赤い実と深い緑の葉が特徴的な南天の木は、日本で古くから庭木として親しまれています。
初心者でも育てやすい木ですが、枝が伸びて樹形を崩したり根元が混み合ったりするため剪定が必要です。剪定の基本から手順・ポイントまで解説します。
南天の剪定時期は2月から4月
南天を丈夫に育てるためには栄養の流れを滞らせないよう、定期的な剪定(せんてい)が必要です。
南天の枝を剪定する作業は2〜4月に行うのが一般的です。赤い実が落ちた時期に行うと覚えておくとよいでしょう。花を咲かせる前の5〜6月頃の剪定でも遅くはありません。
ただし花が咲き終わった後の枝は実を付ける準備をしており、切ってしまうと実の時期を楽しめなくなります。開花後の時期は剪定を控えましょう。
南天は生命力が強く枝がよく伸びます。手入れを怠っているとあっという間に樹形が崩れてしまうため、毎年欠かさず剪定するのが無難です。
南天の剪定に必要な道具
初心者でも育てやすいのが南天の魅力ですが、その分手入れをしないと伸びた枝が根元付近に密集してしまいます。
剪定の際に必要な道具は以下の通りです。
- 剪定バサミ
- 刈り込みバサミ
剪定バサミは、細い枝や葉を細かく刈り取るための道具です。小さな刃が両側についており、細かな剪定作業に適しています。
南天の成長を促進したり、不要な部分を取り除いたりするのに適しています。
刈り込みバサミは、太い枝や茂みを刈り込むための道具です。一般的に大きな刃が一方向に開閉し、大胆な剪定作業に使用されます。
太い枝や茂みを整えたり、植物の形を整えたりする力強い切断作業に適しています。
南天の剪定方法
南天を剪定するときは目的に応じて、主に二つの切り方を使い分けます。どのような手順で進めればよいのでしょうか?それぞれの目的も押さえながら剪定方法を確認しましょう。
養分を行き渡らせる「間引き剪定」
「間引き剪定」とは不要な枝を切り落とし、必要な枝へ栄養が行き渡るようにする作業です。南天の場合はその年に実を付けた枝に対して行います。間引き剪定の手順は以下の通りです。
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基本は実を付けていた枝や枯れてしまっている枝を切り落とします。新しい枝はこれから花や実を付けるため対象外ですが、明らかに弱々しい様子であれば他の元気な枝へ栄養が行くように切り落としましょう。
枝が混み合う根元から剪定
南天の剪定では枝が混み合いやすい根元から切るのが基本です。成長がよく初心者でも育てやすいのが南天の魅力ですが、その分手入れをしないと伸びた枝が根元付近に密集してしまいます。
混んだ枝を放置していると、風通しと日当たりが悪くなるのがデメリットです。樹木に害虫が発生したり病気になったりするなど、木の健康に悪い影響が出てしまいます。
せっかく育てた木を切るのは寂しい思いがあるかもしれませんが、樹木の成長のために不要な枝は根元から切り落としましょう。
その年に実を付けた枝を切る
根元付近の混み合いをスッキリさせたら、その年に実を付けた枝も切り落とします。南天は一度実を付けた部分は2〜3年実らないためです。
前の年の花が咲き終えた直後に新しいつぼみが付き、花の後になる実の場所も毎年変わります。次の年に違う場所に付く実に十分な栄養を届けるためには、養分を消費する余計な枝を切り落とす必要があるのです。
実が付ききった枝は見頃のうちに剪定するとよいでしょう。切り落とす作業を最低限にできるだけでなく、室内の装飾として飾れる枝を採取できます。
木を低くする「切り戻し剪定」
「切り戻し剪定」は南天の木が伸びすぎたときに、低くするために幹を切る作業です。南天は生命力が強いため幹をカットしても生育に問題はありません。手順は次の通りです。
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飛び出して樹形を崩している枝があれば、一緒に切り落としましょう。切り戻し剪定には樹形を整えるとともに、新芽の成長を促す目的があります。好みの高さになる位置で幹を切れば、健やかな成長にも効果的です。
南天を剪定するメリット
庭を鮮やかな赤い実と深い緑色の葉で彩る南天は、生命力が高く初心者でも育てやすい樹木です。しかし手入れを怠ると成長スピードの速さから、枝が混み合ってしまい枯れる原因となります。
鑑賞しやすい高さで管理が可能
南天は年間平均で10〜20センチメートル程度しか成長しないため、定期的な剪定によって理想的な高さに維持することができます。例えば、高さ1.5メートル以下で管理したい場合、毎年数センチの剪定を行うことで、高さをキープできます。
通気性と日当たりの向上&防虫が可能
剪定によって南天の葉や枝を整理することで、通気性と日当たりがよくなります。
例えば、枝同士が交差して密集している部分を剪定することで、空間を確保し、湿度が下がる環境を作り出します。これにより、葉の乾燥や病害虫の発生リスクが低減します。
株の更新によって寿命がのびる
剪定は南天の寿命を延ばすために大事な手法です。老枝の剪定や新しい枝の促進を図り、南天の寿命を通常よりも10〜20年程度延ばすことが可能です。
南天の実つきが向上する
剪定によって南天の実つきが向上します。例えば、実がつきにくい内部の枝を剪定することで、外部の枝に十分な栄養や日光が供給され、実がより豊富に成長します。
これにより、見た目の美しさだけでなく、実を楽しむことができます。
南天をきれいに剪定するポイント
南天をうまく剪定するために押さえておきたいポイントがあります。優先して切る枝の選び方や整形のコツをチェックしましょう。自力で剪定するのが難しい場合は、プロに頼むのも一つの手です。
枯れた枝は優先して剪定する
枯れた枝でも樹木に付いたままだと、他の枝に届けたい栄養が取られてしまいます。残っていると見栄えも悪くなるため、枯れた枝や古い枝は優先して切り落としましょう。剪定をせずにいると風通しや日当たりが悪くなり、病害虫を引き寄せかねません。
枯れ枝以外にも注意したいのが「胴吹き」「ヒコバエ」「懐枝」です。胴吹きは木の幹から・ヒコバエは根元から・懐枝は幹の基部から生えています。
どの枝も見栄えを悪くするだけでなく、必要な養分を取ってしまうため剪定が必要です。南天は強めに剪定してもまた新しい芽が出てきますので、思い切って根元から不要な枝を切り落としましょう。
高低差を付ける
南天は背が低いため手が届きやすく、形を工夫しようと過剰に手を加えてしまう場合も多いでしょう。しかし本来の持ち味を生かした美しさに仕上げるには、枝の長さをそろえすぎないのがポイントです。
南天を正面から見たとき奥側の枝はやや高めに、手前側の枝は低めに剪定すると見栄えがよくなります。高低差を付けると立体感が生まれ、より自然な仕上がりになるのです。
また植えている場所によっては、樹木の左右に等しく日が当たるわけではありません。成長する差を見極めて剪定できると上級レベルです。
剪定が難しいときは業者に依頼する
生命力が強い南天でも間違った場所を切り落としてしまうと、樹木自体が枯れる場合があります。正しいやり方で剪定をするのが難しそうだと感じるなら、剪定のプロに依頼するのが確実です。
剪定作業にかかる費用は業者によって変わります。ホームページで料金を確認していても、施工後に不要になった枝の処分費を追加で取られるケースもゼロではありません。
事前に総額でいくらかかるのか、詳しい見積もりを取ってから依頼するのがおすすめです。1社だけでなく複数社の提示額を比べれば、適正価格を見極められます。
ミツモアには庭木の剪定業者が多数登録しており、無料で最大5社から見積もりの取得が可能です。決まった依頼先がないのであれば、活用して効率的に業者を探しましょう。
業者に南天の剪定を依頼する場合の費用相場
南天の剪定を業者に依頼する場合、木の本数や高さにより費用相場は異なります。費用は木の高さが低いほど安いです。
低木(高さ1~3m未満) | 1本3,000〜5,000円 |
中木(高さ3~5m未満) | 1本6,000〜10,000円 |
また、剪定業者には料金体系が日当制の場合もあります。
日当制は、作業員1人が1時間や1日作業する際にいくらかかるかという形で料金が設定される仕組みです。作業員の人数や作業時間に応じて料金が変動します。
通常、作業員の人数や作業時間が増えるほど料金も上昇します。一般的な料金相場は以下の通りです。
- 1時間あたり: 2,000〜3,000円
- 1日あたり: 15,000〜30,000円
縁起物とされている南天は剪定して大丈夫?
南天は名前の読み方から「難転=難を転じる」に通ずるとして、古くから縁起物として親しまれてきました。同時期に花を咲かせる「福寿草」と組み合わせると「難を転じて福をなす」という意味になるため、一緒に飾られるケースが多いのも特徴です。
風水でも活用されることが多く邪気の通り道である「鬼門」には白南天が、「裏鬼門」には赤南天が植えられるのが一般的でした。江戸時代には魔よけや火災よけとしても南天が植えられ、その風習は現在も日本各地に残っています。
鬼門に植えた南天を剪定したり、取り除いたりすることで、災いが起こるかもと、こうした南天を切ることに不安を感じる人もいます。
しかしながら、剪定は南天を健康で美しく保つための手段です。剪定は植物のお手入れを目的として行われるものであり、南天の健全な状態を維持するために行われることから、ポジティブに捉えましょう。
南天を挿し木で増やす方法
南天を増やしたい場合、種まきだけでなく挿し木も有効な方法です。南天の剪定した枝を利用することで、簡単に増やすことができます。以下が南天の挿し木の手順です。
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このように剪定した枝を再利用することで、新しい植物を手軽に育てることができます。
南天の病気・害虫対策
南天の病気や病害虫に対する早期発見と定期的なケアが、健康な植物の維持に重要です。
南天の代表的な病気と病害虫、被害例、対策は以下の通りです。
すす病(すすの病)
葉に黒い粉状のすす状の物質が付着し、葉が黒ずんで見えます。これはカビの一種が原因で、葉の光合成が妨げられることがあり、重症化すると葉が枯れることもあります。
対策としては以下の通りです。
- 感染した葉を早めに取り除き、感染の広がりを防ぐ。
- 良好な通気性を確保するために剪定を行い、植物周囲の湿度を下げる。
- 空気中の湿度を低減するために換気を行う。
- 予防的に防カビ剤を使用することで感染リスクを低減する。
カイガラムシ(病害虫)
葉の裏側に発生し、吸汁して葉がくぼみ、黄色く変色し、成長が遅くなることがあります。大量発生すると葉が枯れてしまうこともあります。
対策としては以下の通りです。
- 天敵(レディバグなど)を利用してカイガラムシの天敵を導入し、バランスを保つ。
- 葉を水で洗浄したり、歯ブラシなどでカイガラムシを除去する。
- 葉の裏側につくカイガラムシを牛乳や石鹸水スプレーで駆除する。
- 必要に応じて農薬を使用するが、自然のバランスを崩さないよう注意する。
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