ミツモア

後飾り祭壇はいつまで飾る?宗教・宗派別の飾り方や処分方法も解説

ぴったりの葬儀屋・葬儀社をさがす
最終更新日: 2024年06月28日

後飾り祭壇とは、葬儀が終わった後、自宅で遺骨を一時的に安置するための祭壇です。四十九日まで飾るのが一般的ですが、納骨を済ませるまで使い続けても問題ありません。

後飾り祭壇は葬儀後に訪れた弔問客が、手を合わせる場所にもなる重要な祭壇です。宗教ごとの飾り方や供物・供花のそろえ方、片づける時期、処分方法などを確認しましょう。

この記事を監修した専門家

株式会社SAKURA 代表取締役/一級葬祭ディレクター
近藤 卓司

後飾り祭壇の配置と飾り方

後飾り祭壇

後飾り祭壇は2段か3段の祭壇で、主に白木で作られます。祭壇には白い布をかけられることが多いです。また、段ボール製の祭壇もあります。

仏式の後飾り祭壇には、以下のものを飾ります。

  • 上段:遺骨・遺影・白木の仮位牌(中段の場合もある)
  • 下段:花・ロウソク・供物・香炉・鈴・線香立て

供花は床に置いても問題ありません。

配置は南向きか東向きに置くようにし、お参りする人が北や西を向くようにしましょう。すでに自宅に仏壇がある場合、仏壇の横に並べて設置するのが一般的です。

ただし状況によっては、向きよりもお参りのしやすさを優先します。弔問しやすい場所に設置し、日光が直接あたる場所や湿気の多い場所、人通りが多い場所は避けるようにしましょう。

浄土真宗の後飾り祭壇

浄土真宗は国内最大の仏教宗派ですが、他の宗派に比べて、後飾り祭壇がシンプルなのが特徴です。

浄土真宗の後飾り祭壇には、以下のものを飾ります。

  • 遺骨
  • 遺影
  • 白木の仮位牌

浄土真宗は遺骨と遺影、位牌の3種のみを段差のないシンプルな祭壇に設置し、線香やロウソクなどは仏壇に設置します

祭壇の設置場所は仏壇の手前または左右、どちらでも構いません。仏壇がない場合は、祭壇が東か南を向くように設置します。仏壇の打敷は裏返して白い面を表にしましょう。

なお、浄土真宗において故人の魂は、亡くなった後に直ちに浄土へ迎えられ、さまようことがないと教えられています。そのため故人の冥福を祈る対象として、花や供物などは置かないのが基本です。仏壇に遺影を飾ることもありません。

神道・キリスト教の後飾り祭壇の飾り方

ハリス協会

神道の後飾り祭壇の飾り方

神道では後飾り祭壇を「仮霊舎(かりみたまや)」と呼び、菰(こも)を敷いた上に設置します。仮霊舎に飾るものは以下の通りです。

  • 上段:霊璽、榊、神鏡
  • 中段:三方、燈明(火立て)、御神酒、塩、水玉、洗米
  • 下段:遺影

神道では火葬祭に続き、墓所で埋葬祭を執り行います。そのため仏式のように、遺骨を祭壇に安置せず、霊璽を祀るのが一般的です。

納骨の準備が整わない場合や、遠方に墓所がある場合など遺骨を自宅へ持ち帰るケースでは、霊璽とともに遺骨を祭壇に安置します。

葬儀から家に戻ると帰家祭(きかさい)を執り行い、仮霊舎に霊璽を祀り、葬儀が滞りなく行われたことや、墓所に埋葬されたことを奉告(ほうこく)します。

キリスト教の後飾り祭壇の飾り方

キリスト教にはそもそも後飾り祭壇の習わしはないため、葬儀社の後飾り祭壇を使う場合は、日本の風習に倣って設置します。葬儀会社が貸し出している後飾り祭壇を使わない場合は、テーブルを使って遺骨を安置しても、特に問題はありません。キリスト教の祭壇には以下のものを揃えます。

  • 上段:十字架
  • 中段:遺影・遺骨
  • 下段:聖別されたパン(ウエハース)・聖書・ロウソク

ロウソクは上段でも下段でも構いません。生花をふんだんに使うのが、一般的な飾り方です。キリスト教において、パンはキリストの肉とされています。みなで分かち合うものという特別な意味を持っているため、祭壇に捧げるのは聖別された種なしパンか、ウエハースを用意します。

後飾り祭壇へのお供え物

お供え物

後飾り祭壇には基本的にお水と線香、故人の好きだった食べ物や花を供えましょう。

仏教・神道・キリスト教の、供物の内容と考え方を解説します。

仏教の供物の考え方

仏教の祭壇に捧げる供物は「五供(ごく)」に沿って揃えます。五供とは以下の5つの供物を指します。

  • 閼伽(あか):仏様に供える清水
  • 華鬘(けまん):生花
  • 焼香(しょうこう):線香・抹香
  • 飲食(おんじき):仏飯・霊具膳
  • 燈明(とうみょう):ロウソク

ご本尊や仏壇に飾る装飾品を「華鬘」と呼び、仏様の髪に飾る花が転じたもので、五供では花を意味しています。仏飯は「香飯(こうはん)」「お鉢(おはち)」とも呼ばれるもので、仏飯器に盛り付けて捧げましょう

神道の供物の考え方

神道の供物は以下の神饌(しんせん)を供えます。

  • 神饌:米、酒、餅、魚、乾物、野菜、果物、塩、水

神饌は御饌(みけ)ともいい、神様に捧げる食事の意味を持ちます。主食である米や餅、酒、海や川で採れた魚、野鳥や水鳥、ワカメやひじきなどの海藻や野菜、お菓子、塩、水が基本です。

これらは日本の食文化に深く関わっており、地元の産物が加わるケースも珍しくありません。家庭にしつらえる祭壇では、洗った米と塩、水のほかに、故人が好んだ食べ物を供物として捧げます。

キリスト教の供物の考え方

キリスト教には仏教や神道に見られるような、供物に意味を持たせる考え方はありません。供養は仏教用語であり、故人の冥福を祈るための儀式や行いです。また神道の供物は神道の神様に献上する食物を指します。

キリスト教が信じるものとはかけ離れているため、祭壇に供える「供物」はありません。その代わりキリスト教ではたくさんの花々を使って、祭壇を飾るのが一般的です。聖母マリアに関わりの深いユリを中心に、仏教ではタブー視されている、バラも使われます。

後飾り祭壇に使う供花はどんな花?

後飾り祭壇と供花

祭壇に供える花を「供花(くげ)」といいます

葬儀の直後は、白をベースにした生花がおすすめです。日が経つにしたがって、色味のある花を加えたり、故人の好んだ花を入れたりするのもよいでしょう。

仏式の供花にふさわしい花は、白い菊・スプレー菊・小菊・ユリ・カーネーションに、黄色、紫、赤、ピンクの花を差し色にするのが主流です。デンファレやリンドウ、トルコ桔梗なども使われます。トゲや毒性のある花や香りの強い花は、仏事にはふさわしくないとされおり、避けましょう

日蓮正宗で使われるのが樒(しきみ)です。樒は強い生命力を持つ植物であり、香りで邪気を払うと考えられている有毒の植物です。神道では花を飾るケースはあまりなく、榊を供えます。

キリスト教の場合はユリや白いカーネーションを中心に、故人の好んだ花を添えるのが基本です。

後飾り祭壇はいつまで飾る?処分方法は?

悩むシニア女性

後飾り祭壇を片づける時期は、以下のように考えられています。

  • 仏教:49日
  • 神道:50日
  • キリスト教:7日または30日

仏教では亡くなってから49日目に忌明けとなります。そのため四十九日の法要の際に納骨式も同時に執り行い、祭壇を片づけるという流れが一般的です。

神道では葬儀当日、またはできるだけ早いうちに納骨するため、祭壇を撤去するのは五十日祭を終えてからになります。五十日祭で忌明けし、翌日に清祓の儀を執り行ったのち、神棚、祖霊舎、仮霊舎と室内を清め、仮霊舎を撤去します。

キリスト教には明確なルールはなく、亡くなって7日目の追悼ミサや、1カ月後の召天日に行う納骨を期に片づけるケースがほとんどです。

撤去した祭壇は、法要やお盆でも使えます。お墓の準備が整うまで、祭壇を使い続けても問題ありません。

処分する際は粗大ごみや燃えるごみとして捨てられますが、気になる場合は、葬儀社に処分を依頼しても良いでしょうお塩やお酒をふりかけてから処分しても良いです。

後飾り祭壇を買う場所は?

喪服の女性

後飾り祭壇は、葬儀会社の提供プランにセットで含まれているのが一般的です。葬儀会社に依頼する場合、独自に用意する必要はありません。

個人的に用意したい際には、インターネットの通販サイトでも購入できます。通販サイトの後飾り祭壇は、一般的な白木以外に段ボールで作られたものまで種類があり、価格は3,000円~3万円ほどです。

お盆や法事の際の祭壇も必要な場合には、後飾り祭壇を捨てずに使っても問題ないので、できるだけ長く使えるものを購入するとよいでしょう。

葬儀会社からレンタルするケースもあります。購入やレンタルする場合は、祭壇を飾る際に必要な仏具がついているかどうかに注意しましょう。セットでついていない場合は、別途購入する必要があります。

後飾り祭壇は納骨まで遺骨を祀る祭壇

後飾り祭壇の配置

仏教では四十九日まで、故人の霊があの世をさまよっていると考えます。その間はご本尊と一緒には祀れないので、遺骨や仮位牌を安置する場所として、後飾り祭壇が必要です。

また神道では故人の霊が神様になるのは、死後50日目とされています。祖霊舎に霊璽を納めるまでの期間は、仮霊舎が欠かせません。

後飾り祭壇は故人の霊の行く先が決まるまでの、大切な祭壇としての意味を持ちます。忌明けの日まで、毎日手を合わせ故人を偲びましょう。

ミツモアで葬儀・お葬式を比較する

監修者:近藤 卓司

株式会社SAKURA 代表取締役
厚生労働省認定 一級葬祭ディレクター

1964年東京都生まれ、中央大学卒。大手互助会で大型葬儀や社葬、合同葬を担当。独自の音楽葬スタイルを研究し、世に広めるため家族葬専門葬儀社を経て株式会社 SAKURAへ転職。2012年代表取締役に就任後、音楽葬プランの立ち上げ、日本のおもてなしの原点である茶道の取り入れを含め、葬儀プランをすべて見直す。これまでに3,000名以上のお葬式を手掛ける、現役の一級葬祭ディレクター。

著書・監修

  • 『わたしの葬式心得』(幻冬舎) 2016/07/01発行

コメント
近年ではコロナ禍により、弔問客にご遠慮をいただくために、後飾り祭壇は設置せずに菩提寺などの寺院に四十九日まで守っていただくケースが増加しています。核家族化の更なる進行もその理由のひとつです。
しかし、後飾り祭壇を設置する事は仏壇と同様に「大切な方との対話」の意味でもあります。また『心のよりどころ』にもなるでしょう。後飾り祭壇に関しては、残されたご家族で十分に話し合いましょう。その話し合いも、お葬式の一環なのです。