訃報を受け取った際、「お通夜」「葬儀・告別式」どちらに参列すべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
お通夜は故人と過ごす最後の夜であり、葬儀・告別式は故人を送る宗教儀礼と、社会的な別れの儀式を指します。
お通夜と葬儀・告別式の違いを踏まえて、どちらに参列すべきかを判断しましょう。香典や服装マナー、参列できないときの対処法も解説します。
この記事を監修した専門家
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸
お通夜と葬儀・告別式の違いは?
お通夜と葬儀・告別式の明確な違いは、行われる時間帯と、儀式の意味合いです。
葬儀・告別式は直前に葬儀が行われることが多いので、葬儀との違いも合わせて確認しておきましょう。
開催日・時間 | 特徴 | |
お通夜 | 亡くなった翌日・翌々日 18時~20時 |
慣習的意味合い 通夜振る舞い(食事)が出される |
葬儀・告別式 | 通夜の翌日 時間は問わず |
葬儀:宗教的な意味合い 告別式:社会的なお別れの意味合い 式の後に食事はない |
お通夜の内容と流れ
お通夜とは故人と過ごす最後の夜です。故人のそばに、家族や近親者などが夜通し寄り添うことから「通夜」と呼ばれるようになりました。
近年は数時間で儀式を完了する「半通夜」が一般的で、亡くなった翌日かそれ以降の日の18時~20時ごろに執り行います。
通夜の流れは以下です。僧侶による読経や法話といった、宗教的な儀式を含みます。
【お通夜の流れ】
- 受付
- 遺族・親族着席
- 喪主挨拶
- 僧侶入場
- 読経・焼香・法話
- 僧侶退場
- 喪主挨拶
- 通夜振る舞い
通夜振る舞いの後は、遺族が交代で遺体に付き添うケースもあります。
葬儀・告別式の内容と流れ
告別式は社会的なお別れの儀式です。仏教のお葬式の場合、告別式の直前に葬儀を行うことがほとんどのため、葬儀・告別式が一連の流れの中で行われます。
実際は一般の人は葬儀より通夜に参列する人が多いので、通夜が告別の場となっています。
【葬儀・告別式の流れ】
- 受付
- 遺族・親族着席
- 僧侶入場
- 読経・焼香・法話
- 僧侶退場
- 喪主挨拶
- 別れ花
- 出棺
出棺の後は、遺族や親しい参列者のみで火葬が行われます。一般の参列者は、出棺を見送ったら解散です。
お通夜と葬儀・告別式はどちらに参列すればいい?
お葬式の案内をもらった際、お通夜と葬儀・告別式どちらに参列すべきなのでしょうか。参列すべき基準は、故人との関係性により異なります。
親族・親しい友人はお通夜、葬儀・告別式どちらにも参列
ご遺族や親戚は、基本的にお通夜と葬儀・告別式の両方に参列するのが望ましいです。また故人と親しかった友人や、家族ぐるみで親しくしている方も、両日参列するとよいでしょう。
ただし仕事や、遠方から訪れる関係でどうしても1日しか都合がつかないときは、どちらか一方のみで問題ありません。
なお両方に参列する場合は、香典はお通夜で渡します。
一般参列者はどちらに参列してもよい
お通夜は本来、遺族や親族・ごく親しい人が夜通し付き添う儀礼で、各地で慣例ととして行われていたものでした。告別式は社会的なお別れの意味合いの儀式のため、誰でも参列できるとされています。
ただし近年は、突然の訃報で日中時間をとることが難しいことから、仕事後に「急遽駆けつける」という意味合いでお通夜のみに参列する人も増えています。
そのため日程と会場が告知されているのであれば、お通夜と葬儀・告別式のどちらに参列しても失礼はありません。
またどちらに参列すべきかの案内が訃報に書いてある場合は、その内容に従いましょう。
お通夜と葬儀・告別式、香典はどちらで持っていく?
香典は基本的に、お通夜か葬儀・告別式のどちらかで渡せば問題ありません。参列する式にて、受付でお悔やみの言葉とともに渡しましょう。
家族葬のような内輪の葬儀に参列する場合も、喪家から「香典は辞退します」と連絡がなければ用意します。
両方に参列するときはお通夜で渡す
お通夜と葬儀・告別式それぞれに参列する際は、お通夜で香典を出し葬儀・告別式では受付で記帳のみとします。
香典の二度渡しは「不幸が重なる」という意味で、マナー違反という説もあれば、両方で渡す地域もありますが、基本的には一度でOKです。
告別式の受付では「お香典はお通夜でお渡ししました」と一言伝えましょう。
どちらにも参列できないときの香典は?
お通夜にも通夜・告別式にも参列できないときは、基本的に香典を渡す必要はありません。どうしても渡したい場合は、代理人を立てて参列するか、現金書留で郵送しましょう。
代理人は特に決まりはなく、香典を託せる人で構いません。代理人を立てることは失礼には当たらず、後日送られるよりも香典の整理がしやすいのでご遺族にとっては助かるでしょう。
郵送する場合、香典用の不祝儀袋に現金を入れ、現金書留の封筒を使って葬儀後2~3日を目安に郵便局から送ります。参列できなかった失礼をお詫びする一言や、お悔やみの言葉を添えましょう。
ただし郵送や弔問する場合は、事前にご遺族に確認することが重要です。現金書留の場合、郵便局員による直接手渡しになるため、ご遺族が在宅である必要があります。また弔問する場合は、ご遺族の対応の負担もかかるものです。何よりもご遺族の都合や意向を優先しましょう。
香典の相場や渡し方のマナー
お通夜でも葬儀・告別式でも、香典の相場や渡し方は変わりません。基本的なマナーを確認しておきましょう。
香典の相場
香典の金額は年齢や故人との関係性によって、相場が変わります。以下はあくまでも目安のため、ご自身の経済状況に応じて費用を検討するとよいでしょう。
故人との関係 | 20代 | 30~40代 | 50代~ |
祖父母 | 1万~2万円 | 2万~5万円 | 5万円~ |
親 | 3万~10万円 | 5万~10万円 | 10万円~ |
兄弟姉妹 | 3万~5万円 | 3万~5万円 | 5万~10円 |
叔父・叔母 | 5,000~1万円 | 1万~2万円 | 2万~3万円 |
友人・知人 | 5,000円 | 5,000~1万円 | 5,000~1万円 |
上司・部下 | 5,000~1万円 |
香典の用意と渡し方
お通夜や葬儀・告別式に参列する前にしっかりと香典を用意しておきましょう。
香典袋は文具店や百貨店、スーパー、コンビニなどで購入できます。また香典に包むお札は、新札ではなく使用感のあるお札を使いましょう。表書きは宗教や宗派によって異なりますが、事前に把握できるとは限りませんので「御霊前」「御香典」が無難です。
香典を持ち歩くときは、必ず「袱紗(ふくさ)」に包みましょう。
受付では、以下の流れで渡します。
- 芳名帳に氏名と住所を書く
- 袱紗から香典を出し袱紗の上に乗せたまま受付の人に渡す
- お悔やみの言葉を述べる
お悔やみの言葉は「この度は誠に御愁傷様でございます。」が基本です。宗教・宗派にかかわらず使用できる最上級のお悔やみの言葉です。
お通夜と葬儀・告別式の服装マナー
喪服には「正喪服」「準喪服」「略喪服」と格があり、故人との関係によってどれを着用すべきかが決められています。お通夜と葬儀・告別式の服装マナーを確認しましょう。
【お通夜】喪主は正喪服・参列者は略喪服
最も格式が高い正喪服は、喪服・三親等以内の親族が着用するものです。
お通夜の場合、一般参列者は略喪服がふさわしいとされています。喪主・三親等以外の友人や知人は、親族よりも格下の喪服を着用するのがマナーです。
以前は、一般参列者がお通夜で喪服を着用すると「前もって用意していたようで、縁起でもない」と思われてしまうこともありました。しかし現代では、喪服やブラックスーツを常備している人が大半なので、通夜でも着用して参列する人がほとんどです。
男性の略喪服は地味な色のスーツを着用しましょう。シャツは白の無地、ネクタイやベルトなどの小物類はダークカラーで揃えます。女性はダークカラーのワンピースか、アンサンブルです。肌の露出は極力避け、ストッキングなどの小物類はなるべく黒でそろえましょう。靴はヒールが高すぎない黒のパンプスがおすすめです。
【告別式】喪主は正喪服・参列者は準喪服
葬儀・告別式では喪主と三親等内の親族は正喪服を着用します。男性の正喪服はモーニングコートもしくは和装、女性はブラックフォーマルもしくは和装です。
ただし男性の和装やモーニングコートは社葬や団体葬以外で着用するケースはほとんどありません。90年代以降は女性の和装もほとんど見かけなくなりました。
一般に、葬儀・告別式においても喪主やご遺族が準喪服を着用するケースが増えています。
一般参列者はブラックスーツやブラックフォーマルを基本とした準喪服を着用しましょう。一般参列者は喪主や遺族より、格式の低い喪服を着るのがマナーではありますが、格上・格下の序列も差がなくなってきていますので、そこまで気にする必要はないでしょう。
かつては女性のパンツスーツはカジュアルな印象になりがちでしたが、多様性を受け入れる社会になり、黒のパンツスーツでの参列も違和感がなくなっています。
参列できないときはどうしたらいい?
何らかの都合でお通夜と葬儀・告別式の両方に参列できないときは、参列できないと分かった時点で、直ちに遺族にその旨を伝えましょう。
弔意(悼む気持ち)を伝えることが重要
お通夜・葬儀・告別式どちらにも参列できないという連絡は、簡潔に「やむを得ない事情があり、申し訳ございませんが参列できません」と伝え、合わせてお悔やみの言葉を述べましょう。
また参列や香典の代わりに、供花や供物・弔電を送る、後日弔問に訪れるといった方法があります。
ただしお菓子や果物などの供物や、菊やユリなどの供花を送る際は、事前にご遺族に確認をとりましょう。祭壇やほかの供花に合わせて花が決まっている場合があったり、家族葬の場合は供花や供物を辞退している可能性があるためです。葬儀式場で他店からの持ち込みの供花に制限がある場合もあります。
弔問する場合は、葬儀後の1週間~四十九日法要までに、訪問の予定を決めましょう。こちらも必ず事前にご遺族に申し入れ、相手の予定に日時を合わせます。
お通夜と葬儀・告別式の違いを知って適切な対応を
本来、お通夜は近親者が故人に付き添う儀礼であり、忌み籠りをする期間でもありました。葬儀は死者を送る宗教的な儀式、告別式は明治に入って中江兆民から始まったといわれる別れの儀式です。
故人と深い関係にあった以外は葬儀・告別式に参列するのが一般的でしたが、近年はお通夜のみに参列する方も増えています。
参列基準は、最終的には周囲の状況やご遺族の意向に応じて決めるのがおすすめです。故人を悼む気持ちで、基本的なマナーを守って参列しましょう。
監修者:岩田昌幸
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。
コメント
葬儀の案内を受けたら、お通夜と葬儀・告別式どちらであっても、お悔やみの気持ちをもって参列する事が重要です。都合が着く方に参列するとよいでしょう。昨今は、一般の人はお通夜に参列することが多いため、お通夜が告別の場となっている場合もあります。