に風や日光が良く入り込み、花芽が育ちやすくなります。
南天は赤色の実を楽しむのが目的の庭木なので、6~7月に花が咲いた後には、実がなるまで剪定を行いません。
11~12月ごろに実が付きますが、見ごろの枝は鑑賞用や装飾用として切り取っても構いません。
南天の基本的な剪定方法
南天は以下の手順で剪定を行います。
南天の剪定で主に切っておきたい枝は、「前年実をつけた枝」と「ひこばえ」です。
①前年に実をつけた枝や混み合った枝を切る
南天は、前の冬に実がついた枝にそのあと2~3年は実がなりません。前年に実がついた枝を選んで、根元から切って間引くか、外芽の上で切り戻しましょう。
前の年の花が咲き終えた直後に新しいつぼみが付き、花の後になる実の場所も毎年変わります。次の年に違う場所に付く実に十分な栄養を届けるためには、養分を消費する余計な枝を切り落とす必要があるのです。
そのほか、以下のような生え方をしている不要な枝を切り落とします。
不要枝の種類 | 不要枝の特徴 |
---|---|
ふところ枝 | 樹冠の内部で生えた細かく小さな枝。 |
かんぬき枝 | 左右の枝が主幹を貫いて一直線になるように生えたもの。 |
逆さ枝 | 幹に向かって伸びた枝。 |
立ち枝 | 真上に向かって伸びた枝。 |
下り枝 | 下に向かって伸びた枝。 |
絡み枝 | まっすぐ伸びず、他の枝に絡むように伸びた枝。 |
徒長枝 | 極端に勢いよく伸びた枝。上に向かって伸びることが多く、ほとんど花芽をつけない。 |
車枝 | 幹の同じ高さから4本以上の枝が水平に伸びたもの。 |
平行枝 | 同じ方向に伸びる上下2本の枝。 |
胴吹き枝 | 幹から新たに直接伸び出した枝。 |
ひこばえ | 地際から主幹の隣に新しく伸びてくる枝。 |
不要枝の中での剪定の優先順位は以下の通りです。
- 逆さ枝・立ち枝・下り枝・絡み枝・徒長枝・車枝
- 樹形を乱す可能性が高いので、優先して切り落とす
- 平行枝・胴吹き枝
- 樹形を乱す可能性が比較的低いので、他の枝とのバランスを見て切るか決める
- ひこばえ
- 株立ちの幹を更新する場合は残し、それ以外の場合は切り取る
南天の花芽は前年の7~8月にできるので、花芽の位置を確認しながら剪定できます。丸くふくらんだ頂芽を残しながら枝を切るようにします。
よく伸び、前年に実がつかなかった枝には、今年咲く花芽がついている可能性があるので、なるべく残しましょう。
②葉刈りをする
先端に花芽がついた枝の葉をすべて切り取ると、新しい葉が出てきて見た目が整います。葉刈りは新芽が伸びてくる前の3月下旬~4月上旬に行いましょう。
③ひこばえを切る
南天は生長すると、地際からひこばえがたくさん出てきて混み合いやすい木です。そのままにしておくと株の根元の風通しや日当たりが悪くなり、養分も分散してしまいます。
株立ちの主枝を5~7本に保つようにして、それ以外に新しく伸びてきたひこばえは剪定時期のたびに切り取りましょう。
④株を根元から切って更新する(古くなったら)
大きくなった南天の株をコンパクトに仕立て直したい場合は、複数本立ち上がった幹をすべて、一番下にある節の上で切りましょう。
このとき数本残すと、養分が分散して新しい枝が出にくくなります。一気に切り戻すのは勇気が必要かもしれませんが、すべての幹を切るようにします。
切ってから株が再び十分に生長するまで、2年ほどは花や実がつきません。
南天を美しい樹形に剪定するポイント
南天をうまく剪定するために押さえておきたいポイントがあります。優先して切る枝の選び方や整形のコツをチェックしましょう。自力で剪定するのが難しい場合は、プロに頼むのも一つの手です。
枯れた枝は優先して剪定する
枯れた枝でも樹木に付いたままだと、他の枝に届けたい栄養が取られてしまいます。残っていると見栄えも悪くなるため、枯れた枝や古い枝は優先して切り落としましょう。剪定をせずにいると風通しや日当たりが悪くなり、病害虫を引き寄せかねません。
枯れ枝以外にも注意したいのが「胴吹き」「ヒコバエ」「懐枝」です。胴吹きは木の幹から・ヒコバエは根元から・懐枝は幹の基部から生えています。
どの枝も見栄えを悪くするだけでなく、必要な養分を取ってしまうため剪定が必要です。南天は強めに剪定してもまた新しい芽が出てきますので、思い切って根元から不要な枝を切り落としましょう。
高低差を付ける
南天は背が低いため手が届きやすく、形を工夫しようと過剰に手を加えてしまう場合も多いでしょう。しかし本来の持ち味を生かした美しさに仕上げるには、枝の長さをそろえすぎないのがポイントです。
南天を正面から見たとき奥側の枝はやや高めに、手前側の枝は低めに剪定すると見栄えがよくなります。高低差を付けると立体感が生まれ、より自然な仕上がりになるのです。
また植えている場所によっては、樹木の左右に等しく日が当たるわけではありません。成長する差を見極めて剪定できると上級レベルです。
南天の剪定に必要な道具
自分で庭木を剪定するときは、最低限以下の道具を用意しておきましょう。
道具 | 用途 |
---|---|
剪定バサミ![]()
|
枝を切るときにメインで使用する(直径1.5cm程度までの枝が目安) |
植木バサミ |
特に細かい枝の切断に使用する |
剪定ノコギリ![]() |
剪定バサミでは切りづらい太い枝の切断に使用する |
園芸用の脚立![]() |
高い位置の枝を切るときに使用する 屋外の凸凹がある地面でも安定する三脚のものを選ぶ |
園芸用の手袋![]() |
作業中の手を守る 軍手だと枝やトゲが貫通するので、樹脂コーティングされたものがおすすめ |
癒合剤![]() |
剪定後の切り口の回復を促し、病原菌の侵入を防ぐために塗る |
他にも、切った枝を集める熊手やホウキがあると便利です。
縁起物とされている南天は剪定して大丈夫?
南天は名前の読み方から「難転=難を転じる」に通ずるとして、古くから縁起物として親しまれてきました。同時期に花を咲かせる「福寿草」と組み合わせると「難を転じて福をなす」という意味になるため、一緒に飾られるケースが多いのも特徴です。
風水でも活用されることが多く邪気の通り道である「鬼門」には白南天が、「裏鬼門」には赤南天が植えられるのが一般的でした。江戸時代には魔よけや火災よけとしても南天が植えられ、その風習は現在も日本各地に残っています。
鬼門に植えた南天を剪定したり、取り除いたりすることで、災いが起こるかもと、こうした南天を切ることに不安を感じる人もいます。
しかしながら、剪定は南天を健康で美しく保つための手段です。剪定は植物のお手入れを目的として行われるものであり、南天の健全な状態を維持するために行われることから、ポジティブに捉えましょう。
南天を剪定する必要性
庭を鮮やかな赤い実と深い緑色の葉で彩る南天は、生命力が高く初心者でも育てやすい樹木です。しかし手入れを怠ると成長スピードの速さから、枝が混み合ってしまい枯れる原因となります。
鑑賞しやすい高さで管理が可能
南天は年間平均で10〜20センチメートル程度しか成長しないため、定期的な剪定によって理想的な高さに維持することができます。例えば、高さ1.5メートル以下で管理したい場合、毎年数センチの剪定を行うことで、高さをキープできます。
通気性と日当たりの向上&防虫が可能
剪定によって南天の葉や枝を整理することで、通気性と日当たりがよくなります。
例えば、枝同士が交差して密集している部分を剪定することで、空間を確保し、湿度が下がる環境を作り出します。これにより、葉の乾燥や病害虫の発生リスクが低減します。
株の更新によって寿命がのびる
剪定は南天の寿命を延ばすために大事な手法です。老枝の剪定や新しい枝の促進を図り、南天の寿命を通常よりも10〜20年程度延ばすことが可能です。
南天の実つきが向上する
剪定によって南天の実つきが向上します。例えば、実がつきにくい内部の枝を剪定することで、外部の枝に十分な栄養や日光が供給され、実がより豊富に成長します。
これにより、見た目の美しさだけでなく、実を楽しむことができます。
南天を挿し木で増やす方法
南天を増やしたい場合、種まきだけでなく挿し木も有効な方法です。南天の剪定した枝を利用することで、簡単に増やすことができます。以下が南天の挿し木の手順です。
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このように剪定した枝を再利用することで、新しい植物を手軽に育てることができます。
南天の病気・害虫対策
南天の病気や病害虫に対する早期発見と定期的なケアが、健康な植物の維持に重要です。
南天の代表的な病気と病害虫、被害例、対策は以下の通りです。
すす病(すすの病)
葉に黒い粉状のすす状の物質が付着し、葉が黒ずんで見えます。これはカビの一種が原因で、葉の光合成が妨げられることがあり、重症化すると葉が枯れることもあります。
対策としては以下の通りです。
- 感染した葉を早めに取り除き、感染の広がりを防ぐ。
- 良好な通気性を確保するために剪定を行い、植物周囲の湿度を下げる。
- 空気中の湿度を低減するために換気を行う。
- 予防的に防カビ剤を使用することで感染リスクを低減する。
カイガラムシ(病害虫)
葉の裏側に発生し、吸汁して葉がくぼみ、黄色く変色し、成長が遅くなることがあります。大量発生すると葉が枯れてしまうこともあります。
対策としては以下の通りです。
- 天敵(レディバグなど)を利用してカイガラムシの天敵を導入し、バランスを保つ。
- 葉を水で洗浄したり、歯ブラシなどでカイガラムシを除去する。
- 葉の裏側につくカイガラムシを牛乳や石鹸水スプレーで駆除する。
- 必要に応じて農薬を使用するが、自然のバランスを崩さないよう注意する。
南天の剪定はプロに依頼するのもおすすめ
「自分でうまく剪定する自信がない」「忙しくて定期的に剪定する時間がとれない」という方は、植木屋や庭師と呼ばれる剪定のプロに依頼するのもおすすめです。
庭木の剪定料金相場
単価制で依頼した場合、一般的な庭木の剪定料金の相場は以下の通りです。庭に植えている南天の場合、1~3mであることが多いので、1本あたり1,900~3,600円が目安です。
庭木の高さ | 1本あたりの料金相場 | 剪定ゴミの回収料金 |
---|---|---|
1m以下 | 950~1,200円 | 950~1,200円 |
1~2m以下 | 1,900~2,400円 | 950~1,200円 |
2~3m以下 | 2,900~3,600円 | 950~1,200円 |
3~4m以下 | 4,200~5,400円 | 1,400~1,800円 |
4~5m以下 | 5,700~7,200円 | 1,900~2,400円 |
5~6m以下 | 8,600~10,800円 | 2,900~3,600円 |
6~7m以下 | 12,400~15,600円 | 3,800~4,800円 |
7~8m以下 | 16,200~20,400円 | 5,000~6,000円 |
※ミツモアの過去3年間(2022年1月1日~2024年12月31日)の見積もり依頼データから算出
庭木の剪定をプロに依頼する流れ
庭木の剪定をプロに依頼するには、まず自宅に訪問してくれる近くの庭師を探す必要があります。
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