終活年賀状(年賀状じまい)とは年賀状を翌年から辞退する旨を伝える、最後の年賀状です。
高齢で年賀状の送付が難しくなってきた方や、はがき以外の連絡を取りたいと考える方は、終活年賀状を送ることで、年賀状の送付を今年限りにすることができるでしょう。
ただし相手に失礼のない書き方をしないと、人間関係にダメージを与える可能性があり注意が必要です。終活年賀状を書く際のポイントや、文例をチェックしましょう。
この記事を監修した専門家
ファイナンシャルプランナーCFP®認定者/相続診断士
宮﨑真紀子
終活年賀状(年賀状じまい)の目的
終活年賀状は「年賀状じまい」とも言い、年賀状の送付を今年限りで終わらせたいときに出すものです。
現代では郵便以外の通信手段を用いて、親戚や知人と気軽にやりとりできることから、年賀状という形式以外で新年の挨拶をしたいと考える人が増えています。そのため終活を始めるにはまだ早い、若い世代の人であっても送るケースは少なくありません。
付き合い自体を終わらせる意味はない
「年賀状のやりとりをやめたら、相手を傷付けるのでは」と感じる人もいるかもしれません。中には絶縁状を突き付けるようで、気まずいと感じる人もいるでしょう。
しかし終活年賀状は「連絡を取り合うのを完全にやめる」ことを示す年賀状ではないです。親戚や旧友とスマホやネット上で連絡を取り合いたいと考えて、終活年賀状を送るケースも珍しくありません。
ネガティブな連絡ではないことを示すために、終活年賀状には今後の連絡方法についての提案を記載するのがおすすめです。
礼儀として送る場合もある
これまで年賀状のやりとりをしていたのに、何も理由を告げずにやめてしまうと、場合によっては相手を不愉快にさせかねません。そのため礼儀として終活年賀状を送る人もいます。
終活年賀状を送って、年賀状の送付をやめる理由を丁寧に伝えれば、失礼な印象を与えずに済むででしょう。
終活年賀状を出すメリットやデメリット
終活年賀状にはよい点もあれば悪い点もあります。メリットとデメリットの両方を理解して、「こんなはずではなかった」と後悔しないようにしましょう。
年賀状作成コストや手間を減らせる
終活年賀状を出せば、これまで年賀状作成にかけていたコストや手間がなくなる点がメリットです。年賀状を送る相手が多いと、作成にかかるコストや手間は決して少なくありません。
ハガキ1枚当たりの値段は通常63円で、多くの年賀状を送るほど費用が増します。プリンターで宛名の作成や写真のプリントなどをしている人は、インク代も別に必要です。外注する場合は50枚で5,000~9,000円が目安ですが、更に高額になることも考えられます。
何週間もかけて、1枚ずつ丁寧に手で書く人もいるでしょう。終活年賀状を出せば、翌年からはお金や時間をかけずに、忙しい年末をゆっくりと過ごせます。
スムーズなコミュニケーションに役立つ
メリットの2つ目は、終活年賀状がきっかけで、知人とよりスムーズなコミュニケーションが取れるようになる可能性がある点です。
年賀状のやりとりがあっても、何年も顔を合わせておらず疎遠になっている人もいるでしょう。そのような知人に終活年賀状を通してメール・LINE・SNSといった連絡先を知らせることで、連絡を取り合うきっかけを作れます。
お互いがやりとりをしやすい方法が分かると、再び親しい関係を築けるケースは少なくありません。
人によっては連絡が途絶える可能性も
終活年賀状を送るデメリットは、人によっては関係が途絶える可能性があることです。新たな連絡手段を提示してもらっても、その手段で連絡できない相手とは交流が途絶えてしまい、近況を知るすべがなくなってしまうでしょう。
特に年配の方はスマホを持っていないケースもあります。年賀状のみでやり取りをしていた場合、関係が絶たれてしまう可能性についても考慮しておきましょう。
「絶縁状が送られてきた」と相手が誤解してしまわないよう、十分に配慮して終活年賀状を書く必要があります。
失礼のない終活年賀状の書き方
終活年賀状は、丁寧に気持ちを伝える気持ちで書くことが大切です。細かい文字でたくさんの文章を書くと、読む方も大変なので、できるだけシンプルにまとめましょう。
終活年賀状を書く時のポイントを紹介します。
年始の挨拶から始める
終活年賀状は通常の年賀状と同じように、「謹賀新年」「明けましておめでとうございます」「本年も何卒よろしくお願い申し上げます」などの文言から始めます。
いきなり「年賀状を送るのをやめます」と本題に入るのは、受け取った際に不快な気持ちになる方もいるため避けましょう。
失礼な印象を与えないように、例年通りの挨拶を忘れないようにすることが大切です。「家族みんな元気でいます」といった簡単な近況も知らせるとよいでしょう。
寒中見舞いなど、年賀状以外で年賀状じまいの旨を知らせる場合も、通常の挨拶から始めます。
年賀状を終了する理由を知らせる
新年の挨拶や近況などを書き終えたら、年齢や連絡手段の変更といった理由を添えて、年賀状を送るのを今後辞退する旨を書きましょう。
理由をまったく書かないと「嫌われるようなことをしてしまったのか」「何かよくないことがあったのではないか」と相手を心配させてしまいます。
「年齢を重ねて、筆を執るのが難しくなった」といった個人的な理由で構わないので、必ず添えるようにしましょう。
今後も付き合いを続けたい旨を明記する
年賀状をやめると伝えるだけでは、これをもって連絡を取らないと誤解されてしまいかねません。
誤解を防ぐためには「今後も付き合いを続けていきたいこと」を明記することが大切です。
また「皆様」「どなた様とも」といった言葉を使い、個人的に終活年賀状を送っているわけではなく、全員に対して送っているという旨を示しましょう。
今後の連絡手段を提案する
交流をやめることが目的ではないと伝えるために、連絡できる別の手段を提案するのもおすすめです。
たとえばSNSのアカウントやメールアドレスなど、自身が連絡を取りやすい方法を伝えます。できれば複数の連絡手段を提示するとよいでしょう。
お詫びや感謝も忘れずに
終活年賀状は一方的に年賀状をやめる旨を連絡するものです。「誠に勝手ながら」「身勝手で申し訳ありません」などの一文を添えて、お詫びの気持ちを伝えましょう。
同時にこれまで年賀状を送ってもらっていたことに対する、お礼の気持ちも添えるとより丁寧な印象を与えられます。
最後の年賀状になることを考え、これまでの感謝を込めて記載するとよいでしょう。
一般的な終活年賀状の例文
終活年賀状を初めて送る場合、どのように書けばよいのか、戸惑う可能性があります。一般的な終活年賀状の例文を見て、参考にしましょう。
特定の年齢や人生の節目を迎えた場合
特定の年齢や人生の節目を迎えたことを理由に、終活年賀状を出すのが一般的です。どのように書けばよいのか確認しましょう。
特定の年齢とは還暦(60歳)、古希(70歳)、喜寿(77歳)など、また人生の節目とは孫の誕生や、子供の成人などです。
【文例(60代~)】
明けましておめでとうございます。お元気でお過ごしでしょうか。
私も今年で○○(傘寿、卒寿、米寿など)を迎えました。高齢になり年賀状をしたためることも難しくなってきたため、毎年お送りしていた年賀状も、今年限りで失礼いたしたいと考えております。
誠に勝手ではございますが、何卒ご容赦ください。今後も変わらぬお付き合いのほどよろしくお願い申し上げます。
令和5年 元旦
【文例(子育ての節目)】
明けましておめでとうございます。旧年中は誠にお世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。
今年の4月には次男が高校に入学予定となっており、ようやく子育てが一段落しそうです。これを機に来年から、年賀状による挨拶をどなた様にも控えさせていただくことにいたしました。誠に勝手ではございますが、ご容赦いただければ幸いです。
これまで年賀状のやりとりをしていただき、誠にありがとうございました。今後はSNSやLINEなどで連絡をいただけると、ありがたく存じます。
メールアドレス:○○
LINE ID:○○
令和5年 元旦
ほかの連絡手段を取りたいことを理由に
昨今は郵便以外の通信手段を利用し、年始の挨拶をするケースも増えています。「メールやLINEなどでのやり取りに移行したい」と伝える場合の例文は以下です。
【文例】
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。最近自分用のパソコンを新たに購入し、息子たちに教わりながらSNSを始めました。
つきましては誠に身勝手ではありますが、今年の年賀状で年始の挨拶を失礼したく存じます。これまで年賀状のやりとりをしていただき、ありがとうございました。
今後はメールやSNSで連絡を取り合えれば幸いです。ぜひ気軽にご連絡いただければと思います。以下が連絡先です。
メールアドレス:○○
Instagram:○○
Twitter:○○
令和5年 元旦
失礼な印象を与えないようにする方法
終活年賀状を送る際は、失礼な印象を与えないようにすることが大事です。特に注意したいポイントを見ていきましょう。
全員と年賀状のやりとりをやめる
終活年賀状は、できれば交流がある人全員に対して送るとよいでしょう。
特定の相手にだけ終活年賀状を送ると、何かの拍子に「うちだけ終活年賀状が送られてきた」と気付かれた際、嫌な思いをさせてしまいかねません。
また知り合い同士で話をしているとき、自分にだけ終活年賀状が送られてきていないと知った際にも、傷付けてしまう可能性があります。
なるべく交流のあった知人全員に送り「どなた様とも、年賀状のやりとりをしないことにしました」と添えれば、平等に接していると感じてもらえます。
おすすめの終活年賀状の作り方
終活年賀状を作成する際は、通常の年賀状のデザインと同じでよいのか、迷う場合があります。作り方のポイントを確認しましょう。
華やかなデザインにする
終活年賀状であっても、通常の新年の挨拶をすることを考えて、新たな年の始まりに相応しい華やかなデザインを選びましょう。
特別普段と異なるデザインにする必要はありません。しかしお世話になった恩師や上司など目上の人にも送ることを考え、「フォーマルな雰囲気」のデザインを選ぶのがおすすめです。
最後の挨拶のため、あまりにもカジュアルなデザインにしてしまうと無礼だと感じる人もいるかもしれません。自分らしさを取り入れながら、上品な雰囲気に仕上げるとよいでしょう。
プリンターのテンプレートを利用
「自宅で利用しているプリンターのメーカーサイト」にアクセスすると、年賀状用の無料のテンプレートを配布している場合があります。
無料のテンプレートを使用する方法は、自分で年賀状を手作りしたい人や、年賀状にかけるコストをできるだけ減らしたい人におすすめです。自宅でプリントできれば、1枚ずつ手で書く手間を減らせます。
イラスト入りや写真など、豊富なデザインに対応しているメーカーは多いです。使い慣れているプリンターを使用すれば失敗も少ないでしょう。
郵便局や印刷サービスを利用
自分で年賀状を作る手間を省きたいなら、郵便局や印刷サービスを利用する方法がおすすめです。豊富なデザインの中からイメージに合うものを選べ、印刷のクオリティも高いでしょう。
急いでいるときは、即日出荷に対応している印刷サービスを利用すると便利です。専用アプリを用意し、より簡単に注文できるように工夫されている場合もあります。
プリントを受け付けている最低枚数は決まっていることが多いです。一般的には枚数が多いほど、1枚当たりの値段が安いので、大量の年賀状を印刷する必要がある人に向いています。
終活年賀状を送り人間関係を円滑にしよう
終活年賀状を出せば、これまで年賀状にかけていたコストや手間を省け、うまくいけば大切な人との交流がこれまでよりも盛んにすることができます。
しかし書き方を間違えると失礼な印象を与えてしまうので、年賀状を最後にする理由や、今後も付き合いを続けていきたい旨を丁寧に伝えるようにしましょう。
これまで年賀状のやりとりをしてもらっていたことに対する、お礼の気持ちを添えるのも大事です。通常の年賀状と同じように、華やかなデザインを心掛け、新年のおめでたい雰囲気を壊さないように、心掛けましょう。
終活に関する相談をしたい場合は、ぜひミツモアを利用してみてください。複数業者から相見積もりが取れるので、自分にあった専門家を探るでしょう。相続に関するお悩みや、不用品の整理、葬儀に関する相談まで可能です。
監修者:宮﨑真紀子
ファイナンシャルプランナーCFP®認定者/相続診断士
コメント
「終活年賀状」はまだ耳慣れないコトバです。年賀状からそろそろ卒業したいと思う方は多いのではないでしょうか。徐々に出状枚数を減らすというやり方もありますが、少し後ろめたさを感じます。失礼のない形で終活年賀状を利用すると、人間関係を損なうことなくスッキリと新年を迎えられそうです。