電気料金の高騰に伴い、太陽光発電への注目が再加熱しています。初期費用は気になるところですが、国や自治体の補助金を上手に活用すれば、導入ハードルを下げることが可能です。
そこで太陽光発電の費用相場や投資額回収の目安、補助金、業者選びのコツについて、2025年時点の情報をまとめました。
太陽光発電の設置費用はいくら?
「太陽光発電の導入には数百万円かかる」というイメージをお持ちの方もいるかもしれません。しかし最近では、1kWあたり20万円前後まで価格が下がってきており、一般的な3kW~5kWクラスの家庭用太陽光発電システムなら60万円~140万円で導入できるケースも珍しくありません。太陽光発電の設置時にかかる費用一覧は次の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 太陽光パネル | 発電の要となるソーラーパネル |
| パワーコンディショナ(パワコン) | 直流を交流に変換し、家庭内や売電用に利用できるようにする機器 |
| 設置・工事費 | 架台設置、配線工事、屋根の補強工事など |
| 接続箱・分電盤・電力量計 | 電力の分配や売電量を計測するための機器 |
| その他(申請費用・点検費など) | 書類申請や施工後の点検費、追加部材費など |
設置費用にはパネル本体だけでなく工事費や関連機器、申請費用なども含まれるため、総額を把握することが大切です。以下は3kW・4kW・5kWを想定した場合の目安となる費用をまとめたものです。
| 項目 | 3kWの費用目安 | 4kWの費用目安 | 5kWの費用目安 |
|---|---|---|---|
| 太陽光パネル | 30万~48万円 | 40万~60万円 | 50万~80万円 |
| パワーコンディショナ(パワコン) | 6万~12万円 | 8万~14万円 | 10万~20万円 |
| 設置・工事費 | 9万~16万円 | 12万~20万円 | 15万~25万円 |
| 接続箱・分電盤・電力量計 | 3万~8万円 | 4万~10万円 | 5万~12万円 |
| その他(申請費用・点検費など) | 3万~6万円 | 4万~7万円 | 5万~8万円 |
| 合計 | 60万~80万円 | 80万~110万円 | 100万~140万円 |
太陽光発電の設置費用のポイント
- 屋根の形状や工事の難易度、選ぶメーカーやパネルの性能で費用は上下します。
- 相見積もりを必ずとり、複数の業者から比較検討することが費用を抑えるコツです。
- 新築時に同時施工する場合は、後付けに比べてコストダウンが期待できます。
【2025年】太陽光発電の補助金・優遇制度
太陽光発電を導入するかどうかを左右する大きな要素が国や自治体による補助金・優遇制度です。2025年時点では、補助制度を積極的に実施している自治体も多いため、導入コストを数十万円単位で抑えられる可能性があります。
| 制度名 | 主管 | 対象者 | 主な補助内容・要件 | 申請期間/年度 | 執行団体/主な問合先 |
|---|---|---|---|---|---|
| DR補助金(蓄電池) | 国(経済産業省) | 主に家庭用蓄電池導入者 | 蓄電池導入:3.7万円/kWh(令和7年度)。DR参加が前提。 | 令和7年度(2025年度)申請受付中、予算限り有り | SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ) |
| 需要家主導型太陽光発電及び再生可能エネルギー電源併設型蓄電池導入支援事業 | 国(経済産業省) | 法人・企業 | 遠隔地太陽光(自己託送)+蓄電池。太陽光発電設備と同時導入する蓄電池も対象。 | 令和7年度(2025年度)、2025年4月1日以降公募開始見込 | SII(一般社団法人環境共創イニシアチブ)見込 |
| ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業 | 国(環境省) | 需要家(法人・個人事業主等) | 太陽光発電設備(4~7万円/kW)、産業用蓄電池(4万円/kWh)、家庭用蓄電池(4.5万円/kWh)等。太陽光と蓄電池等の同時導入が必須。 | 令和7年度(2025年度)、複数回公募見込(一次公募終了) | 一般社団法人環境イノベーション情報機構(EIC)等 |
| 建物等における太陽光発電の新たな設置手法活用事業 | 国(環境省) | 需要家(民間企業等) | ソーラーカーポート等:8万円/kW。自家消費型。 | 令和7年度(2025年度)、例:令和7年5月8日~6月5日 | 一般社団法人環境技術普及促進協会(ETA) |
| 窓・壁等と一体となった太陽光発電設備の導入加速化支援事業 | 国(環境省) | 事業者等 | 建材一体型太陽光発電(BIPV):窓一体型 導入費用の3/5(上限5,000万円)、壁一体型 導入費用の1/2(上限3,000万円) | 令和7年度(2025年度) | 環境省指定の執行団体 |
| 住宅向け太陽光発電設備設置助成(東京都) | 東京都 | 個人住宅所有者(新築/既築) | 新築: 3.6kW以下 12万円/kW(上限36万円)等。既築: 3.75kW以下 15万円/kW(上限45万円)等。上乗せ補助あり。 | 令和7年度(2025年度)、2025年5月末頃~ | クール・ネット東京 |
| 東京ゼロエミ住宅助成制度(東京都) | 東京都 | 新築住宅(都の基準達成) | 住宅の省エネ性能に応じた助成+太陽光発電設備等への追加助成(例: 太陽光3.6kWまでオール電化13万円/kW)。不動産取得税減免あり。 | 令和7年度(2025年度)、2025年4月1日~2026年3月31日 | 東京都環境局、クール・ネット東京 |
| 災害にも強く健康にも資する断熱・太陽光住宅普及拡大事業(東京都) | 東京都 | 個人住宅所有者(新築/既築) | 太陽光発電(住宅向け助成に準拠)、蓄電池(例: 6.34kWh未満 19万円/kWh)。 | 令和7年度(2025年度)、詳細5月中旬公開予定 | 東京都環境局 |
| 住宅用太陽光発電初期費用ゼロ促進の増強事業(東京都) | 東京都 | 初期費用ゼロサービス利用者(事業者が申請) | 太陽光発電(例: 新築≤3kW 15万円/kW)、蓄電池(一律12万円/kWh、容量上限撤廃)。 | 令和7年度(2025年度)、2025年4月1日~2026年3月31日 | クール・ネット東京 |
| 住宅向け太陽光発電システム設置費助成(港区) | 港区 | 区民、管理組合等 | 区民: 最大出力(kW)×10万円(上限40万円)。 | 令和7年度(2025年度)、2025年4月~2026年1月末 | 港区環境リサイクル支援部環境課 |
| 住宅向け蓄電池導入費助成(港区) | 港区 | 区民 | 容量(kWh)×4万円(上限20万円)。 | 令和7年度(2025年度)、2025年4月1日~2026年1月30日 | 港区環境リサイクル支援部環境課 |
| 事業者向け地球温暖化対策助成制度(港区) | 港区 | 中小企業者・個人事業主 | 太陽光発電設備: 上限100万円。 | 令和7年度(2025年度)、申請期限 2026年1月30日 | 港区環境リサイクル支援部環境課 |
※ミツモア調べ(2025年5月時点)
国の補助金制度
- 「再生可能エネルギー導入支援」などの事業に予算が割り当てられ、予算がなくなり次第終了する形式が一般的です。
- 申請時期や条件は年度ごとに異なるため、早めの情報収集が重要となります。
都道府県・市区町村の補助金制度
- 補助金額や条件は自治体ごとに大きく異なります。1kWあたりの金額やキャッシュバック形式のもの、税制優遇やローン金利優遇を実施しているところも。
- 必ず居住地域のホームページや窓口で確認しましょう。
申請の流れ(一般的な例)
- 補助金の公募状況や要件を調べる
- 対象となる業者・システムを選定する
- 必要書類を作成し、窓口へ提出
- 審査・交付決定後に設置工事を実施
- 工事完了後に実績報告を提出し、補助金が交付される
受付期間や予算上限があるため、検討から申し込みまでに時間をかけすぎると補助金が打ち切られてしまう可能性があります。導入を考え始めたら、早め早めに情報収集と準備を進めましょう。
太陽光発電のコストと売電利益を試算シミュレーション
太陽光発電の魅力は、なんといっても月々の電気代削減と売電収入。近年は売電価格が下がってきているものの、自家消費による電気代の節約効果は依然として大きいといえます。一般的には、10~15年程度で初期費用を回収できるケースが多いです。
以下のシミュレーションに必要事項を入力して、月々の節約額や太陽光発電の設置にかかった費用を何年で回収できるか、チェックしてみましょう。
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詳細は専門の業者にご相談ください。
売電収入の現状と将来予測
売電単価は固定価格買取制度(FIT)の影響を受け、導入年度によって単価が決まります。最新では1kWhあたり10円台前半という水準になりつつあり、以前の高単価で導入した人と比較すると見劣りするのは事実です。しかし、電気料金そのものが上昇しているため、売電収入よりも自家消費による削減効果が相対的に高まりつつあります。
「何年で回収できるか?」の計算方法
太陽光発電の投資回収をイメージしやすくするには、以下の項目を合算し、年間に得られるメリットと照らし合わせてみるのがおすすめです。
- 初期費用合計(パネル・工事費・関連設備)
- 年間の電気代削減額
- 年間の売電収入
初期費用合計 ÷(年間の電気代削減額 + 年間の売電収入)= 回収年数
上記の計算式を使い、シミュレーションを行ってみると回収年数がイメージしやすくなります。もちろん、補助金の活用やメンテナンス費用なども加味して、より正確なシミュレーションをすると失敗リスクを抑えられます。
太陽光発電を設置するメリット
導入には費用がかかりますが、太陽光発電には以下のような大きなメリットがあります。
- 電気代が削減できる日中にパネルが発電した電力を自家消費できれば、その分だけ電力会社から買う電気が減るため、月々の電気代を抑えられます。
- 災害時にも役立つ安心感停電時でも太陽光発電による電気を一部使えるため、スマホの充電や照明など最低限の生活を確保しやすくなります。蓄電池を合わせて導入すれば、さらに備えが充実します。
- 家の資産価値アップエコ性能が高い住宅は査定時のプラス要素になりやすく、将来的に転売する際にも有利になる可能性があります。
こうしたメリットは、電気代が高騰している状況でより一層注目されます。さらに、再生可能エネルギーへの関心が高まる中、太陽光発電を導入している物件は需要が一定以上見込める点も見逃せません。
太陽光発電を設置するデメリット
もちろん、太陽光発電にはデメリットも存在します。導入前にしっかり把握しておけば、後悔やトラブルを最小限に抑えられます。
- 初期費用が高いメーカーや条件によりますが、200万円以上の投資が必要なケースもあります。ローンやリースを利用することも可能ですが、毎月の返済分がプラスになる点は考慮すべきです。
- 売電価格が低下している過去の高い売電単価と比較すると、投資回収を「売電収入だけ」に頼るのは難しくなっています。しかし、その分「自家消費」でメリットを得られる構造にシフトしているともいえます。
- メンテナンス費用が必要パネルの定期点検やパワーコンディショナの交換時期(10~15年が目安)には、それなりの費用がかかります。長期的な視点で必要なコストを見積もっておきましょう。
どの業者を選ぶべき?失敗しないためのポイント
太陽光発電導入の成否を分ける重要なポイントの一つが、業者選びです。適正価格で信頼できる工事をしてくれる業者を探すのは一見難しそうですが、以下のチェックポイントを押さえるとスムーズになります。
業者を選ぶうえでチェックしたい項目は主に3つです。
- 実績と口コミ
- 見積もり内容の明確さ
- アフターサポートの充実度
これらの項目を確認する際には、複数の業者から見積もりを取り、価格だけでなく工事内容や補償内容の違いも比べるのが大切です。
たとえば「無料設置」をうたう業者が存在しますが、実際には売電収入を業者側に一定期間譲渡する契約になっていたり、思わぬ手数料を請求されたりするケースも報告されています。「あまりにも条件が良すぎる」場合は特に注意が必要です。
実際に太陽光発電を導入した人の声
導入した人の生の声を聞くと、メリットとデメリットがより具体的にイメージしやすくなります。
- 「導入後に電気代がどれだけ安くなった?」「月の電気代が3割ほど下がって、夏場でもエアコンを気兼ねなく使えるようになった」という声が多いです。売電収入は以前より単価が低いものの、家計負担は大きく減ったという実感を得やすいようです。
- **「思ったよりもかかった費用・意外なメリット」**架台の設置や屋根の補強など、追加の工事費用が予定よりかさむケースもあります。一方で、電気代削減のほかに冬場の結露が減ったり、屋根の断熱効果が上がったといった意外なメリットを感じている方もいます。
- 「後悔したポイント・やっておけばよかったこと」「もう少し大きめの容量にしておけばよかった」「蓄電池を同時に導入しておけばよかった」という意見も一定数あります。資金や屋根のスペースに余裕があれば、最初から大きめのシステムや蓄電池までセットで導入する方が、結果的に費用対効果が高い場合があります。
まとめ
太陽光発電は、導入時のコストは高めでも、長い目で見ると電気代削減や災害時の安心感など多くの恩恵が得られる設備です。ただし、以下の点を総合的に考慮する必要があります。
- こんな人におすすめ
- 自宅の屋根に十分なスペースと耐久性がある
- 長く住み続ける予定で、電気代を削減していきたい
- 災害対策や停電対策の強化も目指したい
- 補助金や優遇制度を活用しながらお得に導入したい
- おすすめしないケース
- 数年以内に家を売却・引っ越しする予定がある
- 屋根の形状や遮蔽物の関係で発電効率が低い
- 相場より高額な工事費を請求され、回収見込みが極端に悪い
長期的な投資として考えるなら、まずは無料見積もりやシミュレーションを複数の業者から取り寄せて、具体的なコストとメリットを比較してみるのがおすすめです。設置後にかかるメンテナンス費やパワコン交換費なども視野に入れて検討することで、失敗を防ぎ、安心して導入に踏み切れるでしょう。
