非常にざっくりとしたまとめではありますが、この記事の要点を先にお伝えします。
剪定の基本手順は?
剪定をするときはまず庭木の種類に合った剪定時期を把握して、樹形のイメージや剪定の目的を固めましょう。そのうえで不要な枝を見分けて切っていきますが、不用意に花芽を落とさないよう注意が必要です。また切り口には癒合剤を塗って、細菌や雨水が侵入するのを防ぎましょう。
切り方の基本は?
生長を促す枝の場合は、外芽の少し上で切るようにしましょう。不要な枝の場合は、付け根あたりから切るようにしましょう。不要な枝であれば切り口はなるべく垂直にするのが基本ですが、生長を促す場合は少し斜めに切ります。
剪定の基本手順
剪定の基本手順をまとめます。
【剪定の基本手順】
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剪定はただ庭木や植木を切って終わりではありません。生長を促すために、または見栄えを良くするために効率のよい剪定にしましょう。
基本手順1:剪定の目的に合わせて、剪定時期を調べる
剪定は目的によっておもに「基本剪定」(強剪定)と、「軽剪定」とに分かれます。初心者が自分で剪定したいなら軽剪定がおすすめ。基本剪定が必要になったら専門の職人に依頼するのがよいでしょう。
剪定方法 | 剪定の目的 |
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基本剪定(強剪定) | 植物の新芽が出る前の時期、勢いよく伸びる時期に、主枝を残して多くの枝や花芽を剪定する。樹形を小さくするためにバッサリと切ることが多い。 |
軽剪定 | 植物の休眠期に、枯れた枝やあきらかに邪魔な枝を剪定する。日当たりや風当りを良くするために軽く整える剪定。 |
このように基本剪定は植物の伸びる勢いが盛んになりはじめる時期に行います。バッサリと手入れしますが、弱った樹木に大きな切り口ができると枝葉が弱ってしまうので注意が必要です。
弱剪定は樹木が休眠期に入ったあとで、樹形をあまり変えずに、多すぎる枝を切って手入れします。
代表的な植物の種類とそれぞれの剪定時期をまとめます。
植物の種類 | 剪定時期 |
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常緑針葉樹
(マツ、スギ、ヒノキ、コニファーなど) |
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常緑広葉樹
(ツバキ、サザンカ、キンモクセイ、サツキ、シマトネリコ、オリーブなど) |
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落葉針葉樹
(カラマツ、メタセコイア、イチョウなど) |
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落葉広葉樹
(ヤマボウシ、ハナミズキ、アジサイ、クヌギ、モミジ、アオダモ、アジサイ、アンズ、柿、栗など) |
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常緑性の植物であれば基本剪定は春~梅雨ごろ、軽剪定は秋~冬となります。
落葉性の植物であれば基本剪定は冬ごろ、軽剪定は葉や実が落ちてくる秋頃に行うのが一般的です。
とはいえ植物の種類や品種によっても剪定時期が異なることがあるので、基本的には自分が剪定したい植物の剪定時期を調べておきましょう。
基本手順2:自然樹形やプロが剪定した樹形を見て形をイメージする
樹木の形を大きく変えたい場合は、自然に生えている木の樹形や、プロが剪定したあとの樹形を見てイメージを固めましょう。
枝を1本ずつ切っていくときは、どうしても木の一部分にしか目がいかなくなります。ときどき木の全体を見て、理想の樹形になっているかどうかを確認しましょう。
また外側からみた樹形だけを整えていくと、翌年に咲くはずだった花芽まで摘んでしまい、花付きが悪くなる可能性もあります。次に紹介する手順3とあわせて、不要な枝だけを切るように心がけましょう。
基本手順3:育てたい枝と不要な枝とを見分ける
剪定するときに大切なのは、どれが不要な枝なのかを見分けることです。主枝となる太い枝は残しつつ、小さく密集した枝葉を切っていくのが基本です。
また不要な枝だとしても、適当な位置で切ると花芽を摘んでしまうので、花芽を残して剪定する必要があります。
不要な枝のことを「忌み枝(いみえだ)」と呼びますが、忌み枝にはいくつか種類があります。
【不要な枝・忌み枝】
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このようにたくさんの種類の忌み枝がありますが、「主枝を残しつつ、枝葉の重なりや混みあいを避けるようにして、日当たりと風当りが適度によくなること」を意識しましょう。
基本手順4:花芽を落とさないように注意しながら剪定
不要な枝を付け根から切るときには注意する必要がありませんが、伸ばしたい枝や主枝を切るときには花芽の位置に注意しましょう。
当然に思うかもしれませんが、花芽を落とすとその部分に花が咲かなくなってしまいます。せっかく樹木を整えるために剪定しても、花付きが悪いと開花時期に見栄えが悪くなってしまうのです。
ちなみに枝には「葉芽(ようが)」という、将来は枝になる芽もつきます。花芽との見分けは難しいですが、多くの樹木の場合は「先端が丸く膨らんでいるのが花芽、先がとがっていて細いのが葉芽」です。
ただし花芽も葉芽も両方がとがっている種類の樹木もあるので注意してください。
基本手順5:切り口に癒合剤を塗る
癒合剤で切り口をふさいでおけば、水や養分の流出したり、雨水や雑菌の侵入したりするのを抑えられるため、樹木の健康を守れます。切り口がより早くふさがりやすいのもポイントです。
癒合剤の塗り方はハケやヘラで切り口に直接塗っていくだけなので、簡単に対処できます。
【図解】いろいろな剪定方法
基本的な方法には、目的別にいくつかの種類があります。代表的な種類と具体的な仕方を紹介します。
透かし剪定の仕方
増えすぎた枝や枯れた枝を根元から切る剪定が「透かし剪定」です。日当たりや風通しの改善を主な目的として行われます。
樹形を自然な形に仕上げるために、透かし剪定では上から下へ向かって枝を切り進めます。最初に奥の太い枝を切り、その後細い枝を切るのがポイントです。
日当たり具合の違いなどにより樹形が大きく崩れている場合は、左右対称になるように樹形を整えます。バランスよく切り進めていきましょう。
透かし剪定の種類には、太い枝を切る「大透かし」、より細い枝を切る「中透かし」、生い茂っている細い枝を切る「小透かし」があります。目的に合った種類を選ぶことが重要です。
切り戻し剪定の仕方
切り戻し剪定は伸びすぎた枝を途中で切り落とす作業です。樹形をコンパクトにしたり、新しい枝の成長を促したりする目的で行います。
何も考えずに枝の途中で切ると、落とした枝から細い枝が生えて樹形が乱れたり、残した新芽の生育が悪くなったりするでしょう。伸ばしたい芽を選び、芽の上端の少し上を切れば、残した目が勢いよく成長します。
切り戻し剪定は不要な枝の2分の1から3分の1あたりで取り除くのが基本です。分岐した枝を切るときは、古い枝を切り落として若い枝を残しましょう。
高い木の枝を剪定する際には、柄の長い剪定ばさみや脚立などの道具が必要になります。上を見上げながらの作業になるため足場の安定は欠かせません。
切り詰め剪定の仕方
芽が伸びる方向をイメージしながら、外芽の上部で枝を切る方法が切り詰め剪定です。長く伸びすぎた枝を短くする際に、横方向へ広がる外芽の伸び方を意識して取り除きます。
切る枝の向きに対して垂直に切るのではなく、芽を伸ばしたい方向に向かって斜めに切るのが、切り詰めのポイントです。外芽の先端から3mmほど上の位置を切ります。
残した外芽が横に伸びるため、樹冠を整えやすいことが特徴です。将来の樹形をどのような形にしたいのか、十分にイメージしながら作業する必要があります。
枝下ろし剪定の仕方
枝下ろし剪定は太い枝をバッサリと切り落とす作業です。樹形をコンパクトにする目的以外に、風通しや日当たりを良くする効果も期待できます。
太い枝を根元から切るため、幹が裂けないように注意しながら切ることが重要です。ノコギリやチェーンソーを使い、上下から半分ずつ分けて切ることで幹を守れます。
むき出しになった太い枝の切り口を放置すると、病害虫の被害に遭いやすくなります。切り口を保護するために癒合剤(ゆごうざい)を塗るのが基本です。
太い枝を切り落とすと樹木自体に大きな負担がかかるため、作業する時期にも気を付けましょう。常緑樹は新芽が出る前の春、落葉樹は葉が落ち切った冬に行うのがベストです。
高さを抑える芯止め
芯止めとは、樹幹の先端に伸びた枝を切る剪定方法です。
樹幹の先端は一番優先的に多くの養分が行くようになっていますが、この先端を切ることで養分が脇芽に流れるようになります。
その結果、先端の枝が上に成長するのを押さえながら脇芽の成長が進み、低くて横にボリュームのある木に育ちます。
注意すべきこととしては、切り口に癒合剤を塗っておくことです。養分を多く流していた切り口がむき出しになったままでいると病気や害虫の発生が起こりやすくなってしまいます。
枝を切るときのコツと注意点
不要な部分を上手に切り取るポイントを紹介します。太い枝を切るときの注意点や、切り口の保護方法も覚えておきましょう。
基本は垂直になるようにハサミを入れる
剪定するときは、枝に対して垂直にハサミを入れるのが基本中の基本。枝を斜めに切ってしまうと、切り口が大きくなってしまいます。
切断面が大きいと、養分が逃げやすくなったり、雑菌が入りやすくなったりするので注意してください。
ただし前述した「切り詰め剪定」の場合は、垂直ではなく若干斜めになるようにハサミを入れてください。
また太くてかたい枝だと、なかなかハサミの刃が通らないこともありますが、その場合は繊維に沿って少し斜めにハサミを入れても問題ありません。
太い枝は一度切り口を入れる
太い枝を一気に切り落とそうとすると、重みで幹が裂けたり途中で折れたりする恐れがあります。3段階に分けて切り落としましょう。
まず第1段階。切断したい場所よりも数cmだけ枝先のほうで、枝の下側から切り込みを入れます。
第2段階。その切り口から枝先へ少しずらした部分に、今度は枝の上側から切り込みを入れてください。少しずつ下側の切り口に近づけていき、枝先側を落とします。
そして最後の第3段階。枝を落としたあとの切り口は、何回か切ったことでガタガタにズレている可能性があります。切り口がキレイになるように剪定して仕上げましょう。
密集した枝を透くときは全体のバランスを見ながら
何本にも枝分かれしていたり、枝葉が密集していたりするときは、全体のバランスを見ながら剪定しましょう。ポイントは左右均等になるように切ること。
画像の赤線部分のように、早枝が互い違いになるような切り方を意識しましょう。枝葉が重ならず、日当たりや風当たりをよくするのが目的です。
剪定の失敗例
ここでは、剪定を成功させるために、剪定の失敗例を紹介します。
事前に確認しておき、同じ失敗を犯さないようにしましょう。
上のほうだけ枝や葉が茂り、全体の樹形が不格好
上のほうだけ枝や葉が茂ってしまうのには以下のような原因が考えられます。
- 何年も放置して茂ってしまったため下に生えている葉に日光が当たらず枝ごと枯れてしまった
- 手が届きやすい下のほうだけ剪定し、上のほうは放置してしまった
このように剪定をせずに放置していたり、バランスよく剪定をしていなかったりすると、樹形全体の恰好が美しくなくなってしまいます。
こうならないための剪定のポイントは
- 剪定はこまめに行うこと
- 剪定は上部から下部の順番で行うこと
幹の下のほうに枝が生えてこなくなってからでは、樹形を整えるのは難しいです。そうなる前に定期的に剪定を行うようにしましょう。
太い幹や枝の切断場所の樹皮がめくれている
太い枝や幹を切るときは残りやチェーンソーを使うことが多いですが、同じ方向から一気に切りつけると切断の際に一緒に樹皮がめくれてしまうことがあります。
このような傷口は、細菌が入りやすく、最悪の場合樹木が枯れてしまうでしょう。
そうならないために、太い枝や幹を切る際には、一度に切り落とさず、何度かに分けて作業を行うようにしてください。
頭だけが大きいキノコ型の樹形
刈り込み作業をした樹木にみられる失敗例で、上部と下部を同じくらい刈り上げてしまうことが原因です。
上部と下部では同じ樹木でも日の当たり方に差があり、その分成長速度にも差ができます。そのことを考慮したうえで、刈り込み作業を行わなければなりません。
剪定の際には、上部から強めに剪定し、下部に行くにしたがって弱く剪定するよう意識しましょう。
剪定に必要な道具
ハサミ類・ノコギリ・脚立など、作業にはさまざまな道具が必要です。代表的な道具と使い方を解説します。
剪定には欠かせない「ハサミ類」
【剪定バサミ】
【植木バサミ】
【刈り込みバサミ】
【高枝切りバサミ】
太い枝を切るのに使う「剪定ノコギリ」
刃の薄いノコギリは扱いが難しいため、慣れないうちは刃の厚い商品がおすすめです。作業中に腕が疲れないように、できるだけ軽量なタイプを選ぶとよいでしょう。
高枝切りバサミでは切れない枝でも、高枝ノコギリを使えば腕の太さ程度なら切り落とせます。
高枝ノコギリで切るときは、柄の先端に近い方を両手で持ち、体ごと動かせばきれいに切れます。
高い部分の剪定に必要「脚立」
脚立を置く場所は、切る枝の真下ではなく少しずらした場所に置くのがポイントです。斜め下から見上げる格好なら、より作業しやすくなります。
枝を切るときには、脚立に体を密着させながら体重を中心に傾けます。左右に体を伸ばすと転倒する恐れがあるため、横に離れた枝を切る場合は脚立を移動させましょう。
硬い地面の上に脚立を置く場合は、転倒時の危険性を考慮しロープなどで固定する必要があります。安全面に十分配慮して使用しましょう。
剪定以外に必要な手入れ
基本的な剪定を実施した後も、植物を元気に育てるためのこまめな手入れが大切です。手軽に行える手入れのうち、花がら摘み・摘心・摘蕾・芽かきを紹介します。
花がら摘みの仕方
咲き終わった花がらをそのままにしておくと、無駄な養分が取られてしまい、全体の花つきが悪くなります。病気やカビが発生する原因にもなるでしょう。古い花がらは小まめに摘むことが大事です。
花がらを摘む際は、花茎からハサミで切り取ります。花びらだけを摘んでも結実して種子ができるため、全体に必要な養分が行き渡りません。
花茎から摘み取ることで全体の花つきが良くなり、株自体の寿命も伸びます。植物を元気に育てるために、小まめな花がら摘みを意識しましょう。
摘心や摘蕾、芽かきも
剪定後に必要な手入れとしては、摘心(てきしん)・摘蕾(てきらい)・芽かきも挙げられます。いずれも植物を美しく元気に保つための重要な作業です。
摘心で芽の先端を摘み取ることで、芽の下にある「わき芽」が伸びて葉の枚数を増やせます。全体のボリュームをアップさせたいときに効果的です。
摘蕾は、蕾(つぼみ)の状態で花を摘み取る作業のことです。これを行うと、養分が行き渡りやすくなり全体の花つきが良くなります。株が小さいうちは、全ての蕾を摘み取り株の成長を促す方法も有効です。
新芽をかき取る芽かきは、特にバラの栽培で必須の手入れです。バラは1カ所から3つの芽が出るため、1カ所から3本の枝が生えないように芽かきを行います。
追肥による土壌改良
樹木の生長を促進するために、土壌改良をするのも大切な作業です。
鉢や庭に植えたときには肥料を一緒にまいているとでしょうが、定期的に追肥(ついひ)するようにしましょう。
追肥の回数は育てたい庭木の種類によっても違いますが、年に2~3回ほど行うのが一般的。ちなみに野菜の場合は3週間~1カ月に1回の追肥が目安です。
肥料を与えるタイミングによって、それぞれ意味があります。
寒肥(12~2月) | 樹木の活動が落ち着く冬季におこなう施肥です。牛ふんや油カスなどを含んだ有機肥料を使うのが一般的で、有機肥料に集まってきた微生物の力で土壌をよくします。 |
芽出し肥え(3~5月) | 植物の新芽が生え始めるころ、より育ちをよくするために追肥します。速効性肥料を使うのが一般的です。 |
お礼肥(開花後) | 花が咲き終わるころ、または果実を収穫したあとに、エネルギーを使いきった植物を回復させるために追肥します。即効性の化成肥料を使うのが基本です。 |
また肥料は幹から少し離れた位置に、穴を掘ってまくのが基本です。目安としてはいちばん長い枝の先端あたりの位置。
地面に穴が掘れない場合は、土の上から肥料をまいて上から新しい土をかけるか、パイプ状の埋め込み式肥料を使う方法があります。
枝や落ち葉の掃除
落ちた枝や落ち葉は、定期的に掃除しておきましょう。庭木のそばに落ち葉が積もっていると、そこに病害虫がわきやすくなり、樹木に悪影響を与えてしまう可能性があります。
「落ち葉によって腐葉土を作れる」と考える方もいるかもしれませんが、腐葉土は何年もの月日をかけて作られるので、庭でおこなうにはあまり適していないのです。
除草
庭木の周辺にある雑草は定期的に除草しておきましょう。せっかく肥料をまいたり水やりをしたりしても、地中の栄養が雑草のほうにも持っていかれてしまいます。
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