家屋全体の断熱機能を高めるために使われる断熱材には、さまざまな種類があります。
どう選ぶべきか悩む人も多いのではないでしょうか。本記事では断熱材の種類ごとに違う特徴とともに、選ぶ基準や施工を依頼するときのポイントも紹介します。
繊維系断熱材の種類と特徴
断熱材には主に「繊維系」「プラスチック系」の2系統があります。ここではまず「繊維系断熱材」の種類とそれぞれの特徴について解説していきます。
安価で耐燃性が高い「グラスウール」
グラスウールは非常に細いガラス繊維を束ねて作られている断熱材です。断熱性が高い割に安価で施工できるため、数多くの断熱材の中でも人気があります。耐燃性に優れていて火災に強い、軽量で防音効果が高いという点も強みです。
グラスウールはガラス繊維の間に空気を含ませることで高い断熱性能を発揮しているため、水で濡れたり湿気を多く含んだりすると断熱性能が落ちてしまいます。
本来は水や湿気の侵入を防ぐために、ビニールや防水シートで保護した状態で施工されるのが基本です。しかし断熱材と建材にすき間ができていたり湿気対策がされていなかったりするなど、施工方法に不備があると結露しやすくなります。
シロアリ被害を受けにくい「ロックウール」
ロックウールは鉱物を原料として作られた繊維系断熱材です。グラスウールに比べて耐熱性や耐水性が高く、鉱物由来の製品であるためシロアリに食害されにくいという特徴を持っています。
ロックウールは1930年代後半から現在まで幅広い用途で使われており、グラスウールより歴史が長い点も特徴です。信頼性が高い断熱材であるといえるでしょう。
ただし重量があるロックウールの性質から、施工技術によっては脱落しやすいという弱みもあります。やや高価な点もグラスウールと比べて劣るポイントです。
プラスチック断熱材の種類と特徴
プラスチック系の断熱材は繊維系に比べて耐熱性は劣りますが、それぞれに違った強みがあります。メリットとデメリットの両面を比較して、自宅に必要な性能を備えているかを見極めましょう。
断熱効果が落ちにくい「ビーズ法ポリスチレンフォーム」
ビーズ法ポリスチレンフォーム(EPS)は、「ポリスチレン樹脂を発泡加工させた素材」を詰めた断熱材です。発泡スチロールとほぼ同じものと言えばイメージしやすいかもしれません。
極めて高い断熱性と耐水性を持っているだけでなく、断熱効果が他の種類と比べて落ちにくい点が大きな強みです。さまざまな形状に加工しやすい性質も、EPSのメリットとして挙げられます。
軽量で衝撃吸収性にも優れたEPSは、運搬用の緩衝材としても活躍する素材です。近年のEPS断熱材には燃えにくさを高めるための「難燃剤」が含まれており、高い安全性も実現しています。
経年や熱に強い「フェノールフォーム」
フェノールフォームはフェノール樹脂という特殊な樹脂に、硬化剤や発泡剤を混ぜて板状に加工した断熱材です。断熱性能が高く外張り用の断熱材としても広く使用されています。時間がたっても断熱性能を落としにくいのが特徴です。
硬化した後は熱による変形が極めて少ないという特性もあり、日本では1960年代から幅広い用途で活用されてきました。鍋やフライパンの取っ手など調理器具のパーツが、住宅以外に使われている代表例です。
他の断熱材に比べると衝撃に弱く崩れやすい点や、費用が高額である点には注意が必要です。
すき間ができにくい「硬質ウレタンフォーム」
硬質ウレタンフォームはプラスチックの板材の中に、ガスや空気を含む細かい気泡が入った断熱材です。断熱性能が高く厚みがなくても性能を発揮できる点や、耐水性・耐湿性の高さが大きなメリットとして挙げられます。
現場で整形できるという特徴から、細かいすき間までしっかり埋められるのも魅力です。板状の断熱材では施工が難しい箇所にも対応できます。
ただしっかりと保護されていない電線が通る箇所には、硬質ウレタンフォームを使えないため注意が必要です。
木質繊維系断熱材の種類と特徴
生産や廃棄の過程で廃棄物が出にくいエコな素材として注目されているのが、「木質繊維系断熱材」です。グラスウールやロックウールが鉱物系や化学物質系と呼ばれるのに対し、木質繊維系は自然系と呼ばれています。
高密度で充填「セルロースファイバー」
セルロースファイバーは天然の木質繊維で作られた断熱材です。断熱材を剥がさずに施工する「吹き込み施工」に使われます。
高密度の断熱素材ですき間まで満たせるため、断熱性や気密性を高められる素材です。高い防音性能を実現したり結露の影響から建材を守ったりといった、断熱以外の性能にも優れています。
セルロースファイバーの主原料はリサイクルされた新聞紙です。「火が付くと燃え広がってしまうのではないか」と思われがちですが、ホウ酸が難燃剤として使われているため熱には強くできています。
軽さと透湿性が魅力「インシュレーションボード」
インシュレーションボードは原料となる木材に熱を加え、繊維状になるまでほぐした後に合成樹脂や接着剤を混ぜて板状にした断熱材です。
内部に細かい穴が無数に空いている構造から、非常に軽量という強みがあります。湿度を通しやすい性質(透湿性)にも優れており、結露が発生しにくい性質も大きな魅力です。
ただし防水性にはやや難があり、カビが生えやすい点はデメリットになるでしょう。アスファルトを混ぜて防水性を高めた「シージングインシュレーションボード」という種類もあるため、防水性が気になる人はそちらを選ぶとよいでしょう。
断熱材を選ぶ基準とは?
断熱材を選ぶときはやはり、どの程度の断熱性があるかが重要です。予算と釣り合うかどうかもよく考えたい基準でしょう。それぞれのポイントを深掘りしていきます。
断熱性能を決める熱伝導率
断熱材における断熱性能を表す数値として、「熱伝導率」という指標があります。熱伝導率は「W/m・K」という単位で表され、この数値が0に近いほど断熱性能が優れているということです。
プラスチック系の断熱材には熱伝導率が低い種類が多く、木質繊維系は比較的熱伝導率が高い傾向にあります。ただ断熱材として売られているものは全て、熱伝導率が0.1以下です。
断熱材は基本的に空気が持っている断熱性能を利用して、熱を遮断する仕組みとなっています。繊維系断熱材では細い繊維のすき間に空気の層を作ることで、高い断熱性を確保しています。
国内で販売されている断熱材の中で最も熱伝導率が低いのは、フェノールフォームを進化させた「高性能フェノールフォーム」です。しかし価格が非常に高いため導入のハードルは上がります。
性能とコストのバランス
理想的な断熱材を選ぶうえで、性能とコストのバランスは大切な基準です。断熱材は板状の素材を使ったボードタイプと、液状の素材を使った吹き付けタイプに分けられます。さらに使われている素材の種類によっても、価格が大きく変わります。
この記事で紹介している種類ごとの値段は次の通りです。ここでは40坪の住宅に使われる断熱材の量を想定しています。
- ガラス繊維系断熱材(グラスウール・ロックウール):約250,000~400,000円
- ビーズ法ポリスチレンフォーム:約500,000~800,000円
- 硬質ウレタンフォーム:約600,000~1,000,000円
- フェノールフォーム:約1,200,000円
- 木質繊維系断熱材:約1,000,000~1,600,000円
製品によって価格は変動しますので、正確な料金を知りたい場合はメーカーや施工業者に問い合わせましょう。業者によっては施工できない断熱材もあるため、あらかじめ確認しておくと安心です。
断熱材の施工方法
断熱材の施工方法には「充填断熱」と「外張り断熱」の2種類があります。充填断熱とは木造住宅の柱や壁の間に断熱材を注入する施工方法です。
外張り断熱はボード状の断熱材を柱や壁・梁(はり)といった建材の外側に張り、住宅全体を包むように施工する方法を指します。
施工方法によって断熱性に影響することはありませんが、適した素材が変わります。どちらの施工方法を選ぶかは早めに決めておきましょう。
事前に使いたい素材を伝えると、適した施工方法を提案してくれる業者もあります。特別な理由で採用する素材を決めているのであれば、伝えておくと安心です。
断熱材の施工を業者に依頼するポイント
断熱材を施工するうえで業者選びは非常に大切です。納得のいく価格で十分な施工を受けられるように、依頼先を決めるときのポイントを押さえておきましょう。
複数社から見積もりを取る
断熱材の施工は家屋の築年数や構造・間取り・素材・施工方法など、さまざまな条件によって料金が変わってきます。業者の得意とする施工方法も費用を左右するポイントです。
見積もり依頼では一つの業者に絞り込んで相談するのではなく、複数の業者にアクセスすることが大切です。1社ずつ連絡する手間を省きたいなら、一括見積もりサービスを活用しましょう。
ユーザーと地域の業者をマッチングするミツモアには、審査を通過した業者だけが登録しています。複数社から見積もり提案が届くだけでなく、依頼前に業者とチャットを通じたやり取りも可能です。
実績のあるリフォーム業者を選ぶ
業者を選ぶ際に大きな基準としたいのが「実績」です。施工業者によって得意とする施工方法や考え方は大きく異なります。自宅に合った施工を頼むためにも過去の実績をチェックして、要望をかなえてくれそうか確認しておきましょう。
ミツモアでは業者ごとの情報に、過去の実績や見積もり例なども掲載しています。情報がない業者でも過去に利用したユーザーの口コミを参考にできるため、要望通りの施工を頼める業者を見つけやすいでしょう。
断熱リフォームに使える補助制度も
2021年7月現在、断熱リフォームの施工に利用できる補助制度が「グリーン住宅ポイント制度」です。15%以上の省エネ効果が見込めるリフォームを行う場合に利用できる制度で、断熱材の設置・張り替え工事も対象に含まれます。
外壁や屋根・天井・床などの施工箇所と、リフォーム内容によってポイントが発行されるシステムです。合計5万ポイント以上になると利用できるようになります。あらかじめ以下のURLから何ポイントもらえるか確認しておきましょう。
適した断熱材を選んで暖かさをキープ
断熱材には繊維系・プラスチック系の2系統があり、繊維系の中でも天然由来の素材を使ったタイプが木質繊維系です。系統別に種類は細分化されています。この記事で紹介した種類別の特徴を参考に、自宅に合った断熱材を選び家の暖かさを保ちましょう。
どの断熱材を選ぶか決めるときに確認したポイントは、断熱性能を表す「熱伝導率」と価格・施工方法です。業者選びもトータルの費用に大きく関わってきます。複数社に見積もり依頼をしたうえで依頼先を選ぶのがおすすめです。
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