ミツモアメディア

加給年金についてわかりやすく解説!対象者の条件や受け取れる金額

最終更新日: 2024年02月07日

加給年金は厚生年金の加入者かつ、条件を満たした配偶者や子どもがいる人に加算される年金で、老後の家計を支える費用の1つです。

条件を満たした場合、厚生年金受給者の配偶者に対する加給年金の額は、年間で「223,800円」です。さらに年齢に応じた特別加算が上乗せされます。

1人目、2人目の子どもは、1人当たり年間「223,800円」です。3人目以降は、1人当たり年間「74,600円」になります。

加給年金は誰でももらえるわけではありません。また加給年金を受給するには、手続きが必要です。加給年金を受け取れる条件や、申請方法を確認しましょう。

この記事を監修した専門家

ファイナンシャルプランナーCFP®認定者/相続診断士
宮﨑真紀子

加給年金とは

こちらを見てほほ笑んでいる男女

加給年金とは年金受給者が配偶者や子供を養う必要がある場合、生活をサポートするため上乗される年金です。

対象は会社員や公務員など厚生年金の加入者のみです。65歳以上になったときに、一定年齢以下の夫や妻・子どもがいて、定められた加入期間を満たしていれば、老齢年金に上乗せして受給できます。

自営業者や農業・漁業に従事している人は、対象となりません。

ただ厚生年金に入っている人が、受給の条件をクリアしていたとしても、加給年金を受け取るには手続きが必要になります。自分が受け取れるのか・どのように手続きをするのかを知って、今後の資金計画に生かしましょう。

加給年金を受け取れる人の条件

年金手帳の画像

加給年金を受け取れる人の条件を確認しましょう。厚生年金の加入期間や配偶者・子どもの年齢などに関して、一定の要件が定められています。

厚生年金に20年以上加入している

加給年金を受け取るには、20年以上厚生年金保険に加入していることが前提です65歳の時点で20年未満でも、その後も働き続けて加入期間が20年に届けば、受給資格を得られます

また厚生年金保険法における「中高齢者の特例」が適用される人は、加入期間が20年に達していなくても、受給できる決まりです。

中高齢者の特例は、1951年4月1日よりも前に生まれていて、男性なら40歳以上・女性(または坑内員・船員※)なら35歳以上のときに、以下の期間厚生年金に加入していた方が対象となります。

生まれた年 厚生年金加入期間
1947年4月1日以前 15年
1947年4月2日~1948年4月1日 16年
1948年4月2日~1949年4月1日 17年
1949年4月2日~1950年4月1日 18年
1950年4月2日~1951年4月1日 19年

65歳未満の配偶者・18歳までの年度の子がいる

加給年金を受け取れるのは、夫や妻・子どもがいる厚生年金の被保険者です。配偶者や子どもの年齢によって、受給できるかが決まります。

配偶者の年齢要件は「65歳未満」です。原則として本人が65歳になれば、厚生年金を受給できるため、年下の夫や妻がいれば受給できる可能性があるといえます。

夫や妻の生年月日が1926年4月1日より前のケースでは、配偶者の年齢制限がなくなる点も、覚えておきましょう。

子どもの年齢要件は「18歳に到達する年度の末日まで」です。子どもに1級または2級に該当する障害がある場合には、「20歳に到達する年度の末日まで」となります。

受給者が配偶者や子どもの生計を維持している

年齢の条件をクリアする家族がいても、その家族が受給者によって「生計維持」「生計同一」している関係でなければ、加給年金を受給できません

「生計維持」とは配偶者や子どもの前年の収入が850万円未満か、所得が655.5万円未満である状態です。配偶者や子どもに定められたライン以上の収入があれば、加給年金を上乗せ支給してサポートする必要がないと見なされます。

「生計同一」とは生活費を同じ財布から出している世帯です。単身赴任や就学などで住所が違うケースでも、経済的な援助を受けていれば、生計が同一だと見なされます。

加給年金の支給額

スーツ姿の女性から説明を受ける男性

加給年金の支給額は、配偶者と子供2人目までは、1人あたり年間223,800円、子供3人目以降は1人当たり年間74,600円です。

配偶者の場合、さらに年齢に応じた特別加算が上乗せされます。

特別加算の金額

配偶者に対する特別加算の金額は以下の通りです。

配偶者の生年月日 特別加算の額
1934年4月2日~1940年4月1日 33,100円
1940年4月2日~1941年4月1日 66,000円
1941年4月2日~1942年4月1日 99,100円
1942年4月2日~1943年4月1日 132,100円
1943年4月2日以降 165,100円

モデルケースで実際の支給額を確認

受け取れる加給年金の額をモデルケースで考えてみましょう。

  • 夫65歳:23歳から継続して厚生年金保険に入っていた。65歳で仕事を定年退職し、老齢厚生年金の受給をスタートした
  • 妻55歳(2022年時点、1967年生まれ):21歳から12年間会社員として厚生年金保険に入っていた。結婚後は専業主婦をしており、収入はなし
  • 子ども:20歳と16歳(ともに学生・収入なし)

このケースでは以下の加給年金が支給されます。

  • 妻を対象とした基本の年金:223,800円
  • 配偶者の特別加算:165,100円
  • 16歳の子どもに対する加給年金:223,800円

夫の老齢厚生年金に上乗せされる加給年金は、合計で「612,700円」です。20歳の子どもは対象とならない点に注意が必要です。

加給年金が支給されないケースとは

あごに手を当てて考え事をする男性

受給を開始できる基準をクリアしていても、「配偶者も厚生年金に20年以上加入している」「配偶者が別途特定の年金の受給権がある」「在職老齢年金の支給が停止」の場合、加給年金が受給できません。

配偶者が厚生年金に20年以上加入している

配偶者も20年以上厚生年金保険に入っていて、65歳未満で老齢厚生年金を手にできる資格を得た場合、加給年金がストップします

たとえば女性の配偶者が新卒で働き始めて、出産をきっかけに離職し、子どもが手を離れた段階で仕事に復帰すれば、厚生年金保険に入っていた期間が通算で20年を超える可能性が十分にあります。

妻が長く働き続けると、夫が加給年金を上乗せして受け取れる期間が、短くなるケースがあるのです。

配偶者が特定の年金をもらっているか受給権がある

老齢厚生年金以外にも夫や妻が受給している、もしくは受給の資格があると加給年金の支払いがストップされる年金があります。具体的には以下のような年金です。

「受け取る権利があるとき」加給年金の支払いが停止される年金

  • 厚生年金保険法の老齢厚生年金
  • 旧厚生年金保険法、旧船員保険法の老齢年金
  • 各種共済組合等の退職共済年金、退職年金等

「受けているとき」加給年金の支払いが停止される年金

  • 厚生年金保険法の障害厚生年金
  • 旧厚生年金保険法、旧船員保険法の障害年金
  • 国民年金法の障害基礎年金および旧国民年金法の障害年金
  • 各種共済組合等の障害共済年金、障害年金等

在職老齢年金の支給が停止されている

在職老齢年金とは60歳以上で厚生年金に入っている人が、働きながら受給できる年金です。

給料と老齢厚生年金の合計が月額470,000円を超えると、老齢厚生年金が減額または全額支給停止になります。

在職老齢年金が全額停止になると、加給年金の支給も止まるため注意しましょう。年収が多ければ、老齢厚生年金とともに加給年金も受け取れなくなる可能性があるのです。

なお在職老齢年金がほんの一部でも支給されていれば、加給年金もそのまま満額で支払われます。

加給年金に関する手続き

住民票の画像

加給年金の支給を受けるときや、停止するときの手続きを紹介します。手続きの仕方を事前に知っておけば、受給を開始するときにもスムーズでしょう。

支給開始の手続きに必要となる書類

支給をスタートするときの手続きに必要なのは以下の書類です

  • 老齢厚生年金・退職共済年金 加給年金額加算開始事由該当届:日本年金機構の公式ホームページからダウンロード可能
  • 受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本:厚生年金保険の被保険者と配偶者や子どもの続柄をチェックする
  • 世帯全員の住民票の写し:厚生年金保険の被保険者と配偶者や子どもの生計が同一であるかをチェックする
  • 配偶者や子どもの所得証明書か非課税証明書:厚生年金保険の被保険者によって、配偶者や子どもの生計が維持されているかをチェックする

戸籍謄本・戸籍抄本・住民票の写しは、書類を提出する日の6カ月以内に取得したものが必要です。

支給開始手続きの流れ

支給スタートまでの手続きは以下のような流れで進めます。

  1. 必要な書類を準備する
  2. 年金事務所もしくは年金相談センターで手続きをする
  3. 日本年金機構から「加給年金の手続きのお知らせ」が届く
  4. お知らせに同封された「老齢年金加給年金加算開始事由該当届(生計維持申立書)」に必要事項を記入し、返信する

戸籍抄本や戸籍謄本の取得は、マイナンバーカードを持っていると、電子申請が利用できて便利です。返信する届けには受給予定者の住所や名前、夫や妻・子どもの名前を記入します。支払いの開始は届けを返信してから1~2カ月後です。

支給を停止する場合の手続き

夫や妻が65歳未満で、老齢年金や退職年金・障害年金などを受け取る権利を取得したときや、離婚したり死別したりしたときは、支払いを停止する手続きが必要です

受給を停止する手続きは、受給停止の理由によって変わります。配偶者が年金を受け取れるようになったケースで必要なのは、「老齢・障害給付 加給年金額支給停止事由該当届」です。

離婚や死別で対象から外れたケースでは「加算額・加給年金額対象者不該当届」を提出します。家族が受給条件に当てはまる年齢を過ぎたときは、届け出の必要はありません。

加給年金の受給が終わると振替加算が受け取れる

加給年金のブロックを持つ人

加給年金を受給する上で見逃せないのが「振替加算」です。振替加算とは何か、どのような人にいくら支払われるのかを紹介します。

振替加算とは

振替加算とは加給年金の代替として支払われる、老齢基礎年金の加算です。配偶者が65歳に到達すると、加給年金の受給資格を失います。

加給年金の打ち切りにより減ってしまった年金を補てんするのが、振替加算の役割です。振替加算は配偶者の老齢基礎年金に加算されます。

1986年4月より前の年金システムでは、厚生年金保険に入っている人の配偶者が、国民年金に加入するかどうかは任意でした。加入していない期間がある人は、受給できる老齢基礎年金の額が少なくなります。

国民年金に加入していなかった配偶者の生活を支えるため、考案されたのが振替加算です。

振替加算がもらえる人の条件

振替加算を受給できるのは、加給年金を受け取っていた人の夫や妻で、老齢基礎年金の受給資格を得たときに、以下の条件をクリアしている人です

  1. 1926年4月2日から1966年4月1日までの間に誕生している
  2. 厚生年金や共済年金を受給している場合は、加入期間が20年に満たない
  3. 厚生年金保険に加入している期間が、男性は40歳以降・女性は35歳以降において一定期間未満である

3の特定の生年月日に当てはまる人は、厚生年金保険の入っている期間がある程度以上あると振替加算が受けられません。以下の表を参考に受給資格があるか確認しましょう。

被保険者の生年月日 振替加算が受けられなくなる加入期間
1947年4月1日以前 15年
1947年4月2日~1948年4月1日 16年
1948年4月2日~1949年4月1日 17年
1949年4月2日~1950年4月1日 18年
1950年4月2日~1951年4月1日 19年

上記の生年月日に当てはまる人は、自分の厚生年金加入期間を精査しておくとよいでしょう。

振替加算でもらえる金額

振替加算によって支払われる額は1927年4月1日までに誕生した人に支払われる額を最大として、年齢が低くなるにつれて減額されます。1966年4月2日以降に誕生した人でゼロになる仕組みです。

振替加算の支給額の一例を以下に挙げます。

配偶者の生年月日 振替加算の支給額(年額)
1927年4月1日以前 223,800円
1927年4月2日~1928年4月1日 217,757円
1958年4月2日~1959年4月1日 32,899円
1959年4月2日~1960年4月1日 26,856円
1960年4月2日~1961年4月1日 20,813円
1961年4月2日~1966年4月1日 14,995円

1966年4月1日までに誕生した人は、振替加算の額も一緒に確認しておくと、老後のプランをより明確に立てられるでしょう。

加給年金の手続きを忘れてしまったら?

困っているビジネスパーソン

さまざまな種類の年金が存在し、全てを把握しててきぱきと手続きをするのは難しいものです。加給年金の受給資格があるにもかかわらず、手続きをしていなかった場合、どうなるのでしょうか。

過去5年分は遡及請求が可能

加給年金をはじめ、年金を受け取る権利には5年間の時効があります。つまりもらい忘れに気付いた時点で請求すれば、5年分さかのぼって受け取ることができるということです

遡及請求をする場合、老齢厚生年金または退職共済年金の加給年金額加算開始事由該当届・受給権者の戸籍抄本または戸籍謄本・世帯全員の住民票の写しに加え、配偶者や子どもの過去の所得証明が必要になるため、手続きが面倒に感じるかもしれません。

しかし長年支払ってきた年金をもらえる権利なので、年金事務所に問い合わせ、しっかり受給しましょう。

加給年金も課税の対象

困った様子の男女

加給年金には所得税が課税されます。場合によっては確定申告が必要という点に注意しましょう。

条件を満たした人は年金の確定申告が必要

公的年金は非課税となる一部の年金を除き、所得税の課税対象です。年金の支払い時に源泉徴収はされていますが、確定申告によって、納めた税金の過不足を精算する必要があります。

ただ公的年金には「確定申告不要制度」が設けられていて、一定の条件をクリアする人なら申告の必要はありません。確定申告不要制度の対象者は以下の通りです。

  • 公的年金の収入金額が合計400万円以下である
  • 公的年金の受け取りによって得られる、雑所得以外の所得が20万円以下である

条件に当てはまらない年金受給者には、確定申告を行う義務が発生するので、注意しましょう。

面倒な申告作業は税理士におまかせ

全く経験がない人にとって確定申告は、煩雑かつ難しい作業です。申告内容を間違えて納める税金を少なく申告していれば、修正申告が必要になり、二度手間となるでしょう。

自分で正しく申告ができる自信がない人には、申告作業を税理士に任せるのがおすすめです。申告書を作るには手間も時間がかかります。税金のプロである税理士に作業を一任すれば、大幅な時間の短縮となるでしょう。

確定申告を任せられる税理士を探すなら、ミツモアがおすすめです。簡単な質問に答えるだけで税理士から見積もりが届きます。最大5件の見積もりを一度に取れるため、複数の税理士事務所に連絡する手間が省けるでしょう。

加給年金の支給対象になるなら忘れずに手続きを

年金手帳を見る人

加給年金は厚生年金受給者でありながら、配偶者や子どもを養わなければならない方の生活をサポートします。受給できれば、老後の生活に余裕が生まれるでしょう。

しかし加給年金は、申請しないと受給できない年金です。制度を知らないままに年齢を重ねてしまえば、受け取れるはずの年金を受け取れないままになってしまいます。受給の条件をクリアしているなら、忘れずに手続きを進めましょう。

ミツモアで葬儀・お葬式を依頼する

監修者:宮﨑真紀子

ファイナンシャルプランナーCFP®認定者/相続診断士

コメント
年金は複雑で「加給年金」のことを知らない人は多いです。知らなくて請求しないでいると受給出来ません。分かりにくい点もありますので、年金の請求手続きの際は、年金事務所などで相談するのがおすすめです。